「高品質」「厳選」は何を意味しているのか — 訴求語を客観指標に読み替える

「高品質」「厳選」といった主観的な表現には法律上の定義がなく、その語だけで違反になるわけではない。ただし具体的な便益と結びつくと根拠の提示を求められる対象になりうる。訴求語がどの客観指標に対応するかを整理し、確認できる場所まで示す。

「高品質」「厳選」「こだわり」といった表現には、景品表示法上の定義がない。定義がない語は、それ単独で使うだけなら通常、違反の対象にはならない。ただし同じ語に具体的な便益が結びつく(暗示される場合も含む)と、事業者は表示の裏付けとなる合理的な根拠の提出を求められる対象になりうる。訴求語を読んだ段階で判断を終えず、それが指しうる中身と、対応する客観指標まで下りることができる。


「高品質」「厳選」に法律上の定義はあるのか

「高品質」「厳選」「こだわり」に景品表示法上の定義はない。消費者庁(2022)の留意事項は、特定の用語・文言の使用そのものを一律に禁止する規定ではないと明記している。虚偽誇大表示に該当するかどうかは、個々の用語の有無ではなく表示全体から個別具体的に判断される。

消費者庁「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」(制定 平成28年6月30日・一部改定 令和4年12月5日)には、こう記されている。

「虚偽誇大表示等に関する景品表示法及び健康増進法の規定は、いずれも、特定の用語、文言等の使用を一律に禁止するものではない。虚偽誇大表示等に該当するか否かは、表示全体から、表示ごとに個別具体的に判断されることに留意する必要がある」

つまり「高品質」という語を使うこと自体が禁止されているわけではない。判断の対象になるのは、その語を含む表示全体が実際の中身とどう対応しているかである。

景品表示法第5条第1号が定める優良誤認表示は、商品・サービスの品質等について2つの型を対象にしている。実際のものよりも著しく優良であると示す表示と、事実に相違して競争関係にある他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示だ。いずれも、不当に顧客を誘引し一般消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあるものを指す。「高品質」という語自体は、この条文の構成要素である「表示」の一部に過ぎない。語の有無ではなく、表示全体が実際の中身と乖離しているかどうかが判断基準になる。

ただし、主観的な表現なら常に適法、というわけではない。その語に何が加わると評価が変わるのかが、次の論点になる。


訴求語はどんな客観指標に置き換えられるのか

「高品質」「厳選」といった訴求語は、それぞれ具体的な中身を指している場合が多い。「高品質」ならタンパク質含有率や製法、「厳選」なら原料原産国や原材料数、「安心・安全」なら第三者検査の実施有無が対応しうる客観指標になる。訴求語を読んだ段階で止まらず、対応する数値・認証・開示の有無を確認する方が、比較の解像度は上がる。

以下は訴求語ごとに、指しうる中身と対応する客観指標を整理したものである。特定製品の数値は含まない。この対応表は、表示全体を見て判断するという消費者庁(2022)の考え方を、訴求語ごとの確認先へ落とし込んだものだ。

訴求語法律上の定義指しうる中身対応する客観指標確認できる場所
高品質なしタンパク質含有率が高い/製法のグレードが高いタンパク質含有率(g/100g)、製法(WPC・WPI・WPH・CFM等)栄養成分表示、公式サイトの製品ページ
アスリート向けなしドーピング検査を経ているアンチドーピング認証(Informed Choice / Informed Sport / NSF Certified for Sport)認証機関の公式データベース、パッケージの認証マーク
安心・安全なし検査を経ている/汚染物質のリスク管理をしている第三者検査の実施有無と検査項目、工場の食品安全認証公式サイトの品質保証ページ
独自製法なし特定の加工技術を使用している製法の名称、加水分解の有無、分子量(公表されている場合)公式サイトの製法解説ページ
こだわりなし製法・工程に独自の基準がある製法の名称、工場の食品安全認証(FSSC22000等)公式サイト
厳選なし原料の産地・供給元を選定している原料原産国、原材料数原材料表示、公式サイト
プレミアムなし価格帯が上位、原材料の構成が他製品と異なる価格(容量あたり)、原材料数、製法公式サイトの価格表示・原材料表示

この対応づけは本記事の整理であり、法令や業界標準による定義ではない。消費者庁が示しているのは表示全体から個別具体的に判断するという考え方であって、語ごとの固定的な対応表を定めているわけではない。

食肉の等級にあたるような公的な格付け制度は、少なくとも本記事が参照した範囲のプロテインには確認できない。訴求語の裏づけは、含有率・製法・認証といった個別の指標をたどって確認することになる。

