プロテインは体の炎症に影響するのか — ホエイの抗炎症効果とC反応性タンパク質の科学

ホエイプロテインが炎症マーカー(CRP・IL-6)に与える影響をメタアナリシスから整理する。効果は条件付きで、高用量・高CRPベースライン集団では有意な低下が報告されている。ソイとの作用の違いも解説する。

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プロテイン補給が体の炎症に影響するかどうかは、条件によって異なる。ホエイプロテインの全体的な抗炎症効果は確立されておらず、1日20g以上の摂取かつベースラインCRPが3 mg/L以上の集団に限定したサブグループ解析で、CRP(C反応性タンパク質)が有意に低下すること(-0.72 mg/L)が報告されている(Zhou et al., 2015, Nutrients)。無条件に「ホエイは炎症を下げる」と断定できるエビデンスは現時点では不足している。

プロテインと炎症マーカーの関係はどうなっているのか

炎症の評価に用いられる主な指標は、血清CRP(C-reactive protein)とIL-6(インターロイキン-6)、TNF-α(腫瘍壊死因子-α)である。プロテイン補給がこれらのマーカーに与える影響を調べたメタアナリシスの結果は一貫していない。

9件のRCT(無作為化比較試験)を統合したメタアナリシス(Zhou et al., 2015, Nutrients, Vol.7(2), pp.1131–1143)では、ホエイ補給全体ではCRPの有意な低下は確認されなかった(-0.42 mg/L、95% CI -0.96〜0.13)。しかし「1日20g以上」のサブグループでは -0.72 mg/L(有意)、「ベースラインCRP 3 mg/L以上」のサブグループでは -0.67 mg/L(有意)の低下が観察された。この知見は、効果が用量依存性を持ち、かつ慢性的な低グレード炎症のある集団で特に現れる可能性を示唆している。

急性・短期介入を対象にした25件の臨床試験のレビュー(Akbari et al., 2023, Galen Medical Journal, Vol.12, e2441)では、7件(28%)のみが有意な炎症マーカーの低下を報告しており、1件は炎症の悪化を報告していた。研究の84%はエビデンス品質が低いと評価されており、短期摂取による抗炎症効果を確定的に示すには証拠が不十分である。

ホエイとソイでは作用する炎症マーカーが異なるのか

ホエイプロテインとソイ(大豆)プロテインは、主に作用するマーカーが異なる点が高齢者を対象とした系統的レビューから示されている。

31件のRCTを統合したメタアナリシス(Prokopidis et al., 2023, British Journal of Nutrition, Vol.129(5), pp.759–770)では、高齢者においてホエイ補給がIL-6を有意に低下させ(MD -0.79 pg/mL、95% CI -1.15〜-0.42)、ソイ補給がTNF-αを有意に低下させた(MD -0.16 pg/mL)。同一研究内で両者の効果部位が分かれており、「どちらが優れているか」という単純な比較ではなく、炎症経路の違いとして解釈される。この結果は高齢者(older adults)を対象としており、若年・中年層への直接的な一般化には留意が必要である。

ベジタリアン食パターン全体とCRPの関係を調べたメタアナリシス(Craddock et al., 2019, Advances in Nutrition, Vol.10(3), pp.433–451)では、ベジタリアン食がCRPを有意に低下させることが示されているが(WMD: -0.61 mg/L)、これは食事パターン全体の効果であり、植物性プロテイン単独の抗炎症効果とは区別して解釈する必要がある。植物性対動物性プロテインを直接比較したRCTは現時点で限定的であり、健常者での結論を出すには証拠が不足している。

ホエイ由来成分(ラクトフェリン・α-ラクトアルブミン)はどのように炎症に関与するのか

ホエイプロテインにはラクトフェリン(lactoferrin)とα-ラクトアルブミン(alpha-lactalbumin)が含まれており、これらの成分が炎症に関与するメカニズムが研究されている。

ラクトフェリン補給(単独)の抗炎症効果については、25研究・2,329名を対象としたメタアナリシス(Berthon et al., 2022, Advances in Nutrition, Vol.13(5), pp.1799–1819)が成人のIL-6の有意な低下を報告している(MD -24.9 pg/mL、95% CI -41.64〜-8.08)。CRPへの有意な変化は確認されなかった(SMD -0.09)。ただし、この研究はラクトフェリン補給剤単独の効果であり、ホエイプロテイン全体の効果と同一視することはできない。ホエイプロテインに含まれるラクトフェリンの含有量は製品・製法により異なり、ほとんどのメーカーは含有量を公表していない。

α-ラクトアルブミンについては、LPS(リポ多糖)誘導のマクロファージでIL-6・TNF-αの上昇を抑制するという知見が細胞実験(in vitro)で示されている。NF-κBシグナルを介した経路が主要メカニズムとして示唆されているが、ヒト臨床試験でのエビデンスは現時点で確認されておらず、細胞実験レベルの知見にとどまる。

運動後の筋損傷マーカーとDOMSへの影響はどう違うのか

筋力トレーニング後に生じる遅発性筋肉痛(DOMS: Delayed Onset Muscle Soreness)と、血液検査で計測される筋損傷マーカー(CK・ミオグロビン)は別物として区別する必要がある。

