乳アレルギーでも飲めるプロテインはあるか — 代替タンパク質源の選び方と注意点

乳アレルギーの原因はカゼインとβ-ラクトグロブリンで、WPIやWPHでも除去されない。ソイ・ピー・ライス・エッグなど乳不使用の代替プロテインのDIAASと選び方を論文根拠とともに整理する。

  • 乳アレルギー
  • 代替プロテイン
  • ソイプロテイン
  • ピープロテイン
  • DIAAS
  • アレルゲン

本記事は公開された学術論文および公的機関の情報に基づく事実の整理であり、特定の疾患の診断・治療・予防を目的としたものではない。個別の健康上の判断は医師・管理栄養士等の医療専門家に相談されたい。

乳アレルギー(cow’s milk allergy)の主な原因物質はカゼイン(casein)とホエイに含まれるβ-ラクトグロブリン(β-lactoglobulin, β-Lg)で、いずれも一般的なホエイプロテインパウダーに含まれる。スポーツ用途で販売されているWPI(ホエイプロテインアイソレート)やWPH(ホエイペプチド)でもこれらのアレルゲンタンパク質は残存しており、乳アレルギー患者への安全性は確立されていない。乳不使用の代替プロテインとしてはソイ(大豆)・ピー(えんどう豆)・ライス(米)・エッグホワイト(卵白)・ヘンプ(麻)が主な選択肢となる。なお、乳アレルギーの有無や重症度の判断は必ずアレルギー専門医に相談されたい。

乳アレルギーの原因物質はプロテインのどの成分に含まれるのか

乳アレルギーの主要アレルゲンはカゼインとホエイタンパク質の2種類に分類される。Lifschitz C et al.(2021, Nutrients)によると、カゼイン(αS1、αS2、β、κ)は乳アレルギー患者の65〜100%で感作(sensitization)が確認されており、最も重要なアレルゲンとされている。ホエイタンパク質ではβ-Lgが13〜62%、α-ラクトアルブミン(α-La)が0〜67%の患者で検出されている。

カゼインは耐熱性が高く、120〜140℃の加熱処理でも安定した構造を保つ。一方でβ-Lgは70〜75℃、α-Laは62〜65℃から三次元構造の変性が始まるが、Wijayanti HB et al.(2014, Comprehensive Reviews in Food Science and Food Safety)は、熱変性はタンパク質の立体構造の変化であり、アレルゲン認識に関わるアミノ酸の一次配列(エピトープ配列)は変化しないと報告している。

したがって、加熱処理や製造過程でのタンパク質変性によって乳アレルゲンが完全に除去されるわけではない。乳由来原材料を使用した製品すべてにアレルゲンが残存する可能性がある。

WPI・WPHなら乳アレルギーでも安全なのか

WPI(ホエイプロテインアイソレート)はホエイから乳糖や脂質を除去して分離したタンパク質であり、β-Lgとα-Laを依然として含む。乳糖を除去する工程はアレルゲンタンパク質の除去とは異なり、「WPIは乳成分が少ない」という表現は乳アレルギーの観点では正確ではない。

スポーツ用途のWPH(加水分解ホエイプロテイン)についても同様である。Tran MM et al.(2017, Nutrients)は、部分加水分解(partially hydrolyzed)ホエイフォーミュラを乳アレルギー患者10名に投与した研究で、耐容率が0%であったと報告している。免疫ブロッティングではカゼインの残存も確認されており、部分加水分解フォーミュラのカゼイン含有量は完全加水分解フォーミュラの約100倍に相当したとされる。

ただし、この研究は乳幼児用フォーミュラを対象としており、成人向けスポーツ用WPHへの直接適用には留保が必要である。市販スポーツ用WPHの加水分解度(DH, degree of hydrolysis)は乳幼児用完全加水分解フォーミュラ(通常 DH > 30%)より低い製品が多く、アレルゲン残存量が多い可能性がある。乳アレルギーのある人がWPHを選択する際は、専門医への相談が求められる。

Perez-Quiroga JM et al.(2020, Journal of Dairy Science)は、加水分解度27.1%のホエイに追加のグリコシル化(glycosylation)処理を施した場合、IgE結合能を最大99%低減できると報告している。ただし、加水分解のみでは40〜90%の範囲で変動しており、酵素の種類・加水分解度・追加処理の有無によって効果が大きく異なることが示されている。

