グリコマクロペプチド(GMP)とは — 品質規範のGMPとは別物のホエイ成分

グリコマクロペプチド(GMP)はチーズ製造でκ-カゼインが切断されて生じ、スイートホエイのタンパク質の15〜20%を占めるとされるペプチドである。品質規範のGMPとの違い、含有量、アミノ酸組成、研究の現状を整理する。

グリコマクロペプチド(glycomacropeptide、GMP)は、チーズ製造で凝乳酵素キモシンがκ-カゼインを切断したときにホエイ側へ出てくるペプチドである。スイートホエイのタンパク質に占める割合は15〜20%とされ(van Calcar & Ney, 2012, Journal of the Academy of Nutrition and Dietetics)、乳清粉・WPI・WPCなどの乳清製品のタンパク質では20〜25%とするレビューもある(Neelima et al., 2013, Dairy Science & Technology)。工場の品質管理を指す「GMP(Good Manufacturing Practice、適正製造規範)」とは略語が同じだけで、関係はない。

本記事は公開された学術論文に基づく事実の整理であり、特定の疾患の診断・治療・予防を目的としたものではない。個別の健康上の判断は医師・管理栄養士等の医療専門家に相談されたい。

グリコマクロペプチドとは何か

グリコマクロペプチドは、牛乳のκ-カゼイン(kappa-casein)が凝乳酵素キモシン(chymosin、レンネットの主成分)に切られてできる断片のうち、ホエイ側に残るほうである。切断されるのはκ-カゼインの105番目のフェニルアラニンと106番目のメチオニンの間で、カード(凝乳)側にはパラκ-カゼインが残る(Neelima et al., 2013, Dairy Science & Technology)。

名前の「グリコ(glyco)」は、この断片に糖鎖がついていることを指す。

研究では、同じ断片をカゼインマクロペプチド(caseinomacropeptide、CMP)と呼ぶ文献もある。糖鎖の有無でGMPとCMPを呼び分けるかどうかは、文献によって異なる。

カゼインは凝乳でカード側に集まる乳タンパク質である。グリコマクロペプチドはそのカゼインの一部が酵素で切り離されたものであり、ホエイタンパク質(β-ラクトグロブリンやα-ラクトアルブミンなど)とは由来が異なる。

品質規範の「GMP」とはどう違うのか

プロテイン製品の説明で「GMP認証」「GMP工場」のように使われる「GMP」は、品質規範の適正製造規範(Good Manufacturing Practice)を指す。グリコマクロペプチドは成分名であり、工場の管理体制とは別の概念である。

項目グリコマクロペプチド(GMP)適正製造規範(GMP)
正式名称glycomacropeptideGood Manufacturing Practice
区分乳タンパク質由来のペプチド(成分)製造管理・品質管理の仕組み
どこに現れるかホエイの組成、研究論文、医療用食品の原料工場の認証・製造体制の説明
別の呼び方CMP(caseinomacropeptide)適正製造規範、GMP認証

適正製造規範の定義、HACCPやFSSC22000との関係、日本での義務化の範囲はGMP(適正製造規範)とはで整理している。

グリコマクロペプチドが成分名として「GMP」「CMP」とラベルに表示されるのは、主にフェニルケトン尿症(PKU)向けの医療用食品である。一般のプロテイン製品の表示で、成分として記載された例は確認できなかった(2026年10月時点)。

ホエイのどこにどれだけ含まれるのか

スイートホエイ(チーズ製造の副産物)のタンパク質のうち、グリコマクロペプチドが占める割合は15〜20%とされる(van Calcar & Ney, 2012)。チーズホエイから作った乳清粉・WPI・WPCなどの乳清製品のタンパク質では20〜25%とするレビューもある(Neelima et al., 2013)。2つの数値は分母(ホエイそのものか、乳清製品か)が異なる。

酸ホエイについては、Neelima et al.(2013)が引く研究で、スイートホエイと混合試料ではGMPが検出され、酸ホエイと生乳では検出されなかったとされる。酸ホエイは凝乳酵素を使わず酸で固める製法の副産物である。この結果はレビューが引用する研究のデータである。

WPCやWPIはホエイから作られるため、原料がスイートホエイであれば、ホエイタンパク質と一緒にグリコマクロペプチドも含まれうる。製品ごとのグリコマクロペプチド含有率は、一般のプロテイン製品の栄養成分表示には記載されない。

