DIAASとは — タンパク質品質指標の最新評価軸

DIAAS(Digestible Indispensable Amino Acid Score)はFAOが2013年に推奨したタンパク質品質指標。回腸末端でのアミノ酸消化率に基づく。WPI 1.09・ホエイ平均0.85・大豆プロテイン0.91・小麦0.48などの代表値を整理する。

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DIAAS(Digestible Indispensable Amino Acid Score、消化性必須アミノ酸スコア)は、FAOが2013年のFAO Food and Nutrition Paper 92 で提唱したタンパク質品質評価指標である。各必須アミノ酸(indispensable amino acid)の小腸末端(回腸末端)における真の消化吸収率(true ileal digestibility)に基づいて算出される。ホエイプロテインアイソレート(WPI)のDIAASは1.09(excellent)、大豆プロテインアイソレートは約0.91(good)、小麦タンパク質は0.48(no quality claim)と報告されており、動物性と植物性の品質差が数値に明確に反映される(Mathai et al., 2017, British Journal of Nutrition; Herreman et al., 2020, Food Science & Nutrition)。

DIAASとは何か

DIAAS(消化性必須アミノ酸スコア)は、各必須アミノ酸の消化吸収率(回腸末端ベース)を個別に評価し、そのうちの最小値をスコアとして採用する指標である。スコアが1.0(100)以上であれば「excellent(優良)」と分類され、参照評点パターン(reference dietary amino acid scoring pattern)の各必須アミノ酸要求量を満たしていることを意味する(FAO Food and Nutrition Paper 92, 2013)。

計算式は以下のとおりである。

DIAAS = 最小値(各必須アミノ酸の消化性必須アミノ酸参照比)

消化性必須アミノ酸参照比(各AA)=
  (食品タンパク質1g中のAA含量mg × 真回腸消化率係数)
  ÷ (参照評点パターン1g中の同AAのmg)

全必須アミノ酸の中でこの比率が最も低くなったアミノ酸を「第一制限アミノ酸(first limiting amino acid)」と呼ぶ。小麦タンパク質では第一制限アミノ酸がリジン(Lys)、大豆プロテインアイソレートでは含硫アミノ酸(Met+Cys)になることが多い(Herreman et al., 2020)。

FAOはDIAASのスコアを3段階に分類している。スコア1.0以上(100以上)が「excellent」、0.75〜0.99(75〜99)が「good」、0.75未満(75未満)が「no quality claim(品質表示不可)」である。参照評点パターンは年齢区分(0.5〜3歳/older child/成人)によって異なる。Herreman et al.(2020)が掲載する食品別数値は0.5〜3歳の評点パターンを使用したものであり、成人評点パターンと比較すると値が変化する場合がある。

PDCAASとの違いは何か

PDCAASとDIAASの最大の違いは、(1)消化率の測定部位と(2)スコアの上限切り捨ての有無の2点である。PDCAASは糞便消化率(fecal digestibility)を使用し、スコア上限を1.0で切り捨てる。DIAASは真回腸消化率(true ileal digestibility)を使用し、上限切り捨てを行わない(FAO Food and Nutrition Paper 92, 2013; Marinangeli & House, 2017, Nutrition Reviews)。

糞便消化率は、大腸細菌が腸内でアミノ酸を代謝した後の量を消化吸収したとみなすため、実際に体内で利用された量を過大評価する可能性がある。DIAASが採用する真回腸消化率は、小腸末端(回腸末端)でのアミノ酸残余量を測定するため、体内利用率をより正確に反映する(Moughan & Lim, 2024, Frontiers in Nutrition)。

スコア上限の切り捨てについては、PDCAASでは1.0を超える高品質タンパク質(全乳・WPI等)がすべて「1.00」と表示されるため、品質の差が数値に現れない。DIAASでは上限切り捨てを行わないため、WPI 1.09・MPC 1.18のように高品質間での差別化が可能になる。

また、PDCAASはタンパク質全体の消化率を一つの値として扱うのに対して、DIAASは各必須アミノ酸の消化率を個別に評価する点も構造的な違いである。この設計により、フィチン酸やトリプシン阻害剤等の抗栄養因子(anti-nutritional factors)が特定のアミノ酸吸収に与える影響をDIAASはより適切に反映できると指摘されている(Rutherfurd et al., 2015, Journal of Nutrition)。

比較軸PDCAASDIAAS
消化率の測定部位糞便消化率(fecal digestibility)真回腸消化率(true ileal digestibility)
スコア上限1.0で切り捨て切り捨てなし(1.0超も表示可)
アミノ酸評価タンパク質全体の消化率を1値で評価各必須アミノ酸を個別に評価
抗栄養因子の反映限定的より適切に反映
正式推奨FAO/WHO 1991年〜FAO 2013年〜
食品ラベルへの採用一部国で採用(米国等)2024年時点で限定的

(Marinangeli & House, 2017, Nutrition Reviews; FAO 2013)

PDCAASは1991年の採用以降、食品ラベルや国際規制に広く使用されてきた。DIAASはより精度の高い指標として2013年にFAOが推奨したが、回腸消化率の測定には技術的コストがかかるため、2024年時点でも食品規制や製品ラベルへの採用は限定的である(Moughan & Lim, 2024, Frontiers in Nutrition)。

主要食品のDIAAS値はどれくらいか

Herreman et al.(2020)が動物性5種・植物性12種の計17タンパク質源を包括比較した結果、カゼイン1.17・ホエイプロテインアイソレート(WPI)1.09・卵1.01がexcellent(≥1.0)に分類され、一方、ピープロテイン0.70・米タンパク質0.47・コーン0.36・コラーゲン0.02はno quality claim(<0.75)に分類された(0.5〜3歳評点パターン)。WPI 1.09はMathai et al.(2017, British Journal of Nutrition)の成長豚モデルの実測値とも一致する。

