クレアチンとプロテインの最適な量はどう決めるのか — 体重別・目的別の摂取量ガイド
クレアチンは体重70kgの筋肥大目的で維持期5g/日、プロテインは1.6〜2.0g/kg/日が基準。体重60・70・80kg別と筋肥大・維持・減量別に推奨量を計算し、製品コスト比較もまとめる。
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本記事は公開された学術論文および公的機関の情報に基づく事実の整理であり、特定の疾患の診断・治療・予防を目的としたものではない。個別の健康上の判断は医師・管理栄養士等の医療専門家に相談されたい。
クレアチンの維持摂取量はISSNポジションスタンド(Kreider et al., 2017, Journal of the International Society of Sports Nutrition)では体重あたり0.03g/kg/日、実用的には3〜5g/日固定が広く採用されている。プロテインの推奨量は運動者で1.4〜2.0g/kg/日(Jäger et al., 2017, Journal of the International Society of Sports Nutrition)であり、厚生労働省の食事摂取基準2025年版が示す一般成人65g/日(男性18〜64歳)とは対象集団が異なる。この記事では体重60・70・80kg × 目的(筋肥大・維持・減量)のマトリクスで具体的な推奨量を示す。
クレアチンの推奨摂取量はどれくらいか?
クレアチン補給にはローディング期と維持期の2フェーズがある。ローディングは筋内クレアチン貯蔵を5〜7日で飽和させる方法で、0.3g/kg/日を5〜7日間継続する(体重70kgで約21g/日)。維持期はその後3〜5g/日(体重あたり0.03〜0.05g/kg/日)を継続する。ローディングを行わない場合は3g/日を28日間継続することで同等の貯蔵量に達する。
ローディング期に1日量を一度に摂取すると胃腸への負担が大きくなる。そのため5g前後を1回量として1日4回に分割するのが標準的な方法である。1回7g以上では消化器症状(下痢・腹痛)のリスクが高まるため、分割摂取には生理学的な根拠がある。
体重別の具体的なクレアチン推奨量は次の通りである。ローディング期は体重60kgで18g/日(4分割で4.5g/回)、70kgで21g/日(4分割で5.25g/回)、80kgで24g/日(4分割で6.0g/回)。維持期は体重60〜80kgのいずれも5g/日固定が最も実用的な量であり、これは0.03〜0.08g/kgに相当する。
Candow et al.(2025, Journal of the International Society of Sports Nutrition)による高齢者・臨床集団へのナラティブレビューでは、ローディング後の維持期5g/日超が下肢筋力改善に有効とする知見が紹介されており、一般的な維持量の下限(3g/日)より高めの摂取が支持されている。
プロテインの推奨摂取量はどう計算するのか?
プロテインの摂取量は目的と体重によって計算する。筋肥大・筋力増強が目的の抵抗性トレーニング実施者には1.6〜2.0g/kg/日が推奨されており(Morton et al., 2018, British Journal of Sports Medicine)、このレンジを超えた追加摂取では筋肉合成の上乗せ効果が認められないことが49研究1863名のメタアナリシスで示されている。維持目的では1.4〜1.6g/kg/日が目安となる。
一般成人向けDRIと運動者向け推奨の違いについて説明する。厚生労働省食事摂取基準2025年版が示す65g/日(男性18〜64歳)は日常活動量が低い一般成人を対象とした推奨量である。抵抗性トレーニングを週3回以上実施する運動者には、ISSNの1.4〜2.0g/kg/日(体重70kgで98〜140g/日)が適用されるべきであり、DRIとは対象集団が異なる点に注意が必要である。
減量期には除脂肪体重の維持を目的として2.3〜3.1g/kg除脂肪体重/日が推奨されることがある(Helms et al., 2014, International Journal of Sport Nutrition and Exercise Metabolism)。ただしこの値は除脂肪体重(FFM)あたりの数値であり、体重あたりに換算すると体脂肪率15%で約2.0〜2.6g/kg/日に相当する。また、摂取カロリーを厳しく制限した痩せたアスリートを対象とした上限値であり、一般フィットネス目的の減量では1.6〜2.0g/kg/日が現実的な推奨範囲である。
プロテインサプリメントの補足量は、1日のタンパク質目標量からすでに食事で摂取している量を差し引いた差分として計算する。一般的な食事(主食・主菜・副菜が揃った3食)からのタンパク質摂取量は40〜60g/日と推定されるため、例えば体重70kgの筋肥大目的(目標112〜140g/日)では食事分を差し引いた52〜100g程度をサプリメントで補う計算になる。
1食あたりの最適なタンパク質量は若年者で体重1kgあたり0.25g、高齢者で0.40g(除脂肪体重1kgあたり0.60g)とされており(Moore et al., 2015, The Journals of Gerontology)、高齢者は同じ筋肉合成速度を得るためにより多くのタンパク質を1食に含める必要がある。
体重別・目的別のクレアチン+プロテイン摂取シミュレーションはどうなるか?
