プロテインはコレステロール値に影響するのか — ホエイ・ソイのメタ分析結果を比較

ホエイプロテインはLDLコレステロールを上昇させるという懸念は、複数のメタ分析では支持されていない。ホエイとソイがLDL・HDL・中性脂肪に与える影響をRCTのメタ分析データで比較し、WPC・WPI・WPH別の脂質含有量との関係も整理する。

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本記事は公開された学術論文および公的機関の情報に基づく事実の整理であり、特定の疾患の診断・治療・予防を目的としたものではない。個別の健康上の判断は医師・管理栄養士等の医療専門家に相談されたい。

ホエイプロテインの補給がLDLコレステロール(LDL-C)を上昇させるという懸念は、メタ分析のデータでは支持されていない。むしろ、複数のランダム化比較試験(RCT)のメタ分析では、特定の条件下でLDL-CおよびTG(トリグリセリド、中性脂肪)の低下が報告されている(Prokopidis et al., 2025, Clinical Nutrition)。ソイプロテインについても、1日25g以上の摂取でLDL-Cが約3.2%低下したというメタ分析結果がある(Blanco Mejia et al., 2019, The Journal of Nutrition)。ただしいずれの効果も条件依存であり、健康な成人が通常量のプロテインを摂取するだけで血中脂質が劇的に変化するという知見は現時点では得られていない。

ホエイプロテインはLDL・HDLコレステロールを変化させるのか

21件のRCTを対象としたメタ分析(Prokopidis et al., 2025, Clinical Nutrition, Vol.44, pp.109-121)では、ホエイプロテイン補給が50歳未満の参加者および運動を併用した条件において、LDL-Cを有意に低下させる結果が報告されている(平均差: -5.38 mg/dL, 95%CI: -8.87〜-1.88)。また介入期間が12週以上の場合、TGが有意に低下した(平均差: -6.61 mg/dL, 95%CI: -11.06〜-2.17)。HDL-Cについては全体として有意な変化は見られなかった(健康な参加者では低下傾向が観察されたとの報告もある)。

一方、13件のRCTを対象とした別のメタ分析(Zhang et al., 2016, European Journal of Clinical Nutrition, Vol.70(8):879-85)では、ホエイプロテインの影響はTGのみに有意な低下が認められ(約-9.7 mg/dL)、総コレステロール・LDL-C・HDL-Cには有意な影響が見られなかった。このTG低下効果はBMIが低い群や、運動またはエネルギー制限を併用した場合には消失したという。2つのメタ分析の結論が一致しない背景には、対象集団・介入期間・運動の有無といった条件の違いがあると考えられる。

代謝症候群(metabolic syndrome)患者を対象とした22件のRCTメタ分析(Amirani et al., 2020, Lipids in Health and Disease, Vol.19:209, n=1,103名)では、ホエイプロテイン補給でLDL-Cが-8.47 mg/dL(95%CI: -16.59〜-0.36)、総コレステロールが-10.88 mg/dL(95%CI: -18.60〜-3.17)、TGが-17.12 mg/dL(95%CI: -26.52〜-7.72)と有意に低下したと報告されている。ただしこれは代謝症候群患者を対象とした研究であり、健康な成人に同等の効果量を当てはめることは適切でない。

ソイプロテインの脂質改善効果はどこまで確かか

ソイプロテイン(soy protein)とコレステロールの関係は長く研究されてきた。43件の試験(計2,607名)を対象としたメタ分析(Blanco Mejia et al., 2019, The Journal of Nutrition, Vol.149(6):968-981)では、1日中央値25gのソイプロテイン摂取でLDL-Cが4.76 mg/dL(約3.2%)、総コレステロールが6.41 mg/dL(約2.8%)低下したと報告されている。介入期間の中央値は6週間であった。

この研究はFDA(米国食品医薬品局)によるソイプロテインの健康表示「1日25g以上のソイプロテイン摂取が心疾患リスクを低下させる可能性がある」を支持する根拠となったメタ分析である。ただし、FDAは2017年にこの表示を「暫定的(qualified)」なものに変更している。その理由の一つとして、上記メタ分析を含む研究群の結果に有意な異質性(heterogeneity)が存在し、効果の一貫性について議論があることが挙げられている。3.2%というLDL-C低下の統計的有意性は認められる一方、その臨床的意義については研究者間で評価が分かれている。

