ホエイと植物性プロテインで筋肉のつき方は変わるのか — MPS応答・DIAAS・長期介入研究の比較

ホエイと植物性プロテインの筋タンパク質合成(MPS)応答・DIAAS・長期RCTを比較し、筋肥大への影響を定量的に整理する。急性MPS差の実数値、12週以上の介入研究の結果、摂取量やブレンドで差が縮まる条件を示す。

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ホエイプロテインは植物性プロテインよりも急性の筋タンパク質合成(MPS)応答が高い傾向が示されているが、長期介入研究(12週以上)では摂取量を適切に確保した条件において筋肥大・筋力への影響に有意差が認められないケースが多い(Hevia-Larraín et al., 2021, Sports Medicine)。違いを生む主要因はロイシン含有量とアミノ酸消化吸収率スコア(DIAAS)であり、ピー+玄米などのブレンドやロイシン強化によってその差は縮小できる。

ホエイと植物性プロテインのアミノ酸組成はどう違うのか

ホエイはDIAASが1.09〜1.25と全EAAで充足しており、ロイシン含有量は100gタンパク質あたり8.6〜11.0gである。一方、ソイのDIAASは0.82〜0.90(制限アミノ酸: 含硫アミノ酸)、ピーは0.71〜0.82(同: 含硫アミノ酸)、ライス(玄米)は0.47(同: リジン)と、植物性ほど低くなる傾向がある(Herreman et al., 2020, Food Science & Nutrition; Gorissen et al., 2018, Amino Acids)。

DIAAS(消化必須アミノ酸スコア)は、消化吸収率を織り込んだタンパク質品質指標であり、FAOが旧来のPDCAAの代替として推奨している。スコア1.0以上は「優良」、0.75以上は「高品質」、0.75未満では栄養表示上の品質主張ができないとされる。ホエイはスコア1.0を超えており、ロイシン含量もソイ(5.0g/100g)やピー(5.7g/100g)と比較して明確に高い。

van Vliet et al.(2015, The Journal of Nutrition)のレビューは、植物性タンパク質が消化率の低さ・内臓でのアミノ酸抽出増加・EAA不足という3つの経路でMPS低下を招くことを示している。リジン・メチオニンといった制限アミノ酸の不足が、MPS応答全体のボトルネックになるという構造的課題である。

タンパク源DIAASロイシン(g/100g protein)制限アミノ酸
ホエイ(WPI)1.09〜1.258.6〜11.0なし
ソイ(アイソレート)0.82〜0.905.0含硫アミノ酸(メチオニン)
ピー(アイソレート)0.71〜0.825.7含硫アミノ酸(メチオニン)
ライス(玄米)0.475.8リジン

出典: Herreman et al. 2020(DIAAS); Gorissen et al. 2018(ロイシン含量)。数値は一般的な目安値であり、製品・製法によって幅がある。

筋タンパク質合成(MPS)応答に差はあるのか

Tang et al.(2009, Journal of Applied Physiology, 107(3):987–992)の急性MPS研究では、運動後においてホエイ加水分解物(WPH)はソイよりMPS率が約31%、カゼインよりも約122%高かった(各群n=6、EAA 10g相当投与)。安静時MPS率はWPH 0.091%/h、ソイ 0.078%/h、カゼイン 0.047%/hと報告されており、タンパク源の種類が急性応答に影響することを示している。ただし、本研究はWPC/WPIではなくWPH(ホエイペプチド)との比較である点に留意が必要である。

植物性ブレンドを用いた近年の研究では、この差が縮まることが示されている。Van der Heijden et al.(2024, Medicine & Science in Sports & Exercise, 56(8):1467–1479)は、レジスタンストレーニング後においてピー39.5%+玄米39.5%+キャノーラ21%のブレンド32gがホエイ32gと同等の筋原線維MPS率(0〜2時間: ブレンド0.085±0.037 vs ホエイ0.080±0.037%/h、p>0.05)を示したと報告している(n=10のクロスオーバーデザイン)。