下表は代表的なタンパク質源のDIAAS値・PDCAAS参考値・第一制限アミノ酸をまとめたものである。DIAAS降順で並べた。

タンパク質源DIAAS値PDCAAS参考値FAO品質分類第一制限アミノ酸主な出典
ミルクプロテイン濃縮物(MPC)1.181.00excellentなしRutherfurd 2015, Mathai 2017
カゼイン1.171.00excellentなしHerreman 2020
豚肉1.17excellentなしHerreman 2020
ホエイプロテインアイソレート(WPI)1.091.00excellentなしMathai 2017, Rutherfurd 2015
卵(調理済み)1.011.00excellentなしHerreman 2020
ホエイ(WPC含む平均)0.851.00goodヒスチジンHerreman 2020
ソイプロテインアイソレート(SPI)0.910.99goodMet+CysHerreman 2020
ピープロテイン濃縮物(PPC)0.700.89no quality claimMet+CysHerreman 2020
ヘンプタンパク質0.54no quality claimHerreman 2020
小麦タンパク質0.480.42no quality claimリジンHerreman 2020
米タンパク質0.47no quality claimHerreman 2020
コーン(トウモロコシ)0.360.42no quality claimHerreman 2020
コラーゲン(ゼラチン)0.02no quality claimトリプトファン(完全欠如)Herreman 2020

(DIAAS降順。Herreman 2020の値は0.5〜3歳評点パターンを使用。成人・older childパターンでは数値が変化する場合がある。PDCAAS参考値は同著者または一般的な参考値。WPH〔加水分解ホエイ〕の実測DIAAS値は現時点でほぼ未公開であり、アミノ酸組成がWPIと同等であることからWPIに準じると考えられる)

WPI(1.09)とホエイ平均(0.85)の数値差については注意が必要である。WPI(1.09)はMathai et al.(2017)が成長豚モデルで測定したホエイプロテインアイソレート単体の値であり、ホエイ平均(0.85)はHerreman et al.(2020)が複数のホエイ製品(WPC含む)を集計した平均値であって、評点パターンも研究対象も異なる。単純な大小比較はできないことに留意されたい。

Rutherfurd et al.(2015, Journal of Nutrition, vol.145(2), pp.372-379)がラット成長モデルで14食品のPDCAASとDIAASを比較した結果、特に低品質タンパク質(植物性)において非切り捨てPDCAASがDIAASより高くなり、品質差を過大評価することが示された。この知見はDIAASが品質スクリーニングにおいてより厳格な基準を持つことを示している。

よくある質問

Q. DIAAS値が高いほど優れたタンパク質と判断できるか

DIAAS値はタンパク質の必須アミノ酸組成と消化率を評価する指標であり、値が高いほど必須アミノ酸を均衡よく供給できることを示す。ただし、DIAASはタンパク質品質の一側面を定量化したものであり、「健康への影響」や「摂取量の適切さ」を直接評価する指標ではない。タンパク質の選択には摂取量・コスト・個人の消化耐性・他の栄養素とのバランスなど複数の要素が関与する。

Q. PDCAASとDIAASで同じ食品の数値が大きく異なるのはなぜか

主な要因は測定方法の違いである。PDCAASは糞便消化率を用いてスコアを算出し、上限を1.0で切り捨てる。DIAASは回腸末端での消化率を用いて各アミノ酸を個別に評価し、上限切り捨てを行わない。特にWPIのような高品質タンパク質ではPDCAAS 1.00・DIAAS 1.09のように差が生じる。逆に植物性タンパク質(小麦0.42 vs 0.48)では差が小さいか逆転することもある。年齢評点パターンの違いも数値差に影響する。

Q. 食品ラベルにDIAASが記載されていない理由は何か

DIAASの算出には真回腸消化率の測定が必要であり、この測定には外科的手術(カニューレ挿入)を要する動物実験またはヒト同位体トレーサー試験が必要となる。技術的コストと規制整備の遅れから、2024年時点でもDIAASを食品ラベルの義務基準として採用している国はほとんどない(Moughan & Lim, 2024, Frontiers in Nutrition)。食品ラベルの多くはPDCAAS(米国FDAが食品ラベル基準として採用)準拠の表示を維持している。学術研究ではDIAASデータが400食品以上に蓄積されている。

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参考文献

  1. FAO Expert Consultation, 2013, FAO Food and Nutrition Paper 92, Dietary protein quality evaluation in human nutrition. PMID: 26369006
  2. Rutherfurd SM, Fanning AC, Miller BJ, Moughan PJ, 2015, Journal of Nutrition, vol.145(2), pp.372-379. DOI: 10.3945/jn.114.195438
  3. Mathai JK, Liu Y, Stein HH, 2017, British Journal of Nutrition, vol.117(4), pp.490-499. DOI: 10.1017/S0007114517000125
  4. Herreman L, Nommensen P, Pennings B, Laus MC, 2020, Food Science & Nutrition, vol.8(10), pp.5379-5391. DOI: 10.1002/fsn3.1809
  5. Phillips SM, 2017, Frontiers in Nutrition, vol.4, article 13. DOI: 10.3389/fnut.2017.00013
  6. Marinangeli CP, House JD, 2017, Nutrition Reviews, vol.75(8), pp.658-667. DOI: 10.1093/nutrit/nux025
  7. Moughan PJ, Lim WXJ, 2024, Frontiers in Nutrition, vol.11, article 1389719. DOI: 10.3389/fnut.2024.1389719