アンチドーピング認証プロテインはどの認証を見ればよいか — Informed Choice・Informed Sport・NSF Certified for Sportの違いと廃止されたJADAの整理
国内流通プロテインのアンチドーピング認証3種(Informed Choice・Informed Sport・NSF Certified for Sport)を検査頻度・対象物質・取得製品の3軸で整理する。2019年に廃止されたJADA認証マークの経緯と、認証なし製品の代替シグナルもまとめる。
- アンチドーピング
- Informed Choice
- Informed Sport
- JADA
- 認証
- 比較
国内流通プロテインのアンチドーピング認証は、2026年5月時点でInformed Choice・Informed Sport・NSF Certified for Sportの3種が主体である。なお、JADA(日本アンチ・ドーピング機構)が運営していたサプリメント認証プログラムは2019年3月31日に廃止済みであり、現在JADAはサプリメントに対する認証マークを発行していない。Martínez-Sanz et al.(2017, Nutrients)が整理した研究レビューによれば、市販スポーツサプリメントの12〜58%に禁止物質の汚染が確認されており、第三者認証付き製品の選択が競技アスリートのリスク管理として推奨されている。
本記事の製品スペックは各メーカー公式サイトおよび認証機関の公開リスト(2026年5月時点)に基づく。認証の取得状況は変わることがあるため、最新情報は各認証機関の公開製品リストで確認されたい。
アンチドーピング認証プロテインに使われている認証の種類は何か
現行の主要3認証はすべてWADA(World Anti-Doping Agency / 世界アンチ・ドーピング機構)の禁止物質リストに基づき検査を行う。Informed ChoiceとInformed Sportは英国LGC社(LGC Group)が運営し、285種以上の禁止物質を対象とする。NSF Certified for Sportは米国のNSF International(1944年設立の非営利機関)が運営し、約270〜290種の物質を対象に全ロット検査と製造施設監査を組み合わせる。Martínez-Sanz et al.(2017)のレビューでは、先行研究のうち12〜58%の市販スポーツサプリメントに禁止物質の汚染が報告されており、認証制度の意義が示されている。
WADAは毎年禁止物質リストを更新し、2026年版では一酸化炭素の非診断的使用(M1.4)や fladrafinil(フラドラフィニル)・flmodafinil(フルモダフィニル)の2物質(サプリメントとして販売例のある刺激薬類縁体)が新たに追加されている。各認証機関はこのリストを基準として検査対象物質を設定している。
3認証のほかに日本特有の情報公開枠組みとして、JADA(日本アンチ・ドーピング機構)のガイドラインに基づいてJCAC(日本分析センター)が運用するSSRサイト(Sports Supplement Reference / https://www.sports-supplement-reference.jp)がある。ただしSSRサイトは認証マークを発行せず、強制力もない。同サイトは2025年3月31日に分析サービスの新規受付を終了しており、2028年3月までは掲載済み情報のアーカイブとして参照可能な状態が維持される。
アンチドーピング認証3種の比較
| 認証 | 運営機関(国) | 検査対象物質数 | 検査頻度・運用 | 公開製品リスト | 国内流通対応 |
|---|---|---|---|---|---|
| Informed Choice | LGC Group(英) | 285種以上 | 月次ブラインドサンプリング(市場購入品を年12回以上) | choice.wetestyoutrust.com | あり |
| Informed Sport | LGC Group(英) | 285種以上 | 全バッチ出荷前検査 | sport.wetestyoutrust.com | あり |
| NSF Certified for Sport | NSF International(米) | 270〜290種 | 全ロット検査+製造施設監査 | nsfsport.com | 2026年5月時点で国内流通品は確認できず |
Informed Choice・Informed Sport・NSF Certified for Sportは何が違うのか
Informed ChoiceとInformed Sportの最大の差異は検査タイミングである。Informed Choiceは認証取得後に市場から無作為購入した製品を年12回以上の月次ブラインドテストで検査する。Informed Sportは全バッチが出荷前にLGC施設の検査を通過することが義務付けられており、汚染が発見されたバッチは市場に出る前にブロックされる。Jagim et al.(2023)は、解析したサプリメントの14〜50%に同化剤等の禁止物質を検出したとして第三者認証取得製品の選択を推奨している。
Informed Sportは検査タイミングがより厳格であり、プロ競技アスリートや競技団体が選手に推奨する際にInformed Sportの表示を推奨するケースが多い。ただし「上位=必須」という関係ではなく、どちらの認証も独立した検査機関(ISO 17025認定施設)で実施される同一水準の禁止物質スクリーニングを行う。
NSF Certified for Sportは製品検査に加えて製造施設の監査も含む点で独自の特徴を持つ。NFL・MLB・NHL・CFLなどの北米プロスポーツリーグが選手向けに公認しており、米国市場では高い認知度を持つ。一方、2026年5月時点で国内流通するホエイプロテインでNSF Certified for Sportを取得した製品は確認できなかった。米国向けでは取得製品が存在するが、日本国内では流通していない。