安静時条件を対象としたPinckaers et al.(2022, The Journal of Nutrition, 152(12):2734–2743)でも、ロイシン含量を牛乳と同等に調整した小麦+コーン+ピーブレンド30gは牛乳タンパク30gと統計的に有意差のないMPS率(ブレンド0.053±0.013 vs 牛乳0.064±0.016%/h、p=0.08)を示している。ただし、このブレンドはロイシン含量を意図的に調整したものであり、無調整の植物性単品とは異なる。

一方、コンカレント条件(有酸素+筋トレ)でCHO(炭水化物)を併用した場合にはホエイ・ソイ・ロイシン強化ソイのMPS差が消失(p=0.83)したとの報告もあり(Churchward-Venne et al., 2019, The Journal of Nutrition)、急性MPS差は条件によって大きく変動する。

長期的な筋肥大・筋力に差は出るのか

長期介入RCTでは、タンパク質摂取量を適切に確保した場合にホエイと植物性の差は概して縮小する。Hevia-Larraín et al.(2021, Sports Medicine, 51(6):1317–1330)は、習慣的ヴィーガン19名(ソイプロテイン補給)とオムニボア19名(ホエイ補給)を対象に、1.6g/kg/日のタンパク質を確保した12週間のレジスタンストレーニング(週2回)を実施した。脚部除脂肪量の増加(+1.2±1.0 vs +1.2±0.8 kg)、大腿直筋・外側広筋の筋断面積、筋繊維I型・II型の横断面積、脚プレス1RMのいずれにも群間差は認められなかった。対象は若年男性であり、高齢者や女性への一般化には注意が必要である。

Babault et al.(2015, Journal of the International Society of Sports Nutrition, 12(1):3)は若年男性161名を対象に12週間のレジスタンストレーニングを実施し、ピープロテイン(NUTRALYS®)25g×2/日とホエイ25g×2/日を比較した。上腕二頭筋厚の増加はピー群・ホエイ群で同等であり、筋力増加にも群間差は認められなかった(本研究は原料提供元によるコンフリクト・オブ・インタレストが開示されている)。

Banaszek et al.(2019, Sports, 7(1):12)はHIFT(CrossFit系)8週間トレーニングでピー24g対ホエイ24gを比較したパイロット研究(n=15)であり、スクワット・デッドリフト1RMは両群で有意に向上したが体組成・筋厚・力発揮のいずれにも群間差は見られなかった。サンプルサイズが小さく、差があっても検出できなかった可能性(β誤差)に留意が必要である。

Messina et al.(2018, International Journal of Sport Nutrition and Exercise Metabolism)のメタアナリシス(9研究・266名)でも、ソイとホエイの間でベンチプレス(p=0.90)・スクワット(p=0.64)・除脂肪体重(p=0.80)に有意差は認められていない。

植物性で差を埋めるにはどうすればよいのか

植物性プロテインでホエイと同等のMPS応答を得るには、ロイシン含量の確保が最優先課題となる。ピープロテイン(ロイシン約5.7g/100g protein)でロイシン3gを確保するには、ホエイ(ロイシン約8.6g/100g protein)の30g serving に対しておよそ53g相当のピープロテインが必要になる計算である。現実的な対応策として3つのアプローチが報告されている。

第一は複数タンパク源のブレンドである。ピー+玄米の組み合わせはメチオニン(ライス)とリジン(ピー)の相互補完が働き、単品では不足しがちな必須アミノ酸が補われる。Van der Heijden 2024はこのブレンドが運動後MPSでホエイに匹敵したことを示している。第二はロイシン添加であり、ソイにL-ロイシンを添加してホエイ相当の含量に引き上げることでMPS差を縮小できると報告されている(van Vliet et al., 2015)。第三は摂取量の増加であり、Hevia-Larraín 2021の1.6g/kg/日という条件が、摂取量の十分な確保によって長期的な筋肥大差が消失することを示している。

日本市場で入手可能な主要製品の比較を以下に示す(2026年4月時点)。

製品タンパク質/servingDIAAS分類甘味料Informed Choice
マイプロテイン ピープロテイン アイソレート(30g)23〜24g条件付き(ピー由来)なし(プレーン)なし
BAZOOKA WPC(30g)21〜22g優良(ホエイ由来)羅漢果/ステビアあり
ANOMA(えんどう豆+玄米ブレンド, 30g)21.5g条件付き(ブレンドによる改善)ステビアなし
GronG ソイプロテイン(25g)20g高品質(ソイ由来)ステビアなし
BAZOOKA WPH(30g)20.1〜20.5g優良(ホエイ由来)羅漢果あり