アミノ酸組成にどんな特徴があるのか

純粋なグリコマクロペプチドは、フェニルアラニン・チロシン・トリプトファンの芳香族アミノ酸を含まないとされる(van Calcar & Ney, 2012)。Neelima et al.(2013)は、トリプトファン・チロシン・フェニルアラニン・システインに乏しいと記述している。

イソロイシン・トレオニン・バリンは、ほかの食事タンパク質の2〜3倍含まれる(van Calcar & Ney, 2012)。

フェニルアラニンとトリプトファンはどちらも必須アミノ酸であるため、純粋なグリコマクロペプチドは単独では必須アミノ酸がそろわないタンパク質である。PKU向けの医療用食品では、不足するアミノ酸を補って使われる(van Calcar et al., 2009)。

一方、実際に流通するグリコマクロペプチド素材にはほかのホエイタンパク質が混入するため、フェニルアラニンは2.0〜5.0 mg/g protein含まれる(van Calcar & Ney, 2012)。一般的なホエイプロテイン製品全体で見れば、ホエイタンパク質が大半を占めるので、フェニルアラニンを含む。「グリコマクロペプチドにフェニルアラニンがほぼない」という性質を、ホエイ製品全般に当てはめることはできない。

アミノ酸純粋なグリコマクロペプチド出典
フェニルアラニン含まない(市販素材は2.0〜5.0 mg/g protein)van Calcar & Ney, 2012
チロシン・トリプトファン含まないvan Calcar & Ney, 2012
イソロイシン・トレオニン・バリンほかの食事タンパク質の2〜3倍van Calcar & Ney, 2012

研究では何が分かっているのか

グリコマクロペプチドの研究は、フェニルケトン尿症(PKU)向けの医療用食品の原料としての検討が中心である。満腹感と腸内細菌のヒト試験は本記事で紹介する2件とも、グリコマクロペプチド自体の明確な効果は示していない。腸内細菌の変化が報告されたのはマウスの試験である。

PKU向け医療用食品の研究。 PKUはフェニルアラニンの代謝に関わる先天性の疾患で、食事でフェニルアラニンを制限する。グリコマクロペプチドはフェニルアラニンが少ないため、医療用食品の原料として使われ、研究されている。いずれもPKU患者が医療用食品として使った試験で、一般の食品にそのまま当てはまる結果ではない。PKUの医療用食品は、医師・管理栄養士の管理のもとで用いられる。

  • van Calcar et al.(2009, The American Journal of Clinical Nutrition): PKUの11名を対象にした、4日間ずつ2期間の管理下試験。不足するアミノ酸を補ったグリコマクロペプチド食では、10名がこの食事を好み、血漿フェニルアラニンは同程度だった。
  • Ney et al.(2016, The American Journal of Clinical Nutrition): 早期治療を受けた15〜49歳のPKU患者30名での、3週間ずつのランダム化クロスオーバー試験。グリコマクロペプチドの医療食は、アミノ酸医療食より受け入れやすさ(acceptability)の評価が高く、消化器症状と空腹感も軽かったと報告された。血中フェニルアラニンは同程度で、フェニルアラニン摂取量はグリコマクロペプチド使用時に1日あたり88±6 mg多かった。
  • Daly et al.(2019, Nutrients): 6〜16歳のPKU児19名が登録し18名が完了した、14日間ずつ3種類の食事法を比べたクロスオーバー試験。血中フェニルアラニンの24時間中央値は、グリコマクロペプチドを使う2つの食事法のほうがアミノ酸のみの食事法より高かった。著者は、グリコマクロペプチド自体に含まれるフェニルアラニンが濃度を押し上げた可能性を挙げ、24時間の変動は小さい傾向があったとしている。

満腹感のヒト試験。 Burton-Freeman(2008, Physiology & Behavior)は、健常な男女20名(男性10名・女性10名)で検討した。食前の満腹感は、ホエイが対照やグリコマクロペプチドより高かったのは女性のみで、男性では差がなかった。試験食の摂取量に差はなく、著者は、グリコマクロペプチドはホエイによる満腹感に決定的ではない一方、その後のエネルギー摂取の調節に関わる可能性があると述べている。

腸内細菌の研究。 Sawin et al.(2015, American Journal of Physiology-Gastrointestinal and Liver Physiology)は、PKUモデルと野生型のマウスに8週間与えた試験で、グリコマクロペプチド食では腸内細菌のDesulfovibrioが30〜35%から約7%に減り、盲腸の短鎖脂肪酸が増え、炎症の指標が低かったと報告した。比較対象はカゼイン食とアミノ酸食で、与えた食事の組成も異なる。グリコマクロペプチドを主なタンパク質源とした食餌で、マウスの結果であり、ヒトに当てはめることはできない。