認証は「リスクの低減」であり「絶対安全の保証」ではない。ロット検査制の場合、認証後の生産ロットは検査対象外になりうる点は理解しておく必要がある。
JADA認定マークは2019年に廃止されたのか — 経緯と現状はどうなっているか
JADA(日本アンチ・ドーピング機構)は2019年3月31日をもってサプリメント分析認証プログラムを終了した。Martínez-Sanz et al.(2017)が引用するGeyer et al.(2004)は、13か国634製品の分析で14.8%(94/634製品)にアナボリックステロイドが検出されたと報告しており、認証制度整備の背景となっているデータである。猶予期間は2020年3月末で終了しており、2026年5月現在、JADAはサプリメントに対する認証マークを発行していない。インターネット上の記事には、JADAを「現行の3認証の1つ」として記載しているものが残存しているが、これは廃止前の情報である。
廃止の主な理由は、JADAが認証付与機関ではなく分析機関であることとの整合性確保のためと説明されている(出典: https://www.playtruejapan.org/topics/2019/000378.html)。認証廃止後に製品パッケージや広告に残っていたJADAマークの表示は、猶予期間の終了(2020年3月末)をもって認められなくなった。
廃止後の代替枠組みとして、JADAガイドラインに基づく情報公開の仕組みが設けられた。日本分析センター(JCAC)が運用するSSRサイト(https://www.sports-supplement-reference.jp)は2025年3月31日に新規分析サービスの受付を終了しており、現在は2028年3月31日まで掲載済み製品情報のアーカイブ公開を継続している。新規認証マーク発行や新規掲載の仕組みではないが、過去の掲載情報は引き続き参照可能である。
国内で買えるアンチドーピング対応プロテインはどれか
2026年5月時点で国内流通するアンチドーピング認証取得ホエイプロテインの主要製品を以下に示す。Lauritzen et al.(2022, Frontiers in Sports and Active Living)が分析した192件の分析的ADRV(Anti-Doping Rule Violation)のうち26%(n=49)でアスリートがサプリメントを原因と主張し、そのうち証拠で裏付けられたのは14%(n=27、全ADRV比)であった。競技者のサプリメント選択の重要性が示されている(対象は2003〜2020年のノルウェー国内競技者ADRV)。
2025年中の新規取得・切替を上に配置し、その後に取得時期不明(認証継続中)のブランドをブランド名五十音順で配置している。最新の認証ステータスは各認証機関の公開製品リストで確認することを推奨する。
| ブランド | 製品(代表) | 認証種別 | 認証取得時期 | 製法 | タンパク質/1食30g |
|---|---|---|---|---|---|
| DNS(第一三共ヘルスケア) | プロテインホエイ100 / ホエイプロテインSP | Informed Choice(2025年6月にInformed SportからChoiceへ切替) | 2025年6月切替 | WPC / WPI | WPC: 約24.2g |
| GronG | ホエイプロテイン100(スタンダード等) | Informed Choice | 2025年3月28日 | WPC | 約23g |
| be LEGEND(リアルスタイル) | ホエイプロテイン WPC(一部Informed Sport) | Informed Choice | 2025年3月28日以降バッチから | WPC | 約24g |
| LIMITEST | ホエイペプチド | Informed Choice | 2025年7月 | WPH | 未確認 |
| BAZOOKA NUTRITION | WPH・WPC | Informed Choice | 認証継続(時期不明) | WPH / WPC | WPH: 20.1〜20.5g / WPC: 21〜22g |
| Myprotein | Impact ホエイプロテイン(Global版) | Informed Choice・一部Informed Sport | 認証継続(時期不明) | WPC | 約21g |
| VALX | WPIパーフェクト | Informed Choice | 認証継続(時期不明) | WPI | 約27g |
| WINZONE(日本新薬) | ホエイプロテイン系 | Informed Choice | 認証継続(時期不明) | WPC | 各製品による |
| 明治ザバス | ホエイプロテイン100 等(一部製品を除く) | Informed Choice | 認証継続(時期不明) | WPC | 約21g |
上記リストに掲載したブランドの一部(ザバス・DNS等)は全製品が対象ではなく、特定製品ラインのみが認証を取得している。最新の取得製品一覧は各認証機関の公開リストで確認することを推奨する。なお、NSF Certified for Sportを取得した国内流通ホエイプロテインは2026年5月時点で確認できなかった。
認証取得していない製品をどう評価すればよいか
Al-Saad et al.(2026, Frontiers in Sports and Active Living)のPRISMAシステマティックレビュー(3データベースで12,031件の文献を検索し44研究を対象として選定)によれば、市販サプリメントの約9〜15%に禁止物質の汚染が確認されており、刺激剤(n=21研究)と同化ステロイド(n=11研究)が最多である。認証未取得製品のすべてが汚染されているわけではなく、認証取得製品のリスクがゼロになるわけでもない。認証はリスク低減の手段の一つである。
アンチドーピング認証を取得していない製品でも、以下の代替シグナルによってリスクを評価できる。