植物性タンパク質全体の脂質代謝への影響を検討したネットワークメタ分析(Yao et al., 2025, Nutrition Reviews, Vol.83(3):e814-e828)では、植物性タンパク質を豊富に含む食事パターンが動物性タンパク質中心の食事パターンと比較して、TC・TG・LDL-Cで有意な改善傾向を示したという知見が報告されている。ただしこの比較は「植物性vs動物性」という食事パターン全体の比較であり、ソイプロテインサプリメント単独の効果と同一視することはできない。

プロテインの脂質含有量はコレステロールに影響するのか — WPC・WPI・WPHの違い

プロテインパウダー自体が含む脂質量は製法によって大きく異なる。WPC(ホエイプロテインコンセントレート)は100gあたり4〜8g程度の脂質を含む製品が多い。WPI(ホエイプロテインアイソレート)は超ろ過工程により脂質・乳糖をほぼ除去しており、100gあたり1g未満に抑えられている製品が一般的である。WPH(ホエイプロテインハイドロリゼート)の脂質量はベースとなる素材(WPCベースかWPIベースか)によって異なり、製品ごとの差が大きい。

1食あたりの摂取量(30g程度)で換算すると、WPCの場合1.5〜2.9g前後の脂質を含む製品が多い(各メーカー公式サイト、2026年3月時点)。これは食事1食分の脂質量と比較すると少量であり、プロテインパウダーの脂質含有量が血中コレステロールに直接的な影響を与えるかどうかは、現時点では明確な臨床的知見に乏しい。なお、高タンパク質食(2.51〜3.32g/kg/日)を1年間継続した抵抗性トレーニング男性(n=14)を対象とした研究では、血中脂質への有害影響は観察されなかったという報告がある(Antonio et al., 2016, Journal of Nutrition and Metabolism)。

製品名種類1食あたり脂質serving size
GronG WPI CFM プレーンWPI0.4〜0.5g29g
BAZOOKA WPH(プレーン系)WPH0.1〜0.8g30g
be LEGEND WPC ナチュラルWPC1.5g29g
BAZOOKA WPC プレーンWPC1.7g30g
VALX WPC プレーンWPC1.7g30g
GronG WPC スタンダード ナチュラルWPC1.8g30g
Myprotein Impact Whey ノンフレーバーWPC1.9g25g
SAVAS ホエイプロテイン100 リッチショコラWPC2.0g28g
DNS ホエイプロテイン100 プレミアムチョコWPC2.9g35g

※WPHの脂質量(0.1〜0.8g)はフレーバーによる差を含む。DNSはチョコレートフレーバーでの値。脂質量の昇順で掲載。各メーカー公式サイト情報に基づく(2026年3月時点)

コレステロール値が高い人はプロテインを避けるべきか

コレステロール値が高い人がプロテインサプリメントを摂取することの安全性について、一般的な摂取量を前提とした場合に血中コレステロールを有意に上昇させるという知見は、現時点のメタ分析では確認されていない。むしろ前述のメタ分析では、特定の条件下でLDL-Cの低下が報告されている。

ただし、個人の代謝状態・食事全体の脂質量・服薬状況によって影響は異なる可能性があると考えられる。脂質異常症(dyslipidemia)の診断を受けている場合や、スタチン等の脂質低下薬を服用している場合は、食事・サプリメントの選択について担当医や管理栄養士に相談することが求められる。本記事は脂質代謝に関する研究の事実整理であり、個別の医療上の判断を示すものではない。

プロテイン種類によって脂質代謝への影響は異なるのか

現在得られているメタ分析データを整理すると、ホエイとソイはいずれも特定の条件下でLDL-Cの低下が報告されているが、効果の大きさ・一貫性・必要用量はそれぞれ異なる。以下にエビデンスレベル(対象となったRCT数・サンプルサイズ)の観点から比較する。

