WPCとは — ホエイプロテインコンセントレートの製法・特徴・他との違い

WPC(ホエイプロテインコンセントレート)は、ホエイを限外濾過(UF)で濃縮した最も一般的なホエイプロテインで、タンパク質含有率は約70〜80%である。WPI・WPHとの製法の違い、乳糖・脂質の残存量、DIAAS約0.99のタンパク質品質を数値で整理する。

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WPC(ホエイプロテインコンセントレート)は、チーズ製造の副産物であるホエイ(乳清)を限外濾過(UF: ultrafiltration)で濃縮したプロテインパウダーであり、タンパク質含有率は約70〜80%である(Etzel, 2004, J Nutr)。WPIやWPHと比べて乳糖・脂質をやや多く含むが、価格が抑えられており、乳由来のバイオアクティブ成分(bioactive components)も保持される。市販プロテインの大部分はWPCをベースとし、最も標準的なホエイプロテインの形態として位置づけられる。

WPCとは何か

WPC(ホエイプロテインコンセントレート)は、ホエイを限外濾過膜(UFメンブレン)に通してタンパク質を濃縮した製品である。Etzel(2004, J Nutr)によれば、UF膜処理によってタンパク質含有率を35〜85%の範囲で制御できる。日常的にWPCと呼ばれる製品の多くはWPC80グレードであり、タンパク質約80%・脂質約7%・乳糖約4〜7%(乾燥重量基準)という典型組成を持つ。

ホエイとはチーズ製造時に凝固したカードを取り除いた後に残る水溶性の液体で、タンパク質・乳糖・ミネラルを含む。Smithers(2008, Int Dairy J)は、20世紀後半に膜分離技術(UF・イオン交換・クロスフロー精密濾過)が実用化されたことで、かつては廃棄物扱いだったホエイが高付加価値成分として利用されるようになったと指摘する。

UFメンブレンはタンパク質と乳糖を分子量で分け、膜を通過しにくいタンパク質を保持する一方、乳糖・水分・一部のミネラルを除去する。ダイアフィルトレーション(DF)を組み合わせることで最終製品の乳糖含量をさらに調整できる。WPC35はタンパク質約36%・乳糖約47%であり、WPC80とは組成が大きく異なる別グレードである。

WPCはWPI・WPHと何が違うのか

WPC・WPI・WPHの3製法を製法カテゴリとして比較すると、タンパク質含有率(WPC 70〜80% → WPI 90%以上 → WPH 80〜95%)と乳糖残存量(WPC 約1〜2g/30g → WPI 0.3g未満/30g → WPH 0.5%未満)に明確な差がある。WPIはイオン交換法またはクロスフロー精密濾過によって乳糖と脂質をほぼ除去し、WPHはWPCまたはWPIを酵素加水分解してさらに小分子化したものである(Etzel, 2004, J Nutr; Smithers, 2008, Int Dairy J)。

Calbet & Holst(2004, Eur J Nutr)は、WPHとWPCの胃排出速度に有意差がなく、両者の吸収速度の違いは小腸吸収段階で生じると報告している。この知見は、「加水分解=胃で速く消化される」という単純な理解の精度を上げるうえで重要である。

なお、WPC80の脂質含有率(典型値 約7.2%/100g)はWPC35(約2.1%/100g)より高い。高タンパク質グレードほど乳糖が除去される一方で、乳脂肪球膜(MFGM: milk fat globule membrane)断片がタンパク質画分に濃縮されるため、脂質含量が相対的に増加するというメカニズムによる(Etzel, 2004, J Nutr)。このトレードオフは反直感的な事実として注意が必要である。

WPC / WPI / WPH 製法カテゴリ比較(2026年6月時点)

製法カテゴリ製法タンパク質含有率乳糖(30g当たり)脂質(30g当たり)相対価格(/kg)想定用途
WPC(コンセントレート)限外濾過(UF)+ ダイアフィルトレーション約70〜80%約1〜2g1.5〜2.5g低(3,000〜6,500円)コスパ重視・日常補給
WPI(アイソレート)イオン交換法 or クロスフロー精密濾過90%以上0.3g未満0.5〜1.0g中〜高(5,000〜9,000円)乳糖制限・カロリー管理
WPH(加水分解物)WPC/WPIを酵素加水分解80〜95%0.5%未満0.1〜1.0g高(5,000〜15,000円)速吸収・運動直後

出典: Etzel(2004, J Nutr)、各メーカー公式サイト(2026年6月時点)

WPCのメリット・デメリットは何か

WPCのタンパク質品質は高い。Mathai et al.(2017, Br J Nutr)の報告によれば、WPCのDIAAS(消化吸収性必須アミノ酸スコア)は約0.97であり、食品全体の基準値1.0に近い。また、Tormási et al.(2025, Sci Rep)が引用するMathai et al.(2021)によれば、WPCのin vivo標準回腸消化率(SID)は約98%とされる。WPCは安価でありながら高いタンパク質品質を持つという点で、日常的なタンパク質補給源として合理的な選択肢のひとつである。

