高タンパク食は男性ホルモン(テストステロン)を下げるのか — 低下が報告された条件と通常量の研究

高タンパク食で男性の総テストステロンが下がるとの報告は、タンパク質35%エネルギー以上の低炭水化物食を3週未満摂った3研究・26名の結果。低下が出た条件と運動者の通常量(ISSN 1.4〜2.0g/kg/日)の研究を整理する。

本記事は公開された学術論文および公的機関の情報に基づく事実の整理であり、特定の疾患の診断・治療・予防を目的としたものではない。症状や検査値に関する判断は、医師等の医療専門家に相談されたい。

高タンパク食で男性の総テストステロンが下がるという報告の中心は、低炭水化物食のメタ分析(27研究・309名)のうち、タンパク質が総エネルギーの35%以上を占めた3研究・26名のサブグループである。いずれも3週未満の介入で、安静時の総テストステロンは標準化平均差(SMD)−1.08(95%信頼区間 −1.67〜−0.48)と有意に低かった。タンパク質35%未満の低炭水化物食では、一貫した変化は見られていない(Whittaker & Harris, 2022)。

「高タンパクでテストステロンが下がる」の根拠はどの研究か

根拠として引用されるのは、Whittaker & Harris(2022)の系統的レビュー・メタ分析である。ただし題名のとおり、この研究は「低炭水化物食と男性のコルチゾール・テストステロン」を扱ったもので、高タンパク食そのもののメタ分析ではない。

対象は健常成人男性への介入研究27研究・309名で、平均年齢は27.3±4.7歳、BMIは24.8、約95%が身体活動習慣を持っていた。炭水化物35%以下の食事と35%超の食事を比べ、その中でタンパク質の割合別にサブグループ解析をしている。「高タンパク」はタンパク質が総エネルギーの35%以上という定義で、低炭水化物食に含まれる一部の群にあたる。

測定項目は安静時と運動後の総テストステロン、およびコルチゾールだった。遊離テストステロンと性ホルモン結合グロブリン(SHBG)は、このメタ分析では個別に解析されていない。「遊離テストステロンやSHBGも下がる」とは、この研究からは言えない。

低下が出たのはどんな条件か

低下が確認されたのは、タンパク質が総エネルギーの35%以上で、介入が3週未満という限られた条件である(個別の研究では3〜10日間、Whittaker, 2023)。該当するのは3研究・計26名で、安静時の総テストステロンが有意に低く(SMD −1.08、p<0.01)、抄録では約5.23 nmol/Lの低下と記載されている(Whittaker & Harris, 2022)。

安静時の総テストステロンについては、中等度タンパク(35%未満)の低炭水化物食では一貫した変化が見られていない(SMD −0.31 [−0.74, 0.13]、p=0.17)。運動後(0時間)の総テストステロンは、高タンパク・短期の1研究・9名でSMD −1.01 [−2, −0.01]、p=0.05だった(Whittaker & Harris, 2022)。

体重あたりの量は、同じ著者の解説論文(Whittaker, 2023)が整理している。低下が出た3研究のタンパク質摂取量は3.5〜3.9 g/kg/日で、対照群は0.9〜1.8 g/kg/日だった。著者は、3.4 g/kg/日を超える量を「very high」とし、1.25〜3.4 g/kg/日では一貫した低下は見られないと整理している。3.4 g/kg/日は著者による分類の区切りで、実験で境界として検出された値ではない。2〜3.4 g/kg/日の帯で「一貫した低下なし」とした根拠は解説論文の整理であり、安全な上限を示したものではない。体重70kgなら、3.4 g/kg/日は238 g/日に相当する。エネルギー比は2022年のメタ分析、g/kg換算は2023年の解説論文に由来する数値で、出典が異なる点に注意が必要である。

