筋トレ前にプロテインを飲むべきか — タイミング×吸収速度で選ぶ最適プロテイン

筋トレ前のプロテイン摂取の有効性をTipton 2001・Schoenfeld 2013の研究から整理。吸収速度別にEAA・WPH・WPI・WPC・カゼインの推奨摂取タイミングを比較し、運動前に最適なプロテインの選び方を解説する。

  • 筋トレ前
  • プロテイン
  • タイミング
  • 吸収速度
  • WPH
  • アナボリックウィンドウ

筋トレ前のプロテイン摂取は有効である。Tipton et al.(2001, American Journal of Physiology - Endocrinology and Metabolism)は、運動前の必須アミノ酸+炭水化物溶液(EAA: Essential Amino Acids 6g+炭水化物35g)の摂取が運動後摂取と比べて筋へのアミノ酸デリバリーを約2.6倍高めたと報告している(被験者6名のクロスオーバー試験)。ただし、Schoenfeld et al.(2013, Journal of the International Society of Sports Nutrition)のメタ分析では、タイミングの効果は1日の総タンパク質摂取量を統制すると有意でなくなることが示されている。つまり、筋トレ前のプロテイン摂取は「有効だが、総摂取量の確保が大前提」である。

筋トレ前のプロテイン摂取はなぜ有効とされるのか

筋トレ前のプロテイン摂取が注目される根拠は、運動中の筋タンパク質合成(MPS: Muscle Protein Synthesis)に利用できるアミノ酸を血中に供給しておく、という考え方に基づく。

Tipton et al.(2001, American Journal of Physiology - Endocrinology and Metabolism)は、レジスタンストレーニング(resistance training)を行う被験者6名(クロスオーバーデザイン(crossover design))に対し、運動前または運動後にEAA 6g+炭水化物35gを含む溶液を摂取させた。結果、運動前摂取群は運動後摂取群と比べて、運動中および運動直後の筋へのアミノ酸デリバリーが約2.6倍高かった。この差の主要因は、運動中に血流が増加した骨格筋に対して、既に血中に存在するアミノ酸が効率的に取り込まれたことにある。運動後摂取群では、アミノ酸が血中濃度のピークに達するまでにタイムラグが生じ、運動中の血流増加の恩恵を十分に受けられなかった。

この研究から導かれる実用的な示唆は明確である。トレーニング開始時に血中アミノ酸濃度が十分に高い状態を作っておけば、運動による血流増加を利用してアミノ酸の筋への取り込みを高められる可能性がある。ただし、この研究はEAA+炭水化物溶液を用いた被験者6名の小規模試験であり、結果の一般化には限界がある。ホエイプロテインのような固形タンパク質では消化・吸収に要する時間も異なるため、直接の外挿には注意が必要である。

アナボリックウィンドウは本当に存在するのか

「トレーニング後30分以内にプロテインを飲まないと効果が半減する」という言説は、フィットネス業界で広く信じられてきた。この概念はアナボリックウィンドウ(anabolic window)と呼ばれるが、科学的根拠はどの程度あるのか。

Schoenfeld et al.(2013, Journal of the International Society of Sports Nutrition)は、タンパク質摂取タイミングと筋力・筋肥大の関係を調べた23件の研究を対象にメタ分析を実施した。その結果、タンパク質摂取タイミングの効果は、1日の総タンパク質摂取量を共変量として統制すると統計的に有意でなくなった。すなわち、「いつ飲むか」よりも「1日にどれだけ飲むか」のほうが筋肥大・筋力向上への寄与が大きいことが示された。ただし同論文では、トレーニング前後4時間以上タンパク質を摂取しない状態は避けるべきとも述べている。

この知見を実践に落とし込むと、以下のようになる。トレーニングの前後合計4時間以内にタンパク質を摂取していれば、厳密なタイミングにこだわる必要はない。一方、朝食を抜いて昼前にトレーニングを行うような場合(最後のタンパク質摂取から4時間以上経過)には、運動前のプロテイン摂取が合理的な選択肢となる。アナボリックウィンドウは「存在しないわけではないが、30分という狭い窓ではなく、前後数時間の範囲で捉えるべきもの」というのが現在のエビデンスに基づく解釈である。

運動中の消化管血流はなぜ低下するのか

運動前にプロテインを選ぶ際に見落とされがちな要素が、消化管血流の変化である。

中〜高強度の運動中、身体は骨格筋への酸素供給を優先するために血流を再配分する。心拍出量の増加分は主に活動中の骨格筋へ振り向けられ、消化管(内臓血管床(splanchnic vascular bed))への血流は高強度運動時に顕著に低下する。この血流低下は消化・吸収能力の低下を意味する。運動中に胃内に未消化のタンパク質が残っていると、消化が停滞し、胃もたれや嘔気の原因となりうる。

運動中の消化管血流低下は、プロテインの「種類」の選択に直接影響する。消化プロセスを必要とするWPC(Whey Protein Concentrate / 濃縮乳清タンパク質)やWPI(Whey Protein Isolate / 分離乳清タンパク質)は、胃酸とペプシン(pepsin)による変性、膵酵素(トリプシン(trypsin)・キモトリプシン(chymotrypsin))による分解を経てはじめてアミノ酸として吸収される。この消化プロセスには60〜120分を要し、消化管血流が低下した運動中にはさらに時間がかかる。

一方、加水分解度の高いWPH(Whey Protein Hydrolysate / 加水分解ホエイプロテイン、分子量500Da以下)は製造段階で既にジペプチド(dipeptide)・トリペプチド(tripeptide)まで分解されており、小腸のペプチドトランスポーター(PepT1)を介して消化プロセスの大部分をスキップして吸収される。EAA(遊離アミノ酸)も消化不要で直接吸収されるため、同様に消化管血流の影響を受けにくい。

