クレアチンはいつ飲むのが効果的か — トレーニング前後・食事との摂取タイミング
クレアチンの摂取タイミング(トレーニング前後・食事との組み合わせ・朝夜)を研究論文で比較する。運動後摂取が数値上優位な傾向はあるが、統計的有意差は小さく、毎日継続して飽和状態を維持することが本質的に重要と複数のレビューが指摘する。
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クレアチンの摂取タイミングに関する研究では、トレーニング後の摂取が筋量増加において数値上優位な傾向を示す一方、統計的有意差は小さく、方法論的制約から「特定のタイミングへの強いこだわりは現時点で根拠不十分」と複数のレビューが結論づけている(Ribeiro et al., 2021, Nutrients)。炭水化物またはタンパク質との同時摂取はインスリン分泌を介して筋クレアチン蓄積を促進し、炭水化物93gを同時摂取した群では単独群より筋クレアチン蓄積量が60%増加することが示されている(Green et al., 1996, American Journal of Physiology - Endocrinology and Metabolism)。最も重要な原則は、タイミングを最適化する前に毎日摂取して筋内クレアチン飽和を維持することである。
クレアチンの摂取タイミングはパフォーマンスに影響するのか
クレアチンは摂取後2時間以内に血中濃度がピークに達し、約4時間循環する(Candow et al., 2022, Frontiers in Sports and Active Living)。このため、摂取から筋肉への取り込みタイミングが一定の影響を持つ可能性は理論上考えられる。しかし現実には、クレアチンの主な作用機序は単回摂取の急性効果ではなく、数日〜数週間にわたる継続摂取による筋内クレアチンフォスフェート(PCr)の飽和蓄積にある。
タイミング研究における最大の課題はサンプルサイズの小ささである。タイミング比較の代表的RCTであるAntonio & Ciccone(2013, JISSN)の被験者は19名にとどまり、統計的検出力が限られていた。この研究で得られた「傾向レベルの差」は、後続のメタ解析(Forbes & Candow, 2018)でも引き継がれ、3研究のみを対象とした解析では筋量SMD 0.52(95%CI 0.03–1.00, p=0.04)という境界値に近い効果量が示されるにとどまった。
トレーニング前と後ではどちらが効果的か
Antonio & Ciccone(2013, Journal of the International Society of Sports Nutrition, Vol.10)は19名の健康男性ボディビルダーを対象に、クレアチン5gを運動直前に摂取する群と運動直後に摂取する群で4週間比較した。運動後群の除脂肪体重(FFM)増加量は+2.02±1.17kgで、運動前群の+0.88±1.84kgを数値上上回ったが、統計的有意差には到達しなかった(n=19と少人数のため検出力不足)。ベンチプレス1RMの改善も運動後群(+7.75±6.16kg)が運動前群(+6.57±8.15kg)をわずかに上回ったが、同様に有意差は見られなかった。
Candow et al.(2015, Applied Physiology, Nutrition, and Metabolism, 40(7))は高齢者50〜71歳39名を3群(運動前・運動後・プラセボ)に無作為割付した32週間RCTを実施した。除脂肪体重の増加は運動後群(Δ+3.0±1.9kg)がプラセボ群(Δ+0.5±2.1kg)を有意に上回ったが、運動前群との間に有意差は認められなかった。筋力改善はタイミングに関わらず両クレアチン群がプラセボを上回り、前後差は確認されなかった。この結果は50〜71歳の高齢者に限定されており、若年アスリートへの直接的な一般化には留保が必要である。
運動後摂取が理論上有利とされる主な根拠は、運動誘発性の筋肉血流増加(ハイパーエミア)である。Candow et al.(2022, Frontiers in Sports and Active Living, Vol.4)によれば、運動後のハイパーエミアはクレアチントランスポーターの活性化を促進し、摂取後2時間の血中クレアチン循環と重なることで筋内取り込みが増加する可能性がある。ただし同論文は「運動前・運動後のクレアチン摂取は同等の筋への恩恵をもたらす(similar muscle benefits)」と結論づけており、理論的な優位性が実証データでは裏付けられていない。
Ribeiro et al.(2021, Nutrients, 13(8))によるナラティブレビューは、運動前後のタイミング研究を包括的に検討した結果、「特定のタイミングへの厳密な適応は現時点で根拠不十分(not currently supported by solid evidence)」と明記している。方法論的制約として少人数・非盲検・交絡因子の多さが挙げられている。
食事と一緒に摂るとクレアチンの吸収は変わるのか
炭水化物との同時摂取はインスリン分泌を介して筋クレアチン蓄積を増加させることが示されており、単独摂取と比較して60%の蓄積量増加が報告されている。Green et al.(1996, American Journal of Physiology - Endocrinology and Metabolism, 271(5 Pt 1): E821–826)はクレアチン5g×4回/日×5日間の補給において、炭水化物93gを同時摂取した群の筋総クレアチン増加はクレアチン単独群より60%大きかった(P<0.01)。この「60%増」は筋クレアチン蓄積量の増加を指し、いわゆる「消化管での吸収率」とは異なる概念である点に注意が必要である。
