乳糖不耐症でも飲めるプロテインはどれか — WPC・WPI・WPH・ソイの乳糖含有量比較
乳糖不耐症(lactose intolerance)でも飲めるプロテインを製法別に比較。WPC・WPI・WPH・ソイプロテインの乳糖含有量、1食あたりの乳糖量、EFSAの閾値12gとの関係を整理し、国内で購入可能な低乳糖プロテイン6製品のスペックをフラットに並べる。
- 乳糖不耐症
- プロテイン
- WPI
- WPH
- ソイプロテイン
- 乳糖
- ラクトース
- プロテイン比較
本記事は公開された学術論文および公的機関の情報に基づく事実の整理であり、特定の疾患の診断・治療・予防を目的としたものではない。個別の健康上の判断は医師・管理栄養士等の医療専門家に相談されたい。
乳糖不耐症(lactose intolerance)でもプロテインは飲める。製法によって乳糖含有量は大きく異なり、WPC(3〜8%)に対しWPI(0.5〜1%未満)、WPH(0.5%未満)、ソイプロテイン(0%)はいずれも乳糖が低減されている。EFSA(European Food Safety Authority / 欧州食品安全機関)は乳糖不耐症の多くの人が1回12g程度までの乳糖を症状なく摂取できると報告しており(EFSA, 2010, EFSA Journal)、WPI以上の製品であれば1食あたりの乳糖量は0.3g未満に収まる。乳糖をゼロにしたい場合はソイプロテインが最も確実な選択肢である。
乳糖不耐症とは何か
乳糖不耐症とは、小腸で乳糖(ラクトース / lactose)を分解する酵素であるラクターゼ(lactase)の活性が低下し、未消化の乳糖が大腸に到達することで腹部膨満感、腹痛、下痢などの消化器症状を引き起こす状態を指す。乳糖はグルコースとガラクトースが結合した二糖類であり、ラクターゼがこれを単糖に分解できなければ、大腸の腸内細菌が乳糖を発酵させて水素、メタン、二酸化炭素などのガスと短鎖脂肪酸を産生する。これが症状の直接的な原因である。
Misselwitz et al.(2019, Gut)のレビューによれば、世界人口の約68%がラクターゼ非持続型(lactase non-persistence)であり、地域差が大きい。北欧系では5〜15%にとどまるのに対し、東アジア系(日本・中国・韓国)では70〜95%がラクターゼ非持続型と推定されている。つまり、日本人の成人の大多数はラクターゼ活性が低い状態にあり、牛乳由来のホエイプロテインに含まれる乳糖に対して何らかの反応を示す可能性がある。ただし、ラクターゼ非持続型であっても全員が症状を発現するわけではなく、乳糖の摂取量、腸内細菌叢の構成、消化管の通過速度など複数の要因が関与する。
重要なのは、乳糖不耐症はホエイプロテインを「飲めない」理由にはならないという点である。問題は乳糖の量であり、製法によって乳糖含有量は桁違いに異なる。
プロテインの製法によって乳糖含有量はどれくらい違うのか
ホエイプロテインの3つの製法(WPC・WPI・WPH)とソイプロテインでは、乳糖含有量に大きな差がある。以下の表に製法別の乳糖含有量と関連スペックを整理した。
| 製法 | 乳糖含有量(目安) | 1食30gあたり乳糖 | タンパク質含有率 | ロイシン含有率 | 価格帯(1kgあたり) |
|---|---|---|---|---|---|
| ソイプロテイン | 0% | 0g | 80〜90% | 約6〜7%(ホエイより低い) | 2,000〜4,000円 |
| WPH(加水分解ホエイ) | 0.5%未満 | 0.15g未満 | 80〜95% | 約10〜12% | 5,000〜12,000円 |
| WPI(分離ホエイ) | 0.5〜1% | 0.15〜0.3g | 90%以上 | 約10〜12% | 5,000〜8,000円 |
| WPC(濃縮ホエイ) | 3〜8% | 0.9〜2.4g | 70〜80% | 約10〜12% | 3,000〜5,000円 |
EFSA(2010, EFSA Journal)は、乳糖不耐症と診断された人の多くが1回あたり12gまでの乳糖を症状なしに摂取できると報告している。この閾値に対して、WPC 30gに含まれる乳糖は最大でも2.4g、WPI 30gでは0.3g未満、WPH 30gでは0.15g未満である。数値上は、WPCですらEFSAの閾値を下回る(最大2.4g vs 閾値12g)。しかし個人差は大きく、閾値が12gより低い人もいるため、乳糖に敏感な人ほどWPI・WPH・ソイなど乳糖含有量が低い製品を選ぶほうが確実である。
ソイプロテインは乳糖を含まない(大豆由来のため)。乳糖をゼロにしたい場合は最も確実な選択肢であり、価格帯も2,000〜4,000円/kgとホエイ系より安価である。植物性タンパク質を求める人にも適合する。
