Informed Choice(インフォームドチョイス)とは — アンチドーピング認証の仕組みと検査内容
Informed Choiceは英国LGC Groupが運営するアンチドーピング認証プログラムで、WADAの禁止物質285種以上を対象にバッチ検査を実施する。認証プロセス・検査方式・他認証との違い・日本で入手可能な認証製品を整理する。
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Informed Choice(インフォームドチョイス)は、英国のLGC Groupが2007年に開始したアンチドーピング認証プログラムである。世界アンチ・ドーピング機関(WADA)の禁止物質リストに基づく285種以上の物質を対象に、スポーツサプリメントのバッチ検査を実施する。認証製品は市場から無作為購入される月次ブラインドテストで継続的に監視される。
認証なしのスポーツサプリメントには一定の禁止物質汚染リスクが存在する。Geyer et al.(2004, International Journal of Sports Medicine)が2000〜2001年に実施した634製品の分析では、94製品(14.8%)からラベル未表示のアナボリックアンドロゲニックステロイドが検出された。これは認証制度が整備される以前のデータであり、現在の状況を直接示すものではないが、第三者検査の必要性を示す基礎データとして広く引用されている。
Informed Choiceはなぜ存在するのか
スポーツサプリメント市場では、製品ラベルと実際の成分が一致しないケースが報告されてきた。Jagim et al.(2023, Frontiers in Sports and Active Living)の文献レビューによると、複数研究の集計で検査サンプルの14〜50%が禁止物質に陽性反応を示しており、主な検出物質はシブトラミン、テストステロン系成分、DMAAなどである。
このような状況に対して、製品の安全性を独立した第三者機関が検証する仕組みとして認証プログラムが発展した。Informed Choiceは製品単位での禁止物質検査に特化しており、製造施設の品質管理プロセス認証とは目的が異なる。アスリートや厳格な職場環境で薬物検査を受ける可能性がある人々が、使用前に製品の安全性を確認するための参照情報として機能している。
Informed Choiceの認証プロセスはどのようなものか
認証取得には4つのステップが必要である(LGC Group, 2026)。Martínez-Sanz et al.(2017, Nutrients)のレビューは、認証制度の拡大がサプリメントの汚染リスク低減に貢献していると整理しており、認証プロセスの厳格さが実効性の鍵であることを指摘している。
第1ステップは製品・製造審査である。原材料リストのレビューと製造施設の書面審査を実施する。現地への物理的な施設監査は含まれない。
第2ステップは認証前検査である。最低3製造ロットから各3サンプル、合計9サンプル以上を検査し、285種以上の禁止物質が検出されないことを確認する。1サンプルでも陽性となれば認証は承認されない。
第3ステップは認証承認である。ステップ1・2で特定された課題を解消した後、認証が付与される。
第4ステップは継続モニタリングである。認証後も月次でブラインドテストが継続される。LGCが市場・小売店・Webから製品を無作為購入し、禁止物質の有無を検査する。年間最低12ロット以上が抜き取り検査の対象となる。
重要な点として、継続モニタリングは全バッチの検査を保証するものではない。月次ブラインドテストはサンプリング方式であり、全製造ロットが出荷前に検査されるわけではない。これはInformed Sportとの主要な違いである。
認証の有効性は choice.wetestyoutrust.com の検索データベースで製品名を入力することで確認できる。
Informed Sport・NSF・BSCGとどう違うのか
4つの主要認証を検査方式・検査物質数・施設監査の有無で比較する(各機関公式情報、2026年4月時点)。Jagim et al.(2023, Frontiers in Sports and Active Living)は、認証プログラムの種類によって検査の網羅性が大きく異なる点を指摘しており、アスリートが認証の違いを理解した上で製品を選択することの重要性を述べている。
| 認証 | 運営機関(国) | 設立 | 検査物質数 | 検査方式 | 施設への現地監査 | 主な対象層 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| Informed Choice | LGC Group(英国) | 2007年 | 285種以上 | 月次ブラインドテスト(全バッチ保証なし) | なし(書面審査のみ) | 一般スポーツサプリ市場 |
| Informed Sport | LGC Group(英国) | 2008年 | 285種以上 | 全バッチ出荷前検査 | なし(書面審査のみ) | エリートアスリート・軍関係者 |
| NSF Certified for Sport | NSF International(米国) | 2005年 | 290種以上 | 製造ロットごと検査 | あり(年2回の現地監査) | NFL・MLB・NCAA等 |
| BSCG | BSCG(米国) | 2004年 | 450種以上 | 全ロット出荷前検査 | あり(2年ごと) | 厳格な薬物検査環境 |
Informed ChoiceとInformed Sportは同じLGC Groupが運営しており、検査物質数・検査手法・ISO 17025認定の検査精度は同一である。差異は検査のタイミングのみである。Informed Sportは全バッチを市場に出す前に検査する(pre-market batch testing)のに対し、Informed Choiceは認証後の継続検査をサンプリング方式で実施する。エリートアスリートや厳格なドーピング管理が求められる環境ではInformed Sportが選ばれるケースが多い。
