アミノ酸スコア・PDCAAS・DIAASはどう違うのか — タンパク質品質指標を正しく読む

アミノ酸スコア(AAS)・PDCAAS・DIAASの定義・計算方法・限界点を比較解説。ホエイ・カゼイン・卵・ソイ・ピー・コラーゲンの6タンパク質源のDIAAS実測値と、プロテイン選びへの実践的な活用法を論文データで整理する。

  • アミノ酸スコア
  • PDCAAS
  • DIAAS
  • タンパク質品質
  • ホエイプロテイン
  • ソイプロテイン
  • ピープロテイン
  • 必須アミノ酸
  • 消化率

タンパク質の「品質」を評価する指標には、アミノ酸スコア(amino acid score: AAS)・PDCAAS(protein digestibility-corrected amino acid score)・DIAAS(digestible indispensable amino acid score)の3種類がある。このうち最も新しいDIAASは、FAO(国際食糧農業機関)が2013年に推奨した指標であり、Herreman et al.(2020, Food Science & Nutrition)の包括的比較ではカゼインのDIAASは1.17、ホエイは0.85、ソイは0.91、ピープロテインは0.70、コラーゲン(ゼラチン)は0.02と、タンパク質源によって大きな差が生じる。一方、旧指標のPDCAASではカゼインもホエイもソイも上限の1.00で切り捨てられ、この差が見えなくなる。

アミノ酸スコア・PDCAAS・DIAASはそれぞれ何を測っているのか

アミノ酸スコア(AAS)は、食品タンパク質1 g中の第一制限アミノ酸量(mg)をFAO/WHO/UNU評点パターンの当該アミノ酸量(mg)で割った値である。計算が単純で消化率を考慮しないため、食品のアミノ酸組成さえわかれば算出できる。評点パターンは1973年→1985年→2007年と改訂され、現在の主流は2007年版(FAO/WHO/UNU)である。AASは1.0(100%)を上限として切り捨てる。

PDCAAS(タンパク質消化率補正アミノ酸スコア)は、AASに糞便真消化率(true fecal protein digestibility)を掛けた値である。1991年以降、国際的に普及した標準指標だが、Schaafsma G(2012, British Journal of Nutrition, vol.108(Suppl 2), pp.S333-S336)はPDCAASの4つの主要な限界を整理している。①スコア上限を1.0で切り捨てるため高品質タンパク質間の差別化が不可能、②抗栄養因子(レクチン・トリプシン阻害剤)を非考慮で植物性タンパク質の品質を過大評価、③糞便消化率は回腸で未吸収のアミノ酸が大腸で微生物に利用される分も含むため過大評価、④遊離アミノ酸補給とタンパク質由来アミノ酸の消化吸収動態の差異を無視——の4点である。

DIAASは、FAO専門家会議が2013年にPDCAASの代替として正式に推奨した新指標である(FAO Food and Nutrition Paper 92, 2013, PMID: 26369006)。AASとの最大の違いは消化率の測定方法にあり、糞便消化率ではなく真回腸アミノ酸消化率(true ileal amino acid digestibility)を使用する。真回腸消化率は小腸終端部(回腸末端)でのアミノ酸消化・吸収量を直接測定するため、大腸での細菌分解を消化として計上しない。また、各必須アミノ酸を個別に評価し、最低値をそのタンパク質源のDIAASとする。スコアが1.0を超える食品も表記可能(カゼインのDIAASは1.17)であり、混合食または単一完全栄養食としての評価では上限1.0(100)で切り捨てる。

なぜFAOはPDCAASからDIAASへの移行を推奨しているのか

PDCAASの最大の問題点は「上限切り捨て」にある。PDCAASではホエイもカゼインもソイアイソレートも等しく1.00(100%)と表示される。しかし実際のタンパク質品質には差があり、DIAASではカゼイン1.17、ホエイWPI 1.09、ソイアイソレート0.91と明確な差が生じる(Herreman et al., 2020; Mathai et al., 2017)。

植物性タンパク質の過大評価もPDCAASの問題点として指摘されている。ピープロテインなどの植物性タンパク質に含まれる抗栄養因子(フィチン酸・トリプシン阻害剤)は消化率を下げるが、PDCAASの糞便消化率測定ではこの影響が十分に反映されない。また、DIAASでは各アミノ酸を個別に評価するため、特定のアミノ酸が欠乏している食品(制限アミノ酸が多い食品)はより低いスコアが得られる。コラーゲン(ゼラチン)でトリプトファン(tryptophan)が完全欠如していることがDIAAS 0.02という極端な低値に反映されるのはその典型例である。

