ケルンリスト(Kölnliste)とは — 認証ではなく「検査済みロットの掲載リスト」である理由
ケルンリストはドイツ発の禁止物質検査を受けたサプリメントのロットを掲載するリストで、製品の認証ではない。運営主体・検査機関・検査頻度と、Informed Choiceなど3制度との違いを整理し、掲載の意味を正確に説明する。
ケルンリストはドイツ発の取り組みで、禁止物質の検査を受けたサプリメントの個別ロットを掲載するリストである。製品そのものの認証ではない。検査はケルン体育大学生化学研究所の予防的ドーピング研究センター(CePreDo)が担い、アナボリックステロイドと興奮剤を中心に少なくとも年1回実施される。公式サイト自身が「100%の安全は保証できず、リスクの最小化にとどまる」と明記している。
ケルンリストとは何か
ドイツでは、サプリメントは医薬品のような事前の安全性・有効性審査を経ずに、届け出だけで市場に出せる。ケルンリストはこうした市場環境を背景に、スポーツ界発の取り組みとして生まれた仕組みだ。品質管理を経た製品だけがリストに掲載される。
汚染のリスクは2000年代初頭の国際調査で示されている。Geyer et al.(2004, International Journal of Sports Medicine)は2000年10月〜2001年11月に13か国・215社から購入した非ホルモン系栄養補助食品634品を分析し、94品(14.8%)でラベルに表示のないアナボリックアンドロゲン系ステロイドを検出した。プロホルモン販売企業の製品では21.1%が陽性だったのに対し、非販売企業の製品でも9.6%が陽性という結果だった。第一著者のHans Geyer氏は、ケルンリストの検査を担うケルン体育大学生化学研究所の研究責任者でもある。
こうした汚染リスクへの対応として、ケルンリストは「意図的にドーピング物質を混入する犯罪的なメーカー」「意図せず禁止物質や新規物質を混入させるリスクの高いメーカー」「品質管理を経てリストに掲載される通常のメーカー」という3分類を示し、掲載対象を3番目に限定している。競技者にとっては、掲載の有無がリスクの目安になる。ただしそれは保証ではなく目安にとどまる。
誰が運営し、何をどれくらいの頻度で検査しているのか
掲載申請の窓口はHEIMSPIELE GmbH & Co. KGで、ドイツアンチ・ドーピング機構(NADA)の防止ネットワーク「GEMEINSAM GEGEN DOPING」に統合された取り組みとして運営されている。実際の分析はケルン体育大学生化学研究所のCePreDoが担う。検査はアナボリックステロイドと興奮剤を中心に少なくとも年1回実施される。
検査はロット単位で行われ、製品ページにはバッチ番号・賞味期限・分析日が公開される。たとえばクレアチン原材料のクレアピュア®の製品ページには、複数ロットについてバッチ番号ごとの分析日が個別に掲載されている。製品全体の合格ではなく、検査したその1ロットの結果を示す仕組みであることが、この公開方式からも分かる。
2017年6月にはケルンリストが改組され、ラベルチェック機能や関連認証の表示、検査済みロットのみ購入できるリンクの設置といった機能が加わったとNADAが告知している。
掲載品を使えばドーピング違反にならないのか
違反にならないとは限らない。ケルンリスト公式サイトは「手続き上、食品サプリメントの100%の安全性は保証できず、可能なのはドーピングリスクの最小化にとどまる」と明記している。検査対象は生産全体ではなくバッチのサンプルであり、あらゆる禁止物質を網羅的に検査しているわけでもない。検査できる物質に限りがある点はケルンリストに限らない。Informed Sportも公式FAQで「すべての禁止物質を検査できるサプリメント検査プログラムはない」としている。
日本のアンチ・ドーピング規則でも同様の考え方が採られている。JADA(日本アンチ・ドーピング機構)は「もし、表示されていない物質が原因で、アンチ・ドーピングのルール違反になった場合でも、アスリートはその責任を自身でとらなくてはなりません」としており、この自己責任の原則は、どの制度の掲載品・認証品であっても変わらない。掲載は判断材料の一つであって、免責にはならない。
なおJADAが独自に運営していた「サプリメント分析認証プログラム」は、JADAの告知によれば2019年3月31日で終了している。ケルンリストはドイツ発の別の仕組みであり、JADAの認証制度と混同しないよう注意したい。
Informed Choice・Informed Sport・NSF Certified for Sportとどう違うのか