ヒトでは、Wernlund et al.(2021, British Journal of Nutrition)が健常な成人24名に1日25 gを4週間与え、脱脂粉乳を対照とした。腸内細菌叢の多様性、高感度CRP(hsCRP)、糞便中の酪酸はいずれも変化せず、忍容性は良好だった。24名の小規模な試験である。

よくある質問

プロテインのラベルにある「GMP」は、成分と工場の管理のどちらを指すか

「GMP認証」「GMP工場」のように製造体制の文脈で使われる「GMP」は、適正製造規範(Good Manufacturing Practice)である。成分名としての「GMP」「CMP」は、主にPKU向けの医療用食品や研究論文で使われる。

GMPとCMPは同じものか

どちらもκ-カゼインがキモシンで切断されてできる断片を指す。糖鎖の有無で呼び分けるかどうかは文献によって異なるため、資料ごとの定義を確かめる必要がある。

フェニルアラニンを制限している人は、ホエイプロテインを選んでよいか

一般のホエイ製品はフェニルアラニンを含む。グリコマクロペプチドの組成は、ホエイ製品全体には当てはまらない。フェニルアラニン制限の要否と許容量は、主治医・管理栄養士が判断する。

関連記事

参考文献

  • Neelima, Sharma R, Rajput YS, Mann B (2013). Chemical and functional properties of glycomacropeptide (GMP) and its role in the detection of cheese whey adulteration in milk: a review. Dairy Science & Technology, 93(1), 21-43. https://doi.org/10.1007/s13594-012-0095-0
  • van Calcar SC, Ney DM (2012). Food Products Made with Glycomacropeptide, a Low-Phenylalanine Whey Protein, Provide a New Alternative to Amino Acid-Based Medical Foods for Nutrition Management of Phenylketonuria. Journal of the Academy of Nutrition and Dietetics, 112(8), 1201-1210. https://doi.org/10.1016/j.jand.2012.05.004
  • van Calcar SC, MacLeod EL, Gleason ST, Etzel MR, Clayton MK, Wolff JA, Ney DM (2009). Improved nutritional management of phenylketonuria by using a diet containing glycomacropeptide compared with amino acids. The American Journal of Clinical Nutrition, 89(4), 1068-1077. https://doi.org/10.3945/ajcn.2008.27280
  • Ney DM, Stroup BM, Clayton MK, Murali SG, Rice GM, Rohr F, Levy HL (2016). Glycomacropeptide for nutritional management of phenylketonuria: a randomized, controlled, crossover trial. The American Journal of Clinical Nutrition, 104(2), 334-345. https://doi.org/10.3945/ajcn.116.135293
  • Daly A, Evans S, Chahal S, Santra S, Pinto A, Gingell C, Rocha JC, van Spronsen F, Jackson R, MacDonald A (2019). The Effect of Glycomacropeptide versus Amino Acids on Phenylalanine and Tyrosine Variability over 24 Hours in Children with PKU: A Randomized Controlled Trial. Nutrients, 11(3), 520. https://doi.org/10.3390/nu11030520
  • Burton-Freeman BM (2008). Glycomacropeptide (GMP) is not critical to whey-induced satiety, but may have a unique role in energy intake regulation through cholecystokinin (CCK). Physiology & Behavior, 93(1-2), 379-387. https://doi.org/10.1016/j.physbeh.2007.09.010
  • Sawin EA, De Wolfe TJ, Aktas B, Stroup BM, Murali SG, Steele JL, Ney DM (2015). Glycomacropeptide is a prebiotic that reduces Desulfovibrio bacteria, increases cecal short-chain fatty acids, and is anti-inflammatory in mice. American Journal of Physiology-Gastrointestinal and Liver Physiology, 309(7), G590-G601. https://doi.org/10.1152/ajpgi.00211.2015
  • Wernlund PG, Hvas CL, Dahlerup JF, Bahl MI, Licht TR, Knudsen KEB, Agnholt JS (2021). Casein glycomacropeptide is well tolerated in healthy adults and changes neither high-sensitive C-reactive protein, gut microbiota nor faecal butyrate: a restricted randomised trial. British Journal of Nutrition, 125(12), 1374-1385. https://doi.org/10.1017/S0007114520003736