表の並びは、対応する客観指標が明確な順にした。認証や数値で直接確かめられる語を上に、間接的な指標を組み合わせる必要がある語を下に置いている。「厳選」「プレミアム」は翻訳しにくい語というわけではなく、原料原産国や原材料数といった複数の指標を組み合わせて確認する必要がある語だと理解した方が実態に近い。データ取得時点は2026年8月である。

認証や検査に関わる語は、対応する制度をたどれば確認先がはっきりする。「アスリート向け」に対応するアンチドーピング認証の中身はアンチドーピング認証付きプロテインはどれか、「安心・安全」に対応する第三者検査・工場認証の仕組みはプロテインの品質を見抜く方法で整理している。

原料や製法に関わる語は、確認先が複数に分かれる。「厳選」が指す原料原産国をどこまで追えるかはプロテインの原料原産国はどこまで確認できるのか、「高品質」「独自製法」が指しうる製法と価格の関係はプロテインは高い方が良いのかで扱う。評価軸全体の組み立て方はプロテインを科学的に選ぶ基準とはにまとめた。

表に挙げていないが、「専門家監修」も同じ構造を持つ訴求語である。監修は食品表示基準にも景品表示法にも定義がなく、表示だけでは関与の深さが判別できない。この場合に確認先となるのは開示のされ方で、関与範囲・所属・依頼関係が併記されているかを見ることになる。詳細は「監修」表示は何を保証するのかで整理している。


事業者はどこまで根拠の提示を求められるのか

主観的な表現だけであれば、通常は根拠提出の対象にならない。しかし同じ表現に具体的な便益が結びつく(暗示を含む)と、景品表示法第7条第2項に基づいて合理的な根拠を示す資料の提出を求められる対象になりうる。「高品質」単独の表示と、「高品質だから吸収が速い」という表示では、法的な扱いが変わる。

この線引きは、公正取引委員会(2003)が平成15年10月28日に定め、消費者庁が平成28年4月1日に一部改正した「不当景品類及び不当表示防止法第7条第2項の運用指針-不実証広告規制に関する指針-」に、次のとおり書かれている。

「商品・サービスの効果、性能に関する表示であって、神秘的内容(「開運」、「金運」等)、主観的内容(「気分爽快」等)、抽象的内容(「健康になる」等)に関する表示であっても、当該表示が一般消費者にとって、当該商品・サービス選択に際しての重要な判断基準となっていると考えられ、さらに、これらの表示内容に加えて具体的かつ著しい便益が主張されている(暗示されている場合も含む。)など、当該商品・サービスの内容について、一般消費者に対し実際のものよりも著しく優良との認識を与えるようなものであれば、景品表示法第5条第1号に該当するおそれがあり、そのような場合には、景品表示法第7条第2項に基づき表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求める対象となり得る。」

同じ運用指針は、逆のケースについても記している。

「他方、上記のような内容の表示のみであって、通常、当該表示から、直ちに、表示された効果、性能について、一般消費者が著しい優良性を認識しないと考えられるものは、景品表示法第5条第1号に該当するおそれはないと考えられるため、景品表示法第7条第2項に基づき表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求める対象とはならない。」

この2つの記述を合わせると、読者が持ち帰れる線は次のようになる。主観的な訴求語「だけ」であれば、通常は根拠提出の対象にならない。しかし、その語に具体的な便益が加わる(暗示されている場合を含む)と、対象になりうる。なお同運用指針は、商品・サービスの効果・性能に関する表示を対象にしたものであり、原材料・成分・原産地・等級のように、取引上の書面や商品そのものを確認すれば実際と異なるかどうかを判断できる事項は、この枠組みの外に置かれている。

では、求められる「合理的な根拠」とは何か。要件は2つある。1つは、提出資料が客観的に実証された内容のものであること。もう1つは、表示された効果・性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していることだ。

「客観的に実証された内容」とされるのは、試験・調査によって得られた結果か、専門家・専門家団体・専門機関の見解または学術文献のいずれかである。試験・調査は学術界または産業界で一般的に認められた方法、あるいはそうした方法が存在しない場合は社会通念上・経験則上妥当と認められる方法で実施される必要がある。

体験談やモニターの意見を根拠にする場合の要件は、さらに具体的だ。無作為抽出法で相当数のサンプルを選定し、作為が生じないよう配慮するなど、統計的に客観性が十分に確保されている必要がある。従業員やその家族など利害関係者だけを対象にした調査、あるいは体験談を送付してきた利用者のみを母集団とする調査は、客観的に実証されたものとは認められない。

「著しく優良」に当たるかどうかの判断基準も、同運用指針(公正取引委員会, 2003)に示されている。

「『著しく優良であると示す』表示に当たるか否かは、業界の慣行や表示を行う事業者の認識により判断するのではなく、表示の受け手である一般消費者に、『著しく優良』と認識されるか否かという観点から判断される。」