DIAAS分類は原料タンパク源の一般的な目安値に基づく。製品の実測DIAASは公開されていない場合がある。

よくある質問

植物性プロテインだけで筋肉はつくのか

長期介入研究(12週以上)では、タンパク質摂取量を1.6g/kg/日程度に確保した条件において植物性プロテイン単独でもホエイと同等の筋肥大・筋力向上が報告されている(Hevia-Larraín et al., 2021)。急性MPS研究では植物性単品はホエイより応答が低い傾向があるが、ブレンドや摂取量の調整によって差は縮小できる。ただし、既存の長期RCTは若年男性を対象とした研究が多く、高齢者・女性への一般化には限界がある。

ホエイと植物性をブレンドするメリットは何か

ピー+玄米のようなブレンドは、単独では不足しがちな制限アミノ酸(ピーのメチオニン・ライスのリジン)を相互補完し、アミノ酸プロファイルをホエイに近づけられる点にある。Van der Heijden et al.(2024)の研究では、こうした設計のブレンドが運動後のMPS率でホエイと統計的に有意差のない結果を示している。加えて、乳成分を避ける食事スタイルやヴィーガン食の文脈での選択肢として機能する。

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参考文献

  • Tang JE et al. (2009). Ingestion of whey hydrolysate, casein, or soy protein isolate: effects on mixed muscle protein synthesis at rest and following resistance exercise in young men. Journal of Applied Physiology, 107(3):987–992. DOI: 10.1152/japplphysiol.00076.2009
  • Hevia-Larraín V et al. (2021). High-protein plant-based diet versus a protein-matched omnivorous diet to support resistance training adaptations: a comparison between habitual vegans and omnivores. Sports Medicine, 51(6):1317–1330. DOI: 10.1007/s40279-021-01434-9
  • Babault N et al. (2015). Pea proteins oral supplementation promotes muscle thickness gains during resistance training: a double-blind, randomized, placebo-controlled clinical trial vs. whey protein. Journal of the International Society of Sports Nutrition, 12(1):3. DOI: 10.1186/s12970-014-0064-5
  • Banaszek A et al. (2019). The effects of whey vs. pea protein on physical adaptations following 8-weeks of high-intensity functional training (HIFT): a pilot study. Sports (Basel), 7(1):12. DOI: 10.3390/sports7010012
  • Pinckaers PJM et al. (2022). The muscle protein synthetic response to the ingestion of a plant-derived protein blend does not differ from an equivalent amount of milk protein in healthy, young males. The Journal of Nutrition, 152(12):2734–2743. DOI: 10.1093/jn/nxac222
  • Van der Heijden I et al. (2024). Plant-based dietary protein sources do not diminish post-exercise anabolic responses or adaptations. Medicine & Science in Sports & Exercise, 56(8):1467–1479. DOI: 10.1249/MSS.0000000000003432
  • van Vliet S et al. (2015). The skeletal muscle anabolic response to plant- versus animal-based protein consumption. The Journal of Nutrition, 145(9):1981–1991. DOI: 10.3945/jn.114.204305
  • Churchward-Venne TA et al. (2019). Myofibrillar and mitochondrial protein synthesis rates do not differ in young men following the ingestion of carbohydrate with whey, soy, or leucine-enriched soy protein after concurrent resistance- and endurance-type exercise. The Journal of Nutrition, 149(2):210–220. DOI: 10.1093/jn/nxy251
  • Herreman L et al. (2020). Comprehensive overview of the quality of plant- and animal-sourced proteins based on the digestible indispensable amino acid score. Food Science & Nutrition, 8(10):5379–5391. PMC7590266.
  • Gorissen SHM et al. (2018). Protein content and amino acid composition of commercially available plant-based protein isolates. Amino Acids, 50(12):1685–1695. DOI: 10.1007/s00726-018-2640-5
  • Messina M et al. (2018). No difference between the effects of supplementing with soy protein versus animal protein on gains in muscle mass and strength in response to resistance exercise. International Journal of Sport Nutrition and Exercise Metabolism, 28(6):674–685.