1. FSSC 22000(食品安全マネジメントシステム) 食品製造施設の衛生管理・アレルゲン管理を対象とした国際規格。禁止物質の非意図的混入リスクを低減する製造工程管理の基盤となる。禁止物質の検査を直接実施するわけではないが、交差汚染防止の体制を評価できる。
2. GMP(適正製造規範) 製品の品質・安全性を継続的に確保するための製造管理規範。国内の多くのサプリメントメーカーが取得している。
3. SSRサイト(JCAC)掲載 JADAガイドラインに基づく任意の情報公開枠組み。認証マーク発行ではないが、製品情報の透明性シグナルとして参照できる。
4. ケルンリスト®(Kölner Liste)登録 主にクレアチン製品(クレアピュア®原料使用品など)で参照されるドイツの品質認証登録システム。
競技団体が特定の認証を指定している場合はその認証を優先し、そうでない場合は認証取得製品と上記の代替シグナルを組み合わせて総合的に判断することが現実的な選択肢である。
よくある質問
Q: Informed ChoiceとInformed Sportはどちらを選べばよいのか
Informed Sportは全バッチ出荷前検査を実施するため、より厳格なリスク管理を求める場合に適している。ただし国内で流通するInformed Sport取得製品の選択肢はInformed Choiceより少ない(be LEGENDの一部バッチ、MyproteinのGlobal版等)。Informed Choiceも月次ブラインドテストによる継続的な市場後検査を実施しており、同一の禁止物質スクリーニング基準を適用している。所属する競技団体が特定の認証を指定している場合はその基準に従うことが優先される。
Q: JADA認定マークはまだ有効なのか
JADA認定マークは2019年3月31日に廃止されており、猶予期間も2020年3月末に終了している。現在、JADAはサプリメント認証マークを発行していない。製品パッケージや広告にJADAマークが残っている場合、それは廃止前に取得したものであり現行認証として有効ではない。JADAガイドラインに基づくSSRサイトへの製品掲載は引き続き行われているが、これは認証ではなく任意の情報公開の枠組みである。
Q: 認証取得していないプロテインは避けるべきか
認証未取得がただちに「危険」を意味するわけではない。認証取得には費用とプロセスが伴うため、小規模メーカーや日本国内での流通を主目的とするブランドが取得していないケースもある。一方、WADAの厳格責任原則(strict liability)が適用される競技者にとって、認証取得製品の選択は現時点で有力なリスク管理手段である。認証未取得製品を選ぶ場合は、FSSC22000取得工場での製造、自社検査の公開、SSRサイト掲載などの代替シグナルを複合的に確認することを推奨する。
関連記事
- アンチドーピング認証付きプロテインはどれか — 3認証の違いと対応製品一覧 (/guides/anti-doping-certified-protein)
- 甘味料なし・アンチドーピング対応プロテインの選び方 (/guides/sweetener-free-anti-doping)
- WPC・WPI・WPHの違いは何か — 製法・成分・吸収速度を徹底比較 (/guides/wpc-wpi-wph-difference)
- 競技別タンパク質要求量ガイド — 持久系・パワー系・球技系の3軸比較
参考文献
- Martínez-Sanz JM, Sospedra I, Ortiz CM, Baladía E, Gil-Izquierdo A, Ortiz-Moncada R. Intended or Unintended Doping? A Review of the Presence of Doping Substances in Dietary Supplements Used in Sports. Nutrients. 2017;9(10):1093. DOI: 10.3390/nu9101093
- Geyer H, Parr MK, Mareck U, Reinhart U, Schrader Y, Schänzer W. Analysis of non-hormonal nutritional supplements for anabolic-androgenic steroids - results of an international study. Int J Sports Med. 2004;25(2):124-129. DOI: 10.1055/s-2004-819955
- Jagim AR, Harty PS, Erickson JL, Tinsley GM, Garner D, Galpin AJ. Prevalence of adulteration in dietary supplements and recommendations for safe supplement practices in sport. Front Sports Act Living. 2023;5:1239121. DOI: 10.3389/fspor.2023.1239121
- Lauritzen F. Supplement Use and Doping Violations: Do We Know If Dietary Supplements Cause Positive Doping Tests? Front Sports Act Living. 2022. DOI: 10.3389/fspor.2022.868228
- Al-Saad N, et al. Prevalence of Prohibited Substances in Commercially Available Sports Supplements: A Systematic Review. Front Sports Act Living. 2026. DOI: 10.3389/fspor.2026.1740663