植物性と動物性プロテインをブレンドする意味はあるのか — アミノ酸補完とMPS研究の整理
植物性プロテインはDIAASが低く制限アミノ酸を持つが、動物性との組み合わせで補完できる場合がある。ただし全組み合わせが有効ではなく、ピー+ライスブレンドではEAA利用可能性が単独と同等という研究もある。主要研究4本とDIAAS数値で整理する。
- プロテイン
- アミノ酸
- DIAAS
- 植物性プロテイン
- ブレンドプロテイン
- 筋タンパク質合成
植物性プロテインの多くはDIAAS(消化性必須アミノ酸スコア)が75未満であり、FAOはこれを「タンパク質含有量の訴求が困難な品質(no claim)」と分類する(FAO, 2013, Food and Nutrition Paper 92)。一方、ホエイのDIAASは1.09(WPIの場合)、カゼインは1.17と高く(Herreman et al., 2020, Food Science & Nutrition)、植物性に動物性を混合するとアミノ酸プロファイルが補完される可能性がある。ただし、ブレンドが常に単独使用より筋タンパク質合成(muscle protein synthesis: MPS)を高めるとは限らず、組み合わせの種類・比率によって効果は異なる。
なぜ植物性プロテインは動物性より「質が低い」とされるのか
タンパク質品質の評価指標として現在最も精度が高いとされるDIAASは、真回腸消化率(true ileal digestibility)で補正した必須アミノ酸(essential amino acids: EAA)のスコアである(FAO Expert Consultation, 2013)。PDCAASが上限を100に切り捨てるのに対し、DIAASは上限なしで実測値を反映する。
Herreman et al.(2020, Food Science & Nutrition, 8(10):5379-5391)が動植物17種のタンパク質を比較した結果、カゼインDIAAS 117、卵 101、ホエイWPI 109に対し、ソイ 91、ピープロテイン 70±12.3、ヘンプ 54、ライス 47であった。ピー・ライス・ヘンプはいずれもDIAAS 75未満のカテゴリに入る。
ピープロテインの制限アミノ酸(limiting amino acid)はメチオニン(methionine)であり、ライスプロテインの制限アミノ酸はリジン(lysine)である(Mathai et al., 2017, British Journal of Nutrition, 117(4):490-499)。ピーとライスを組み合わせると互いの制限アミノ酸を補うアミノ酸プロファイルになることが理論的根拠となっており、植物性ブレンド製品に多く採用されている。
ただし植物性プロテインの低消化性には、アミノ酸スコアだけでなく、内臓組織によるアミノ酸の「一時的取り込み(splanchnic extraction)」の増大も関与している(van Vliet et al., 2015, The Journal of Nutrition, 145(9):1981-1991)。スコアの補完だけで動物性と同等の骨格筋同化応答(anabolic response)が得られるかは別問題である。
ブレンドするとアミノ酸スコアはどう変わるのか
ブレンド後のDIAAS実測値を公表した研究は限られているが、理論計算では制限アミノ酸の相互補完によりスコアが向上する。ピープロテインのDIAAS約70は、ホエイ(DIAAS 109)と混合することでメチオニン不足が補われ、ホエイのアミノ酸プロファイルに近づく方向に変化すると推定される。ただし計算値と実測値には乖離が生じる場合があり、定量的な確認には混合後の実測DIAAS値が必要になる。
Moughan & Lim(2024)は、Frontiers in Nutrition誌にてDIAAS提唱から10年で400以上の食品のデータが整備されたと報告する一方、加工工程による生物学的利用能(bioavailability)の変化はDIAASには反映されるがPDCAASでは反映できない点を指摘する(Moughan & Lim, 2024, Frontiers in Nutrition, vol.11, 1389719)。プロテインパウダーは加工度が高く、加熱によるリジンのメイラード反応(Maillard reaction)がDIAASを実際に低下させる。製品の表示スコアが未加工原料のデータに基づいている場合、実際の利用可能アミノ酸量は低下している可能性がある。
なお、一部メーカーがプロテイン製品に表示する「アミノ酸スコア100」はPDCAASまたは旧来のアミノ酸スコアを指す場合が多く、DIAASとは計算方法が異なる指標である。DIAASは真回腸消化率を用いてPDCAASより精度が高いとFAOは評価しており、両指標の混同には注意が必要である。
ブレンドプロテイン製品は市場でどの程度あるのか
日本市場において植物性×動物性の混合ブレンドプロテイン製品は限定的である。本記事の製品スペックは各メーカー公式サイトの情報に基づく(2026年4月時点)。なお、タンパク質品質に関するDIAASの分類基準はFAO Expert Consultation(2013)に準拠する。
