プロテインと痛風・尿酸値の関係 — プリン体含有量とタンパク質源別の科学的根拠

プロテインパウダーと痛風・尿酸値の関係を科学的根拠に基づいて整理する。ホエイプロテインのプリン体は極めて少なく、総タンパク質摂取量と尿酸値に有意な関連はないとの研究結果がある一方、肉類・魚介類は尿酸値上昇と関連する。

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本記事は公開された学術論文および公的機関の情報に基づく事実の整理であり、特定の疾患の診断・治療・予防を目的としたものではない。個別の健康上の判断は医師・管理栄養士等の医療専門家に相談されたい。

プロテインパウダーの摂取が痛風や尿酸値に与える影響は、タンパク質源によって大きく異なる。米国NHANES IIIデータ(14,809名)を用いた横断研究では、総タンパク質摂取量は多変量解析で血清尿酸値と有意な関連を示さなかった(p=0.74)。一方、肉類・魚介類の摂取は尿酸値上昇と関連し、乳製品の摂取は尿酸値低下と関連することが報告されている(Choi HK et al., 2005, Arthritis Rheum)。ホエイプロテインは牛乳由来のため、プリン体含有量は極めて少ないとされる。

プロテインパウダーにプリン体はどれだけ含まれるのか

プリン体(purine body)は核酸の構成成分であり、体内で代謝されると尿酸(uric acid)となる。高尿酸血症(hyperuricemia)の食事管理では、日本痛風・尿酸核酸学会の「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版(2019年)」がプリン体摂取を400mg/日以下に抑えることを推奨している。

牛乳のプリン体含有量は0.16mg/100mLと極めて少なく、ヨーグルト5.2mg/100g、チーズ6.0mg/100gと、乳製品全般にわたってプリン体含有量は低水準にある(公益財団法人 痛風・尿酸財団、金子希代子、帝京大学薬学部 名誉教授、2026年3月時点)。ホエイプロテインパウダー(WPC・WPI・WPH)は牛乳の乳清(ホエイ)を原料とするため、プリン体は極めて少ないとされる。ただし、ホエイプロテインパウダーのプリン体含有量の公的分析データは現時点で未公表であり、牛乳のデータからの推定値である点に留意が必要である。

これに対し、鶏むね肉は約100〜120mg/100g、鶏レバーは312.2mg/100g、カツオ節は493.3mg/100gとプリン体が多く含まれる。同じタンパク質食品であっても、食品の種類によってプリン体含有量には数百倍の差がある。

高タンパク質食は尿酸値を上昇させるのか

「タンパク質を多く摂ると尿酸値が上がる」という認識は、NHANES IIIの横断研究によって否定されている。Choi HK et al.(2005, Arthritis Rheum, 52(1), pp.283-289)は、14,809名のデータで肉類摂取が血清尿酸値を+0.48mg/dL(p<0.001)上昇させる一方、乳製品摂取は-0.21mg/dL(p=0.02)低下させることを報告した。総タンパク質摂取量については多変量解析で尿酸値との有意な関連が認められず(p=0.74)、「タンパク質の摂取量そのものが尿酸値を上げる」という仮説を支持しなかった。

この知見が示すのは、問題はタンパク質の「量」ではなく「種類(供給源)」であるという点である。肉類・魚介類に含まれるプリン体が尿酸の前駆体として機能する一方、乳清タンパク(ホエイ)やカゼインには別のメカニズムが存在する可能性が示唆されている。Dalbeth N and Palmano K(2011, Curr Rheumatol Rep, 13(2), pp.132-137)のレビューでは、カゼインおよびラクトアルブミン(ホエイタンパク)が尿酸排泄促進に関与する可能性を縦断観察研究のデータとともに整理している。

