アセスルファムK(アセスルファムカリウム)とは — プロテインの人工甘味料の安全性と特性
アセスルファムK(アセスルファムカリウム)の化学的特性・代謝経路と、EFSAが2025年にADIを9から15mg/kg体重/日へ引き上げた経緯を整理する。プロテイン中の使用実態とADI充足率の推定値、スクラロース等との比較も示す。
アセスルファムK(アセスルファムカリウム、acesulfame potassium、食品添加物表示名 E950)は、砂糖の約200倍の甘味度を持つ合成甘味料である。消化管でほぼ全量が吸収されるが体内では代謝されず、摂取後24〜48時間以内に大部分が未変化体のまま尿中へ排出される。欧州食品安全機関(EFSA)は2025年4月、1日摂取許容量(ADI)を従来の9mg/kg体重/日から15mg/kg体重/日へ引き上げ、米国FDA・JECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門家会議)の基準値と統一した。
アセスルファムKとは何か — 化学名・甘味度・代謝経路
アセスルファムカリウムは、1967年にドイツ・Hoechst社の研究者カール・クラウス(Karl Clauss)が偶然発見した合成甘味料である。化学構造はオキサチアジノン誘導体(6-methyl-1,2,3-oxathiazin-4(3H)-one-2,2-dioxide)のカリウム塩で、甘味度は砂糖の約200倍とされる。カロリーはほぼゼロで糖質を含まない。ヒトにおいて血糖値やインスリン恒常性の乱れとの関連は報告されていない(EFSA, 2025)。
摂取されたアセスルファムKは、消化管でほぼ完全(約99%)に吸収される。ただし吸収後も体内で代謝を受けず、未変化体のまま体循環に入るとEFSA(2025)は報告している。血中濃度は摂取後1〜1.5時間でピークに達し、血漿中の半減期は約2.5時間である。
分布容積は体重の約20〜25%相当にとどまり、主に血漿・細胞外液に分布する。組織への浸透は限定的とされ、体内に蓄積する性質は報告されていない。吸収分は摂取後24〜48時間以内に約99%が未変化体のまま尿中に排出され、糞便中への排出は1%未満である。
味覚の面では、アセスルファムKは単独では金属様の後味やわずかな苦味を感じやすいという特徴がある。国内プロテイン製品では、この後味を調整する目的でスクラロースなど他の甘味料と組み合わせて使用されるケースがほとんどであり、アセスルファムK単独で使用している製品はデータベース内で確認できなかった(詳細は後述)。
アセスルファムKの安全性はどう評価されているか — FDA・EFSA・JECFAの見解
アセスルファムKのADIは、2025年4月30日にEFSAが実施した再評価により9mg/kg体重/日から15mg/kg体重/日へ引き上げられた。この15mg/kg体重/日という値は、1990年にJECFA(1990)が設定した基準値、および米国FDAが採用してきた基準値と同一である。EFSAは、ラットを用いた2年間の慢性毒性・発がん性試験から得られた無毒性量(NOAEL)1500mg/kg体重/日(飼料中濃度3%)を根拠とし、新たに提出されたデータからは遺伝毒性・発がん性の懸念は生じていないと結論している(EFSA、2025)。
規制機関による評価の経緯を時系列で整理すると、以下の通りである。
| 年 | 機関 | 内容 |
|---|---|---|
| 1967 | Hoechst社(独) | 化学名オキサチアジノン誘導体として偶然発見 |
| 1983 | EU | 食品添加物として使用承認 |
| 1988 | 米国FDA | 特定食品カテゴリでの使用を承認 |
| 1990 | JECFA | ADI 0〜15mg/kg体重/日を設定(ラット長期試験の最高用量が根拠) |
| 1998 | 米国FDA | 清涼飲料水への使用を承認 |
| 2000 | 日本 厚生労働省 | 食品添加物として使用認可 |
| 2000 | EU SCF(旧・食品科学委員会) | ADI 0〜9mg/kg体重/日を設定(JECFAより低い値) |
| 2003 | 米国FDA | 一般用途(食肉・食鳥肉を除く)への使用承認を拡大 |
| 2025年4月 | EFSA | 再評価によりADIを9→15mg/kg体重/日へ引き上げ、JECFA値と統一 |
2000年にEUの旧・食品科学委員会(SCF)がADIを9mg/kg体重/日と設定して以降、2025年4月まで約25年間、EU基準はJECFA・米国FDAの基準(15mg/kg体重/日)より低い値のまま据え置かれていた。この差は2025年のEFSA再評価で解消され、現在は主要規制機関のADIが15mg/kg体重/日で統一されている。なおEFSA(2025)は、製造過程で生じる不純物「5-クロロ-アセスルファム」について遺伝毒性データが不足していると指摘し、上限値の設定または追加試験の実施を推奨している。
