国産WPIと海外WPIは何が違うか — 製造国・原料原産国・認証で比較
「国産プロテイン」の多くは原料WPI原末を米国・NZ・欧州から輸入し国内で加工している。国産は国内製造を指し原料原産国ではない。製造国・原料原産国・第三者認証・トレーサビリティ公表度を各社公式情報で比較する。
- WPI
- 国産プロテイン
- 製造国
- 原料原産国
- 第三者認証
- FSSC22000
- トレーサビリティ
「国産プロテイン」の多くは、原料となるWPI(ホエイプロテインアイソレート)原末をアメリカ・ニュージーランド・欧州などから輸入し、日本国内で充填・加工している。食品表示法上の「国内製造」は加工地を指し、原料乳の原産国を意味しない。日本国内でWPI原末を大規模製造する乳業施設はほぼ存在しないためである。
「国産プロテイン」とは何を指すのか
食品表示法に基づく加工食品の原料原産地表示制度(2022年4月完全施行)では、製品パッケージの「原材料名」欄に「乳清たんぱく分離物(アメリカ製造)」「乳清たんぱく(ニュージーランド製造)」のように、最重量上位の原材料の製造国を表示することが義務付けられている(農林水産省「加工食品の原料原産地表示制度」)。この表示が示すのはWPI原末そのものの製造国であり、製品全体を充填・梱包した国とは異なる場合がある。WPI製造の技術基盤と国際的な供給構造については Smithers GW(International Dairy Journal, 2008; DOI: 10.1016/j.idairyj.2008.03.008)が詳述している。
「国産プロテイン」という言葉は一般に、日本国内の工場で充填・加工された製品を指す。原料の乳が日本産であることや、WPI原末が国内製造であることは意味しない。米国のGlanbia・Leprino Foods、ニュージーランドのFonterra、欧州のArla Foods Ingredients(デンマーク)などの大手乳業メーカーが世界市場にWPI原末を供給しており、日本のプロテインメーカーはこれらから輸入した原末を国内工場で充填・加工する構造が標準的である(Smithers GW, International Dairy Journal, 2008)。
SAVASホエイプロテイン100(明治の一般品)のパッケージは「乳清たんぱく(外国製造)」と表示し産地を特定していない一方、SAVAS ザバスプロ WPIクリアは「ニュージーランド製造」と原産国を特定している。同一ブランド内でも製品によって原料の開示水準が異なるため、購入時は個別製品のパッケージ表示を確認することが基本となる。
ADPI(American Dairy Products Institute)規格(v4.0, 2023)によれば、WPI(ホエイプロテインアイソレート)は乾燥物換算でタンパク質含有量90%以上のものと定義されている。製法としてはCFM(クロスフロー膜濾過)またはイオン交換法のいずれかが用いられるが、ADPI規格・食品表示法上は両製法ともWPIとして同等に扱われる。
国産と海外で原料・製造・認証はどう違うか
WPI原末の製造は20世紀後半に確立した膜分離技術(限外濾過・イオン交換・クロスフロー膜濾過)を基盤としており、その大規模生産は米国・ニュージーランド・欧州の大手乳業メーカーに集中している(Smithers GW, International Dairy Journal, 2008; DOI: 10.1016/j.idairyj.2008.03.008)。日本のメーカーはこれらから輸入した原末を国内工場で充填・加工する。2024〜2025年には世界的なWPI供給の逼迫と価格高騰が報告され、複数のメーカーが原料調達先を見直したとされる。
以下は国産(国内製造)および海外製造WPIブランドの製造国・原料原産国・認証を、各社公式サイト・製品パッケージ情報を基に整理した比較表である。価格はMyproteinなどでセール常態化による通常価格の確定が困難なため、本表には含めない。
| 製品 | 製造国 | 原料原産国(乳清タンパク) | 原産国トレーサビリティ公表度 | 食品安全認証 | アンチドーピング検査認証 |
|---|---|---|---|---|---|
| ALPRON PRO WPI | 日本(島根県雲南市) | アメリカ製造(公式ブログで明記) | 公表(製造国特定) | FSSC22000(2017年取得) | アンチドーピング認証取得(PRO WPIのスキーム名は公式未明示) |
| SAVAS ザバスプロ WPIクリア(明治) | 日本(明治自社工場) | ニュージーランド製造(公式明記) | 公表(製造国特定) | FSSC22000(明治グループ工場) | Informed Choice取得 |
