エリスリトールとは — 0kcal/gの糖アルコールの特性と安全性評価

エリスリトールは果実や発酵食品にも含まれる糖アルコールで、日本の食品表示基準では0kcal/gとして扱われる。吸収・排泄の仕組みと、JECFA・EFSAの安全性評価、2023年の心血管リスク報告の研究デザインを整理する。

本記事は公開された学術論文および公的機関の情報に基づく事実の整理であり、特定の疾患の診断・治療・予防を目的としたものではない。個別の健康上の判断は医師・管理栄養士等の医療専門家に相談されたい。

エリスリトールは、ブドウやメロンなどの果実、味噌や醤油などの発酵食品にも天然に含まれる糖アルコールである。甘味は砂糖の約60〜80%とされ、日本の食品表示基準ではエネルギー換算係数が0kcal/gと定義されている。摂取量の大部分は小腸で吸収され、代謝を受けずに尿中へ排泄される。

2023年、Nature Medicine誌に血中エリスリトール濃度と心血管イベントの関連を報告する観察研究が掲載された(Witkowski et al., 2023)。この研究は心血管リスク評価を受けた患者コホートを対象としたもので、因果関係を証明するものではない。安全性の議論は、規制機関の評価と研究の限界を分けて読む必要がある。

エリスリトールとは何か

エリスリトールは炭素数4個の糖アルコール(ポリオール)で、ブドウ・洋梨・メロンといった果実や、味噌・醤油・清酒など発酵によってつくられる食品にも微量に存在する。食品に使われるエリスリトールは、ブドウ糖を原料に発酵させて製造される。

甘味度は砂糖を1とした場合に約0.6〜0.8とされ、他の糖アルコールと比べても穏やかな甘さである。日本の消費者庁が定める食品表示基準のエネルギー換算係数では、エリスリトールは糖アルコールの中で唯一0kcal/gと扱われる。これはソルビトール・キシリトールの3kcal/g、マルチトールの2kcal/gと比べても際立った特徴だ。

この0kcal/gという扱いは、体内でほとんど代謝されないことに由来する。摂取されたエリスリトールの多くは小腸で吸収され、そのまま血中を巡ったのち尿として排泄される。Bornet et al.(1996)の報告では1g/kg体重の単回摂取で24時間の尿中排泄率が約78%に達しており、エネルギー源として利用される割合はごくわずかにとどまる。

ほかの糖アルコールと何が違うのか

エリスリトールと他の糖アルコール(キシリトール・マルチトール・ソルビトール)の最大の違いは、消化管での吸収のされ方にある。エリスリトールは小腸でほぼそのまま吸収されるのに対し、他の糖アルコールは小腸で吸収されにくく大腸まで到達しやすい。

Bornet et al.(1996, Regulatory Toxicology and Pharmacology)は、健常者にエリスリトール1g/kg体重を単回経口摂取させる薬物動態研究を行った。摂取後約90分で血漿中濃度がピークに達し、24時間で摂取量の約78%が尿中に排泄されたという。小腸で速やかに吸収され、代謝をほぼ受けずに尿中へ排泄される経路が、この研究で裏付けられている。

糖アルコールエネルギー(kcal/g・日本の食品表示基準)小腸での吸収のされ方お腹への影響の出やすさ(相対)
エリスリトール0ほぼそのまま吸収され尿中へ排泄される4種の中で最も高用量まで耐容されるとされる
マルチトール2小腸で吸収されにくく大腸まで到達しやすいエリスリトールより低用量で影響が出うる
キシリトール3一部は小腸で吸収され、残りは大腸まで到達するエリスリトールより低用量で影響が出うる
ソルビトール3小腸で吸収されにくく大腸まで到達しやすいエリスリトールより低用量で影響が出うる

出典: 消費者庁 食品表示基準のエネルギー換算係数、Tetzloff et al.(1996)、EU規則(EU)No 1169/2011 附属書III(ポリオールの表示義務)(2026年9月時点)。並びはエネルギーの低い順。お腹への影響が出る量には個人差が大きく、ほかの3種についてはg数で示した一律の目安がない。

血糖値やお腹への影響はどうか

エリスリトールは体内でほとんど代謝されないため、代謝の仕組みからは血糖値やインスリン分泌への影響は小さいと推測される。ただし血糖値への影響を主要評価項目にしたヒト試験は多くなく、直接の測定で確かめられた範囲は限られる。

お腹がゆるくなる目安量については、Tetzloff et al.(1996, Regulatory Toxicology and Pharmacology)が健常成人男性12名を対象に二重盲検クロスオーバー試験を行っている。エリスリトールを0.3→0.6→1.0g/kg体重/日と漸増摂取させても、便通頻度・便性状に有意な変化はなく、体重60kgで60g相当という高用量でも忍容性は良好だったという。

一方、EFSA(欧州食品安全機関)は2023年の再評価で、下痢を誘発しない量(無毒性量)を根拠に許容一日摂取量(ADI)を体重1kgあたり0.5gと定めた。体重60kgであれば1日30g程度に相当する。EFSAは同じ評価の中で、食品からの摂取量の推計がこのADIを上回る場合があるとも指摘している。Tetzloff試験の60gとは試験の条件と評価の指標が異なるため、2つの数値は直接比べられない。

EUの規則では、ポリオール類(エリスリトールを含む糖アルコール全般)を10%を超えて添加した食品に「過剰摂取が緩下作用を引き起こす可能性がある」旨の表示義務が課されている。なお、4〜6歳児を対象とした2010年のEFSA声明では、飲料での使用に関して消化器耐容性への懸念が留保付きで指摘されている。この留保は小児の飲料摂取という限定的な条件下のもので、成人の一般的な摂取を対象とした評価とは別軸である。