Whittaker(2023)が整理した3研究の条件と低下幅は以下である。

  • Anderson(1987): 7名・10日間のクロスオーバー試験。タンパク質44%エネルギー(3.9 g/kg/日、対照は0.9 g/kg/日)で、総テストステロンは−3.36 nmol/L(−20.7%)
  • Jaffe(2013): 10名・7日間。タンパク質55%エネルギー(3.7 g/kg/日、対照は1.8 g/kg/日)で、−14.46 nmol/L(−29.8%)
  • Langfort(2001): 9名・3日間。タンパク質45%エネルギー(3.5 g/kg/日、対照は1.6 g/kg/日)で、−3.44 nmol/L(−15.5%)

Whittaker(2023)自身が、3研究・計26名で証拠の強さに限りがあり、3〜10日では長期の影響が分からないと述べている。3研究の炭水化物量は5〜35%と幅がある一方、タンパク質摂取量は3.5〜3.9 g/kg/日と近い。この点から著者は、低下の要因を炭水化物でなくタンパク質と解釈している。因果は確定していない。対照食との間で脂質やエネルギー量も変わっており、タンパク質以外の要因を除いた比較ではない。最も新しい低下報告は2013年の研究である。

Anderson(1987)は食事を厳密に管理した実験で、対象は7名である(Anderson et al., 1987, Life Sciences)。通常の食生活やプロテイン補給の延長として読むことはできない。

運動者が摂る通常の量では何が分かっているか

運動習慣のある人の推奨量は、低下が報告された量とかなり離れている。ISSNのポジションスタンドは、運動者のタンパク質摂取を1.4〜2.0 g/kg/日としている(Jäger et al., 2017)。体重70kgなら98〜140 g/日である。一方、低下が出た研究は3.5〜3.9 g/kg/日だった。

日本の基準を見ると、食事摂取基準(2025年版)のタンパク質の目標量は、18〜49歳で総エネルギーの13〜20%である。男性の推奨量は18〜49歳で65 g/日とされている(厚生労働省)。低下が報告された35%以上は、この目標量の上限を大きく超える水準である。摂取量の詳細は1日のタンパク質摂取量は何gかで整理している。

通常量の補給でテストステロンを測った試験は、小規模なものが中心である。補給量とテストステロンの関係を統合した無作為化試験のメタ分析は、2026年10月時点で確認できなかった。

  • Kalman(2007): 健常男性20名(平均30.7±6.5歳)が12週間、レジスタンストレーニングに加えて1日50 gのタンパク質(大豆分離・大豆濃縮・ホエイブレンド・大豆+ホエイの4群、1群あたり約5名)を摂った。総テストステロンと遊離テストステロンに有意な変化は検出されなかった。食事を含めた総摂取量(g/kg/日)は記事中の閾値と比べられる形で示されておらず、小規模試験のため「影響がないことの証明」ではない

エネルギー比35%でも低下しなかった試験

エネルギー比と体重あたりの量は、同じ尺度ではない。同じ35%でも、総摂取エネルギーが少なければタンパク質の絶対量は小さくなる。

Moran(2016)は、過体重・肥満の男性118名(20〜65歳)が約7 MJ/日のエネルギー制限下で52週間、高タンパク食(タンパク質35%・炭水化物40%)または高炭水化物食(タンパク質17%)を続けた試験の二次解析である(完了68/118名)。両群とも総テストステロン・遊離テストステロン・SHBGが上昇し、食事間の差はなかった。

Moran(2016)のタンパク質35%は、2022年のメタ分析の閾値と同じ水準である。それでもテストステロンは下がっていない。ただし対象は減量中の肥満男性で、体重減少を伴う条件であり、健常な運動者を対象とした2022年の結果と直接は比べられない。上昇の理由も、タンパク質の作用とは言えない。この結果は、エネルギー比だけでは低下を予測できないことを示している。