タンパク質の種類(乳・大豆・肉・魚)で尿酸への影響はどう異なるのか

タンパク質源と痛風リスクの関係は、前向きコホート研究によって明確な差が示されている。Choi HK et al.(2004, N Engl J Med, 350(11), pp.1093-1103)は、47,150名の男性を12年間追跡した大規模コホート研究で、肉類摂取最高五分位群で痛風リスクが相対リスク(RR)1.41(95%CI 1.07-1.86)、魚介類摂取最高五分位でRR 1.51(95%CI 1.17-1.95)と上昇する一方、乳製品摂取最高五分位ではRR 0.56(95%CI 0.42-0.74)と有意に低下することを報告した。12年間で730件の痛風新規発症を確認した、現時点で最も規模の大きいエビデンスの一つである。

大豆プロテインについては、Duan Y et al.(2022, Front Nutr, DOI: 10.3389/fnut.2022.975718)のシステマティックレビュー・メタ解析(17研究)で、長期臨床試験5件のプール解析では大豆摂取と血清尿酸値の差が加重平均差(WMD)-2.11mg/dL(95%CI -8.78〜4.55、p=0.53)と有意ではないことが示されている。急性期には全粒大豆が尿酸を一時的に上昇させることがあるが、豆腐などの加工大豆製品では影響が観察されなかったとも報告されている。大豆プロテインパウダーのプリン体含有量については公的分析データが存在せず、乳清由来プロテインとの比較を正確に行うことが現時点では困難である。

植物性プロテイン(ピープロテイン・ライスプロテイン)と尿酸値の関係を直接検討した臨床研究は現時点でほとんど存在せず、この点については言及できるデータが不足している。

尿酸値が高い人はプロテインを控えるべきか

総タンパク質摂取量と尿酸値に有意な関連が認められないという研究結果(Choi HK et al., 2005)は、「タンパク質摂取を全般的に控える」必要性を直接的には支持しない。ただし、これはプロテインの積極的な摂取を推奨するものではなく、個人の尿酸値・腎機能・既往歴によって判断が異なる。高尿酸血症や痛風の診断を受けている場合は、医師・管理栄養士に相談した上で食事内容を決定することが求められる。

乳製品と痛風リスクの逆相関については、より大規模なコホート研究でも確認されている。Rai SK et al.(2024, JAMA Netw Open, 7(5), e2411707)は122,679名のコホートで、乳製品を1サービング追加摂取することでハザード比(HR)が0.86(95%CI 0.82-0.90)と独立した保護的関連を報告した。植物性食品を中心とした健康的な食パターンでは最高五分位群でHR=0.79(95%CI 0.69-0.91)であったのに対し、不健康な植物性食パターン(果物ジュース・砂糖飲料を含む)ではHR=1.17(95%CI 1.03-1.33)と痛風リスクの上昇が観察された。

ホエイタンパク(whey peptide)を用いたランダム化比較試験(RCT)として、Somoto Y et al.(2025, Food Sci Nutr, 13(11), e71150)は、血清尿酸値6.0〜7.9mg/dLの成人男性71名を対象に、ホエイペプチド(WPH)5g/日を12週間摂取するRCTを実施した。主要エンドポイントの血清尿酸値はWPH群でプラセボ群より有意に低下した(p=0.004)。ただし、この研究は単一の試験であり、WPHが「尿酸値を下げる」という効能効果を確立したものではない。

プロテインの種類別でプリン体含有量はどう違うのか

以下の表は、代表的なタンパク質源のプリン体含有量と尿酸値への影響を整理したものである(プリン体含有量昇順)。製品のプリン体含有量は食品の種類・加工法・製品によって異なる場合がある。

タンパク質源プリン体含有量(目安)尿酸値への影響(研究報告)注記
牛乳0.16mg/100mL低下との関連あり(Choi 2005)公的分析値あり
ヨーグルト5.2mg/100g乳製品として保護的関連が示唆公的分析値あり
チーズ6.0mg/100g乳製品として保護的関連が示唆公的分析値あり
ホエイプロテイン(WPC/WPI/WPH)極めて少量(推定)WPH RCTで低下報告(Somoto 2025)パウダーの公的分析値は未公表
豆乳19.3〜22.0mg/100mL長期的に有意差なし(Duan 2022メタ解析)公的分析値あり
豆腐31.1mg/100g加工大豆製品は影響なしと報告公的分析値あり
大豆プロテインパウダー未確認長期的に有意差なし(Duan 2022)パウダーの公的分析値なし
鶏むね肉約100〜120mg/100gリスク上昇(Choi 2004 RR 1.41)動物性タンパク質として
鶏レバー312.2mg/100g高プリン体食品公的分析値あり
カツオ節493.3mg/100g高プリン体食品公的分析値あり

