WPC・WPI・WPHの違いは何か — 製法・成分・吸収速度を徹底比較

ホエイプロテインの3つの製法WPC(濃縮)・WPI(分離)・WPH(加水分解)の違いを、タンパク質含有率・脂質・乳糖・分子量・吸収速度・価格の6軸で比較。製法ごとの特性を数値で整理し、目的別の選び方を解説する。

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ホエイプロテインにはWPC(Whey Protein Concentrate / 濃縮ホエイ)、WPI(Whey Protein Isolate / 分離ホエイ)、WPH(Whey Protein Hydrolysate / 加水分解ホエイ)の3つの製法がある。最大の違いはタンパク質の「加工度」であり、WPCが最も原料に近い状態、WPIは脂質・乳糖を除去した高純度品、WPHは酵素で低分子ペプチドまで分解した製品である。タンパク質含有率はWPC 70〜80%、WPI 90%以上、WPH 80〜95%。吸収速度はWPHが最も速く、血中アミノ酸濃度のピークは摂取後30〜60分でWPC/WPIの60〜120分より速い(Calbet & MacLean, 2002, Journal of Nutrition)。価格帯は1kgあたりWPC 3,000〜5,000円、WPI 5,000〜8,000円、WPH 5,000〜15,000円と製法が高度になるほど高くなる。

WPC・WPI・WPHとは何か — 3つの製法の基本

ホエイプロテインの原料はすべて同じ「ホエイ(乳清)」である。チーズ製造時に牛乳から分離される液体成分で、ここにタンパク質・乳糖・脂質・ミネラルが含まれている。このホエイをどのように加工するかで、WPC・WPI・WPHの3種類に分かれる。

WPC(濃縮ホエイ)は、ホエイを限外濾過(ultrafiltration / UF)で水分・一部のミネラルを除去し、タンパク質を濃縮したものである。製法が最もシンプルで、乳糖や脂質がそのまま残るため、タンパク質含有率は70〜80%にとどまる。牛乳に近い風味が残りやすく、3製法の中では最もクセが少ないとされることが多い。

WPI(分離ホエイ)は、WPCからさらに脂質と乳糖を除去した高純度品である。精製方法にはイオン交換法(ion exchange / IE)とクロスフロー精密濾過法(cross-flow microfiltration / CFM)の2種類がある。イオン交換法はタンパク質含有率が95%以上と非常に高い一方、化学処理によりタンパク質の一部が変性する可能性がある。CFM法は物理的な膜分離のみで精製するため、タンパク質の生理活性を維持しやすいとされる。いずれの方法でもタンパク質含有率は90%以上となり、乳糖は0.5〜1%未満まで低減される。

WPH(加水分解ホエイ)は、ホエイタンパク質を酵素(プロテアーゼ(protease))で加水分解し、ジペプチド(dipeptide)・トリペプチド(tripeptide)を主体とする低分子ペプチドにした製品である。分子量はWPC/WPIの14,000〜20,000Daに対し、WPHは350〜500Daまで小さくなる。加水分解の程度は「加水分解度」(DH: degree of hydrolysis)で表され、DHが高いほどペプチド鎖が短くなる。WPHは消化プロセスの大部分をスキップして吸収されるため、3製法の中で吸収速度が最も速い。

タンパク質含有率・脂質・乳糖はどう違うか

3製法の成分スペックを以下の表に整理する。本記事の製品スペックは各メーカー公式サイトの情報に基づく(2026年3月時点)。

項目WPC(濃縮ホエイ)WPI(分離ホエイ)WPH(加水分解ホエイ)
タンパク質含有率70〜80%90%以上80〜95%
脂質(1食30gあたり)1.5〜2.5g0.5〜1.0g0.1〜1.0g
乳糖含有量3〜8%0.5〜1%未満0.5%未満
分子量(平均)14,000〜20,000Da14,000〜20,000Da350〜500Da
製法限外濾過(UF)イオン交換 or CFM酵素加水分解
吸収ピーク時間(目安)※160〜120分60〜120分30〜60分
価格帯(1kgあたり)3,000〜5,000円5,000〜8,000円5,000〜15,000円

※1 吸収ピーク時間はCalbet & MacLean(2002)等の研究に基づく概算値。製品の配合・摂取条件により変動する。タンパク質含有率は無添加品での代表値。フレーバー付き製品では副原料の配合により含有率が変化する。