| FIXIT FEEL NATURAL WPI+ | 日本(FSSC22000認証工場) | 豪州産グラスフェッド(東南オーストラリア、公式明記) | 公表(産地特定・牧草飼育明記) | FSSC22000(工場取得) | 未確認 |
| GronG WPI ハイプロテイン | 日本(国内製造) | アメリカ製造(調達状況により変動) | 一部公表(製造国・変動条件を明記) | FSSC22000:未確認 | Informed Choice(2025年3月以降) |
| VALX WPI パーフェクト | 日本(製造委託) | アメリカ製造(製品ページ明記) | 公表(製造国特定) | FSSC22000:未確認 | Informed Choice取得 |
| be LEGEND WPI | 日本(国内製造) | NZ・豪・米・欧州等(地域のみ、特定なし) | 一部公表(地域のみ) | 工場個別認証:未確認 | Informed Choice(2025年3月以降バッチ) |
| FIXIT THINK SIMPLE WPI | 日本(FSSC22000認証工場) | ドイツ製造(2025年12月時点確認・時期により変動の可能性) | 一部公表(時期変動条件付き) | FSSC22000(工場取得) | 未確認 |
| Myprotein Impact ホエイ アイソレート | イギリス(Warrington主要工場・複数拠点あり) | EU・アメリカ製造 | 一部公表(地域のみ) | BRCGS AA+グレード | Informed Choice / Informed Sport / NSF |
| California Gold Nutrition WPI | アメリカ(cGMP準拠施設) | アメリカ製造(製品説明に記載) | 公表(製造国記載) | cGMP準拠(監査・登録済み) | 未確認 |
※各社情報は2026年5月時点の公式サイト・製品パッケージに基づく。原料産地は製品・ロットにより変動する場合がある。
認証の目的と位置づけを整理する
認証には食品安全マネジメントとWADA禁止物質検査という2種類の目的があり、混同しやすい点に注意が必要である。
食品安全マネジメント認証は製造工場単位で取得する。FSSC22000は、Foundation FSSC(オランダ)が運営しGFSI(Global Food Safety Initiative)が認定するスキームで、ISO22000に追加要件を加えた食品安全マネジメントシステムの国際規格である。ALPRON(島根工場)・FIXIT(委託工場)・明治グループ工場などが取得している。BRCGS(旧BRC)は、英国BRCGS機関が運営しGFSIが認定するスキームで、欧州で広く普及し、Myproteinが「AA+グレード」を取得している。
FSSC22000とBRCGSはともにGFSI(Global Food Safety Initiative)がベンチマーキングを通じて承認したスキームであり、食品安全マネジメントの国際的な基準水準として同等とみなされる。ただし両者は別個の認証であり、一方の取得が他方の認証として自動的に認められるわけではない。
WADA禁止物質検査認証は製品・ロット単位で取得する。Informed Choice/Informed Sportは、英国LGC Groupが運営し、WADA(世界アンチドーピング機関)の禁止物質250種超を対象にロット単位で不定期検査する。製品単位での取得であり、食品安全マネジメントシステムの認証ではない。GronG・VALX・be LEGEND・SAVAS WPIクリア・Myproteinなどが取得している。NSF Certified for Sportは、NSF Internationalが運営する北米で認知度の高い禁止物質検査認証で、Myproteinが一部製品で取得している。
食品安全認証(FSSC22000/BRCGS)とアンチドーピング検査認証(Informed Choice等)は目的が異なり、補完関係にある。両方を取得している製品は、製造工場の品質管理水準とアンチドーピング検査の双方を満たしていることになる。
国産(国内製造)を選ぶ実利は何か
国内製造の主な利点は品質管理体制の透明性・トレーサビリティ・アレルゲン管理の3点にある。食品安全基本法・食品衛生法・食品表示法の下、国内工場は消費者庁・厚生労働省の監督を受け、製品のリコール・自主回収の対応も日本語で迅速に実施できる。原料の輸入先が同じであっても、製造・充填段階のリスク管理は製造国の規制環境に依存する。
一方、海外製造WPIが品質上劣るわけではない。Myprotein(英国BRCGS AA+取得)やcGMP準拠の米国製品も、製造工程の品質管理基準を満たしている。国産か海外かで「安全な方」を断定することはできず、製造国・原料原産国・認証取得状況・トレーサビリティ公表度をセットで評価することが実質的な判断基準となる。
