羅漢果(ラカンカ)とは何か — プロテインの天然甘味料モグロシドの特性と人工甘味料との違い

羅漢果(monk fruit)の定義、甘味成分モグロシドVの甘味度(砂糖の250〜425倍)、カロリーゼロ・GI値ゼロの理由、FDA GRAS認定、スクラロース・アセスルファムK・ステビアとの比較、プロテイン製品での使用状況を整理する。

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羅漢果(ラカンカ / monk fruit)は、中国南部原産のウリ科植物 Siraitia grosvenorii の果実から抽出される天然甘味料である。甘味成分はモグロシド(mogroside)と呼ばれるトリテルペン配糖体(cucurbitane-type triterpenoid glycoside)で、主成分のモグロシドV(mogroside V)の甘味度は砂糖の約250〜425倍とされている(Li et al., 2014, Chinese Journal of Natural Medicines)。

カロリーはゼロ、GI値(glycemic index / 血糖指数)もゼロであり、血糖値やインスリン分泌に影響しないとされている。FDA(米国食品医薬品局)は羅漢果由来の甘味料をGRAS(Generally Recognized as Safe)として認定している(GRN No. 301, 2010年)。

羅漢果はなぜ甘いのにカロリーがゼロなのか

羅漢果の甘味成分であるモグロシドは、ヒトの消化酵素では分解されない構造を持つ。摂取後、モグロシドは上部消化管(胃・小腸)で吸収されず、そのまま大腸に到達する。大腸で腸内細菌によって一部が代謝されるが、エネルギー源として利用される量は無視できるほど少ないと報告されている(Murata et al., 2010, Journal of Agricultural and Food Chemistry)。

モグロシドが甘味を感じさせるメカニズムは、舌の味蕾(みらい)に存在する甘味受容体(T1R2/T1R3)にモグロシドが結合することによる。砂糖(スクロース)も同じ受容体に結合するが、モグロシドはスクロースと比較してT1R2/T1R3受容体を強く活性化するため、少量で強い甘味を呈する。

結果として、砂糖の250〜425倍の甘味度でありながら、消化吸収されないためカロリーがゼロとなる。

羅漢果の果実には複数のモグロシド類が含まれており、種類によって甘味度が異なる。

モグロシドの種類甘味度(砂糖比)含有量の特徴
モグロシド I・II約1倍未成熟果実に多い
モグロシド IV233〜392倍中間段階
モグロシド V250〜425倍成熟果実の主成分。食品用抽出物の主要成分
シアメノシド I465〜563倍含有量は少ないが最も甘味度が高い

食品添加物として使用されるのは、成熟果実から抽出・精製されたモグロシドV高含有のエキスである。市販の羅漢果甘味料はモグロシド含有率を80%以上に精製したものが一般的であり、プロテイン製品に使用される際もこの精製エキスが用いられる。

羅漢果と人工甘味料はどう違うのか

プロテイン製品に使用される甘味料は、天然甘味料(羅漢果・ステビア)と人工甘味料(スクラロース・アセスルファムK・アスパルテーム等)に大別される。以下に主要な甘味料の特性を比較する。

甘味料由来甘味度(砂糖比)カロリーADI(1日摂取許容量)主な規制状況
アスパルテーム合成(アミノ酸由来)180〜200倍4kcal/g(微量使用のため実質ゼロ)40mg/kg体重(JECFA)FDA・厚労省認可。IARC 2B(2023年)。JECFAは同時期の評価でADI変更不要と結論
アセスルファムK合成約200倍0kcal15mg/kg体重(FDA)FDA・厚労省認可
羅漢果(モグロシドV)天然(植物抽出)250〜425倍0kcal設定なし(GRAS認定、通常使用量で安全と評価)FDA GRAS認定(2010年)
ステビア(レバウディオサイドA)天然(植物抽出)200〜450倍0kcal4mg/kg体重(EFSA, 2010)FDA GRAS認定、EFSA認可
スクラロース合成(砂糖の塩素化)約600倍0kcal15mg/kg体重(JECFA)FDA・厚労省認可

※甘味度昇順でソート。ADI(Acceptable Daily Intake / 1日摂取許容量)は、生涯にわたって毎日摂取しても健康に悪影響が生じないとされる量。ADIが設定されていないことは「危険」を意味するのではなく、羅漢果の場合はGRAS評価において通常の使用量での安全性が確認されていることを示す。

各甘味料のADIと甘味度を整理すると、アセスルファムKは甘味度が砂糖の約200倍でADIが15mg/kg体重、スクラロースは甘味度が約600倍でADIが15mg/kg体重、アスパルテームは甘味度が180〜200倍でADIが40mg/kg体重である。羅漢果(モグロシドV)は甘味度250〜425倍に対しADIは設定されておらず、GRAS認定により通常使用量での安全性が評価されている。

現時点でFDA・厚生労働省が認可している人工甘味料は、設定されたADIの範囲内での使用において安全と判断されている。「人工甘味料は危険」「天然甘味料は安全」という単純な二項対立は正確ではなく、いずれの甘味料も公的機関の安全性評価を経て使用が認められている。

WHOは2023年5月に、非糖質甘味料(non-sugar sweeteners / NSS)全般について「体重管理や非感染性疾患のリスク低減を目的とした使用は推奨しない」とするガイドラインを発表した。ただし、このガイドラインは「NSSでは体重が減らない」という内容であり、「NSSが危険である」という安全性上の警告ではない。FDA・JECFAの安全性評価(ADI)はこのガイドラインによって変更されていない。

羅漢果とステビアはどう違うのか

羅漢果とステビアは、いずれも植物由来の天然甘味料であり、カロリーゼロ・非齲蝕性(non-cariogenic / 虫歯の原因にならない)という共通点を持つ。プロテイン製品における両者の主な違いは以下の通りである。

