プロテインを初めて選ぶ人が知っておくべきこと — 種類・選び方・飲み方の科学的ガイド
プロテインの種類(WPC・WPI・WPH・ソイ)の違い、1日の必要量、甘味料の選び方、成分表示の読み方を科学的根拠とともに初心者向けに整理する。ISSNは運動する人に1.4-2.0g/kg/日のタンパク質を推奨しており(Jäger 2017)、ホエイプロテインはロイシン含有量と吸収速度で優位性を持つ。
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- 初心者
- 選び方
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- WPH
- 飲み方
- 甘味料
初めてプロテインを選ぶ場合、大多数の人にはWPC(ホエイプロテインコンセントレート)で十分であることが製法・コスト・栄養成分の比較から示されている。厚生労働省は成人男性のタンパク質推奨量を65g/日、成人女性を50g/日としており(日本人の食事摂取基準2020年版)、運動習慣のある人はこれを上回る量が必要となる場合がある。国際スポーツ栄養学会(ISSN)は運動する人に1日あたり体重1kgにつき1.4〜2.0gのタンパク質摂取を推奨しており(Jäger et al., 2017, Journal of the International Society of Sports Nutrition)、食事だけで不足する分をプロテインで補う用途が一般的である。
プロテインにはどのような種類があるのか
市販のプロテインは原料と製法によって主に4種類に分類される。ホエイプロテイン(ホエイ由来)にはWPC・WPI・WPHの3種類があり、ソイプロテイン(大豆由来)が植物性の代表的な選択肢となる。
WPC(濃縮乳清タンパク質、Whey Protein Concentrate)はチーズ製造の副産物であるホエイを限外ろ過(UF)で精製したものである。タンパク質含有率は70〜80%で、乳糖(ラクトース)を4〜8%含む。コストが低く入手しやすいため、初心者向けの製品の大部分がWPCを採用している。
WPI(分離乳清タンパク質、Whey Protein Isolate)はイオン交換法またはクロスフローミクロフィルトレーションによってさらに精製し、タンパク質含有率を90%以上に高めたものである。乳糖は1%未満であり、乳糖不耐症(lactose intolerance)の人にとってWPIは選択肢の一つとなる。価格はWPCより高くなる傾向がある。
WPH(加水分解乳清タンパク質、Whey Protein Hydrolysate)はWPCまたはWPIをプロテアーゼで処理して低分子ペプチドに分解したものである。Patel(2015, Journal of Food Science and Technology)はWPHについて加水分解によって苦味が生じる場合があると報告している。Calbet & Holst(2004)はWPHとWPCの胃排出速度に有意な差はないと報告しており、吸収速度の差は製品によって異なる。
ソイプロテインは大豆タンパク質を抽出したものである。van Vliet et al.(2015)は植物性タンパク質がロイシン不足と消化率の差によって筋タンパク質合成(MPS)の促進において動物性タンパク質より低い傾向があると報告している。乳製品にアレルギーがある場合や植物性食品のみを選択する場合の選択肢となる。
初心者はWPC・WPI・WPHのどれを選ぶのか
初心者にとっての選択基準は、乳糖不耐症の有無と予算の2点に絞られる。乳糖不耐症でなければWPCが最もコスト効率が高い。
Nose et al.(1979)は日本人成人の89〜90%が乳糖吸収不良であると報告しているが、Deng et al.(2015)は1食あたり乳糖12g未満であれば多くの乳糖不耐者でも耐容できると報告している。WPCに含まれる乳糖は1食(25〜35g)あたり1〜3g程度であり、この量は多くの人で問題とならない範囲である。飲用後に腹部不快感が継続する場合は、WPIへの切り替えを検討する根拠となる。
Morton et al.(2018, British Journal of Sports Medicine)はRCT 49件・1,863人のメタ分析で、タンパク質補給は除脂肪体重と筋力を有意に増加させ、効果は体重1kgあたり1.6g/日で飽和すると報告している。この知見はWPC・WPI・WPHのどれを選ぶかに関わらず適用される。