炭水化物多量摂取を避けたい場合でも、タンパク質との組み合わせで同等の効果が期待できる。Steenge et al.(2000, Journal of Applied Physiology, 89(3))はタンパク質50g+炭水化物47gの同時摂取が、炭水化物96g単独と同等のインスリン分泌・クレアチン保持増強効果をもたらすことを示した(いずれもプラセボ比約25%のクレアチン保持増加)。プロテインシェイクとクレアチンを組み合わせることで、大量の糖質なしに蓄積促進効果が期待できることを意味する。
ただしこの食事組み合わせによる蓄積促進効果は、主にローディング期や蓄積初期に意味が大きい。すでに筋内クレアチンが飽和している維持期では、インスリンによる追加促進効果は相対的に小さくなる可能性がある。
トレーニングをしない日はいつ摂ればよいのか
休息日のクレアチン摂取タイミングを直接比較したRCTは存在しない。休息日の摂取原則は、「飽和状態を維持するために継続摂取すること」という前提から導かれる。筋内クレアチンの飽和維持には毎日3〜5gの補給が必要とされており(Harris et al., 1992; Hultman et al., 1996)、これをいつ摂取するかはパフォーマンスへの影響は小さいとされている。
Jurado-Castro et al.(2022, International Journal of Environmental Research and Public Health, 19(1))はエリート女性ハンドボール選手14名を朝摂取群と夜摂取群に無作為割付した12週間シングルブラインド試験で、体脂肪率低下・除脂肪体重増加・体水分増加・パフォーマンス改善のすべての指標において両群に有意差がなかったことを示した。この結果は「概日リズムがクレアチン補給効果に影響しない」可能性を示唆するが、女性エリートアスリート限定かつシングルブラインドという方法論的制約があり、一般集団への適用には参考データとして扱うことが適切である。
休息日においては、食事と一緒に摂ることで摂り忘れを防ぐという実用的な観点が重要である。炭水化物またはタンパク質との組み合わせによる蓄積促進は維持期でも意味がないわけではないため、プロテインシェイクや食事に混ぜる習慣が継続性の観点から合理的といえる。
摂取タイミング別の研究結果はどう整理されるか
| 発表年 | 著者 | 比較条件 | 主要アウトカム | 主要結果 | サンプル数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1996 | Green et al. | クレアチン単独 vs クレアチン+炭水化物93g | 筋クレアチン蓄積量 | 炭水化物同時摂取で60%増(P<0.01) | n=24 |
| 2000 | Steenge et al. | 炭水化物96g vs タンパク質50g+炭水化物47g | クレアチン保持量 | 両条件ともプラセボ比約25%増 | n=12 |
| 2013 | Antonio & Ciccone | 運動前 vs 運動後 | 除脂肪体重・筋力 | 運動後群が数値上優位(統計的有意差なし) | n=19 |
| 2015 | Candow et al. | 運動前 vs 運動後 vs プラセボ | 除脂肪体重・筋力 | 除脂肪体重は後群がプラセボ比有意増(前後差なし)※高齢者対象 | n=39 |
| 2018 | Forbes & Candow | 運動前 vs 運動後(メタ解析) | 筋量・筋力 | 筋量SMD 0.52(p=0.04)後群優位(筋力差なし)※3研究 | 3研究 |
| 2022 | Jurado-Castro et al. | 朝 vs 夜 | 体組成・パフォーマンス | 両群同等(時刻差なし)※女性エリートアスリート限定 | n=14 |
よくある質問
Q. クレアチンは毎日摂らないと効果がなくなるのか
クレアチンの主な効果は筋内クレアチンフォスフェートの飽和蓄積によるものである。数日間の中断で筋クレアチン濃度は徐々に低下し始め、蓄積量の維持には毎日3〜5gの継続摂取が必要とされている。タイミングの最適化よりも、まず毎日継続して飽和状態を保つことが優先される。
Q. ローディング期と維持期でタイミングの考え方は変わるのか
炭水化物やタンパク質との組み合わせによる筋クレアチン蓄積促進効果は、特にローディング期(急速に飽和させる初期段階)において相対的に効果が大きいとされる。維持期はすでに筋内クレアチンが飽和に近い状態のため、同時摂取の追加促進効果は限定的になる可能性がある。ローディングプロトコルを採用する場合は食事と組み合わせることが合理的である。
Q. プロテインと一緒に摂ると吸収が良くなるのか
Steenge et al.(2000)の研究では、タンパク質50g+炭水化物47gの組み合わせが炭水化物96g単独と同等の筋クレアチン蓄積促進効果を示した。プロテインシェイクにクレアチンを混ぜる習慣は、多量の炭水化物を摂取せずに蓄積促進効果を得られる実用的な方法である。ただしインスリン分泌の関与からクレアチン蓄積が増えるのはあくまでも蓄積量であり、消化管での吸収率とは区別が必要である。
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参考文献