判断の軸は業界慣行でも事業者の主観でもなく、一般消費者がその表示をどう受け取るかにある。

なお、プロテインは一般に食品区分に位置づけられる。疾病の治療・予防や、体力増強・疲労回復・免疫力向上といった身体組織機能の増強増進効果を標榜しない限り、消費者庁(2022)の留意事項が直接対象とする「いわゆる健康食品」には該当しないという留保がつく。栄養機能食品として国の定める基準に沿って栄養成分の機能を表示する場合も同様である。効果効能を標榜すれば、この留意事項および健康増進法第65条第1項の対象になる。

保健機能食品の区分は混同されやすい。栄養機能食品は個別の許可申請を必要としない自己認証制度で、国への届出が求められるのは機能性表示食品のほうにあたる。特定保健用食品(トクホ)は国の個別審査を経る点で、この2つとも異なる。


「No.1」「○%が推奨」はどう読めばよいのか

消費者庁(2024)は令和6年9月26日、「No.1表示に関する実態調査報告書」を公表した。この報告書は業種横断の実態調査であり、プロテイン業界に限定した調査ではない。合理的根拠には4つの要件があり、比較対象・調査対象者・調査方法・表示内容と結果の対応のいずれかが欠けると、不当表示として問題になりうる。

同報告書は2024年3月から9月にかけて実施され、広告等サンプリング368件(No.1表示275件・高評価%表示93件)、消費者アンケート1,000名(同年8月1〜9日実施)、そして広告主15社と大手調査会社・事業者団体へのヒアリング調査を対象にしている。基本的な考え方として、No.1表示は合理的根拠に基づかず事実と異なる場合に不当表示として問題になるとされる。

合理的根拠として必要な4要件は次のとおりである。

  1. 比較する商品等が適切に選定されていること(市場における主要な同種商品を比較対象から除外していないか)
  2. 調査対象者が適切に選定されていること(恣意性が排除され、表示を行う事業者の顧客や従業員のみを対象にしていないか)
  3. 調査が公平な方法で実施されていること(その事業者に有利な誘導や結論ありきの調査でないか)
  4. 表示内容と調査結果が適切に対応していること

「サイトイメージ調査」のような小さな注記があっても、記載位置・文字の大きさ・色などから一般消費者にとって明瞭でない場合は、表示内容と調査結果が適切に対応しているとはいえないとされる。

同報告書(消費者庁, 2024)によれば、No.1表示を見たことがある消費者のうち約5割が「購入の意思決定にかなり影響する/やや影響する」と回答している(N=825)。高評価%表示(例:「医師の90%が推奨」型の表示)も同様に約5割が影響すると回答した(N=649)。高評価%表示は商品等の品質・規格の優良性を直接示すものではないが、間接的に優良性を示す表示として、No.1表示と同様の合理的根拠が必要とされている。

この調査対象は学習塾・買取・家具・結婚相談所・呉服・食品・電子機器・ホテル・保険・ペット・不動産・美容エステなど複数業種にまたがる。プロテイン固有の事例が含まれているわけではないが、No.1表示・高評価%表示の考え方自体は業種を問わず共通の枠組みとして参照できる。


よくある質問

「高品質」と書くこと自体は問題にならないのか

「高品質」という語自体に法律上の定義はなく、その語を使うことが直ちに問題になるわけではない。ただし、その語に具体的な便益が結びつく(暗示される場合を含む)表示になっていれば、根拠提出の対象になりうる。また、根拠提出(第7条第2項)の対象にならない場合でも、表示全体が実際の中身と著しく乖離していれば優良誤認(第5条第1号)の問題は別途生じうる。判断は語の有無ではなく表示全体で行われる。

根拠が書かれていない商品は避けるべきか

根拠の記載がないこと自体は、避けるべき理由には直結しない。ただし、根拠の提出を求められる対象でないことと、実際の品質が確かめられていることは別である。含有率・製法・検査の実施有無・認証の有無といった客観指標が公式サイトや栄養成分表示で確認できるかどうかを見ると、判断材料が増える。訴求語だけで比較するより、対応する指標にたどり着けるかを確認する方が実用的である。

利用者の体験談やレビューは根拠になるのか

体験談・モニターの意見が「合理的な根拠」として認められるには、無作為抽出法で相当数のサンプルを選定し、作為が生じないよう配慮するなど、統計的な客観性が確保されている必要がある。従業員やその家族など利害関係者のみを対象にした調査、あるいは体験談を送ってきた利用者のみを母集団とする調査は、客観的に実証されたものとは認められない。


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参考文献