ソイとホエイで男性ホルモンへの影響に違いはあるのか

大豆(ソイ)については、男性の生殖ホルモンへの影響を調べたメタ分析がある。大豆タンパク質の摂取とイソフラボン補給の両方の介入を含む41研究を統合したReed(2021)では、総テストステロン(1,753名)・遊離テストステロン(752名)・SHBG(967名)などのいずれにも、大豆タンパク質やイソフラボンの摂取による有意な影響は見られなかった。用量や介入期間による差も確認されていない。

先行するHamilton-Reeves(2010)のメタ分析も、同様の結論だった。Reed(2021)はその更新版にあたる。

ホエイとの比較では、Kraemer(2013)が、レジスタンストレーニング経験のある20代前半の男性10名を対象に、ホエイ分離・大豆分離・マルトデキストリンを1日20 g×14日摂取させた。大豆群で運動後のテストステロン反応が一部低下したが、これは急性の運動後反応で、安静時の値ではない。10名と小規模であり、ソイについての主な根拠は上記のメタ分析である。ソイとホエイの筋肉への作用の比較はソイプロテインとホエイプロテインはどちらがいいのか、イソフラボンの安全性評価は大豆プロテインは女性ホルモン・甲状腺に影響するのかにまとめている。

気になる人は何を確認すればよいか

疲労感・性欲の変化など気になる症状がある場合は、食事量の確認より先に医療機関の判断がある。食事の面では、自分の摂取量をエネルギー比と体重あたりの量の両方で把握すると、研究条件と比べられる。食事記録アプリなどで1日のタンパク質量を出し、体重で割れば g/kg/日が分かる。エネルギー比は、タンパク質量(g)に4 kcalを掛けて総摂取エネルギーで割る。

研究で低下が出たのは、食事の35%以上をタンパク質で占め、1日あたり3.5 g/kg以上を数日〜10日摂る条件だった。これは運動者の推奨量(ISSN 1.4〜2.0 g/kg/日)の2倍近い量にあたる(Jäger et al., 2017; Whittaker, 2023)。この距離感は研究条件との比較であり、個々の健康状態を評価するものではない。

症状やホルモン検査値の評価・治療の判断は、泌尿器科や内科などの医療機関に相談できる。食事内容の調整は、管理栄養士に相談する方法もある。

研究ごとの条件を並べるとどう違うのか

研究対象タンパク質量期間総テストステロンの結果
Whittaker & Harris(2022)高タンパク群健常男性3研究・26名35%エネルギー以上3〜10日低下
Whittaker & Harris(2022)中等度タンパク群健常男性(低炭水化物食)35%未満記載なし一貫した変化なし
Anderson(1987)健常男性7名44%エネルギー(3.9 g/kg/日)10日−3.36 nmol/L(−20.7%)
Kalman(2007)健常男性20名(RT併用)補給50 g/日12週有意な変化なし
Moran(2016)過体重・肥満男性118名(減量食)35%エネルギー52週上昇(食事間差なし)
Reed(2021)男性(41研究のメタ分析、ソイ)大豆タンパク質・イソフラボン研究により異なる有意な影響なし

表は対象と条件が近い研究の順に並べており、並び順は結果の優劣を示さない。対象・エネルギー条件・期間が研究ごとに異なるため、結果を直接比べることはできない。

よくある質問

プロテインを毎日飲むとテストステロンは下がるのか

通常量のプロテイン補給でテストステロンが下がったとする査読付きのヒト試験は、2026年10月時点で確認できなかった。Kalman(2007)では、レジスタンストレーニングに加えて1日50 gのタンパク質を12週間摂った男性20名で、総テストステロン・遊離テストステロンに有意な変化は検出されなかった。小規模試験のため、影響がないことの証明にはならない。低下が報告されたのは、食事の35%以上をタンパク質で占める3.5〜3.9 g/kg/日の条件である。ここでいう補給の研究は、ホエイと大豆のプロテインを対象にしたものである。