2023年の心血管リスク報告をどう読むか

エリスリトールの安全性をめぐる評価は、時系列で捉える必要がある。国際的な食品添加物の安全性を評価するJECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門家委員会)は1999年の第53回会合で、エリスリトールにADI「特定しない」という評価を下した。現実的な摂取量では健康上の懸念がなく、数値の上限を設ける必要がないという判断である。

その後、2023年にEFSAが食品添加物としての再評価を行い、下痢誘発の無毒性量に基づきADI 0.5g/kg体重/日という数値上限を初めて設定した。EFSAの再評価は、EUで2009年1月20日より前に認可された食品添加物を見直す計画の一環として行われた。

同じ2023年、Witkowski et al.がNature Medicine誌に発表した観察研究は、心血管リスク評価を受けた患者コホート(発見コホートn=1,157・米国検証コホートn=2,149・欧州検証コホートn=833、合計約4,140名)を対象としたものだった。血中エリスリトール濃度が高い群では、3年以内の心臓発作・脳卒中等の主要心血管イベント(MACE)リスクがハザード比1.80(米国)〜2.21(欧州)と報告されている。同じ論文では、ヒトの血小板やマウスを使った実験で、エリスリトールが血小板の反応性を高めるという結果もあわせて報告された。

この研究には限界がある。対象は心疾患リスク評価を受けた患者集団であり、健康な成人にそのまま当てはめることはできない。観察研究であるため因果関係は示されておらず、食事由来のエリスリトールと体内で代謝的に産生されるエリスリトールの寄与も区別されていない。

2024年には同じ研究グループが、ヒトが実際に口から摂取した場合を確かめる追試として、健常ボランティア(各群n=10)にエリスリトール30gまたはグルコース30gを単回摂取させる介入研究を発表した(Witkowski et al., 2024, Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology)。エリスリトール摂取群のみ血漿中濃度が1000倍超に上昇し、血小板の凝集反応性が急性に亢進したという。ただしこれは健常者の急性反応を血小板反応性という代理指標で見た結果であり、長期摂取や実際の心血管イベントそのものを示したわけではない。

EFSAは2023年の再評価の中でWitkowski 2023の知見も検討したうえで、「食品添加物としてのエリスリトール摂取と心血管疾患との因果関係を示す証拠はない」と結論づけている。血中濃度と心血管イベントの関連を示した観察研究があること、その関連の因果性を示す証拠が現時点で確認されていないこと。この二つは矛盾せず並立する事実である。

プロテインではどう使われているのか

プロテインバーなどでは、ステビアやスクラロースなどほかの甘味料と組み合わせて使われる例がある。使用の有無は製品の原材料欄で確認できる。糖アルコール全般の甘味・カロリー・お腹への影響を横断的に比較したい場合は、天然甘味料の種類を比較する記事が参考になる。

よくある質問

エリスリトールは血糖値を上げるのか

エリスリトールは体内でほとんど代謝されず、大部分が吸収後にそのまま尿中へ排泄される。この代謝経路から血糖値への影響は小さいと考えられているが、血糖値への影響を主要評価項目にしたヒト試験は多くない。個別の血糖管理が必要な場合は医師・管理栄養士に相談されたい。

1日にどれくらいまでならお腹がゆるくならないのか

個人差が大きいため一律の数値は存在しないが、目安の一つとしてEFSAが2023年に設定したADI(体重1kgあたり0.5g/日)がある。体重60kgであれば1日30g程度に相当する。Tetzloff et al.(1996)の試験では体重60kgで60g相当の摂取でも便通に有意な変化はなかったが、これは健常成人12名という限られた被験者数での結果である。

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参考文献

  • Bornet F.R.J., Blayo A., Dauchy F., Slama G. (1996). Plasma and Urine Kinetics of Erythritol after Oral Ingestion by Healthy Humans. Regulatory Toxicology and Pharmacology, 24(2), S280-S285. https://doi.org/10.1006/rtph.1996.0109
  • Tetzloff W., Dauchy F., Medimagh S., Carr D., Bär A. (1996). Tolerance to Subchronic, High-Dose Ingestion of Erythritol in Human Volunteers. Regulatory Toxicology and Pharmacology, 24(2), S286-S295. https://doi.org/10.1006/rtph.1996.0110
  • Witkowski M., Nemet I., Alamri H., Wilcox J., Gupta N., Nimer N., Haghikia A., Li X.S., Wu Y., Saha P.P., Demuth I., König M., Steinhagen-Thiessen E., Cajka T., Fiehn O., Landmesser U., Tang W.H.W., Hazen S.L. (2023). The artificial sweetener erythritol and cardiovascular event risk. Nature Medicine, 29, 710-718. https://doi.org/10.1038/s41591-023-02223-9
  • Witkowski M., Wilcox J., Province V., Wang Z., Nemet I., Tang W.H.W., Hazen S.L. (2024). Ingestion of the Non-Nutritive Sweetener Erythritol, but Not Glucose, Enhances Platelet Reactivity and Thrombosis Potential in Healthy Volunteers—Brief Report. Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology, 44(9), 2136-2141. https://doi.org/10.1161/ATVBAHA.124.321019
  • EFSA Panel on Food Additives and Flavourings (FAF) (2023). Re-evaluation of erythritol (E 968) as a food additive. EFSA Journal, 21(12), e8430. https://doi.org/10.2903/j.efsa.2023.8430