以下の表1では体重60・70・80kg、目的別(筋肥大・維持・減量)のプロテインとクレアチンの1日推奨量をまとめている。プロテイン補足量は食事由来タンパク質を40g/日と仮定して計算した差分量である。クレアチンは維持期の5g/日固定値を使用している(ローディング期は体重×0.3g/kgで計算)。
表1: 体重別・目的別の1日推奨量シミュレーション
| 体重 | 目的 | タンパク質目標量 | プロテイン補足量(食事40g差引) | クレアチン(維持期) |
|---|---|---|---|---|
| 60kg | 筋肥大 | 96〜120g | 56〜80g | 5g |
| 60kg | 維持 | 84〜96g | 44〜56g | 5g |
| 60kg | 減量(一般) | 96〜120g | 56〜80g | 5g |
| 70kg | 筋肥大 | 112〜140g | 72〜100g | 5g |
| 70kg | 維持 | 98〜112g | 58〜72g | 5g |
| 70kg | 減量(一般) | 112〜140g | 72〜100g | 5g |
| 80kg | 筋肥大 | 128〜160g | 88〜120g | 5g |
| 80kg | 維持 | 112〜128g | 72〜88g | 5g |
| 80kg | 減量(一般) | 128〜160g | 88〜120g | 5g |
※プロテイン目標量は筋肥大・維持ともにISSN推奨1.4〜2.0g/kg/日を適用。減量(一般)は一般フィットネス目的での推奨範囲1.6〜2.0g/kg/日を採用。アスリート水準の減量(2.3〜3.1g/kg/日)はさらに高い値になるが、一般的な運動者には適用しない。製品スペック: 各メーカー公式サイト(2026年3月時点)。
1食のプロテイン摂取量は20〜25gが一般的なプロテイン製品の1食量に相当するため、体重70kgの筋肥大目的では1日3〜5食のプロテイン摂取が計算上の補足量を満たすことになる。ただしこの食数は実際の食事内容によって変動する。
過剰摂取のリスクはどこにあるのか?
クレアチンの過剰摂取リスクについて、健常者では30g/日を5年間継続した試験で有害影響が報告されていない(Kreider et al., 2017)。一方、クレアチン補給は血清クレアチニン値をわずかに上昇させる場合がある。これはクレアチンが代謝されてクレアチニンになる正常な生化学反応の反映であり、腎機能障害を意味しないが、医療機関での腎機能検査を受ける際にはクレアチン補給中であることを医師に申告することが推奨される。
タンパク質の過剰摂取について、抵抗性トレーニングを行う健常成人を対象とした研究(Antonio et al., 2016, Journal of Nutrition and Metabolism)では2.51〜3.32g/kg/日を1年間継続しても血中脂質・肝機能・腎機能マーカーに有害影響が認められなかった。ただし既存の腎臓疾患がある場合はタンパク質制限が必要になる場合があり、医師・管理栄養士への相談が先決である。
過剰摂取の実際的なリスクとして、体重70kgで目標140g/日(2.0g/kg/日)を超えてさらにプロテイン製品を追加すると、カロリー過剰になりやすい点に注意が必要である。プロテイン100gあたり約400kcalであり、1日の総カロリーに占めるタンパク質由来エネルギーが過大になると他の栄養素(脂質・炭水化物)の摂取余地が減少する。
目的別のクレアチン+プロテイン製品の選び方はどうするか?
