プロテインの飲み過ぎは太るのか — カロリー収支・脂肪蓄積・適正量の科学的根拠
プロテインを過剰摂取すると体脂肪が増えるのか、de novo lipogenesis(脂肪新合成)の仕組みと抵抗性トレーニング実施者を対象としたRCTデータ、1日の適正タンパク質量をガイドライン比較で解説する。
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プロテインを必要量以上に摂取しても、総カロリー摂取量が消費量を超えなければ体脂肪は増加しない。Jose Antonio et al.(2014, Journal of the International Society of Sports Nutrition)の抵抗性トレーニング実施者(n=30)を対象とした8週間RCTでは、1日4.4g/kg体重(通常の約2.4倍)のタンパク質を摂取したグループでも体重・体脂肪量に有意な変化は認められなかった。一方、カロリー収支がプラスに転じれば、タンパク質由来のカロリーも体脂肪増加に寄与する。「プロテインを飲んでいる」ではなく「総カロリー摂取量が増えているか」が判断の軸になる。
タンパク質の過剰摂取は体脂肪を増やすのか
タンパク質は、脂質や炭水化物と同様に1g当たり約4kcalのエネルギーを持つ。したがって、プロテインを追加摂取すれば総カロリー摂取量は増加する。問題は、その余剰カロリーが体脂肪として蓄積されるかどうかである。
George A. Bray et al.(2012, JAMA)は代謝病棟RCT(n=25)で、メンテナンスカロリーを約950kcal/日超過する食事を8週間提供した。低タンパク質群(エネルギー比5%)・標準タンパク質群(15%)・高タンパク質群(25%)の3群を比較したところ、体脂肪の増加量は3群間で有意差がなかった。タンパク質の摂取量にかかわらず、過剰カロリーは体脂肪として蓄積されるという知見が示されている(Bray et al., 2012, JAMA)。ただしこの研究では、除脂肪体重(筋肉量を含む体脂肪以外の組織)は標準・高タンパク質群でそれぞれ+2.87kg・+3.18kg増加したのに対し、低タンパク質群では-0.70kgと減少した。
抵抗性トレーニング実施者を対象とした研究では異なる傾向が報告されている。Antonio et al.(2014, JISSN, DOI: 10.1186/1550-2783-11-19)では、4.4g/kg/日というきわめて高いタンパク質摂取群(n=30)において、8週間のトレーニング継続下で体脂肪量に有意な変化は認められなかった。同グループのフォローアップ研究(Antonio et al., 2015, JISSN, DOI: 10.1186/s12970-015-0100-0)では、3.4g/kg/日の高タンパク質群が2.3g/kg/日の通常タンパク質群より体脂肪量が有意に少なかった(-1.7±2.3kg vs -0.3±2.2kg)。これらの研究対象はいずれも抵抗性トレーニングを継続している成人であり、非トレーニング者への一般化には限界がある点に留意が必要である。
タンパク質のカロリーは脂肪として蓄積されにくいのか
体内でタンパク質がde novo lipogenesis(脂肪新合成)を経て体脂肪に変換される際には、複数の代謝ステップを要する。タンパク質はまずアミノ酸に分解され、過剰分は脱アミノされてアセチルCoAを経由してから初めて脂肪酸合成経路に入る。この変換効率はグルコースが直接脂肪酸に変換されるルートと比較して低い。
タンパク質は3大栄養素の中で食事誘発性熱産生(diet-induced thermogenesis; DIT)が最も高い。Westerterp et al.(2004, Nutrition & Metabolism)によれば、タンパク質のDITは20〜30%であるのに対し、炭水化物は5〜10%、脂質は0〜3%である。つまり100kcalのタンパク質を摂取した場合、20〜30kcalは消化・吸収・代謝のプロセスで消費されるため、正味のカロリーは70〜80kcalとなる。この熱産生の高さが「タンパク質は太りにくい」という経験的認識の代謝的背景にある。
一方、2024年の研究(PMID: 39461344)では、アミノ酸が肝臓での脂質合成における主要な炭素源となりうることが示されており、「タンパク質は体脂肪になりにくい」という従来のコンセンサスを一部修正する知見として注目されている。ただしこの研究はマウス・細胞実験系のデータが中心であり、臨床条件下での知見の適用には留保が必要である。現時点では「カロリー超過の条件下でタンパク質由来のカロリーも体脂肪増加に寄与しうる」という理解が適切であり、「体脂肪に変わらない栄養素」ではないことに注意が必要である。