プロテイン種類LDL-C変化TG変化HDL-C変化主なエビデンス条件
ホエイ(健康者・全体)有意差なし〜小幅低下低下傾向(-9.7 mg/dL)ほぼ変化なしZhang et al. 2016(n=13 RCTs)運動・エネルギー制限なしでは消失
ホエイ(50歳未満・運動併用)-5.38 mg/dL 低下-6.61 mg/dL 低下(12週以上)低下傾向Prokopidis et al. 2025(n=21 RCTs)年齢・運動の条件あり
ホエイ(代謝症候群患者)-8.47 mg/dL 低下-17.12 mg/dL 低下変化なしAmirani et al. 2020(n=22 RCTs, 1,103名)代謝症候群患者限定
ソイ(健康者・脂質異常者混在)-4.76 mg/dL 低下(約3.2%)データなしデータなしBlanco Mejia et al. 2019(n=43 trials, 2,607名)1日25g以上・高い異質性
植物性タンパク質全般低下傾向低下傾向低下傾向Yao et al. 2025(複数RCT)食事パターン全体の比較

この比較表のデータは各メタ分析の報告値に基づく。研究間で対象集団・介入方法・比較対照群が異なるため、数値の直接比較には留意が必要である。

よくある質問

ホエイプロテインを毎日飲み続けるとコレステロールが上がるのか

現時点の複数のメタ分析では、通常の使用範囲でのホエイプロテイン摂取がコレステロールを有意に上昇させるという結果は報告されていない。むしろ運動を併用した場合などにLDL-Cの低下が報告された研究もある(Prokopidis et al., 2025)。ただし個人の食事全体の構成や代謝状態によって影響は異なり得る。

WPCとWPIでは脂質代謝への影響は変わるのか

WPCとWPIの脂質含有量の差(WPC: 4〜8g/100g vs WPI: 1g未満/100g)はプロテインパウダー自体の脂肪分の差であり、1食30g程度の摂取量で換算すると絶対量はいずれも少量である。この脂質量の差が血中脂質プロファイルに与える影響を直接比較した介入研究は現時点では限られており、臨床的に有意な差があるかどうかは明確ではない。

ソイプロテインはコレステロールへの影響がホエイより大きいのか

Blanco Mejia et al.(2019)のメタ分析ではソイプロテイン1日25gでLDL-Cが約3.2%低下したと報告されており、これはFDA健康表示の根拠となったデータである。一方でこの効果には研究間で高い異質性があり、FDAは2017年にこの健康表示を暫定的なものに変更している。ホエイとソイのLDL-Cへの影響を直接比較したRCTのメタ分析は現時点では限られており、一方が他方より「効果が大きい」と断定できるエビデンスは得られていない。

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参考文献

  • Prokopidis K, Triantafyllidis KK, Giannos P, et al. (2025). Effects of whey protein supplementation on lipid profiles in healthy adults and patients with metabolic syndrome: a systematic review and meta-analysis. Clinical Nutrition, 44, 109-121. DOI: 10.1016/j.clnu.2024.12.003
  • Zhang JW, Tong X, Wan Z, et al. (2016). Effect of whey protein on blood lipid profiles: a meta-analysis of randomized controlled trials. European Journal of Clinical Nutrition, 70(8), 879-885. DOI: 10.1038/ejcn.2016.39
  • Amirani E, Milajerdi A, Reiner Ž, et al. (2020). Effects of whey protein on glycemic control and serum lipoproteins in patients with metabolic syndrome and related conditions: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled clinical trials. Lipids in Health and Disease, 19, 209. DOI: 10.1186/s12944-020-01384-7
  • Blanco Mejia S, Messina M, Li SS, et al. (2019). A meta-analysis of 46 studies identified by the FDA demonstrates that soy protein reduces LDL cholesterol. The Journal of Nutrition, 149(6), 968-981. DOI: 10.1093/jn/nxz020
  • Yao Y, Huang V, Seah V, Kim JE. (2025). Effects of dietary protein sources and dietary patterns on cardiometabolic risk factors: a systematic review and network meta-analysis. Nutrition Reviews, 83(3), e814-e828.
  • Antonio J, Ellerbroek A, Silver T, et al. (2016). A high protein diet has no harmful effects: a one-year crossover study in resistance-trained males. Journal of Nutrition and Metabolism, 2016, 9104792.