FAOによるDIAASの推奨から10年後の進捗をMoughan PJ, Lim WXJ(2024, Frontiers in Nutrition, vol.11, article 1389719, DOI: 10.3389/fnut.2024.1389719)がレビューしている。同レビューによると、400食品以上について真回腸アミノ酸消化率データが整備され(PROTEOSプロジェクト完了、2023年7月)、加工によるリジン(lysine)の生物学的利用能損失はDIAASが反映可能(PDCAASは不可)である点が確認されている。一方で規制への採用は2024年時点でも限定的であり、食品ラベルへのDIAAS表示はほぼ実装されていない。

タンパク質源ごとのDIAASはどれだけ異なるのか

Herreman et al.(2020, Food Science & Nutrition, vol.8(10), pp.5379-5391, DOI: 10.1002/fsn3.1809)は5種の動物性・12種の植物性タンパク質源について0.5-3歳評点パターンを用いたDIAAS値を包括的に比較した。カゼインのDIAASは1.17(excellent、制限アミノ酸なし)、卵は1.01(excellent、制限アミノ酸なし)、ソイアイソレートは0.90-0.91(good、制限アミノ酸はメチオニン+システイン)、ホエイ全体の平均は0.85(good、制限アミノ酸はヒスチジン)、ピープロテインは0.70(品質表示不可(no quality claim)、制限アミノ酸はメチオニン+システイン)、コラーゲン(ゼラチン)はわずか0.02(品質表示不可、トリプトファンが完全欠如)であった。

Mathai JK et al.(2017, British Journal of Nutrition, vol.117(4), pp.490-499, DOI: 10.1017/S0007114517000125)は成長豚モデルを用いて6-36ヶ月児の評点パターンでDIAASを測定し、ホエイプロテインアイソレート(WPI)のDIAASが1.09であることを報告している。Herreman 2020とMathai 2017でホエイの値が異なるのは、評点パターンの年齢区分(0.5-3歳 vs 6-36ヶ月)と対象製品(ホエイ全体の平均値 vs WPIのみ)の違いによるものである。いずれの研究でも、ホエイはDIAASでexcellentまたはgoodに分類される。

コラーゲンのDIAASがほぼ0である点は特筆に値する。コラーゲンの原料であるゼラチンはトリプトファン(tryptophan)を実質的に含有しない。DIAASは必須アミノ酸の最低値で決まるため、制限アミノ酸が完全欠如している場合はスコアがほぼ0になる。コラーゲン(ゼラチン)のDIAASが0.02という極端な低値は、筋タンパク質合成(muscle protein synthesis: MPS)の観点ではコラーゲンが完全なタンパク質源として機能しないことを示している。ただし、コラーゲンペプチドは関節・皮膚を主な摂取目的とした用途があり、MPS目的とは異なる文脈で評価される点に留意が必要である。

プロテイン選びで品質指標をどう活用すべきか

DIAASは現在のところ食品ラベルには掲載されていない。FAO推奨から10年が経過した2024年時点でも、規制への採用は限定的であり(Moughan & Lim, 2024)、メーカーの公式サイトにDIAAS値が記載されている製品はほぼ存在しない。プロテイン選びでDIAASを参照する際は、論文の実測値(Mathai 2017、Herreman 2020等)を用いる必要がある。

DIAAS値を品質判断に使う場合、FAOの分類基準(DIAAS ≥ 1.00: excellent / 0.75-0.99: good / < 0.75: no quality claim)が参照基準となる。ホエイ・カゼイン・卵のいずれもexcellentまたはgoodに分類され、動物性タンパク質源の品質の高さが裏付けられている。植物性プロテインはソイアイソレートがgoodの下限付近(0.90-0.91)、ピープロテインが品質表示不可(0.70)という順序になる。ただし、複数の食品を組み合わせることで制限アミノ酸を補完し合い、食事全体としてのDIAASを高めることは可能である。

アミノ酸スコア・PDCAAS・DIAASの3指標は精度が異なるが、「PDCAASで区別できない差をDIAASが明示できる」という最大の違いを押さえておけば十分実用的な知識となる。Schaafsma(2012)が整理した4つのPDCAASの限界のうち、上限切り捨てによる差別化不能と真回腸消化率への非対応の2点がDIAASへの移行を支持する主要な根拠である。