バイオアクティブ成分の保持もWPCの特徴として挙げられる。Nguyen et al.(2016, J Dairy Sci)は、低温処理WPC(酸ホエイ由来)が標準処理品と比較してラクトフェリン(lactoferrin)およびTGF-beta2の含有量が増加するとともに、UF処理が免疫グロブリン・ラクトフェリン等のバイオアクティブ成分を保持するうえで有効であることを細胞実験で示した。ただしこれは細胞レベルの知見であり、ヒトの免疫機能に特定の変化をもたらすという主張とは区別される。

デメリットとして挙げられるのは、乳糖と脂質がWPIより多い点である。乳糖量は1食(30g)当たり約1〜2g(WPC80の場合)であり、脂質も1.5〜2.5g程度含まれるため、乳糖やカロリーを厳しく制限したい場合はWPIの方が適合しやすい。

WPCはどんな人に向いているか

WPCは、タンパク質補給を日常的に継続したい人、コスト効率を重視する人、また乳由来のバイオアクティブ成分を保持したプロテインを選びたい人に適合しやすい製法カテゴリである。1食あたりの乳糖量は約1〜2g(WPC80の場合)であり、EFSAが多くの人の許容量の目安とする12g(EFSA, 2010)を下回る。ただしEFSAは12gを万人に適用できる閾値ではないとしており、6g未満で症状が出る人もいる点には留意が必要である。

一方、乳糖感受性が高い場合や、脂質・カロリーを厳格に制限したい場合はWPIが選ばれやすい。WPIとWPCの乳糖量の差(0.3g未満 vs 約1〜2g)は1食単位では小さく、個人差によって対応が変わる。健康上の判断は医師や管理栄養士に相談されたい。

WPH(加水分解物)は吸収段階でWPCより速いという特徴があるが(Calbet & Holst, 2004, Eur J Nutr)、価格が高く、特有の苦味が出やすい。運動直後の素早い補給を最優先にしたい場合や、消化機能に配慮が必要な場合に選択される傾向がある。タンパク質品質・コスト・目的の3軸で自分に合ったグレードを選ぶことが実践的な指針となる。

よくある質問

Q. WPCは乳糖不耐症の人でも飲めるか

WPC80(一般的な市販WPCのグレード)の1食30g当たり乳糖量は約1〜2gである。EFSAは乳糖不耐症の多くの人が1回12g程度までの乳糖を症状なく摂取できると報告している(EFSA NDA, 2010)。一方で同機関は12gを万人に適用できる一般的な閾値として設定することは難しいとも述べており、6g未満で症状が出る人も存在する。WPC80の1食乳糖量(約1〜2g)が12gを下回るという事実の整理であり、対応は個人の乳糖感受性・体質によって異なる。乳糖をほぼ除去したWPI(0.3g未満/30g)への切り替えも選択肢として示されている。

Q. WPCとWPIはどちらを選べばよいか

選択の主な軸は2つである。コスト効率を重視し、乳由来の栄養成分を保持したい場合はWPC、乳糖・カロリーを厳しく管理したい場合や乳糖感受性が高い場合はWPIが適合しやすい。タンパク質品質(DIAAS)はWPCが約0.97・WPIが1.09と大きな差がなく(Mathai et al., 2017, Br J Nutr)、日常的なタンパク質補給を目的とする場合はどちらも合理的な選択肢である。

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参考文献

  1. Etzel MR. Manufacture and use of dairy protein fractions. J Nutr. 2004;134(4):996S-1002S. DOI: 10.1093/jn/134.4.996S
  2. Smithers GW. Whey and whey proteins — from ‘gutter-to-gold’. Int Dairy J. 2008;18(7):695-704. DOI: 10.1016/j.idairyj.2008.03.008
  3. Mathai JK, Liu Y, Stein HH. Values for digestible indispensable amino acid scores (DIAAS) for some dairy and plant proteins may better describe protein quality than values calculated using the concept for protein digestibility-corrected amino acid scores (PDCAAS). Br J Nutr. 2017;117(4):490-499. DOI: 10.1017/S0007114517000125
  4. Nguyen DN, Sangild PT, Li Y, Bering SB, Chatterton DE. Processing of whey modulates proliferative and immune functions in intestinal epithelial cells. J Dairy Sci. 2016;99(2):959-969. DOI: 10.3168/jds.2015-9965
  5. Tormási J, Benes E, Kónya ÉL, Berki M, Abrankó L. Evaluation of protein quantity and protein nutritional quality of protein bars with different protein sources. Sci Rep. 2025;15. DOI: 10.1038/s41598-025-94072-4
  6. Calbet JA, Holst JJ. Gastric emptying, gastric secretion and enterogastrone response after administration of milk proteins or their peptide hydrolysates in humans. Eur J Nutr. 2004;43(3):127-139. DOI: 10.1007/s00394-004-0448-4
  7. EFSA Panel on Dietetic Products, Nutrition and Allergies (NDA). Scientific Opinion on lactose thresholds in lactose intolerance and galactosaemia. EFSA J. 2010;8(9):1777. DOI: 10.2903/j.efsa.2010.1777