プロテインはどうやって作られるのか — WPC・WPI・WPH製造工程の違いと品質への影響

ホエイプロテインの原料から製品までの製造工程を解説。限外濾過・イオン交換・CFM・酵素加水分解の技術的違い、タンパク質含有率・分子量・変性度への影響、FSSC 22000等の品質認証の意味を整理する。

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  • 加水分解
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ホエイプロテインはチーズ製造の副産物であるホエイ(乳清)を原料に、膜分離技術と精製工程を経て製造される。WPC(ホエイプロテインコンセントレート)は限外濾過(ultrafiltration)でタンパク質含有率70〜80%に濃縮し、WPI(ホエイプロテインアイソレート)はイオン交換またはクロスフローマイクロフィルトレーションで90%以上に精製する。WPH(ホエイプロテインハイドロライゼート)はWPCまたはWPIをさらに酵素で加水分解し、分子量を300〜6,000 Daの範囲に細分化したものである。製法の違いがタンパク質含有率・乳糖含有量・分子量分布に直接影響する。

ホエイプロテインの原料は何か

チーズ製造では、牛乳にレンネット(凝乳酵素)を加えてカゼインを凝固させる。この過程で牛乳1リットルあたり約800〜900mlのホエイが副産物として排出される。スイートホエイ(レンネット由来)とサワーホエイ(乳酸菌由来)の2種類があり、プロテイン製造にはスイートホエイが主に使用される。

ホエイに含まれるタンパク質の主要成分は、β-ラクトグロブリン(全ホエイタンパク質の約50%)、α-ラクトアルブミン(約25%)、グリコマクロペプチド(GMP)、免疫グロブリン(Ig)、血清アルブミン、ラクトフェリンである。これらは分子量14,000〜18,000 Daの範囲に分布している。

Smithers(2008, International Dairy Journal, Vol.18, pp.695-704)は、ホエイがかつてチーズ製造の廃棄物として処分されていたが、限外濾過・イオン交換・クロスフローマイクロフィルトレーションなどの膜分離技術の発展によって、WPC・WPI・WPHの商業的製造基盤が確立されたことを示した。20世紀後半の規制強化(未処理ホエイの廃棄禁止)が商業化をさらに加速した。

WPC・WPI・WPHの製法はどう違うのか

WPC(限外濾過)

限外濾過(UF)は、分画分子量(MWCO)10〜50 kDaの半透膜を使用する。分子量14,000 Da以上のタンパク質は膜を通過できず濃縮側に残る一方、分子量342 Daの乳糖・ミネラル・水は透過液(パーミエート)として除去される。処理温度は通常50℃以下で、化学処理を伴わない。仕上がりのタンパク質含有率はWPC70(70%)またはWPC80(80%)が代表的で、プロテインサプリメントにはWPC80が主に使用される。乳糖含有率は5〜8%、脂質は3〜6%残存する。

WPI(イオン交換・IE)

イオン交換(ion exchange)製法は、ホエイタンパク質の電荷差を利用して樹脂に吸着・溶出させる。酸(塩酸)またはアルカリ(水酸化ナトリウム)でpHを調整し、イオン交換樹脂カラムに通過させてタンパク質を吸着・溶出する。タンパク質含有率90%以上、乳糖1%未満に精製できる一方、pH調整の化学処理によってグリコマクロペプチド(GMP)が失われ、α-ラクトアルブミンやラクトフェリンの一部も変性・損失する。

WPI(クロスフローマイクロフィルトレーション・CFM)

クロスフローマイクロフィルトレーション(CFM)は、セラミック製の多孔性膜を横断流で通過させ、分子サイズで分離する技術である。CFMという名称は、Glanbia社が自社のWPI製品ブランド「PROVON CFM WHEY PROTEIN ISOLATE」として商標登録しているが、クロスフローマイクロフィルトレーション技術自体は汎用的な膜分離技術であり、複数の乳原料メーカーが採用している。化学薬品を使用せず、低温・生理的pH(pH 6〜7)を維持するため、β-ラクトグロブリン・GMP・免疫グロブリンを含む全タンパク質がネイティブ(未変性)状態で保持される。イオン交換製法で失われるGMPも保持される点が技術的な差異である。タンパク質含有率90%以上、乳糖1%未満はIEと同等だが、製造コストはセラミック膜のコストが高いためIEより上昇する。