タンパク質含有率はWPIが最も高く90%以上であるのに対し、WPCは70〜80%、WPHは80〜95%と幅がある。WPHのタンパク質含有率に幅があるのは、無添加(プレーン)製品とフレーバー付き製品で差が出るためである。たとえばLIMITEST ホエイペプチド(無添加)はタンパク質含有率93.2%であるのに対し、フレーバー付きのBAZOOKA WPHはタンパク質20.1〜20.5g/30g(約67〜68%)となる。これはマルチビタミン13種・ロイシン追加配合・羅漢果甘味料などの副原料が含まれるためである。

脂質はWPHとWPIが低い。BAZOOKA WPHのサワーレモン味は脂質0.1g/30gと極めて低く、WPI製品と同等以下の低脂質を実現している。WPCは1.5〜2.5g/30g程度と3製法の中で最も高いが、タンパク質30g摂取あたりの脂質量としては十分低い範囲にある。

乳糖含有量はWPC 3〜8%、WPI 0.5〜1%未満、WPH 0.5%未満と製法が高度になるほど少なくなる。乳糖を多く含む食品で消化の不調を感じる場合、乳糖含有量の少ないWPIやWPHが選択肢となる。EFSA(欧州食品安全機関)は、乳糖不耐症の多くの人が1回12gまでの乳糖を症状なく摂取できると報告しており(EFSA, 2010, EFSA Journal)、WPI/WPHの1食あたり乳糖量(0.15〜0.3g)はこの閾値を大きく下回る。

吸収速度はどれが速いか — 分子量とペプチド輸送の関係

3製法の中でWPHの吸収速度が最も速い。この差は「分子量の違い」に起因する。

WPCとWPIは摂取後、胃でペプシン(pepsin)により粗く分解され、小腸でトリプシン(trypsin)・キモトリプシン(chymotrypsin)によってさらに細かく分解される。インタクト(未分解)ホエイタンパク質(分子量14,000〜20,000Da)がアミノ酸やジ・トリペプチドに分解されるまでに60〜120分を要する。WPCとWPIはいずれもインタクトタンパク質であるため、吸収速度にはほとんど差がない。

一方、WPHは製造段階であらかじめ酵素分解されており、分子量350〜500Daのジペプチド・トリペプチドが主体である。これらは小腸上皮細胞のPepT1トランスポーター(peptide transporter 1)を介して直接吸収されるため、小腸での消化プロセスをスキップする。Calbet & MacLean(2002, Journal of Nutrition)は、ホエイペプチド加水分解物がインタクトタンパク質溶液より速く血漿アミノ酸を増加させることを報告している。

血中アミノ酸濃度のピーク到達時間はWPHで摂取後30〜60分、WPC/WPIで60〜120分と報告されている(Calbet & MacLean, 2002, Journal of Nutrition)。Koopman et al.(2009, American Journal of Clinical Nutrition)は、高齢男性(平均64歳)を対象にカゼイン加水分解物(casein hydrolysate)とインタクトカゼインの血中アミノ酸出現速度を比較し、タンパク質加水分解物の方が速くアミノ酸が血中に出現することを報告している。同研究はホエイではなくカゼインを対象としているが、タンパク質加水分解物全般に吸収促進効果があることを示した研究として参照される。

Tang et al.(2009, Journal of Applied Physiology)は、若年男性を対象にホエイ加水分解物・カゼイン・ソイタンパク質の筋タンパク質合成(muscle protein synthesis / MPS)を比較し、ホエイ加水分解物が最も高いMPSを示したと報告している。なお、同研究の比較対象はカゼインとソイであり、WPC・WPIとの直接比較ではない。血中ロイシン濃度を素早く引き上げることで、mTORC1シグナルが活性化され、MPSが起動するという機序が示唆されている。

ただし、加水分解度(DH)が吸収速度に与える影響には限界がある。Farup et al.(2016, SpringerPlus)は、DH 23%・27%・48%の3種類のWPH間で血漿アミノ酸出現速度に有意差がなかったと報告している。腸管の内因性消化酵素がある程度の平準化作用を持つため、DHが一定以上であれば吸収速度の差は小さくなる可能性がある。