製品選択では1食あたりのタンパク質量・クレアチン量・コスト効率の3つが主な判断軸となる。以下の表2では主要製品のスペックと1食コストを比較する。コスト比較では各製品の公式価格・製品重量から1食コストを算出した。
表2: 主要プロテイン・クレアチン製品スペック・コスト比較(1食コスト昇順)
| 製品 | 種別 | 1食タンパク質/クレアチン量 | 1食コスト目安 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| Myprotein Impact Whey | WPC | 21g | 約¥80〜100 | 大容量で低コスト |
| GronG クレアチン モノハイドレート | クレアチン | 5g | 約¥20〜36 | 単体クレアチン(容量により変動) |
| GronG WPC スタンダード | WPC | 22.3g | 約¥145 | コスパ重視 |
| DNS クレアチン | クレアチン | 5g | 約¥100〜150 | 単体クレアチン |
| VALX WPC | WPC | 21.4g | 約¥150 | 国内メーカー |
| VALX クレアチンパウダーPRO | クレアチン | 5g | 約¥150 | 単体クレアチン |
| バルクスポーツ クレアチン | クレアチン | 5g | 約¥100〜150 | 単体クレアチン |
| BAZOOKA WPC | WPC | 22g | 約¥160 | 国内製造 |
| BAZOOKA WPH | WPH | 20.1g | 約¥498 | 加水分解ホエイ |
| BAZOOKA クレアチン チュアブル | クレアチン | 3g(3粒) | — | チュアブルタイプ |
※価格は各メーカー公式サイト・主要ECサイトの2026年3月時点の参考値。製品重量・セール状況により変動する。1食コストはプロテイン製品の場合1食30g換算、クレアチンは5g換算で計算。BAZOOKA WPHは加水分解工程のコストが反映された価格帯。
目的別の選択指針として、筋肥大を優先し補足量が多い(週5回以上・体重あたり80g以上補足)場合は、コスト効率が高いWPC製品を主体にする選択が現実的である。クレアチンは別途単体製品(1食5g)を組み合わせることで、ローディング期の1日20〜24gも柔軟に調整できる。
高齢者でタンパク質利用効率の低下(同化抵抗性(anabolic resistance))が懸念される場合は、1食あたりのタンパク質量を25〜40gに増やすか、消化吸収の速いWPH(加水分解ホエイ)製品を選ぶ選択肢がある。Moore et al.(2015)は高齢者の1食あたりの最適量を除脂肪体重1kgあたり0.60gと示しており、若年者の基準(0.40g)より高い。
よくある質問
Q. プロテイン製品とクレアチンは同じタイミングで飲んでよいか?
A. 同じタイミングで摂取しても栄養素の吸収を妨げる相互作用は報告されていない。クレアチンはインスリン感受性の高い時間帯(トレーニング後)に摂取すると筋肉への取り込みが高まるという知見がある。プロテインとの混合では摂取忘れを防ぐ実用的なメリットもある。詳細は (/guides/creatine-timing-pre-post) で整理している。
Q. ローディングを行わなければクレアチンの効果は出ないか?
A. ローディング(0.3g/kg/日×5〜7日)は筋内クレアチン貯蔵を最短で飽和させる方法だが、3g/日×28日の継続摂取でも同等の貯蔵量に達することが示されている(Kreider et al., 2017)。筋力向上の最終的な効果量はほぼ等しいため、胃腸症状が起きやすい場合はローディングなしの段階的プロトコルを選ぶことができる。詳細は (/guides/creatine-loading-necessity) を参照。
Q. プロテイン補足量は食事内容によって変わるか?
A. 変わる。この記事のシミュレーションは1日の食事由来タンパク質を40gと仮定しているが、肉・魚・卵・豆腐を意識して摂る人では60〜80gを食事で確保できる場合もある。食事から十分なタンパク質を摂れている日はプロテイン製品を減らして問題ない。1日のタンパク質目標量の算出方法は (/guides/daily-protein-intake) にまとめている。
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参考文献
- Kreider RB et al. (2017). International Society of Sports Nutrition position stand: safety and efficacy of creatine supplementation in exercise, sport, and medicine. Journal of the International Society of Sports Nutrition, 14(1):18. DOI: 10.1186/s12970-017-0173-z
- Jäger R et al. (2017). International Society of Sports Nutrition Position Stand: protein and exercise. Journal of the International Society of Sports Nutrition, 14(1):20. DOI: 10.1186/s12970-017-0177-8
- Morton RW et al. (2018). A systematic review, meta-analysis and meta-regression of the effect of protein supplementation on resistance training-induced gains in muscle mass and strength in healthy adults. British Journal of Sports Medicine, 52(6):376-384. DOI: 10.1136/bjsports-2017-097608
- Candow DG et al. (2025). Creatine monohydrate supplementation for older adults and clinical populations: a narrative review. Journal of the International Society of Sports Nutrition. DOI: 10.1080/15502783.2025.2534130
- Moore DR et al. (2015). Protein ingestion to stimulate myofibrillar protein synthesis requires greater relative protein intakes in healthy older versus younger men. The Journals of Gerontology: Series A.
- Helms ER et al. (2014). A systematic review of dietary protein during caloric restriction in resistance trained lean athletes: a case for higher intakes. International Journal of Sport Nutrition and Exercise Metabolism.
- Antonio J et al. (2016). A high protein diet has no harmful effects: a one-year crossover study in resistance-trained males. Journal of Nutrition and Metabolism.
- 厚生労働省 (2025). 日本人の食事摂取基準(2025年版).