乳不使用の代替プロテインにはどのような選択肢があるのか

乳由来原材料を含まない植物性・動物性タンパク質源の主な選択肢は以下のとおりである。

ソイプロテイン(大豆プロテイン): 特定原材料に指定された大豆由来であり、乳アレルギーには対応するが、大豆アレルギーを持つ人には使用できない。乳アレルギーと大豆アレルギーが併存するケース(特に乳幼児)もあるため、大豆アレルギーの有無を事前に確認する必要がある。

ピープロテイン(えんどう豆プロテイン): えんどう豆由来であり、大豆・乳・卵を含まない。消費者庁が定める特定原材料8品目(えび、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生)には該当せず、これら8品目にアレルギーがある人の代替選択肢として検討される場合がある。

ライスプロテイン(米プロテイン): 米由来であり、8品目の主要アレルゲンを含まない。制限アミノ酸(limiting amino acid)はリジンであり、単体での必須アミノ酸スコアはタンパク質品質の評価指標であるDIAAS(消化性不可欠アミノ酸スコア)で47程度と低い。ただし、ピープロテインと組み合わせることで制限アミノ酸が相補(complementary)され、DIAAS値が最大84程度まで改善するというデータが報告されている(Herreman L et al., 2020, Food Science & Nutrition)。

エッグホワイトプロテイン(卵白プロテイン): 卵白由来であり、乳を含まない。消費者庁の義務表示対象アレルゲン(卵)に該当するため、卵アレルギーのある人には使用できない。乳アレルギーがあっても卵アレルギーがない人向けの選択肢である。

ヘンププロテイン(麻プロテイン): 麻の実由来であり、主要アレルゲン8品目を含まない。繊維質が多く、タンパク質含有量は他の代替プロテインより低い傾向がある。DIAAS値は54程度であり、タンパク質品質は高くない。

なお、消費者庁の食品表示法に基づき、乳由来原材料を含む容器包装された加工食品には「乳成分を含む」の表示が義務付けられている(特定原材料8品目、2026年3月時点)。プロテインパウダーの購入時は原材料欄のアレルゲン表示を確認することが判断の基準となる。

代替プロテインの栄養価はホエイとどう異なるのか

タンパク質の品質を評価する指標としてDIAAS(Digestible Indispensable Amino Acid Score)が用いられる。DIAASはFAO(国連食糧農業機関)が推奨する指標で、消化率と必須アミノ酸組成を組み合わせて算出される(FAO基準、0.5〜3歳児向け参照値)。

Herreman L et al.(2020, Food Science & Nutrition, DOI: 10.1002/fsn3.1809)は、17種の動植物由来タンパク質のDIAASを網羅的に比較した。卵白タンパク質は DIAAS 101(excellent quality)、ソイプロテインは 91(high quality)、ホエイは 85(high quality)、ピープロテインは 70(no quality claim)、ヘンプは 54(no quality claim)、ライスプロテインは 47(no quality claim)という結果が報告されている。ピー・ライス・ヘンプの3つはいずれもDIAAS 75未満であり、FAO基準では「タンパク質品質の主張不可」のカテゴリに分類される。

一方、ソイプロテインはDIAAS 91であり、乳不使用の植物性タンパク質源の中では最も高い評価を示している。また、Babault N et al.(2015, Journal of the International Society of Sports Nutrition)による12週間RCTでは、ピープロテイン(25g×2回/日)とホエイプロテインの上腕二頭筋厚増加率に統計的な有意差は認められなかった(p=0.09)と報告されており、DIAASの数値差が必ずしも実際の筋タンパク質合成の差に直結するわけではない。

なお、Mathai JK et al.(2017, British Journal of Nutrition, vol.117(4):490-499)は、WPIのDIAASを1.09(excellent)と報告しており、乳不使用の代替タンパク質との品質差が数値として示されている。

乳アレルギーの人はプロテインをどう選べばよいのか

以下の比較表は、主要な代替プロテインの種類ごとに乳含有の有無・DIAAS・アレルゲン・コストを整理したものである(DIAAS降順で表示、FAO基準0.5〜3歳児向け)。各製品の代表的な種類・フォームに基づく参考値であり、製品・フレーバーによって成分が異なる場合がある。

プロテイン種類タンパク質含有量目安(/100g)DIAAS(FAO基準)乳含有主なアレルゲンコスト目安(/kg)
エッグホワイト(卵白)約80〜85g101なし2,500〜5,000円
ソイプロテイン(大豆)約75〜90g91なし大豆2,000〜4,000円
ピープロテイン(えんどう豆)約75〜82g70なしえんどう豆2,500〜5,000円
ヘンププロテイン(麻)約45〜55g54なしなし(製品による)3,000〜6,000円
ライスプロテイン(米)約70〜80g47なしなし(製品による)2,000〜4,000円