比較項目羅漢果(モグロシド)ステビア(レバウディオサイドA)
植物の分類ウリ科 Siraitia grosvenoriiキク科 Stevia rebaudiana
原産地中国広西チワン族自治区南米(パラグアイ・ブラジル)
甘味成分モグロシド類(トリテルペン配糖体)ステビオール配糖体
甘味度250〜425倍200〜450倍
後味比較的少ない高濃度で苦味・リコリス様の後味が出ることがある
国内プロテインでの採用実績BAZOOKA WPH・WPCULTORA・uFit・MADPROTEIN・Choice 等
EU規制状況一部の抽出物のみ認可(2024年時点)EFSA認可済み(ADI設定あり)

国内プロテイン市場では、ステビアの方が採用ブランド数が多い。羅漢果を使用している国内プロテイン製品はBAZOOKA WPH・BAZOOKA WPCが代表的である。

味の特性について、羅漢果はステビアと比較して後味の苦みや金属感が少ないとされるが、味覚には個人差が大きく、製品の配合比率やフレーバリングによっても印象は変わる。

プロテイン製品で羅漢果を使用しているのはどれか

2026年3月時点で、国内主要プロテイン製品の甘味料を以下に整理する。羅漢果を使用している製品は限定的であり、人工甘味料(スクラロース等)を使用している製品が依然として多数派である。

製品名製法甘味料1食あたりタンパク質価格目安(1kgあたり)
uFit ホエイプロテインWPCステビア約22g約¥3,600
SAVAS ホエイ100WPCスクラロース・アセスルファムK19.5g約¥4,000
BAZOOKA WPC(プレーン)WPC羅漢果22g約¥4,300(定期初回)
ULTORA スローダイエットプロテインWPC+カゼインステビア約21g約¥4,300
DNS ホエイ100WPCスクラロース・アセスルファムK24.0g約¥5,000
GOLD’S GYM ホエイペプチドアミノコンプレックスWPHスクラロース約21g(30g換算)約¥12,500
BAZOOKA WPHWPH羅漢果20.1〜20.5g約¥14,100(定期)

※1kgあたりの価格目安で昇順ソート。各数値はメーカー公式サイト・製品パッケージの表示に基づく(2026年3月時点)。GOLD’S GYMの推奨1食量は約20g(大さじ山盛り2杯)であり、他社30g基準と異なるため30g換算のタンパク質量を記載。BAZOOKA WPCのチョコレート・ストロベリーフレーバーはステビアを使用しており、プレーンフレーバーのみ羅漢果。定期便の価格は回数により変動する場合がある。

本記事で調査した範囲では、WPH製法のプロテインで人工甘味料を使用していない製品はBAZOOKA WPHが該当する。WPHはペプチド由来の苦味を持つため、甘味料選択が味に与える影響が大きい。WPHの苦味と甘味料の相性は、各メーカーが製品設計で考慮する要素の一つである。

よくある質問

羅漢果は人工甘味料より安全なのか

「天然だから安全」「人工だから危険」という単純な判断は正確ではない。羅漢果(モグロシド)はFDAのGRAS評価を受け、通常の使用量での安全性が確認されている。

一方、スクラロースやアセスルファムK等の人工甘味料もFDA・厚生労働省の安全性評価を経て使用が認可されており、ADI以内の摂取であれば安全とされている。甘味料の選択は安全性の優劣ではなく、味の好みや成分のシンプルさへの志向で判断するのが合理的である。

プロテインで羅漢果を使う場合のデメリットはあるか

羅漢果にはいくつかの制約がある。

  1. 原料コストがステビアより高い: 羅漢果の産地は中国広西チワン族自治区にほぼ限られており、サプライチェーンが未成熟なためである
  2. フレーバーとの相性に制約がある: 羅漢果には植物由来の独特の風味があり、フルーツ系やチョコレート系フレーバーでは合わないケースがある
  3. EU圏での規制制約: EU圏では一部の抽出物のみ認可されており、欧州市場への展開が制限される

これらの理由から、ステビアの方が採用ブランド数が多い現状がある。

羅漢果はなぜ日本ではまだ少数派なのか

国内プロテイン市場では、人工甘味料(スクラロース等)が依然として主流であり、天然甘味料の中でもステビアの方が採用実績が多い。

羅漢果が少数派である理由として、原料コストの高さ(中国広西チワン族自治区に産地が限られる)、EU圏での規制の不透明さ(2024年時点で一部の抽出物のみ認可)、ステビアと比較した場合のサプライチェーンの成熟度の差が挙げられる。FDAのGRAS認定は受けているが、ステビアのようにEFSAによるADI設定がなされていないため、欧州ではエビデンスの蓄積が不十分と見なされている面がある。採用するブランドが今後増えるかどうかは、こうした規制面の進展次第である。

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参考文献

  • Li C, Lin LM, Sui F, et al. (2014). Chemistry and pharmacology of Siraitia grosvenorii: a review. Chinese Journal of Natural Medicines, 12(2), 89-102.
  • Murata Y, Ogawa T, Suzuki YA, et al. (2010). Digestion and absorption of Siraitia grosvenori triterpenoids in the rat. Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry, 74(4), 673-676.
  • FDA. (2010). Agency Response Letter GRAS Notice No. GRN 000301 (Luo Han Guo fruit extract). U.S. Food and Drug Administration.
  • EFSA Panel on Food Additives and Nutrient Sources added to Food (ANS). (2010). Scientific opinion on the safety of steviol glycosides for the proposed uses as a food additive. EFSA Journal, 8(4), 1537.
  • WHO. (2023). Use of non-sugar sweeteners: WHO guideline. World Health Organization.