WPH(酵素加水分解)

WPH(ホエイプロテインハイドロライゼート)は、WPCまたはWPIを原料として酵素加水分解(enzymatic hydrolysis)する工程を追加する。使用される酵素の代表例はAlcalase(Bacillus licheniformis由来、DH 20〜36%達成)、Flavourzyme(Aspergillus oryzae由来、DH 4〜15%)、キモトリプシン(DH 12〜14%)などである。

加水分解の程度は加水分解度(degree of hydrolysis: DH値)で定義される。DH値は「開裂したペプチド結合数 ÷ 全ペプチド結合数 × 100(%)」で算出される。Ghosh et al.(2017, Journal of Food Science and Technology)はFlavourzymeを用いた実験で、酵素濃度0.01%でDH 4.13%、0.05%でDH 15.11%と比例的に増加することを示した。DH 20%以上の高度加水分解では、分子量1,000 Da未満のペプチドが全体の65〜95%を占める分布になる。

製法の違いはタンパク質の品質にどう影響するのか

タンパク質含有率・乳糖・分子量

WPCはUF膜による物理的分離のみのため、乳糖(5〜8%)と脂質(3〜6%)が残存し、タンパク質含有率はWPC80で80%程度にとどまる。WPI(IEおよびCFM)は90%以上に精製され、乳糖は1%未満になる。WPHはWPI原料を加水分解するため、タンパク質含有率90〜95%で乳糖はほぼゼロとなる。分子量はWPCとWPI(未加水分解)が14,000〜18,000 Da(原料タンパク質レベル)で、WPHは製品によって300〜1,400 Daの範囲に細分化される。

各製法とタンパク質品質の比較(2026年3月時点、各メーカー公式サイト・学術情報に基づく)を以下に示す。

製品タイプ製法タンパク質含有率乳糖代表分子量コスト目安
WPC(WPC80)限外濾過(UF)70〜80%5〜8%14,000〜18,000 Da
WPI(IE)イオン交換90%以上1%未満14,000〜18,000 Da
WPI(CFM)クロスフローマイクロフィルトレーション90%以上1%未満14,000〜18,000 Da中〜高
WPH(低DH)酵素加水分解(DH 10〜20%未満)90〜95%ほぼゼロ1,000〜6,000 Da
WPH(高DH)酵素加水分解(DH 20%以上)90〜95%ほぼゼロ300〜1,000 Da

熱変性と栄養価の関係

ホエイタンパク質の熱変性は三次元構造(タンパク質の折りたたみ形状)の変化であり、アミノ酸の一次配列(栄養価)は変化しない。Wijayanti et al.(2014, Comprehensive Reviews in Food Science and Food Safety)は、β-ラクトグロブリンは70〜75℃、α-ラクトアルブミンは62〜65℃から変性が始まるが、加熱による変性後も必須アミノ酸の組成は保持されることを示した。ただし、ラクトフェリン等の生理活性タンパク質は変性によって機能を失う。「熱変性=栄養価の低下」という単純な等式は成立しない。

生理活性ペプチドと加水分解の関係

Korhonen & Pihlanto(2006, International Dairy Journal, Vol.16, pp.945-960)は、乳タンパク質由来の生理活性ペプチドは親タンパク質の配列内に不活性な状態で内包されており、胃腸消化・プロテアーゼ発酵・酵素加水分解の3経路によって放出されることを示した。WPHの酵素加水分解はこの放出を製造工程内で事前に実施したものと理解できる。

製造品質を見分ける指標は何か

第三者認証の種類と意味

製造品質を外部から評価する指標として、以下の認証が参照される。

認証発行機関認証対象主な確認内容
Informed ChoiceLGC Group(英国)製品禁止物質の不含確認(バッチ検査)
FSSC 22000FSSC(オランダ)製造施設食品安全マネジメント体制(ISO 22000+PRP+追加要件)
NSF Certified for SportNSF International(米国)製品禁止物質・表示成分量の確認
Informed SportLGC Group(英国)製品Informed Choiceの上位版(毎バッチ検査)