1日の適正タンパク質量はどれくらいか
複数のガイドラインが異なる観点から1日のタンパク質摂取量の目安を示している。Morton et al.(2018, British Journal of Sports Medicine)のメタアナリシス(49研究・1,863名)では、抵抗性トレーニング中のタンパク質補充による除脂肪体重増加効果は1.62g/kg/日(95%CI: 1.03〜2.20)でプラトーに達することが示されている。これを超えるタンパク質摂取は筋肉増量への追加的な寄与がほぼないことを意味する(Morton et al., 2018, BJSM)。
| ガイドライン | 推奨量(g/kg/日) | 対象・条件 |
|---|---|---|
| 厚生労働省 食事摂取基準2020 推奨量 | 0.83(男性65g/日、女性50g/日) | 成人全般 |
| 厚生労働省 食事摂取基準2020 目標量 | エネルギー比13〜20%E | 18〜49歳 |
| Morton et al. 2018(メタアナリシス) | 1.62(プラトー上限) | 抵抗性トレーニング実施者 |
| ISSN 2017 ポジションスタンド | 1.4〜2.0 | 筋肉の増強・維持 |
| ISSN 2017 ポジションスタンド | 2.3〜3.1 | カロリー制限下でのLBM維持 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、タンパク質の耐容上限量は設定されていない。これは「何グラム摂取しても安全」を意味するのではなく、「科学的根拠が不十分なため数値化できない」という意味である点に留意が必要である。
ISSN(国際スポーツ栄養学会)が2017年のポジションスタンドで示した1.4〜2.0g/kg/日は筋肉増強・維持を目的とした場合の範囲であり、カロリー制限下では2.3〜3.1g/kg/日を推奨している(Jäger et al., 2017, JISSN, DOI: 10.1186/s12970-017-0177-8)。なお、このポジションスタンドはレビュー論文であり、ISSNが引用する個別研究の知見を統合した推奨値として理解する必要がある。
主要プロテイン製品の1食あたりカロリー・脂質・糖質はどれくらいか
プロテイン製品のカロリーは1食あたり100〜145kcal程度の範囲に分布している。脂質は0.1〜2.9g、糖質は1〜7.6gと製品間で差がある。以下の比較表は各メーカー公式サイトの情報に基づく(2026年3月時点)。1食量が製品によって25〜35gと異なるため、比較の際は1食量も参照されたい。
| 製品 | 製法 | 1食量(g) | カロリー(kcal) | タンパク質(g) | 脂質(g) | 糖質(g) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| マイプロテイン Impact ホエイ(ノンフレーバー) | WPC | 25 | 103 | 21 | 1.9 | 1 |
| SAVAS ホエイプロテイン100(リッチショコラ) | WPC | 28 | 108 | 19.5 | 2.0 | 2.3 |
| BAZOOKA WPH(サワーレモン) | WPH | 30 | 111 | 20.1 | 0.1 | 7.4 |
| BAZOOKA WPC(プレーン) | WPC | 30 | 115 | 22 | 1.7 | 2.8 |
| be LEGEND ホエイプロテイン WPC(ナチュラル) | WPC | 29 | 118 | 20.9 | 1.5 | 4.1 |
| GronG ホエイプロテイン100 スタンダード(ナチュラル) | WPC | 30 | 119 | 22.9 | 1.8 | 2.9 |
| VALX ホエイプロテイン WPC(プレーン) | WPC | 30 | 119 | 23.3 | 1.7 | 2.8 |
| DNS プロテインホエイ100(プレミアムチョコレート) | WPC | 35 | 142 | 24.2 | 2.9 | 4.7 |