18〜55歳の男性92名を対象としたRCT(Nieman et al., 2020, Nutrients, Vol.12(8), p.2382)では、偏心性運動後にホエイを補給した群で、回復4・5日目に筋損傷マーカー(CK・ミオグロビン)が有意に低下した(Cohen’s d >0.80の大きな効果量)。一方、DOMS(筋肉痛スコア)への効果は有意ではなかった。炎症マーカーの改善と主観的な筋肉痛の軽減は必ずしも一致しないことを示す結果である。

この知見は18〜55歳の男性を対象としたデータであり、高齢者・女性・若年アスリートへの適用には追加研究が必要である。ホエイ補給が運動後の筋損傷マーカーを低減するという作用は、Inflammaging(加齢性慢性低レベル炎症)の文脈で特に関心が高まっており、Draganidis et al.(2016, Journal of Nutrition, Vol.146(10), pp.1940–1952)はホエイ・大豆プロテインが加齢性炎症に対して有望である可能性を示しつつ、炎症状態にある高齢者への同化効果についてはさらなるRCTが必要であると指摘している。

プロテインの種類によって炎症への関与成分はどう違うのか

本記事の製品スペックは各メーカー公式サイトの情報に基づく(2026年3月時点)。各製品の代表フレーバーで比較している。

製品タンパク質源甘味料特記成分第三者認証
BAZOOKA WPHホエイ加水分解(WPH)羅漢果(天然)ラクトフェリン・α-ラクトアルブミン含有、マルチビタミン13種Informed Choice
BAZOOKA WPCホエイ濃縮(WPC)羅漢果/ステビア(天然)ラクトフェリン・α-ラクトアルブミン含有Informed Choice
GronG ソイプロテイン大豆(ソイ)ステビア(天然)大豆イソフラボン含有(TNF-α関連)未確認
Myprotein ピープロテイン アイソレートえんどう豆不使用(プレーン)大豆イソフラボンなし未確認
ボディウイング 大豆プロテイン大豆(ソイ)不使用大豆イソフラボン含有未確認

ラクトフェリン・α-ラクトアルブミンはホエイプロテインに由来する成分として含まれるが、各製品の含有量はメーカーから公表されていない場合が多い。ソイプロテインのTNF-α関連効果については、イソフラボン含有量が製品により異なるため、同一カテゴリ内でも効果の差が生じる可能性がある。

よくある質問

Q: ホエイプロテインとソイプロテインでは、どちらが炎症に対して効果的か?

A: 一概に比較できない。Prokopidis et al.(2023)による高齢者対象のメタアナリシスでは、ホエイはIL-6の低下に、ソイはTNF-αの低下に作用する傾向が示されており、作用するマーカーが異なる。どちらが「優れている」という結論は出ておらず、個人の健康状態や目的によって異なる可能性がある。

Q: 加水分解ホエイ(WPH)と通常のホエイ(WPC)で炎症への影響は異なるのか?

A: WPH特有の炎症・尿酸値への影響を調べた研究として、Somoto et al.(2025, Food Science & Nutrition)によるRCT(n=60、5g/日・12週間)がある。WPH摂取群で血清尿酸値(SUA)が有意に低下した(6.84→6.60 mg/dL、p=0.004)との報告があるが、この知見はWPH固有のものであり、WPC全般に適用できるわけではない。WPCとWPHを直接比較した炎症マーカー研究は現時点で限定的である。

Q: プロテインを摂取すると尿酸値や痛風に影響するのか?

A: 乳由来タンパク質と尿酸の関係については複数の研究がある。WPH(5g/日・12週間)の二重盲検RCTで血清尿酸値の有意な低下が報告されている(Somoto et al., 2025)。また、低脂肪乳製品と痛風リスクの逆相関を示す観察データもある(Dalbeth et al., 2011, Current Rheumatology Reports)。ただし、これらは研究で報告された事実の紹介であり、痛風患者の食事療法については医師・管理栄養士への相談が必要である。高尿酸血症や痛風に関する個別の判断は医療専門家に委ねられたい。

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参考文献

  • Zhou LM et al., 2015, Nutrients, Vol.7(2), pp.1131–1143. DOI: 10.3390/nu7021131
  • Prokopidis K et al., 2023, British Journal of Nutrition, Vol.129(5), pp.759–770. DOI: 10.1017/S0007114522001787
  • Akbari A et al., 2023, Galen Medical Journal, Vol.12, e2441. DOI: 10.31661/gmj.v12i.2441
  • Berthon BS et al., 2022, Advances in Nutrition, Vol.13(5), pp.1799–1819. DOI: 10.1093/advances/nmac047
  • Nieman DC et al., 2020, Nutrients, Vol.12(8), p.2382. DOI: 10.3390/nu12082382
  • Somoto Y et al., 2025, Food Science & Nutrition, Vol.13(11), e71150. DOI: 10.1002/fsn3.71150
  • Draganidis D et al., 2016, Journal of Nutrition, Vol.146(10), pp.1940–1952. DOI: 10.3945/jn.116.230912
  • Dalbeth N et al., 2011, Current Rheumatology Reports, Vol.13(2), pp.132–137.
  • Craddock JC et al., 2019, Advances in Nutrition, Vol.10(3), pp.433–451. DOI: 10.1093/advances/nmy112