初心者向けの選択基準をまとめると以下のとおりである。乳糖不耐症の自覚がない場合はWPCを選ぶ。乳糖への懸念がある場合はWPIを検討する。吸収速度を特に重視する場合または消化過敏に悩む場合はWPHを検討する。ただし各個人の反応には差があるため、実際に試して確認することが判断の基礎となる。WPH製品の選択肢についてはWPHプロテイン比較2026で主要製品のスペックを比較している。
初心者向け主要WPC製品の比較
以下の表は日本国内で入手しやすい主要WPC製品を1食あたりコストの昇順で比較したものである。製品スペックは各メーカー公式サイトの情報に基づく(2026年3月時点)。比較は各製品の代表フレーバーを基準としている。
| ブランド | 製品名 | 内容量 | 価格(定価) | 1食あたりコスト | タンパク質/1食 | タンパク質含有率 | 甘味料 | 認証 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ALPRON | WPCホエイプロテイン | 1kg | ¥2,480前後 | 約¥74/食 | 約21g(30g中) | 約70% | スクラロース | — |
| マイプロテイン | Impact ホエイプロテイン | 1kg | ¥3,000〜4,000 | 約¥75〜100/食 | 21g(25g中) | 約82% | スクラロース | Informed Sport |
| GronG | ホエイプロテイン100 | 1kg | ¥2,780前後 | 約¥81/食 | 約22g(29g中) | 約75% | スクラロース・アセスルファムK | — |
| BAZOOKA | WPC | 900g | ¥4,800 | 約¥144/食 | 22g(30g中) | 70%以上 | 羅漢果・ステビア(天然) | Informed Choice |
| DNS | プロテインホエイ100 | 1,050g | ¥5,799 | 約¥193/食 | 24.2g(35g中) | 約69% | スクラロース・アセスルファムK・ネオテーム | JADA推奨 |
| SAVAS | ホエイプロテイン100 | 980g | ¥7,436 | 約¥212/食 | 19.5g(28g中) | 約70% | スクラロース・アスパルテーム | 一部Informed Choice |
※1食あたりコストはおおよその計算値。マイプロテインは定価レンジのため幅がある。認証欄は公式サイト記載のものを掲載。
1日にどれくらいプロテインを飲めばいいのか
プロテインの摂取量は食事から得られるタンパク質量と目標量の差分から算出する。プロテイン飲料はあくまで食事で不足する分を補う手段であり、食事の代替ではない。
厚生労働省の推奨量(男性65g/日、女性50g/日)に対して、ISSNが運動する人に推奨する1.4〜2.0g/kg/日は体重60kgであれば84〜120g/日となる(Jäger et al., 2017)。食事から平均40〜60g/日を摂取していると仮定すると、差分の20〜60gをプロテインで補う計算になる。1食あたり20〜25gのタンパク質を含む製品を1〜2杯飲むことで多くの場合は目標に到達できる。
Morton et al.(2018)のメタ分析は、タンパク質補給の効果が1.6g/kg/日で飽和することを示しており、それ以上の摂取量を増やしても追加の効果は小さくなる。1日2〜3gを超える摂取量は腎機能が正常な健康な成人では安全性の問題が報告されていないが、目標を超えた摂取は不要である。
飲むタイミングについては、運動後30〜60分以内の摂取が一般的に推奨されているが、1日の総摂取量が目標を達成していることの方が個々のタイミングより重要であるとISSNは指摘している(Jäger et al., 2017)。体重・年齢・目標別の詳細な算出方法は1日に必要なタンパク質量を参照されたい。摂取タイミングや1日の回数についてはプロテインの摂取タイミングと回数で論文データをもとに整理している。
添加物・甘味料はどう選ぶのか
プロテイン製品の甘味料は大きく人工甘味料と天然甘味料に分類される。どちらを選ぶかは安全性への考え方と味の好みによる個人の判断であり、一方が他方より明確に優位であるという科学的合意はない。
人工甘味料(スクラロース・アセスルファムK)は食品安全委員会・FDAが許容一日摂取量(ADI)を設定しており、通常の使用量の範囲では安全とされている。スクラロースのADIは体重1kgあたり15mg/日(JECFA基準)であり、プロテイン1〜2杯では大きく下回る量である。日本市場では多くの製品がスクラロースを採用しており、入手性とコスト面での選択肢が広い。
天然甘味料(ステビア・羅漢果)は植物由来の甘味成分を使用する。ステビアについてはEFSAが1日4mg/kg(ステビオール換算)以内の使用を認めている。羅漢果については長期摂取に関する大規模な研究データがステビアほど整備されていない段階にある。「データが少ない」ことと「安全性が確認されている」ことは同義ではないため、評価は現時点での情報に基づいて行う必要がある。