ホエイプロテインと比較するとロイシン含有率は低い(約6〜7% vs 約10〜12%)が、Tang et al.(2009, Journal of Applied Physiology)はソイプロテインでも安静時および運動後のMPS応答が認められることを示している(ホエイタンパク質のほうが高い値を示したが、ソイプロテインでもMPSは起動する)。ロイシン含有率の差を補うには、1食あたりの摂取量を増やすか、ロイシンを個別に補う方法がある。乳糖回避が主目的であればソイプロテインは十分な選択肢であり、ホエイのアミノ酸プロファイルを維持したい場合はWPIまたはWPHが選択肢となる。
乳糖不耐症の人はどのプロテインを選べばよいのか
乳糖不耐症の程度は人によって異なるため、段階的に試すアプローチが合理的である。以下に判断フローを示す。
ステップ1: WPIを試す。 WPIは乳糖含有率が0.5〜1%で、1食30gあたりの乳糖は0.15〜0.3gに収まる。EFSA(2010)の報告に基づけば、軽度〜中等度の乳糖不耐症ではこの量で症状が出る可能性は低いと考えられる。WPIはタンパク質含有率が90%以上と高く、ロイシン含有率もWPCと同等の約10〜12%を維持している。価格もWPHより抑えられるため、最初の選択肢として合理的である。
ステップ2: WPIで症状が出る場合は原因を切り分ける。 WPIでも消化器症状が出る場合、乳糖以外の原因も考えられる。WPIの乳糖含有量は1食あたり0.15〜0.3gであり、WPHとの差は0.15g程度と微小である。そのためWPIで症状が出る場合、乳糖量の問題ではなく、乳タンパク質(ホエイタンパク質やカゼイン)への感受性、添加物(人工甘味料・乳化剤等)への反応、あるいはその他の消化器要因が原因である可能性が高い。乳タンパク質自体が原因であれば、ソイプロテインへの切り替えが有効である。消化負担の軽減が目的であればWPHが選択肢となる。Koopman et al.(2009, American Journal of Clinical Nutrition)は、タンパク質加水分解物がインタクトなタンパク質と比較して消化吸収速度が速いことを示しており、WPHの優位性は「さらなる乳糖低減」よりも「タンパク質の消化吸収面での負担軽減」にある。
ステップ3: 乳製品を避ける必要がある場合、ソイプロテインを選ぶ。 乳糖だけでなく乳タンパク質(カゼイン・ホエイ)自体にアレルギーがある場合、または極めて少量の乳糖でも症状が出る場合はソイプロテインが最善の選択肢である。ソイプロテインは乳糖ゼロであり、乳成分を一切含まない。価格帯も2,000〜4,000円/kgとホエイ系製品より安価で、継続しやすい。ロイシン含有率はホエイより低いが、ソイプロテインでもMPSは起動するため(Tang et al., 2009, Journal of Applied Physiology)、摂取量の調整やロイシンの個別補給で対応可能である。
まとめると、乳糖回避にはWPIで十分なケースが多い。乳糖の完全回避を求めるならソイプロテインが最も確実である。消化負担も含めた総合的な選択としてWPHもあるが、WPHの主な優位性は乳糖低減よりもタンパク質の消化吸収面にある。
国内で購入可能な低乳糖プロテイン製品を比較するとどうなるか
2026年3月時点で日本国内で購入可能な低乳糖プロテイン(WPH・WPI)の主要製品を以下に比較する。各数値は各メーカー公式サイト・製品パッケージの表示に基づく。乳糖含有量の昇順でソートした。
| 製品名 | 製法 | 乳糖含有量 | タンパク質含有率 | 甘味料 | アンチドーピング認証 | 価格目安(1kgあたり) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| BAZOOKA WPH | WPH | 0.5%未満 | 約67%(栄養成分表示より算出) | 羅漢果 | あり | 約14,100円(定期) |
| LIMITEST ホエイペプチド | WPH | 不明 | 不明 | なし(無添加) | なし | 不明 |
| GOLD’S GYM ホエイペプチド | WPH | 不明 | 不明 | スクラロース | 不明 | 不明 |
| DNS ホエイプロテイン SP | WPI | 1%未満 | 約95% | スクラロース | Informed Choice | 約7,000円 |
| nichie ホエイプロテイン WPI | WPI | 1%未満 | 約90% | なし(無添加) | なし | 約5,500円 |
| SAVAS アクアホエイプロテイン100 | WPI | 1%未満 | 約75% | スクラロース、アセスルファムK | なし | 約5,000円 |
※ BAZOOKA WPHのタンパク質含有率は、栄養成分表示(1食30gあたりタンパク質約20g)から算出した概算値。BAZOOKA WPHは600g入りのため、1kgあたり価格は内容量から換算した数値である。乳糖含有量・タンパク質含有率・価格を公開していない製品については、各メーカー公式サイトでの確認を推奨する。