日本国内の実際の摂取量については、厚生労働省がマーケットバスケット方式で継続調査している。厚生労働省(2020)が公表した2019年度調査によれば、成人(20歳以上)の推定摂取量は1.779mg/人/日で、対ADI比はわずか0.20%にとどまる。2015年度調査では1.357mg/人/日(対ADI比0.15%)、小児(1〜6歳、2018年度調査)では0.284mg/人/日(対ADI比0.11%)と報告されている。
Chowdhury and Havlik(2026)によるレビューでは、アセスルファムKの代謝・肝機能・神経行動・膵機能・腸内細菌叢への影響について、in vitro試験・動物実験・ヒト試験のデータが統合的に整理されている。ヒトを対象とした試験では、ADIの範囲内であれば概して安全性上の懸念は報告されていない。一方、動物実験やin vitro試験では、通常の食事による摂取量を上回る用量条件が中心ではあるものの、腸内細菌叢の組成変化・脂質代謝・炎症関連の遺伝子発現への影響が報告されている。同レビューは胎盤・母乳を通じた移行に関する報告にも触れているが、あくまで観察知見の整理であり、ヒトでの健康影響を確定するものではない。
プロテインにアセスルファムKはどれだけ含まれているか
国内で流通するプロテイン製品の甘味料使用状況をデータベースで集計したところ、105件中19件(約18%)でアセスルファムKの使用が確認された。これらはいずれもスクラロースなど他の甘味料と組み合わせて使用されており、アセスルファムK単独で使用している製品はデータベース内で確認できなかった(2026年7月時点、DB product_specs集計)。
DB上でアセスルファムKの使用が確認できた主なブランドには、DNS、SAVAS(一部製品)、VALX(一部製品)、Myprotein(一部フレーバー)、GOLD STANDARD、GronG(フレーバー品。ナチュラルシリーズは不使用)、NOBITA、be LEGEND、アルプロン(ソイプロテイン)などがある。多くの製品でスクラロースとの併用パターンが確認されており、それぞれの使用量を抑えながら甘味の質を調整する設計が一般的とみられる。
プロテイン1食あたりの含有量を公式に開示しているメーカーは見当たらず、正確な実測値は非公開である。参考として、日本国内の清涼飲料水における使用基準は「その1kgにつき0.50g以下」(消費者庁 食品表示基準)であり、プロテインパウダーはこれよりも高濃度で溶かして飲用する場合が多いものの、実際の使用量は法定上限を大きく下回るのが一般的とされる。
この法定上限をもとにプロテイン1食あたりの含有量を逆算すると30〜100mg程度となるが、これは法定上限からの理論上の最大値であり、実際の含有量ははるかに少ない可能性が高い。厚生労働省の2019年度マーケットバスケット調査では、日本人成人があらゆる食品から摂取するアセスルファムKの総量は推定1.779mg/人/日(ADI比0.20%)にとどまっており、法定上限ベースの推定値とは2桁の開きがある。メーカーが実測含有量を公表していない以上、正確な数値は不明である点に留意されたい。
人工甘味料を使用していない(天然甘味料のみの)プロテイン製品としては、ALPRON NATURAL WHEY & SOY、BAZOOKA WPH・WPC、Choice GOLDEN WHEY、LIMITEST WPC PURE、MADPROTEIN、uFit、ULTORAなどが挙げられる(アルファベット順・2026年7月時点のDB集計)。
アセスルファムKを避けたい場合の代替甘味料はどれか
プロテインに使われる主な甘味料をADI・代謝・規制状況で比較すると、甘味度が最も高いのはスクラロース(約600倍)である。アセスルファムK・アスパルテームはいずれも砂糖の約200倍前後で、天然甘味料である羅漢果・ステビアは成分・製品によって甘味度のレンジに重複がある。
| 甘味料 | 甘味度(砂糖比) | ADI(mg/kg体重/日) | 代謝 | 規制状況 | プロテインでの使用頻度(DB内) |
|---|---|---|---|---|---|
| スクラロース | 約600倍 | 15(EFSA、2026再評価で変更なし) | 大部分(約70〜80%)は未吸収のまま糞便排出 | FDA・厚労省認可、EFSA再評価済み | 高(DB内で最多使用) |
| 羅漢果(モグロシドV) | 250〜425倍 | 未設定(FDA、2010がGRAS認定) | ほぼ非吸収。腸内細菌により一部が加水分解 | FDA GRAS認定。EU規則2024/2345で一部エキスのみ部分承認 | 低(BAZOOKA WPH等一部ブランドのみ) |