カロリー昇順で並べた場合、マイプロテイン(25g/103kcal)が最低水準で、DNSは1食量が35gと他製品より多い点に留意が必要である。各製品の1gあたりカロリーを比較すると、全製品がほぼ3.5〜4.1kcal/gの範囲に収まる。プロテイン飲料1食で摂取するカロリーは100〜120kcal程度であり、食事に追加する場合は同等のカロリーを食事から差し引かない限り総摂取カロリーが増加する。
よくある質問
就寝前にプロテインを飲むと太るのか
就寝前のタンパク質摂取が体脂肪を増加させるとする根拠は現時点では確立されていない。Snijders et al.(2015, Journal of Nutrition)が就寝前のカゼイン補充(27.5gタンパク質)と抵抗性トレーニングを組み合わせた12週間試験を実施したところ、プラセボ群と比較して筋横断面積・筋力が有意に増加し、体脂肪量に有意差は認められなかった。ただしこの研究対象はカゼインプロテインであり、ホエイやWPHとは吸収速度が異なる。就寝前摂取が体脂肪を増加させるかどうかを直接比較した研究ではなく、筋肉への影響を見た試験であることに留意が必要である。
WPHプロテインはWPCより脂質・カロリーが低いのか
WPH(ホエイプロテイン加水分解物)は製法上、脂質が除去される工程を経るため、同容量のWPC製品と比較して脂質量が低い傾向がある。比較表のBAZOOKA WPH(サワーレモン、1食30g)は脂質0.1gであり、同1食30gのBAZOOKA WPC(1.7g)と比較すると差がある。ただし1食あたりのカロリーは各製品とも103〜142kcalの範囲であり、脂質0.1gと他のWPC製品(1.5〜2.9g)の差は1食あたり約13〜25kcalにすぎない。体脂肪への影響はいずれの製品でも総カロリー収支によって決まる。
プロテインを飲み過ぎると安全性に問題はないのか
抵抗性トレーニング実施者を対象とした長期研究では、高タンパク質摂取が血中脂質・肝機能・腎機能の臨床マーカーに有意な悪影響を与えないことが報告されている。Antonio et al.(2016, Journal of Nutrition and Metabolism)は1日2.51〜3.32g/kg体重の高タンパク質食を1年間継続した成人男性(n=14)において、これらのマーカーに有意な変化は認められなかったと報告している。ただしこれはトレーニング実施者かつ健常成人を対象とした研究であり、すべての条件の人に当てはまるものではない。個別の健康状態に応じた判断は医療専門家に相談されたい。
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参考文献
- Jose Antonio et al., 2014, Journal of the International Society of Sports Nutrition, 11:19. DOI: 10.1186/1550-2783-11-19
- Jose Antonio et al., 2015, Journal of the International Society of Sports Nutrition, 12:39. DOI: 10.1186/s12970-015-0100-0
- Jose Antonio et al., 2016, Journal of Nutrition and Metabolism. DOI: 10.1155/2016/9104792
- George A. Bray et al., 2012, JAMA, 307(1):47-55. DOI: 10.1001/jama.2011.1918
- Klaas R. Westerterp, 2004, Nutrition & Metabolism, 1:5. PMC524030
- Robert W. Morton et al., 2018, British Journal of Sports Medicine, 52(6):376-384. DOI: 10.1136/bjsports-2017-097608
- Ralf Jäger et al., 2017, Journal of the International Society of Sports Nutrition. DOI: 10.1186/s12970-017-0177-8
- Tim Snijders et al., 2015, Journal of Nutrition, 145(6):1178-1184. DOI: 10.3945/jn.114.208371
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/syokuji_kijyun.html