WPH製品はWPIより乳糖含有量が低い傾向にあるが、乳糖含有量を数値で公開しているWPH製品は限られている。WPI製品はいずれも1%未満と表記されている。製品選択にあたっては、公開情報が多い製品のほうが判断しやすいという実利はあるが、情報非公開が品質の低さを意味するわけではない点に留意したい。
個別の製品価格を見ると、WPI製品ではSAVAS アクアホエイプロテイン100が約5,000円/kg、nichie WPIが約5,500円/kg、DNS ホエイプロテイン SPが約7,000円/kgである。WPH製品ではBAZOOKA WPHが約14,100円/kg(定期)と高価格帯にある。タンパク質含有率はDNS ホエイプロテイン SPが約95%、nichie WPIが約90%と高い。乳糖回避が主目的であればWPIがコストパフォーマンスに優れる。
さらに低価格で乳糖ゼロを求めるならソイプロテイン(2,000〜4,000円/kg)も有力な選択肢である。WPHは乳糖低減に加えてタンパク質の加水分解による消化吸収面のメリットもあるが、価格は総じて高い。甘味料については、人工甘味料を避けたい場合は無添加(LIMITEST、nichie)または天然甘味料(BAZOOKA WPH)の製品が選択肢となる。
よくある質問
乳糖不耐症でもWPCを飲む方法はあるか
EFSA(2010, EFSA Journal)の報告では、乳糖不耐症の多くの人が1回あたり12g程度までの乳糖を症状なく摂取できるとされている。WPC 30gに含まれる乳糖は0.9〜2.4gで、この閾値を下回る。そのため、軽度の乳糖不耐症であればWPCでも症状が出ない場合がある。また、ラクターゼサプリメント(市販の乳糖分解酵素)を併用するという選択肢もあるが、効果の個人差が大きく、低乳糖製品(WPI・WPH)への切り替えがより確実な選択肢とされている。
WPH製品は乳糖不耐症の人に向いているか
WPH製法のプロテインは乳糖含有量が0.5%未満のものが多く、1食30gあたりの乳糖は約0.15g未満と推定される。この数値はWPI製品(1食あたり0.15〜0.3g)と同等かそれ以下であり、乳糖不耐症の人にとって乳糖量の観点では選択肢に入る。ただし、WPI製品でも乳糖量は十分に低いため、乳糖回避のみが目的であればWPIでも対応可能である。
ソイプロテインとWPIはどちらを選ぶべきか
乳糖ゼロを最優先するならソイプロテインが確実である。ソイプロテインは大豆由来であり、乳糖を一切含まない。価格帯も2,000〜4,000円/kgとWPI(5,000〜8,000円/kg)より安価で、植物性タンパク質を求める人にも適合する。
ロイシン含有率はホエイより低い(約6〜7% vs 約10〜12%)が、Tang et al.(2009, Journal of Applied Physiology)はソイプロテインでもMPS応答が認められることを示している(ホエイのほうが高い値を示したが、ソイでもMPSは起動する)。ホエイのアミノ酸プロファイルを重視するならWPI、乳糖完全ゼロ・低価格・植物性を重視するならソイプロテインが適している。
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参考文献
- Misselwitz B, et al. (2019). Update on lactose malabsorption and intolerance: pathogenesis, diagnosis and clinical management. Gut, 68(11), 2080-2091.
- EFSA Panel on Dietetic Products, Nutrition and Allergies (NDA). (2010). Scientific Opinion on lactose thresholds in lactose intolerance and galactosaemia. EFSA Journal, 8(9), 1777.
- Koopman R, et al. (2009). Ingestion of a protein hydrolysate is accompanied by an accelerated in vivo digestion and absorption rate when compared with its intact protein. American Journal of Clinical Nutrition, 90(1), 106-115.
- Tang JE, et al. (2009). Ingestion of whey hydrolysate, casein, or soy protein isolate: effects on mixed muscle protein synthesis at rest and following resistance exercise in young men. Journal of Applied Physiology, 107(3), 987-992.