出典: 公益財団法人 痛風・尿酸財団、食品中のプリン体含有量一覧表(金子希代子、帝京大学薬学部 名誉教授)、2026年3月時点。

よくある質問

Q. プロテインパウダーを毎日飲んでいると痛風になるのか

タンパク質の摂取量そのものと尿酸値に有意な関連は認められていないという研究結果がある(Choi HK et al., 2005, Arthritis Rheum)。牛乳由来のホエイプロテインはプリン体が極めて少なく、乳製品摂取は痛風リスクの低下と関連することが複数の研究で報告されている。ただし、個人の尿酸値や腎機能の状態によって適切な摂取量は異なるため、高尿酸血症の診断を受けている場合は医師に相談することが求められる。

Q. 高尿酸血症がある場合、動物性と植物性プロテインのどちらを選ぶべきか

現在のエビデンスでは、乳製品由来のプロテイン(ホエイ・カゼイン)が痛風リスクとの逆相関を示す一方、肉類・魚介類由来のタンパク質は尿酸値上昇と関連するという報告がある(Choi HK et al., 2004, N Engl J Med)。大豆プロテインは長期的に尿酸値への有意な影響がないとするメタ解析の結果もある。どのプロテインが個人に適しているかは尿酸値・腎機能・服薬状況によって異なり、医療専門家への相談が必要である。

Q. プロテインパウダーのプリン体含有量はラベルに記載されているのか

現時点では、国内外の主要プロテインパウダーメーカーがプリン体含有量を製品ラベルや公式サイトで公表している例は確認されていない(2026年3月時点)。ホエイプロテインパウダーは牛乳の乳清を原料とするため、プリン体は極めて少ないとされるが、正確な含有量は各メーカーへの問い合わせが必要である。

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参考文献

  1. Choi HK, Atkinson K, Karlson EW, Willett W, Curhan G et al. Purine-rich foods, dairy and protein intake, and the risk of gout in men. N Engl J Med. 2004;350(11):1093-1103. DOI: 10.1056/NEJMoa035700
  2. Choi HK, Liu S, Curhan G. Intake of purine-rich foods, protein, and dairy products and relationship to serum levels of uric acid: the Third National Health and Nutrition Examination Survey. Arthritis Rheum. 2005;52(1):283-289. DOI: 10.1002/art.20761
  3. Dalbeth N, Palmano K. Effects of dairy intake on hyperuricemia and gout. Curr Rheumatol Rep. 2011;13(2):132-137. DOI: 10.1007/s11926-010-0160-8
  4. Dalbeth N, Ames R, Gamble GD, et al. Effects of skim milk powder enriched with glycomacropeptide and G600 milk fat extract on frequency of gout flares: a proof-of-concept randomised controlled trial. Ann Rheum Dis. 2012;71(6):929-934. DOI: 10.1136/annrheumdis-2011-200156
  5. Somoto Y, Okuno A, Nomaguchi K, et al. Whey peptide supplementation reduces serum uric acid in hyperuricemic men: a double-blind randomized controlled trial. Food Sci Nutr. 2025;13(11):e71150. DOI: 10.1002/fsn3.71150
  6. Duan Y, Qi Q, Liu Z, Zhang M, Liu H. Soy food consumption and serum uric acid levels: a systematic review and meta-analysis. Front Nutr. 2022. DOI: 10.3389/fnut.2022.975718
  7. Rai SK, Wang S, Hu Y, et al. Diet quality and risk of incident gout in men and women: a prospective study. JAMA Netw Open. 2024;7(5):e2411707. DOI: 10.1001/jamanetworkopen.2024.11707