4つの制度は運営国・検査単位・検査頻度が異なる。同じ「禁止物質検査」という言葉でも、どのロットをどの頻度で調べるかには幅がある。
| 項目 | Informed Choice | Informed Sport | ケルンリスト | NSF Certified for Sport |
|---|---|---|---|---|
| 運営主体・国 | 英国/LGC Group | 英国/LGC Group | ドイツ/窓口HEIMSPIELE GmbH & Co. KG、NADAの防止ネットワークに統合 | 米国/NSF International |
| 検査単位 | 年間最低12ロットの無作為抽出(全バッチではない) | 全バッチ・全フレーバー | 個別ロット(バッチ番号・賞味期限・分析日を製品ページで公開) | 全ロット |
| 検査頻度 | 認証後は月次で市場品を買い取り検査 | 出荷前に毎回 | 少なくとも年1回 | ロットごと・抜き打ち監査あり |
| 製造施設監査 | 事前の品質・製造レビューあり | 事前の品質・製造レビューあり | 明記なし(分析結果が中心) | GMP監査を等級により年1回または2回実施 |
| 公開情報 | 認証マークを表示 | 検査済み製品を公式サイトに掲載 | 製品データベースでロット番号・賞味期限・分析日を公開 | 認証製品リストを公開 |
表の列は制度の英語名のアルファベット順(2026年9月時点、各機関公式サイトに基づく)。Informed Choiceは認証後、年間最低12ロットを市場から毎月買い取って検査するサンプリング方式をとる。Informed Sportは全バッチを出荷前に検査する。ケルンリストは少なくとも年1回の検査で、個別ロットの分析日まで公開する。NSF Certified for Sportは全ロットの検査に加え、等級により年1回または2回の製造施設監査を行う。
「ケルンリスト掲載」の表示はどう確かめればよいのか
公式のデータベースで製品名やロット番号を検索すれば、実際に掲載されているかを直接確認できる。掲載には原材料単位のものと完成品単位のものがある。原材料自体が掲載され、それを使う完成品がその表示を用いることもあるため、表示がどちらの掲載を指すかをデータベースで確かめるとよい。
国内の販売ページでは「ケルンリスト認証」という表現が使われることがあるが、これは公式の位置づけとは異なる。ケルンリストが公式に示しているのは「掲載(listing)」であって「認証(certification)」ではない。
よくある質問
Q. ケルンリストへの掲載は認証ですか
認証ではない。掲載は検査を受けたロットの結果を示すもので、公式サイトは100%の安全性は保証できないと明記している。掲載品であっても、検査対象になっていない物質や、検査後に生産された別ロットのリスクはゼロにならない。
Q. クレアチンでケルンリスト掲載の表示が多いのはなぜですか
クレアチンでは原材料自体がケルンリストに掲載されている例があり、それを使う製品がこの表示を用いる例が見られる。表示の背景を確認したい場合は、公式データベースで原材料名または製品名を検索すると、どのロットが検査対象になったかを個別に確認できる。
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参考文献
- Geyer H et al.(2004)Analysis of Non-Hormonal Nutritional Supplements for Anabolic-Androgenic Steroids - Results of an International Study. International Journal of Sports Medicine, 25(2), 124-129. (https://doi.org/10.1055/s-2004-819955)
- Cologne List(koelnerliste.com)公式サイト(2026年9月参照)
- LGC Group「Informed Sport: Certification Process」(sport.wetestyoutrust.com、2026年9月参照)
- NADA(ドイツアンチ・ドーピング機構)ニュース「Kölner Liste: neuer Aufbau, mehr Sicherheit」(nada.de、2026年9月参照)
- JADA(日本アンチ・ドーピング機構)「サプリメントの考え方」(playtruejapan.org、2026年9月参照)