FSSC 22000は製造施設の食品安全マネジメント体制を認証するものであり、製法そのものの品質を直接証明するものではない。3年ごとの再認証審査と年次サーベイランス審査が義務付けられており、製造管理プロセスの継続的な維持が条件となる。Informed Choiceは製品単位での禁止物質不含確認であり、スポーツ選手のドーピング検査対策として参照されることが多い。

DH値と分子量の読み方

WPH製品の品質を示す指標としてDH値と分子量(平均または中央値)がある。DH値が高いほど分子量が小さくなる傾向があるが、DH値は多くのメーカーが非公開としている。分子量として「○○ Da」と公表している製品は、その数値が測定方法(質量分析・ゲル濾過クロマトグラフィー等)によって異なる可能性があるため、測定方法の記載があるか確認することが望ましい。

市場に流通する主要WPH製品の分子量公表値(2026年3月時点)を参考として示す。

製品製法分子量(公表値)認証
BAZOOKA WPH酵素加水分解(WPI原料)350 DaInformed Choice, FSSC 22000
LIMITEST ホエイペプチド For BodyBuilding高度酵素加水分解(WPI原料)400 Da以下(平均)確認中
GOLD’S GYM CFMホエイペプチドCFM精製後に酵素加水分解424 Da確認中

※製品ごとの測定方法が異なるため、分子量の数値は参考値として捉えること。

よくある質問

Q. クロスフローマイクロフィルトレーション(CFM)とイオン交換(IE)でWPIの品質はどう違うのか

最大の違いはGMP(グリコマクロペプチド)の保持量である。IE製法ではpH調整の化学処理によってGMPが完全に失われるが、CFM製法では化学薬品を使用せず生理的pHを維持するためGMPが保持される。タンパク質含有率・乳糖含有量はどちらも90%以上・1%未満で同等である。製造コストはCFMのほうが高い傾向にある。生体内での機能差については現時点で十分なヒト試験データが蓄積されていない。

Q. DH値(加水分解度)が高いほど吸収が速いプロテインといえるのか

DH値と血中アミノ酸出現速度の関係は単純ではない。Farup et al.(2016, SpringerPlus)はDH値の異なる3種類のWPH(DH 23%・27%・48%)を比較し、DH群間で血中アミノ酸出現速度に有意な差がないことを報告した(n=5、男性)。腸内の内因性酵素がDH値の差を平準化する可能性が示唆されている。同研究では3種すべてのWPHがカゼインと比較して有意に速い血中出現速度を示した(p<0.0001)。WPH全体としての吸収特性はカゼインとの比較で有意差があるが、WPH間のDH値の差が吸収速度を決定するという根拠は現時点では限られる。

Q. WPH製品の製法情報はどこで確認できるか

WPH製品の品質指標である分子量・DH値・認証の有無はメーカー公式サイトや製品パッケージで確認できる場合がある。例えばBAZOOKA WPHは分子量350 Da・Informed Choice認証を公表しており、LIMITEST・GOLD’S GYMも分子量を公表している(上表参照)。ただしDH値を公開しているメーカーは少なく、分子量の測定方法も統一されていない。製品選択の際は分子量・認証・価格を複合的に参照し、公開情報の範囲で比較することが現実的である。

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参考文献

  • Smithers GW, 2008, International Dairy Journal, 18(7), pp.695-704. DOI: 10.1016/j.idairyj.2008.03.008
  • Korhonen H, Pihlanto A, 2006, International Dairy Journal, 16, pp.945-960. DOI: 10.1016/j.idairyj.2005.10.012
  • Farup J, Rahbek SK, Storm AC et al., 2016, SpringerPlus. DOI: 10.1186/s40064-016-1995-x
  • Ghosh BC, Prasad LN, Saha NP, 2017, Journal of Food Science and Technology. DOI: 10.1007/s13197-017-2574-z
  • Wijayanti HB et al., 2014, Comprehensive Reviews in Food Science and Food Safety, 13(6), pp.1235-1251. DOI: 10.1111/1541-4337.12105