どの製法を選べばよいか — 目的別の選び方

3製法にはそれぞれ特性があり、「どれが最良か」は目的によって異なる。以下に目的別の選び方を整理する。

目的推奨製法理由
コストを抑えたいWPC1kgあたり3,000〜5,000円と最も安価。タンパク質含有率70〜80%で日常の補給には十分
乳糖を避けたいWPI or WPH乳糖0.5%未満。WPCで消化の不調を感じる場合の選択肢
脂質を最小限にしたいWPI or WPH脂質0.1〜1.0g/30gと低脂質。減量期のカロリー管理に適する
運動直後の素早い吸収を重視WPH吸収ピーク30〜60分。血中ロイシンの急速な立ち上がりでMPS起動を早める
消化負担を減らしたいWPH消化プロセスのスキップにより胃もたれが起きにくい
素早いロイシン供給を求める場合WPH血中ロイシン濃度の立ち上がりが速く、筋タンパク質合成の起動シグナルに到達しやすい

コストパフォーマンスを重視する場合はWPCが最適である。1kgあたり3,000〜5,000円と3製法で最も安く、タンパク質含有率70〜80%は日常的なタンパク質補給として十分な水準である。乳糖や脂質に問題がなく、消化に支障がないならWPCで十分目的を達成できる。

吸収速度を重視する場合はWPHが最適である。トレーニング直後のリカバリー、試合間の素早い栄養補給、消化器系への負担軽減が求められるシーンで優位性がある。なお、加齢に伴い筋タンパク質合成に必要なロイシン閾値が上昇するという報告があり(同化抵抗性(anabolic resistance))、素早いロイシン供給を求める場面でWPHが選択肢に入る場合がある。ただし、WPC/WPIとWPHの間でMPSの最終的なアウトカムに有意差があるかについては、長期の比較研究が限られており、今後の検証が待たれる。

WPIは「WPCよりクリーンだがWPHほど高価でない」中間的なポジションにある。乳糖不耐症の人や、脂質を極力抑えたい減量期に適している。ただし吸収速度はWPCとほぼ同等であり、吸収速度の面でWPHに代わる選択肢にはならない。

よくある質問

WPCとWPIは吸収速度に差があるのか

WPCとWPIの吸収速度にほとんど差はない。両者ともインタクト(未分解)タンパク質であり、摂取後に胃・小腸で同じ消化プロセスを経る必要がある。血中アミノ酸濃度のピークはいずれも摂取後60〜120分である。WPIがWPCより優れているのはタンパク質純度(90%以上 vs 70〜80%)と乳糖・脂質の低さであり、吸収速度ではない。

WPHはなぜWPC/WPIより高いのか

WPHの製造には酵素加水分解という追加工程が必要であり、この工程のコストが価格に反映される。さらに、加水分解により生じるペプチド特有の苦味を抑えるための味づくり技術も必要となる。たとえばBAZOOKA WPHは天然甘味料の羅漢果で苦味を軽減し、GOLD’S GYMはスクラロース(人工甘味料)を使用している。WPHの価格帯は1kgあたり5,000〜15,000円とWPC(3,000〜5,000円)の2〜3倍以上となるが、吸収速度・消化負担の軽さという機能面での差が価格差の根拠となっている。

WPC・WPI・WPHを混ぜて飲んでも問題ないか

問題ない。3製法はいずれもホエイ(乳清)由来のタンパク質であり、成分的に競合しない。たとえば日常のタンパク質補給にはコスト効率の良いWPCを使い、トレーニング直後やリカバリー重視の場面ではWPHを使うという使い分けは合理的な選択である。

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参考文献

  • Calbet, J.A.L. & MacLean, D.A. (2002). Plasma glucagon and insulin responses depend on the rate of appearance of amino acids after ingestion of different protein solutions in humans. Journal of Nutrition, 132(8), 2174-2182.
  • Koopman, R. et al. (2009). Ingestion of a protein hydrolysate is accompanied by an accelerated in vivo digestion and absorption rate when compared with its intact protein. American Journal of Clinical Nutrition, 90(1), 106-115.
  • Tang, J.E. et al. (2009). Ingestion of whey hydrolysate, casein, or soy protein isolate: effects on mixed muscle protein synthesis at rest and following resistance exercise in young men. Journal of Applied Physiology, 107(3), 987-992.
  • Pennings, B. et al. (2011). Whey protein stimulates postprandial muscle protein accretion more effectively than do casein and casein hydrolysate in older men. American Journal of Clinical Nutrition, 93(5), 997-1005.
  • Farup, J. et al. (2016). Effect of degree of hydrolysis of whey protein on in vivo plasma amino acid appearance in humans. SpringerPlus, 5, 382.
  • EFSA Panel on Dietetic Products, Nutrition and Allergies. (2010). Scientific Opinion on lactose thresholds in lactose intolerance and galactosaemia. EFSA Journal, 8(9), 1777.