アレルゲン管理の観点では、国内製造は食品表示法に基づくアレルゲン表示義務(乳・大豆等の特定原材料)が適用されるため、消費者がリスクを評価しやすい。輸入製品にも輸入食品の表示義務はあるが、原料の追跡可能性(トレーサビリティ)の開示水準は製品・ブランドにより大きく異なる。
製品を選ぶ際は、WPIか否かに限らず、製造工場の認証取得状況と原料産地の公表水準を確認する習慣が有効である。
製法の違い:イオン交換法とCFM法
WPI原末の精製には主に2種類の製法が用いられる。いずれも20世紀後半に確立した膜分離・イオン交換技術を基盤とする(Smithers GW, International Dairy Journal, 2008; DOI: 10.1016/j.idairyj.2008.03.008)。両製法ともADPI規格・食品表示法上のWPIとして同等に扱われるが、それぞれのトレードオフを理解しておくことが有用である。
イオン交換法(Ion Exchange): ホエイ中のタンパク質の電荷を利用してイオン交換樹脂で選択的に分離する。タンパク質純度が高く(90〜95%以上)、製造コストが比較的抑えられる。一方、GMP(グリコマクロペプチド)・ラクトフェリン等の生理活性成分の大部分が製造過程で除去される傾向がある。ALPRON PRO WPIは公式ブログでイオン交換法を採用していることを明記している。
CFM法(クロスフロー膜濾過 / Cross-Flow Microfiltration): セラミック膜を使った低温・非化学処理でタンパク質を物理的に分離する。熱変性が最小限に抑えられ、タンパク質のネイティブ構造と生理活性成分の保持率が高い。製造コストはイオン交換法よりやや高い。GronGホエイプロテイン100 WPI CFM製法は公式サイトでこの製法を明記している。
純度を最優先とするか、生理活性成分の保持を優先するかで、どちらの製法が適しているかは異なる。いずれを選択しても、WPIとしてのタンパク質含有量の基準(乾燥物換算90%以上)は両製法で満たされる。
よくある質問
Q. 国産プロテインは原料も国産なのか
A. 一般には異なる。日本国内でWPI原末を大規模製造できる乳業施設はほぼ存在せず、市販の「国産(国内製造)」WPI製品の原料は米国・ニュージーランド・欧州などからの輸入が大半を占める。製品パッケージの「原材料名」欄に記載された括弧内の製造国表示(例:「乳清たんぱく分離物(アメリカ製造)」)で原料の製造国を確認できる。
Q. 国産WPIと海外製造WPIでは、どちらが安全か
A. 製造国のみで安全性を断定することはできない。評価の軸は製造国・原料原産国・第三者認証取得状況・トレーサビリティ公表度の組み合わせによる。国内製造の利点は食品衛生法・食品表示法に基づく管理体制の透明性・日本語によるトレーサビリティ対応・アレルゲン表示の義務化にある。海外製造WPIでもBRCGS AA+取得やInformed Sport認証など、国際的な品質管理基準を満たす製品は存在する。
Q. イオン交換法とCFM法はどちらを選ぶべきか
A. 用途と優先事項による。タンパク質含有量の純度を最優先とし、コストパフォーマンスを重視する場合はイオン交換法のWPIが選択肢となる。生理活性成分(GMP・ラクトフェリン等)の保持を重視する場合はCFM法が適している。両製法ともADPI規格上のWPI基準(タンパク質90%以上)を満たすため、どちらが「優れている」と一概には言えない。
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参考文献
- Smithers GW (2008). Whey and whey proteins—From ‘gutter-to-gold’. International Dairy Journal, 18(7), 695–704. DOI: 10.1016/j.idairyj.2008.03.008
- ADPI(American Dairy Products Institute). Whey Products Standards and Identification v4.0 (2023). タンパク質含有量90%以上をWPIと定義。
- 農林水産省「加工食品の原料原産地表示制度について」https://www.maff.go.jp/j/syouan/hyoji/gengen_hyoji.html
- 消費者庁「新たな加工食品の原料原産地表示制度」https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/quality/country_of_origin/