NSFはInformed Choice/Sportとの最大の違いとして、製造施設への現地監査(年2回)が認証要件に含まれる点が挙げられる。NSFはNFL・MLB・NHLなどの北米プロスポーツリーグで採用されており、製造プロセスを含む包括的な品質管理の検証を重視している。
BSCGはWADAの禁止物質296種に加え、処方薬・市販薬・違法薬物を含む450種以上を検査対象とする点で物質数が最多である。日本国内の主要プロテイン製品での取得事例は確認されていない(2026年4月時点)。
Informed Choice認証を取得しているプロテインはどれか
2026年4月時点で日本国内で入手可能な主要な認証製品を示す(各メーカー公式情報)。Jagim et al.(2023, Frontiers in Sports and Active Living)は、認証の有無をラベルや公式データベースで確認する習慣がサプリメント利用者のリスク低減に有効であると述べている。
| 製品名 | 製法 | 認証取得時期 | 甘味料 |
|---|---|---|---|
| DNS プロテインホエイ100(各種) | WPC | 2016年(日本初) | 製品により異なる |
| SAVAS ホエイプロテイン100(各種) | WPC | 2020年1月〜 | スクラロース |
| GronG ホエイプロテイン100 スタンダード | WPC | 2025年3月 | スクラロース |
| GronG ホエイプロテイン100 ベーシック | WPC | 2025年3月 | なし(プレーン) |
| BAZOOKA WPH | WPH | 不明(2026年4月時点で認証確認済み) | 羅漢果(全フレーバー) |
| BAZOOKA WPC | WPC | 不明(2026年4月時点で認証確認済み) | 羅漢果(プレーン)/ ステビア(チョコ・ストロベリー) |
| Optimum Nutrition Gold Standard(一部フレーバー) | WPI+WPC | 未確認 | スクラロース |
認証の有効状態は時点によって変化する可能性がある。購入前に choice.wetestyoutrust.com で製品名を検索して最新の認証状況を確認することを推奨する。
Myproteinの一部製品(Impact Whey等)はInformed Choiceではなく上位グレードのInformed Sportを取得している。認証レベルの違いについては前述の比較表を参照されたい。
よくある質問
Q. Informed Choice認証がない製品は、ドーピング検査でアウトになるのか
認証がないことは即座にドーピング違反リスクを意味するわけではない。多くの認証なし製品に禁止物質は含まれていないが、第三者機関による検証がないため確認の手段が限られる。競技団体やリーグによっては特定の認証取得製品の使用を推奨しているケースがあり、各競技の規則を確認することが適切である。
Q. 一度認証を取得すれば、継続検査なしで永続的に使えるのか
継続できない。Informed Choiceは月次のブラインドテストを認証維持の要件としており、検査で基準を逸脱した場合は認証が停止される。認証データベース(choice.wetestyoutrust.com)では製品ごとの認証有効状態をリアルタイムで確認できるため、購入のたびに状況を確認することが確実である。
Q. プロテインを普段使いする一般利用者にも、Informed Choiceはメリットがあるのか
競技者でなくても、製品に含まれる成分の透明性を確認できる点でメリットがある。禁止物質の検査とは別に、認証プロセスで原材料リストの書面審査が行われるため、ラベルに記載されていない成分が混入するリスクが一定程度低減されている。ただし認証はあくまで禁止物質の不検出を保証するものであり、製品の効果や安全性を保証するものではない。
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参考文献
- Geyer H, Parr MK, Mareck U, Reinhart U, Schrader Y, Schänzer W(2004)Analysis of non-hormonal nutritional supplements for anabolic-androgenic steroids. International Journal of Sports Medicine, 25(2):124-9. DOI: 10.1055/s-2004-819955
- Jagim AR, Harty PS, Erickson JL, Tinsley GM, Garner D, Galpin AJ(2023)Prevalence of adulteration in dietary supplements and recommendations for safe supplement practices in sport. Frontiers in Sports and Active Living, 5, Article 1239121. DOI: 10.3389/fspor.2023.1239121
- Martínez-Sanz JM, Sospedra I, Mañas Ortiz C, Baladía E, Gil-Izquierdo A, Ortiz-Moncada R(2017)Intended or Unintended Doping? A Review of the Presence of Doping Substances in Dietary Supplements Used in Sports. Nutrients, 9(10):1093. DOI: 10.3390/nu9101093
- LGC Group(2026)Informed Choice: How it works. choice.wetestyoutrust.com(2026年4月参照)