人工甘味料は腸内細菌に影響するのか — スクラロース・アセスルファムKの最新研究

スクラロース・アセスルファムK・アスパルテーム・ネオテームの4種について、腸内細菌叢への影響を甘味料別に論文データで整理。天然甘味料(ステビア・羅漢果)との比較、プロテイン1日3杯でのADI消費率も計算する。

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人工甘味料が腸内細菌叢(gut microbiota)に影響を与える可能性が、近年の研究で報告されている。Suez et al.(2022, Cell)は健康成人120名を対象としたランダム化比較試験で、サッカリンとスクラロースが血糖応答に障害を与え、その効果が腸内細菌叢の組成変化を介していることを示した。ただし、影響の度合いは個人の腸内細菌叢の構成に依存し、全員に一様に生じるものではない。プロテインを毎日飲む習慣がある場合、甘味料の累積摂取量がADI(許容一日摂取量 / Acceptable Daily Intake)に接近する可能性がある。

人工甘味料は腸内細菌叢をどう変えるのか — 2022年Cellヒト試験の結果

Suez et al.(2022, Cell, 185(18):3307-3328)は、健康成人120名を対象にサッカリン・スクラロース・アスパルテーム・ステビアの4種を2週間摂取させるランダム化比較試験を実施した。参加者は6群(4甘味料+2対照、各群約20名)に割り付けられた。結果、サッカリンとスクラロースの群で血糖応答の障害が確認された。一方、アスパルテーム群とステビア群では有意な血糖応答障害は観察されなかった。サッカリン・スクラロース群の効果は腸内細菌叢の組成変化を介して生じていることが、無菌マウスへの糞便移植実験で示された。

この研究の重要な知見は、影響が個人の腸内細菌叢の初期構成に依存するという点である。同じ甘味料を摂取しても、腸内細菌叢の構成が異なれば反応が異なる。これは、「人工甘味料は全員に害がある」とも「全員に無害である」とも結論づけられないことを意味している。

Suez et al.の2022年研究は、同グループが2014年にNatureで発表した先行研究(主にサッカリン、ヒト試験n=7)を、被験者数を約17倍に拡大してスケールアップした試験である。合計120名(各甘味料群約20名)のサンプルサイズで4種の甘味料を同一試験内で比較した点が特徴である。

スクラロース・アセスルファムK・アスパルテーム・ネオテームで影響は異なるのか

甘味料の種類によって腸内細菌叢への影響は異なる。以下の表は甘味料別のエビデンスを整理したものである。

甘味料主要研究研究デザイン被験者/対象主な結果
スクラロースSuez et al., 2022, CellRCTヒト120名(各群約20名)血糖応答障害、腸内細菌叢変化
スクラロースMéndez-García et al., 2022, Microorganismsオープンラベル介入試験ヒトn=40(各群20名)48mg/日×10週でBlautia coccoides 3〜4倍増、L. acidophilus減少
スクラロース+マルトデキストリンRodriguez-Palacios et al., 2018, IBD動物マウスProteobacteria門拡大、MPO活性増加
アセスルファムKWang et al., 2018, PLoS Onein vitro+動物E. coli・マウス静菌効果を確認(ヒトでの検証なし)
アスパルテームGauthier et al., 2024, Nutritionレビュー臨床5件5件中2件のみ有意変化、個人差大
ネオテームShil et al., 2024, Frontiers in Nutritionin vitro腸上皮細胞T1R3経由で腸上皮アポトーシス誘導、E. coliバイオフィルム増加

スクラロースは複数のヒト試験で腸内細菌叢の変化が報告されている甘味料であり、エビデンスの蓄積が最も多い。アセスルファムKはin vitroでの静菌効果は確認されているが、ヒト試験のデータは限られている。アスパルテームはGauthier et al.(2024)のレビューで臨床5件中2件のみに有意な変化が認められており、影響は限定的である可能性が示唆されている。ネオテームはShil et al.(2024)のin vitro研究で腸上皮への影響が報告されているが、ヒトでの検証はまだ行われていない。

天然甘味料(ステビア・羅漢果)は腸内細菌に安全なのか

天然甘味料であるステビア(stevia)と羅漢果(monk fruit / mogrosides)についても腸内細菌叢への影響が研究されている。

Kwok et al.(2024, Journal of Nutrition, 154(4):1298-1308)は、ステビアを4週間摂取させたヒト試験(n=59)で、腸内細菌叢に有意な変化がなかったと報告している。Suez et al.(2022)の同一試験内でもステビア群には血糖応答障害が認められなかった。Kwok 2024はn=59・4週間という規模であり、ステビアの腸内細菌叢影響を評価した最も大規模なヒト試験の一つである。Kasti et al.(2022, Microorganisms)のレビューでは、ステビアがAkkermansia等の有益菌を増加させる可能性が動物実験で示唆されているが、ヒトでの確認は不十分である。

羅漢果(モグロシド / mogrosides)については、Li et al.(2025, Journal of Steroid Biochemistry and Molecular Biology)が動物モデルで羅漢果摂取後にAkkermansia・Parasutterellaの増加とCorynebacteriumの抑制を報告している。Wang et al.(2022, Frontiers in Nutrition)も高脂肪食マウスで羅漢果モグロシドが体重減少と腸内細菌叢の改善に寄与したと報告している。ただし、いずれも動物実験であり、ヒトでの大規模試験は実施されていない。

天然甘味料と人工甘味料の現時点でのエビデンスを比較すると、天然甘味料(特にステビア)では腸内細菌叢への悪影響が報告されていないのに対し、人工甘味料(特にスクラロース)では複数のヒト試験で変化が報告されている。ただし、天然甘味料の研究数自体が少なく、「影響がない」と断定できる段階ではない。