| 製品 | ブレンド構成 | タンパク質 | 甘味料 | 価格(/kg概算) |
|---|---|---|---|---|
| アルプロン NATURAL WHEY & SOY 750g | ホエイWPC + ソイアイソレート | 16.3g/25g | ステビア | 約4,896円 |
| アルプロン BASIC WHEY & SOY 750g | ホエイWPC + ソイアイソレート | 約15g/25g | ステビア | 約3,840円 |
| BAZOOKA WHEY PROTEIN WPH | ホエイ加水分解物(単一タンパク源) | 20.1〜20.5g/30g | 羅漢果 | ¥16,560 |
| BAZOOKA WPC PROTEIN | ホエイWPC(単一タンパク源) | 22g/30g | ステビア/羅漢果 | ¥5,333 |
ソート基準: ブレンド製品を上位、単一タンパク源を下位に配置。
植物性同士のブレンド(ピー+ライス)はMyprotein Vegan Blend等の海外ブランド製品に多いが、植物性×動物性の混合という観点では国産市場での展開はアルプロンが主要な例となっている。BAZOOKAの主力製品(WPH/WPC)は単一タンパク源であり、ブレンド構成ではない。
多くのプロテイン製品で表示される「アミノ酸スコア100」は旧来のアミノ酸スコア(AAS/PDCAAS)指標に基づくものであり、本記事で扱うDIAASとは異なる計算方法を用いている点に留意が必要である。
ブレンドと単独使用で筋タンパク質合成に差はあるのか
複数のRCTがブレンドプロテインのMPS応答を測定しており、結果は組み合わせの種類と比較対象によって異なる。
Reidy et al.(2013, The Journal of Nutrition, 143(4):410-416)は若年成人(n=19)を対象に、ホエイ:ソイ:カゼイン = 25:25:50(総量約19g)のブレンドとホエイ単独を比較した。運動後前期(0〜2時間)の分数合成速度(fractional synthetic rate: FSR)はホエイ単独が高かったが、後期(2〜4時間)ではブレンドがFSR 0.087±0.003%/hを維持したのに対し、ホエイ単独は0.074±0.010%/hへ低下した。この結果はカゼイン(50%)の遅消化性がアミノ酸供給を延長した効果と考えられる。
van der Heijden et al.(2024, Medicine & Science in Sports & Exercise, 56(8):1467-1479)はレジスタンストレーニング実施者(n=10)でピー:ライス:カノーラ = 39.5:39.5:21.0のブレンドとホエイを比較した。運動後2〜4時間のFSRはホエイ0.085±0.036%/h、植物ブレンド0.086±0.034%/hで差がなかった。この植物性ブレンドはピー+ライスの組み合わせにカノーラを加えることでアミノ酸バランスを調整している。
一方、Rogers et al.(2024, British Journal of Nutrition, 132(6):691-700)は若年成人(男性4名・女性6名)を対象にピー:ライス = 50:50ブレンドとピー単独・ホエイを比較した。結果として、ピー+ライスブレンドはピー単独と比較して食後血漿EAA利用可能性を有意に増加させなかった。ホエイはブレンド・ピー単独の両者より食後EAAが有意に高かった。この研究はピー+ライスブレンドの補完効果に疑問を呈するものであり、ブレンドが単独よりも常に優れるという前提は支持されない。
Borack et al.(2016, The Journal of Nutrition, 146(12):2468-2475)は高齢男性(55〜75歳、n=19)を対象にソイ:デイリーブレンド = 25:25:50(30g)とWPI(30g)を比較した。運動後のmTORC1シグナルおよびMPS応答は両群で差がなかった(P≥0.05)。60歳以上でも植物性を含むブレンドが動物性単独と同等である可能性をこのデータは示唆する。
Reid-McCann et al.(2025, Nutrition Reviews, 83(7):e1581)の43 RCTを対象としたメタ解析では、動物性タンパク質は筋肉量で小さな優位性(SMD=-0.20)を示したが、筋力・身体機能では差がなかった。ソイタンパク質は動物性と同等であったが、非ソイ植物性(ライス・チア等)のSMDは-0.58であった。60歳以上のサブグループでは植物性・動物性の差が消失した。
| 研究 | 比較条件 | ブレンド組成 | 主要結果 |
|---|---|---|---|
| Reidy et al. 2013 | ブレンド vs ホエイ | 乳性ブレンド(ホエイ25:ソイ25:カゼイン50) | 後期FSRでブレンドが維持(ホエイは低下) |
| Borack et al. 2016 | ブレンド vs WPI | ソイ25:ホエイ25:カゼイン50 | 高齢男性でMPS同等 |