- Harris, R.C., Söderlund, K., & Hultman, E. (1992). Elevation of creatine in resting and exercised muscle of normal subjects by creatine supplementation. Clinical Science, 83(3), 367–374. DOI: 10.1042/cs0830367
- Hultman, E., Söderlund, K., Timmons, J.A., Cederblad, G., & Greenhaff, P.L. (1996). Muscle creatine loading in men. Journal of Applied Physiology, 81(1), 232–237. DOI: 10.1152/jappl.1996.81.1.232
- Green, A.L., Hultman, E., Macdonald, I.A., Sewell, D.A., & Greenhaff, P.L. (1996). Carbohydrate ingestion augments skeletal muscle creatine accumulation during creatine supplementation in humans. American Journal of Physiology - Endocrinology and Metabolism, 271(5 Pt 1), E821–826. DOI: 10.1152/ajpendo.1996.271.5.E821
- Steenge, G.R., Simpson, E.J., & Greenhaff, P.L. (2000). Protein- and carbohydrate-induced augmentation of whole body creatine retention in humans. Journal of Applied Physiology, 89(3), 1165–1171. DOI: 10.1152/jappl.2000.89.3.1165
- Antonio, J., & Ciccone, V. (2013). The effects of pre versus post workout supplementation of creatine monohydrate on body composition and strength. Journal of the International Society of Sports Nutrition, 10, Article 36. DOI: 10.1186/1550-2783-10-36
- Candow, D.G., Vogt, E., Johannsmeyer, S., Forbes, S.C., & Farthing, J.P. (2015). Strategic creatine supplementation and resistance training in healthy older adults. Applied Physiology, Nutrition, and Metabolism, 40(7), 689–694. DOI: 10.1139/apnm-2014-0498
- Forbes, S.C., & Candow, D.G. (2018). Timing of creatine supplementation and resistance training: A brief review. Journal of Exercise and Nutrition, 1(5).
- Ribeiro, F., Longobardi, I., Perim, P., Duarte, B., Ferreira, P., Gualano, B., Roschel, H., & Saunders, B. (2021). Timing of creatine supplementation around exercise: A real concern? Nutrients, 13(8), 2844. DOI: 10.3390/nu13082844
- Candow, D.G., Forbes, S.C., Roberts, M.D., Roy, B.D., Antonio, J., Smith-Ryan, A.E., Rawson, E.S., Gualano, B., & Roschel, H. (2022). Creatine O’Clock: Does timing matter? Frontiers in Sports and Active Living, 4, 893714. DOI: 10.3389/fspor.2022.893714
- Jurado-Castro, J.M., Campos-Perez, J., Vilches-Redondo, M.A., Mata, F., Navarrete-Perez, A., & Ranchal-Sanchez, A. (2022). Morning versus evening creatine supplementation and resistance training in elite handball players. International Journal of Environmental Research and Public Health, 19(1), 393. DOI: 10.3390/ijerph19010393