プロテインを毎日飲む場合の甘味料累積摂取量はどうなるのか

プロテイン製品に含まれる甘味料の量は、ADI(許容一日摂取量)との関係で評価する必要がある。以下にFDAが設定するADIと、プロテイン摂取時の推定消費率を示す。

甘味料FDA ADI(mg/kg/日)体重60kgでの上限/日プロテイン1食あたり推定量1食のADI消費率3食のADI消費率
スクラロース5300mg30〜50mg10〜17%30〜50%
アセスルファムK15900mg30〜80mg3〜9%10〜27%
ネオテーム0.318mg1〜3mg6〜17%17〜50%
アスパルテーム503,000mg

プロテイン製品に含まれる甘味料の正確な含有量は多くのメーカーで非公開であり、上記の推定量は栄養学文献の一般的な範囲に基づく概算である。

スクラロースを含む製品を1日3食飲んだ場合、スクラロース単独でADIの30〜50%に達する計算となる。スクラロース・アセスルファムK・ネオテームなど複数の甘味料を併用している製品では、各甘味料のADI消費率が複合的に加算される点にも注意が必要である。

WHO(2023年)は、非糖質甘味料(NSS / Non-Sugar Sweeteners)の体重管理目的での使用を推奨しないとする条件付き勧告(低〜中程度のエビデンスに基づく)を発表している。この勧告の主な根拠は「体重管理に長期的な有効性がない」という点であり、腸内細菌叢への影響が主たる理由ではない。IARC(2023年)はアスパルテームをグループ2B(ヒトに対して発がん性があるかもしれない)に分類した。一方、EFSA(2024〜2025年)はスクラロースとアセスルファムKの再評価を完了し、現行ADIでの安全性を再確認している。国際機関の見解は一致しておらず、「ADI以下なら安全」と単純に結論づけられない状況にある。

甘味料の累積摂取を最小限にしたい場合は、天然甘味料(羅漢果・ステビア)使用の製品か無添加(プレーン)の製品を選ぶ方法がある。

よくある質問

BAZOOKA WPHの羅漢果甘味料は腸内環境への影響があるのか

BAZOOKA WPHは甘味料に羅漢果(mogrosides)を使用している。Li et al.(2025)の動物実験では羅漢果がAkkermansia等の有益菌を増加させたと報告されているが、ヒトでの大規模試験は実施されていない。現時点で羅漢果の腸内細菌叢への悪影響を報告した研究は確認されていないが、「安全と確定した」段階ではなく「悪影響が報告されていない」段階である。

ADI以下なら人工甘味料は問題ないのか

ADIは「生涯にわたって毎日摂取しても健康に悪影響がないと推定される量」として設定されている。しかしSuez et al.(2022)はADI以下のスクラロース摂取でも腸内細菌叢の変化を観察している。ADIは主に毒性学的な安全性の指標であり、腸内細菌叢への影響は設定時の評価対象に含まれていなかった可能性がある。ADI以下であることは現時点での安全基準を満たしているが、腸内細菌叢への長期的影響が評価対象に追加される可能性は残されている。

プロテインを1日3杯飲むと甘味料の量はどうなるか

スクラロース含有の製品を1日3杯飲んだ場合、スクラロースの推定摂取量は90〜150mg/日となり、ADI(体重60kgで300mg/日)の30〜50%に達する。他の飲食物(ダイエット飲料等)からの甘味料摂取を加えると、ADI消費率はさらに上昇する。1日3杯以上のプロテイン摂取が常態化している場合は、甘味料フリーの製品を1〜2杯に置き換えることで累積摂取量を抑える方法がある。

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参考文献

  • Suez J, et al. (2022). Personalized microbiome-driven effects of non-nutritive sweeteners on human glucose tolerance. Cell, 185(18), 3307-3328.
  • Suez J, et al. (2014). Artificial sweeteners induce glucose intolerance by altering the gut microbiota. Nature, 514(7521), 181-186.
  • Méndez-García LA, et al. (2022). Ten-week sucralose consumption induces gut dysbiosis and altered glucose and insulin levels in healthy young adults. Microorganisms, 10(2), 434.
  • Rodriguez-Palacios A, et al. (2018). The artificial sweetener Splenda promotes gut Proteobacteria, dysbiosis, and myeloperoxidase reactivity in Crohn’s disease-like ileitis. Inflammatory Bowel Diseases, 24(5), 1005-1020.
  • Wang QP, et al. (2018). Non-nutritive sweeteners possess a bacteriostatic effect and alter gut microbiota in mice. PLoS One, 13(7), e0199080.
  • Gauthier E, et al. (2024). Effect of low- and non-calorie sweeteners on the gut microbiota: a review of clinical trials and cross-sectional studies. Nutrition, 117, 112237.
  • Shil A, et al. (2024). The artificial sweetener neotame negatively regulates the intestinal epithelium directly through T1R3-signaling and indirectly through pathogenic changes to model gut bacteria. Frontiers in Nutrition, 11, 1366409.
  • Kwok CS, et al. (2024). Effect of stevia consumption on gut microbiota: a randomized controlled trial. Journal of Nutrition, 154(4), 1298-1308.
  • Li Y, et al. (2025). Mogrosides modulate gut microbiota composition. Journal of Steroid Biochemistry and Molecular Biology, 245, 106620.
  • Wang L, et al. (2022). Mogroside V reduces high-fat diet-induced weight gain and reshapes gut microbiota. Frontiers in Nutrition, 9, 1006352.