| Pinckaers et al. 2023 | 植物ブレンド vs ミルク | 小麦:コーン:ピー(50:25:25) | FSR差なし(P=0.08) |
| van der Heijden 2024 | 植物ブレンド vs ホエイ | ピー:ライス:カノーラ(39.5:39.5:21.0) | FSR同等 |
| Rogers et al. 2024 | ピー+ライス vs ピー単独 | ピー:ライス(50:50) | EAA利用可能性で差なし(補完効果を否定) |
ソート基準: 発表年の昇順。
よくある質問
Q. 植物性プロテインと動物性プロテインを食事の中で混ぜることに意味はあるか
理論的には、植物性タンパク質(制限アミノ酸: メチオニン・リジン等)と動物性タンパク質(EAAが豊富)を同一食事内で組み合わせることで、アミノ酸プロファイルが補完されると考えられる。ただし、食事全体でのアミノ酸バランスを整えることで十分な場合も多く、プロテインパウダーとして混合する必要性が独立して証明されているわけではない。
Q. ブレンドプロテイン製品を選ぶ際にどの指標を参照すれば良いか
DIAASは現時点でFAOが推奨するタンパク質品質指標であり、75以上を「良好(good)」と分類する。製品に表示されている「アミノ酸スコア100」がDIAASを指すのか、旧来のアミノ酸スコアまたはPDCAASを指すのかを確認することが有用である。複数のタンパク源が配合されている場合、混合後の実測DIAASが公表されているかどうかも選択の参考になる。
Q. ピープロテインとホエイを混合する場合、どちらを主体にすれば良いか
現時点でピー+ホエイの配合比とMPSの関係を直接比較した研究は限られている。ピーとライスのブレンドでは単独と比較してEAA利用可能性が改善しなかったという報告がある(Rogers et al., 2024, British Journal of Nutrition)。ホエイはDIAAS 1.09と高品質なタンパク質であるため、ピーのメチオニン不足をホエイが補完する方向には作用すると考えられるが、最適な配合比は個別の製品設計によって異なる。
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参考文献
- Herreman L et al., 2020, Food Science & Nutrition, 8(10):5379-5391. DOI: 10.1002/fsn3.1809
- FAO Expert Consultation, 2013, FAO Food and Nutrition Paper 92. PMID: 26369006
- Mathai JK et al., 2017, British Journal of Nutrition, 117(4):490-499. DOI: 10.1017/S0007114517000125
- Moughan PJ & Lim WXJ, 2024, Frontiers in Nutrition, vol.11, 1389719. DOI: 10.3389/fnut.2024.1389719
- Paul T. Reidy et al., 2013, The Journal of Nutrition, 143(4):410-416. DOI: 10.3945/jn.112.168021
- Michael S. Borack et al., 2016, The Journal of Nutrition, 146(12):2468-2475. DOI: 10.3945/jn.116.231159
- Philippe J.M. Pinckaers et al., 2023, The Journal of Nutrition, 152(12):2734-2743. DOI: 10.1093/jn/nxac222
- Ino van der Heijden et al., 2024, Medicine & Science in Sports & Exercise, 56(8):1467-1479. DOI: 10.1249/MSS.0000000000003432
- Lucy M. Rogers et al., 2024, British Journal of Nutrition, 132(6):691-700. DOI: 10.1017/S0007114524001958
- Stephan van Vliet et al., 2015, The Journal of Nutrition, 145(9):1981-1991. DOI: 10.3945/jn.114.204305
- Rachel J. Reid-McCann et al., 2025, Nutrition Reviews, 83(7):e1581. DOI: 10.1093/nutrit/nuae200
- Jue Liu et al., 2019, Nutrients, 11(11):2613. DOI: 10.3390/nu11112613