筋トレ前のプロテインはどの種類を選べばよいのか

筋トレ前のプロテイン選択において最も重要な変数は「吸収速度」である。トレーニング開始時に血中アミノ酸濃度がピーク付近に達していることが理想的であるため、各プロテインの吸収ピーク時間から逆算して摂取タイミングを決定する必要がある。

以下の表に、プロテインの種類別の吸収特性と筋トレ前の推奨摂取タイミングをまとめた。吸収ピーク時間の昇順で並べている。

種類分子量消化プロセス血中アミノ酸ピーク筋トレ前の推奨摂取タイミング代表的な製品例
EAA不要15〜30分運動15〜20分前各社EAA製品
WPH350〜500Da大部分スキップ(PepT1で吸収)30〜60分運動30〜45分前BAZOOKA WPH、GOLD’S GYM ホエイペプチド等
WPI約14,000〜20,000Da胃酸+膵酵素で分解60〜90分運動60〜90分前DNS ホエイプロテイン SP、MYPROTEIN Impact ホエイアイソレート等
WPC約14,000〜20,000Da胃酸+膵酵素で分解60〜120分運動60〜120分前BAZOOKA WPC、SAVAS ホエイプロテイン100等
カゼイン約23,000Da胃内で凝固後に徐々に分解120〜180分直前(30分以内)には不向き。2〜3時間前なら持続的供給の利点ありSAVAS プロ カゼインプロテイン、BULK SPORTS ビッグカゼイン等

Koopman et al.(2009, American Journal of Clinical Nutrition)は、カゼイン加水分解物(casein hydrolysate)とインタクトカゼインの比較において、加水分解物のほうが血中アミノ酸濃度の上昇が有意に速く、ピーク濃度も高かったと報告している。なお、この研究はカゼインを対象としたものであり、ホエイ加水分解物を直接測定したデータは限られている。ただし、加水分解によるペプチド鎖短縮が消化・吸収を促進するメカニズムはタンパク質の種類を問わず共通するため、ホエイにおいても分子量が小さい(加水分解度が高い)ほど吸収が速いと推定される。

選択の基本方針は以下の通りである。トレーニングまでの時間に余裕がある場合(60分以上)はWPCやWPIでも問題ない。WPC・WPIの分子量は約14,000〜20,000Daであり、胃酸と膵酵素による消化を経て血中アミノ酸ピークに達するまで60〜120分を要する。トレーニングまで30〜45分しかない場合はWPH(分子量350〜500Da)が合理的な選択肢となる。

15〜20分しかない場合はEAAが最も実用的である。カゼイン(分子量約23,000Da)は胃内で凝固後に徐々に分解されるため血中アミノ酸ピークが120〜180分と遅く、筋トレ直前(30分以内)には不向きだが、2〜3時間前に摂取すれば持続的なアミノ酸供給源として機能しうる。

よくある質問

筋トレ前と筋トレ後、どちらが重要か

Schoenfeld et al.(2013, Journal of the International Society of Sports Nutrition)のメタ分析では、筋肥大・筋力向上に対して最も重要なのは1日の総タンパク質摂取量であり、前後のどちらか一方にこだわるよりも、トレーニング前後4時間以内にタンパク質を摂取していることが推奨されている。前か後かの二択で悩むよりも、総摂取量を確保したうえで、トレーニング前後にバランスよく配分するのが現在のエビデンスに基づく考え方である。

WPH製品は筋トレ前に適しているか

WPH製品全般の特徴として、分子量が小さく(500Da以下の高加水分解タイプの場合)、血中アミノ酸濃度のピークは摂取後30〜60分に到達すると推定される。運動30〜45分前に摂取すれば、トレーニング中に血中アミノ酸濃度がピーク付近に達する計算となる。PepT1経由でジペプチド・トリペプチドとして吸収されるため、消化プロセスの大部分をスキップし、運動中の消化管血流低下に伴う消化負担が少ないと推定される。

たとえばBAZOOKA WPH(分子量350Da)はこの特性を持つ製品の一つである。一方、WPH製品はWPCやWPIと比較して価格帯が高い傾向があり、加水分解に伴う苦味(ペプチド特有の風味)を感じる場合がある点も考慮に入れるとよい。

空腹で筋トレするのはNGか

完全な空腹(絶食状態)での高強度レジスタンストレーニングは、筋タンパク質分解(MPB: Muscle Protein Breakdown)が合成を上回る可能性がある。Tipton et al.(2001, American Journal of Physiology - Endocrinology and Metabolism)はEAA摂取群で筋へのアミノ酸デリバリーが有意に高かったと報告しており、何らかの形でアミノ酸を事前に摂取しておくことが合理的である。絶食状態を避けるためには、プロテインに限らず、食事からのタンパク質摂取でも十分にその役割を果たせる。

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参考文献

  • Tipton KD, et al. (2001). Timing of amino acid-carbohydrate ingestion alters anabolic response of muscle to resistance exercise. American Journal of Physiology - Endocrinology and Metabolism, 281(2), E197-E206.
  • Schoenfeld BJ, Aragon AA, Krieger JW. (2013). The effect of protein timing on muscle strength and hypertrophy: a meta-analysis. Journal of the International Society of Sports Nutrition, 10(1), 53.
  • Koopman R, et al. (2009). Ingestion of a protein hydrolysate is accompanied by an accelerated in vivo digestion and absorption rate when compared with its intact protein. American Journal of Clinical Nutrition, 90(1), 106-115.