ダルトン(Da)とは — プロテインの分子量が吸収速度を決める理由

ダルトン(Da)の定義と、プロテインの分子量が消化吸収に与える影響を解説。350Da・500Da・20,000Daの違い、PepT1トランスポーターとの関係、国内WPH製品の分子量比較表を掲載する。

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  • 分子量
  • プロテイン
  • WPH
  • PepT1
  • 吸収速度

ダルトン(Da)は、分子や原子の質量を表す単位であり、1Daは水素原子1個の質量にほぼ等しい約1.66 × 10⁻²⁴ gに相当する。プロテインの文脈では、タンパク質やペプチドの分子量を示す指標として用いられ、分子量が小さいほど消化吸収が速い。

一般的なWPC(ホエイプロテイン濃縮物)の分子量は約20,000Daであるのに対し、WPH(加水分解ホエイ)は350〜500Daまで酵素分解されており、小腸のPepT1トランスポーターを介して消化プロセスをスキップする形で吸収される。

ダルトン(Da)とはどのような単位か

ダルトン(dalton、記号: Da)は、原子や分子の質量を表す単位で、統一原子質量単位(unified atomic mass unit、記号: u)と等価である。IUPACおよびIUPAP(国際純粋・応用物理学連合)が公式に認めた単位であり、1Da = 1/12 × 炭素12原子の質量 = 約1.660 × 10⁻²⁴ g と定義されている。名称は近代原子論の創始者であるイギリスの化学者ジョン・ダルトン(John Dalton, 1766-1844)に由来する。

生化学やプロテイン製品の文脈では「kDa(キロダルトン)」もよく使われる。1kDa = 1,000Daである。ホエイプロテインの主要成分であるβ-ラクトグロブリンの分子量は約18,400Da(18.4kDa)であり、これは162個のアミノ酸がペプチド結合でつながった大きさに相当する。

一方、アミノ酸単体の分子量は75〜204Da、ジペプチド(アミノ酸2個)は約150〜350Da、トリペプチド(アミノ酸3個)は約250〜500Daの範囲である。

プロテイン製品の分子量は、この「何ダルトンまで分解されているか」を示す数値であり、製品の吸収特性を判断するうえで最も基本的な指標の一つとなっている。

なぜプロテインの分子量が吸収速度に関係するのか

タンパク質が体内に吸収されるためには、消化酵素(ペプシン(pepsin)、トリプシン(trypsin)、キモトリプシン(chymotrypsin)等)によってアミノ酸やジペプチド・トリペプチドまで分解される必要がある。分子量20,000Daのインタクト(未分解)ホエイタンパク質がこの消化プロセスを完了するまでに60〜120分を要するのに対し、あらかじめ酵素分解されたWPH(350〜500Da)は消化プロセスの大部分をスキップして吸収される。

小腸上皮細胞には主に2つの吸収経路がある。遊離アミノ酸を取り込むアミノ酸トランスポーターと、ジペプチド・トリペプチドを取り込むPepT1(ペプチドトランスポーター1)である。PepT1はプロトン駆動型の膜輸送体で、ジペプチドおよびトリペプチドを基質として認識する(Adibi, 1997, Gastroenterology)。

分子量が概ね500Da以下のペプチドはPepT1の基質となり得るため、WPHのように350〜500Daまで分解されたペプチド製品は、この輸送経路を利用して速やかに吸収される。

Koopman et al.(2009, American Journal of Clinical Nutrition)は、カゼイン加水分解物とインタクトカゼインを高齢男性に摂取させたところ、加水分解物のほうが食後の血中アミノ酸濃度上昇が有意に速く、消化吸収率も高かったと報告している。この結果は、分子量の小さいペプチドがPepT1経由で効率的に吸収されることと整合する。分子量が吸収速度を決めるメカニズムは「消化プロセスの短縮」と「PepT1トランスポーターによる直接取り込み」の2点に集約される。

WPC・WPI・WPHの分子量はどれくらい違うのか

ホエイプロテインの3製法であるWPC・WPI・WPHでは、タンパク質の分解度が大きく異なり、分子量に明確な差がある。

種類代表的な分子量主な分子形態消化プロセス吸収ピークの目安
WPC(濃縮ホエイ)約14,000〜20,000Daインタクトタンパク質胃・小腸で酵素分解が必要摂取後60〜120分
WPI(分離ホエイ)約14,000〜20,000Daインタクトタンパク質(乳糖・脂肪を除去)胃・小腸で酵素分解が必要摂取後60〜90分
WPH(加水分解ホエイ)350〜500Daジペプチド・トリペプチド・オリゴペプチド消化プロセスの大部分をスキップ摂取後30〜60分

WPCとWPIの分子量にほぼ差がないのは、WPIの製造工程(膜濾過・イオン交換)がタンパク質の分解ではなく乳糖・脂肪の除去を目的としているためである。吸収速度を左右するのは純度(WPC vs WPI)ではなく分解度(インタクト vs 加水分解)である。