体重1kgあたり何gなら、研究で低下が出た量と重ならないのか

何gまでなら安全と示せる研究はない。低下が出た3研究のタンパク質量は3.5〜3.9 g/kg/日で、著者は3.4 g/kg/日超を「very high」と整理している(Whittaker, 2023)。運動者向けのISSN推奨は1.4〜2.0 g/kg/日で、両者には2倍近い差がある。この比較は研究条件との距離を示すもので、個人の安全な上限を示すものではない。

ソイプロテインは男性ホルモンに影響するのか

41研究のメタ分析(Reed, 2021)では、大豆タンパク質・イソフラボンの摂取は総テストステロン・遊離テストステロン・SHBGのいずれにも有意な影響を示さなかった。ホエイ単独で安静時のテストステロンを測った試験は少ない。ホエイと大豆を比べたKraemer(2013)では、大豆群で運動直後のテストステロン反応が一部低かったが、安静時の値ではなく10名の試験である。

関連記事

参考文献

  • Whittaker J, Harris M (2022). Low-carbohydrate diets and men’s cortisol and testosterone: Systematic review and meta-analysis. Nutrition and Health, 28(4), 543-554. https://doi.org/10.1177/02601060221083079
  • Whittaker J (2023). High-protein diets and testosterone. Nutrition and Health, 29(2), 185-191. https://doi.org/10.1177/02601060221132922
  • Anderson KE, Rosner W, Khan MS, New MI, Pang S, Wissel PS, Kappas A (1987). Diet-hormone interactions: Protein/carbohydrate ratio alters reciprocally the plasma levels of testosterone and cortisol and their respective binding globulins in man. Life Sciences, 40(18), 1761-1768. https://doi.org/10.1016/0024-3205(87)90086-5 DOI: 10.1016/0024-3205(87)90086-5
  • Moran LJ, Brinkworth GD, Martin S, Wycherley TP, Stuckey B, Lutze J, Clifton PM, Wittert GA, Noakes M (2016). Long-Term Effects of a Randomised Controlled Trial Comparing High Protein or High Carbohydrate Weight Loss Diets on Testosterone, SHBG, Erectile and Urinary Function in Overweight and Obese Men. PLOS ONE, 11(9), e0161297. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0161297
  • Kalman D, Feldman S, Martinez M, Krieger DR, Tallon MJ (2007). Effect of protein source and resistance training on body composition and sex hormones. Journal of the International Society of Sports Nutrition, 4, 4. https://doi.org/10.1186/1550-2783-4-4
  • Kraemer WJ, Solomon-Hill G, Volk BM, Kupchak BR, Looney DP, Dunn-Lewis C, Comstock BA, Szivak TK, Hooper DR, Flanagan SD, Maresh CM, Volek JS (2013). The Effects of Soy and Whey Protein Supplementation on Acute Hormonal Responses to Resistance Exercise in Men. Journal of the American College of Nutrition, 32(1), 66-74. https://doi.org/10.1080/07315724.2013.770648
  • Reed KE, Camargo J, Hamilton-Reeves J, Kurzer M, Messina M (2021). Neither soy nor isoflavone intake affects male reproductive hormones: An expanded and updated meta-analysis of clinical studies. Reproductive Toxicology, 100, 60-67. https://doi.org/10.1016/j.reprotox.2020.12.019
  • Hamilton-Reeves JM, Vazquez G, Duval SJ, Phipps WR, Kurzer MS, Messina MJ (2010). Clinical studies show no effects of soy protein or isoflavones on reproductive hormones in men: results of a meta-analysis. Fertility and Sterility, 94(3), 997-1007. https://doi.org/10.1016/j.fertnstert.2009.04.038
  • Jäger R, Kerksick CM, Campbell BI, et al. (2017). International Society of Sports Nutrition Position Stand: protein and exercise. Journal of the International Society of Sports Nutrition, 14, 20. https://doi.org/10.1186/s12970-017-0177-8
  • 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 たんぱく質 (2024年). https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316462.pdf