: 価格はメーカー公式サイト・主要ECサイトの通常価格を参考とした概算値(2026年3月時点)。キャンペーン・セール価格は除く。DIAAS値はHerreman et al. 2020, Mathai et al. 2017のデータを参照。各フレーバーでは着色料・乳化剤等の副原材料が異なる場合があるため、実際の購入前に製品パッケージのアレルゲン表示を確認されたい。

選び方の観点を整理すると、タンパク質品質(DIAAS)を重視する場合はエッグホワイト(卵アレルギーがない場合)またはソイが選択肢となる。大豆アレルギーも持つ場合はピープロテインが現実的な選択肢だが、DIAASは70と低いため、ライスとの組み合わせでアミノ酸バランスを補完する方法がある。

アレルゲン確認の実務上の手順としては、まず原材料欄の「乳成分を含む」表示の有無を確認し、次いで使用している甘味料・フレーバーの由来を確認することが挙げられる。プロテイン製品のフレーバー品では、乳化剤(大豆由来または乳由来)が含まれる場合があり、大豆または乳どちらかにアレルギーがある場合は注意が必要である。

乳アレルギーの診断や重症度の確認、代替食品の選択については、必ずアレルギー専門医または管理栄養士に相談されたい。

よくある質問

Q. ホエイプロテインに含まれる乳アレルゲンは製造工程で除去されるのか

A. 除去されない。WPCからWPI・WPHへの加工は乳糖除去や分子量低減を目的とした工程であり、カゼインやβ-ラクトグロブリン等のアレルゲンタンパク質が完全に除去されるわけではない。Wijayanti et al.(2014)が示すとおり、熱変性はタンパク質の立体構造の変化であり、アレルゲン認識に関わるエピトープ配列(アミノ酸の一次配列)は保持される。

Q. ピープロテインとライスプロテインを混合するとDIAASが改善するのか

A. 報告されているデータでは改善が見られる。Herreman et al.(2020, Food Science & Nutrition)によると、ピー単体のDIAASは約70、ライス単体は約47だが、ライスの比率を41%程度に設定した混合では制限アミノ酸の相補効果によりDIAASが最大84程度まで改善するとされる。ただし混合比率や製品によって効果は異なる。

Q. 乳アレルギー用のプロテインを選ぶ際、アレルゲン表示で確認すべき点はどこか

A. 原材料欄の特定原材料表示(「乳成分を含む」)の有無が第一の確認点となる。消費者庁の食品表示基準により、乳由来原材料を含む加工食品には義務的な表示が必要である。加えて、フレーバー品ではプレーン品と異なる原材料(乳化剤、着色料等)が含まれる場合があるため、購入するフレーバーの原材料欄を個別に確認することが求められる。

関連記事

参考文献

  • Lifschitz C et al., 2021, Nutrients, PMC8147250 — 乳アレルギーの主要アレルゲン(カゼイン・ホエイ)とその感作率の整理
  • Wijayanti HB et al., 2014, Comprehensive Reviews in Food Science and Food Safety, DOI: 10.1111/1541-4337.12105 — ホエイタンパク質の熱変性とエピトープ保持に関するレビュー
  • Tran MM et al., 2017, Nutrients, PMID: 28644415 — 部分加水分解ホエイフォーミュラと乳アレルギー患者の耐容率(0%)
  • Perez-Quiroga JM et al., 2020, Journal of Dairy Science, DOI: 10.3168/jds.2019-17014 — ホエイ加水分解とグリコシル化によるIgE結合能の低減(最大99%)
  • Herreman L et al., 2020, Food Science & Nutrition, DOI: 10.1002/fsn3.1809 — 動植物由来17種タンパク質のDIAAS比較(卵白101、ソイ91、ホエイ85、ピー70、ヘンプ54、ライス47)
  • Mathai JK et al., 2017, British Journal of Nutrition, vol.117(4):490-499, DOI: 10.1017/S0007114517000125 — WPIのDIAAS(1.09)とピープロテイン濃縮物の比較
  • Babault N et al., 2015, Journal of the International Society of Sports Nutrition, DOI: 10.1186/s12970-014-0064-5 — ピープロテインとホエイプロテインの筋肥大効果比較(12週間RCT)
  • 消費者庁「加工食品のアレルギー表示ハンドブック」令和6年3月一部改訂 — 特定原材料8品目と義務表示の根拠