| ステビア(ステビオール配糖体) | 100〜300倍 | 4(EFSA、2024再評価でも維持) | 腸内細菌でステビオールに加水分解後吸収、尿中排出 | FDA GRAS認定、EFSA・厚労省認可 | 中(BAZOOKA WPC、ALPRON等) |
| アセスルファムK | 約200倍 | 15(EFSA、2025が9から引き上げ) | 消化管でほぼ全量が吸収されるが代謝されず尿中排出 | FDA・厚労省認可、EFSA再評価済み | 中〜高(DB内19/105件・約18%、常にスクラロース等と併用) |
| アスパルテーム | 180〜200倍 | 40(JECFA・EFSA) | フェニルアラニン・アスパラギン酸・メタノールに代謝分解 | FDA・厚労省認可。IARC(2023)はグループ2Bに分類 | 中(SAVAS一部製品等) |
※甘味度降順でソート。羅漢果・ステビアは成分・製品によって甘味度レンジが重複するため、羅漢果はモグロシドV単体の最大値レンジ、ステビアは配糖体全体の一般的なレンジを代表値として採用している。データは各規制機関の公式情報とDB product_specs(2026年7月時点)に基づく。
多くのプロテイン製品は、アセスルファムK単独ではなくスクラロースなど他の甘味料と組み合わせて使用しており、それぞれの使用量を抑えながら甘味の質を調整する設計が一般的である。甘味料の累積摂取そのものを避けたい場合は、天然甘味料(羅漢果・ステビア)使用の製品か、甘味料無添加のプレーン製品を選ぶという方法もある。
よくある質問
プロテイン1食分のアセスルファムKは問題ないか
含有量はメーカー非公開のため実測値ではないが、法定上限や一般的な添加物使用実態から見て30〜100mg程度と推定される。現行ADI(15mg/kg体重/日)の上限は体重60kgの成人で900mg/日であり、この推定量はその約3.3〜11.1%に相当する。1日に複数食を摂取する場合や他の飲食物からの甘味料摂取が重なる場合は累積量に注意し、気になる場合は医師・管理栄養士に相談されたい。
スクラロースとの違いは何か
甘味度が異なり、スクラロースは砂糖の約600倍、アセスルファムKは約200倍とされる。代謝経路も異なり、スクラロースは摂取量の大部分(約70〜80%)が未吸収のまま糞便中に排出されるのに対し、アセスルファムKは消化管でほぼ全量が吸収されるが体内で代謝されず尿中に排出される。ADIはいずれも15mg/kg体重/日で、規制上は同水準として扱われている。
アセスルファムK不使用のプロテインはあるか
人工甘味料を使わず天然甘味料(羅漢果・ステビア等)のみを使用したプロテイン製品は複数存在する。ALPRON ナチュラルライン、BAZOOKA WPH・WPC、GronG ナチュラルシリーズ、uFit、ULTORAなどが該当する(アルファベット順・2026年7月時点)。原材料表示の「甘味料」欄を確認することで、使用の有無を製品ごとに判断できる。
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参考文献
- EFSA Panel on Food Additives and Flavourings (FAF) (2025). Re-evaluation of acesulfame K (E 950) as food additive. EFSA Journal, 23(4), e9317. DOI: 10.2903/j.efsa.2025.9317
- EFSA Panel on Food Additives and Flavourings (FAF) (2026). Re-evaluation of sucralose (E 955) as a food additive and evaluation of a new application on extension of use of sucralose (E 955) in fine bakery wares. EFSA Journal, 24(2), e9854. DOI: 10.2903/j.efsa.2026.9854
- Chowdhury CR, Havlik J (2026). Beyond sweetness: A review of the health and safety of acesulfame-K. Food Chemistry, 499, 147290. DOI: 10.1016/j.foodchem.2025.147290
- 厚生労働省 (2020). 令和元年度 マーケットバスケット方式による甘味料の摂取量調査の結果について. 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会添加物部会報告(令和2年10月14日)(https://www.mhlw.go.jp/content/000920072.pdf)