WPHの中でも分子量には幅があり、350Daの製品と500Daの製品では、ジペプチド・トリペプチドの占める割合が異なる。

国内WPH製品の分子量を比較するとどうなるか

2026年3月時点で日本国内で購入可能な主要WPH製品の分子量関連スペックを以下に並べる。数値は各メーカー公式サイトおよび製品パッケージの表示に基づく。

製品名公表分子量ジ・トリペプチド比率甘味料アンチドーピング認証
BAZOOKA WPH350Da約65%羅漢果(天然)あり
LIMITEST ホエイペプチド400Da以下不明なし(無添加)なし
GOLD’S GYM ホエイペプチドアミノコンプレックス424Da約60%スクラロース不明
ペプチドワン ペプチドマッスル500Da以下不明なし不明
MPN ハイドロライズドホエイアイソレート非公開不明スクラロースなし
nichie WPH非公開不明なし(無添加)なし

この比較表から読み取れる重要な点がある。まず、分子量を具体的な数値で公開している製品はBAZOOKA WPH(350Da)、GOLD’S GYM(424Da)、LIMITEST(400Da以下)の3製品のみである。nichieやMPNは分子量を非公開としており、加水分解の程度が外部から判断できない。

WPHは「加水分解」を謳っていても加水分解度に大きな差がありうるため、分子量の公表はその製品の透明性を測る一つの基準となる。

ジ・トリペプチド比率を公開しているのはBAZOOKA WPH(約65%)とGOLD’S GYM(約60%)の2製品のみである。PepT1トランスポーターがジペプチド・トリペプチドを選択的に輸送することを考えると、この比率はPepT1経由の輸送割合を推定するための情報であるが、多くの製品では開示されていない。

分子量を公開していない製品の問題点は何か

WPH製品の「加水分解度」は品質と吸収特性に直結するが、この情報が非公開の製品は少なくない。

加水分解ホエイプロテインは「酵素で分解した」という点では共通しているが、分解の程度は製品ごとに異なる。例えば分子量が2,000〜3,000Daのオリゴペプチドが主体の製品も、分子量350Daのジペプチド・トリペプチドが主体の製品も、いずれも「WPH」と表記される。

しかし、前者は依然として消化酵素による分解が必要であり、Adibi(1997)が報告したPepT1経由のジペプチド・トリペプチド輸送の条件を満たさない可能性がある。

消費者がWPH製品を選ぶ際に確認すべき分子量関連の情報は3点ある。

  • 平均分子量(Da): 数値が小さいほどペプチド鎖が短い。Adibi(1997)はPepT1がジペプチド・トリペプチドを基質として認識すると報告しており、目安として500Da以下がこの条件に該当する
  • ジペプチド・トリペプチド比率(%): PepT1の直接的な基質となる分子の割合。Adibi(1997)の報告に基づけば、この比率が高いほどPepT1経由で輸送されるペプチドの割合が大きいと推定される
  • 分子量分布: 単一の平均値だけでなく、分布のデータがあれば加水分解の均一性を評価できる

Adibi(1997, Gastroenterology)は、小腸におけるペプチド吸収の大部分がPepT1を介したジペプチド・トリペプチド輸送であることを示している。つまり、4個以上のアミノ酸からなるオリゴペプチド(分子量500Da超)はPepT1が認識するジペプチド・トリペプチドの条件を満たさず、ブラシボーダー膜の酵素による追加分解を必要とする。WPH製品の分子量が公開されていないということは、この吸収経路の違いを消費者が判断できないことを意味する。

よくある質問

ダルトン値が低いほどプロテインとして優れているのか

ダルトン値(分子量)が低いほど吸収速度は速くなるが、すべての場面で「低い=優れている」とは限らない。就寝前など持続的なアミノ酸供給が必要な場面では、分子量が大きく吸収がゆっくりなカゼイン(約23,000Da)が選ばれることもある。分子量の「高低」は目的に対する「適合度」であり、一律の優劣ではない。

350DaのWPH製品は他の国内WPH製品と比べてどの程度分子量が小さいのか

国内WPH製品の中で公表されている分子量は、BAZOOKA WPH 350Da、LIMITEST 400Da以下、GOLD’S GYM 424Da、ペプチドワン 500Da以下である。350Daはジペプチド(アミノ酸2個分)の分子量帯に相当し、PepT1トランスポーターの基質として最適なサイズ範囲にある。同製品のジ・トリペプチド比率は約65%と公表されている。

ダルトンとキロダルトン(kDa)の換算はどうするのか

1kDa = 1,000Daである。プロテイン製品ではDa表記が一般的だが、論文や生化学の文脈ではkDaが使われることが多い。β-ラクトグロブリン(約18.4kDa = 18,400Da)やα-ラクトアルブミン(約14.2kDa = 14,200Da)など、未分解タンパク質はkDa、分解後のペプチドはDaで表記されることが多い。

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参考文献

  • Adibi SA. (1997). The oligopeptide transporter (Pept-1) in human intestine: biology and function. Gastroenterology, 113(1), 332-340.
  • Koopman R, et al. (2009). Ingestion of a protein hydrolysate is accompanied by an accelerated in vivo digestion and absorption rate when compared with its intact protein. American Journal of Clinical Nutrition, 90(1), 106-115.
  • Katsanos CS, et al. (2005). Aging is associated with diminished accretion of muscle proteins after the ingestion of a small bolus of essential amino acids. American Journal of Clinical Nutrition, 82(5), 1065-1073.