甘味料以外の添加物として、ビタミン類(ビタミンB群・C等)を配合した製品は原材料の項目数が増えるが、ビタミン配合はトレーニングサポートを目的とした成分であり、防腐剤・増粘剤とは性質が異なる。成分表示で甘味料・乳化剤・保存料の有無を確認する際は、それぞれの目的と量の文脈で判断することが適切である。
初心者が失敗しないための成分表示の読み方とは
成分表示で最初に確認すべきは、1食の分量あたりのタンパク質量(g)である。製品によって1食の定義が25〜40gと異なるため、内容量あたりのコストと組み合わせて評価する必要がある。タンパク質含有率は「タンパク質量 ÷ 1食の分量 × 100」で計算できる。
原材料表示は使用量の多い順に記載される(食品表示法に基づく)。ホエイプロテインの場合、「乳清タンパク質」「乳清(乳糖除去)」等が先頭に来る製品はタンパク質比率が高い傾向がある。甘味料・乳化剤・香料等の添加物は後半に記載される。
アレルギー表示は原材料欄の下部または別行に「(一部に乳成分・大豆を含む)」のように記載される。乳製品・大豆・卵アレルギーがある場合は必ず確認が必要である。
第三者認証(Informed Choice・Informed Sport・NSF Certified for Sport等)は、製品中の禁止物質検査を外部機関が実施したことを示す。競技者やドーピング検査を受ける立場でない一般の人にとっては必須ではないが、品質管理の指標の一つとなる。
よくある質問
Q. プロテインは食事の代わりになるか?
プロテイン飲料はタンパク質を補う手段であり、食事の代替として設計されたものではない。食事には炭水化物・脂質・食物繊維・ビタミン・ミネラルが含まれており、プロテイン飲料だけでは摂取できない栄養素が多い。食事を確保した上で不足分を補う用途で使うのが基本である。
Q. 認証付き・天然甘味料のWPC製品は初心者に向いているか?
Informed Choice等の第三者認証を取得し、天然甘味料を使用したWPC製品(例: BAZOOKA WPC)は、品質管理の安心感を重視する初心者の選択肢となる。1食22g(30g中)でタンパク質含有率は70%以上、1食あたりコストは約144円である。人工甘味料を避けたい場合や第三者認証の有無を重視する場合の選択肢となる。ただし同等のタンパク質含有率でより低コストな製品(ALPRON 約74円/食、GronG 約81円/食等)も存在するため、甘味料と認証の優先度に応じて選択することになる。個人の味の好みや体質との相性も判断材料となる。
Q. 運動していなくてもプロテインを飲んでいいか?
プロテインは食品であり、特定の運動習慣がなくても摂取に制限はない。ただし総エネルギー摂取量が目標を超えないように注意する必要がある。タンパク質は1gあたり4kcalのエネルギーを持ち、余剰分は体脂肪として蓄積される可能性がある。運動習慣がない場合は食事からのタンパク質摂取量を先に確認した上で、不足がある場合に補う判断が合理的である。
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参考文献
- Jäger R et al., 2017, Journal of the International Society of Sports Nutrition, Vol. 14, Article 20, DOI: 10.1186/s12970-017-0177-8
- Morton RW et al., 2018, British Journal of Sports Medicine, Vol. 52(6), pp. 376-384, DOI: 10.1136/bjsports-2017-097608
- Patel S., 2015, Journal of Food Science and Technology, Vol. 52(11), pp. 6847-6858
- Calbet JAL & Holst JJ, 2004, Gastric emptying, gastric secretion and enterogastrone response after administration of milk proteins or their peptide hydrolysates in humans, European Journal of Nutrition, Vol. 43(3), pp. 127-139
- 厚生労働省, 2020, 日本人の食事摂取基準(2020年版)