主要タンパク質源のAAS・PDCAAS・DIAASはどれだけ異なるのか

タンパク質源AAS(2007年評点パターン)PDCAASDIAASFAO品質分類制限アミノ酸出典
カゼイン1.00(上限)1.00(上限)1.17excellentなしHerreman 2020
ホエイWPI1.00(上限)1.00(上限)1.09excellentなしMathai 2017
卵(調理済み)1.00(上限)1.00(上限)1.01excellentなしHerreman 2020, Fanelli 2024
ソイアイソレート(SPI)0.98-1.000.98-1.00(上限)0.90-0.91goodMet+CysHerreman 2020
ホエイ(WPC含む平均)1.00(上限)1.00(上限)0.85goodヒスチジンHerreman 2020
ホエイペプチド(WPH)1.00(上限)1.00(上限)WPI基準で1.09相当excellent相当なしMathai 2017(WPI値を参照)
ピープロテイン(PPC)0.89-0.930.89-0.930.70-0.75未満no quality claimMet+CysHerreman 2020, Mathai 2017
コラーゲン(ゼラチン)—(Trp欠如)0.02no quality claimトリプトファン(完全欠如)Herreman 2020

※AAS・PDCAAS値は評点パターン改訂版(2007年)を基準とした参考値。DIAAS値は論文実測値であり、測定プロトコル・動物モデル・評点パターンの年齢区分によって変動する。BAZOOKA WPH(ホエイペプチド)はWPIを加水分解したものであり、アミノ酸組成はWPIに準じるため、WPIの値を参照値として記載している(各製品のDIAAS実測値はメーカー公式サイトには非掲載)。本記事の製品スペックは各文献に基づく(2026年3月時点)。

よくある質問

DIAASが高いプロテインは必ず筋肉合成に優れるのか

DIAASは必須アミノ酸の消化・吸収効率を評価する指標であり、筋タンパク質合成(MPS)効率の直接的な指標ではない。MPSを規定する主要な因子はロイシン(leucine)含有量と摂取タイミング・量であり(Moore DR et al., 2015, British Journal of Nutrition)、DIAASが高くてもロイシン含有量が少なければMPSへの貢献は限られる。DIAASとMPSの両方を考慮した多角的な評価が実用上は有効である。

植物性プロテインのDIAASが低い場合、複数の食品を組み合わせると補えるのか

複数の植物性タンパク質源を組み合わせることで制限アミノ酸を補完し合い、食事全体としてのDIAASを高めることは可能である。たとえばピープロテイン(制限アミノ酸: Met+Cys)と穀類タンパク質(制限アミノ酸: Lys)を組み合わせると、相互補完によって食事全体の必須アミノ酸プロファイルが改善される。Fanelli et al.(2024, Journal of Nutritional Science)は卵を植物性食品と組み合わせることで食事全体のDIAASを75以上または100以上に引き上げられることを報告している。ただし、補完効果の大きさは食品の組み合わせと量によって変動する。

DIAASはなぜ食品ラベルに表示されないのか

FAOが2013年にDIAASを推奨してから2024年時点でも、食品ラベリング規制においてDIAASを正式採用している国・機関はほぼない(Moughan & Lim, 2024)。真回腸消化率の測定には外科的なカニューレ挿入を施した成長豚モデルが従来必要であり、測定コストと動物モデルへの依存が規制採用を遅らせてきた要因とされる。Moughan & Lim(2024)はデュアルアイソトープ法(dual isotope technique)によるヒトでの非侵襲的測定法の開発が進んでいることを報告しており、今後の規制採用を促進する可能性がある。

関連記事

参考文献

  • FAO Expert Consultation, 2013, FAO Food and Nutrition Paper 92(PMID: 26369006)
  • Schaafsma G, 2012, British Journal of Nutrition, vol.108(Suppl 2), pp.S333-S336, DOI: 10.1017/S0007114512002541
  • Mathai JK et al., 2017, British Journal of Nutrition, vol.117(4), pp.490-499, DOI: 10.1017/S0007114517000125
  • Herreman L, Nommensen P, Pennings B, Laus MC, 2020, Food Science & Nutrition, vol.8(10), pp.5379-5391, DOI: 10.1002/fsn3.1809
  • Fanelli NS, Martins JCFR, Stein HH, 2024, Journal of Nutritional Science, vol.13, e68, DOI: 10.1017/jns.2024.71
  • Moughan PJ, Lim WXJ, 2024, Frontiers in Nutrition, vol.11, article 1389719, DOI: 10.3389/fnut.2024.1389719