クレアチンは腎臓に悪いのか — クレアチニン値・eGFR・長期安全性の科学的根拠

クレアチン補給が腎臓に悪いという懸念の根拠と、クレアチニン値上昇・eGFR変化・長期安全性データを整理する。健常者と腎疾患患者で結論が異なる点も明確に区分して解説する。

  • クレアチン
  • 腎臓
  • 安全性
  • クレアチニン
  • eGFR
  • 長期使用

本記事は公開された学術論文および公的機関の情報に基づく事実の整理であり、特定の疾患の診断・治療・予防を目的としたものではない。個別の健康上の判断は医師・管理栄養士等の医療専門家に相談されたい。

クレアチン補給が腎臓に悪いという主張は、クレアチン(creatine)とその代謝産物であるクレアチニン(creatinine)の混同に起因する場合が多い。クレアチン補給によって血中クレアチニン値が上昇することは事実だが、この上昇が腎機能低下を意味するかどうかは別の問題である。国際スポーツ栄養学会(ISSN)の2017年ポジションスタンドは、健常者において1日最大30g・最長5年間の補給は安全かつ耐容性良好と結論づけている(Kreider et al., 2017, Journal of the International Society of Sports Nutrition)。

なぜクレアチンが腎臓に悪いと言われるのか

クレアチン補給と腎臓の問題が語られる背景には、大きく2つの誤解がある。第1は「クレアチン」と「クレアチニン」の混同であり、第2は症例報告の過大解釈である。

クレアチンは筋肉内でリン酸化されてホスホクレアチン(phosphocreatine)となり、短時間・高強度運動のエネルギー供給に使われる。このクレアチンの一部は非酵素的に脱水・環化されてクレアチニンに変換される。自然分解率は約2%/日であり、クレアチン貯蔵量が増えると産生されるクレアチニン量も増える。血清クレアチニン値は腎機能マーカーとして使われるため、クレアチン補給によるクレアチニン上昇を「腎機能の悪化」と誤解することが起きやすい。

「腎臓に悪い」という主張の根拠として引用される症例報告については、Longobardi et al.(2023, Nutrients)がナラティブレビューとして精査している。同レビューはクレアチン補給と腎不全を関連づけた症例報告8件を検討する一方、23件以上のRCT(健常者・糖尿病・ループス・パーキンソン等の多様な集団を含む)で腎機能悪化が報告されていないことを確認した。症例報告8件の多くはアナボリックステロイドの使用・複数サプリメントの同時摂取・既存腎疾患などの交絡因子を抱えており、クレアチン単独の影響と切り離して評価することが困難である。クレアチン単体で腎機能障害を引き起こしたと確認された症例報告は現時点で確立されていない。

クレアチン摂取はクレアチニン値・eGFRにどう影響するのか

クレアチン補給後に血清クレアチニン値が上昇することは複数の研究で一致して報告されているが、腎糸球体濾過率(GFR)への影響とは区別する必要がある。

de Souza E Silva et al.(2019, Journal of Renal Nutrition)の系統的レビューおよびメタ解析(6件のRCT対象)では、血清クレアチニンは統計的に有意な上昇(SMD=0.48、95%CI 0.24–0.73)を示したが、臨床的に意味のある差ではないと結論づけられている。血漿尿素値についてはSMD=1.10(P=0.004)と統計的に有意な上昇が認められたが、著者らは臨床的に腎損傷を示す水準ではないとし、「研究された用量・期間においてクレアチン補給は腎損傷を引き起こさない」と結論している。最新のメタ解析(Kabiri Naeini et al., 2025, BMC Nephrology、21研究の系統的レビュー・12研究のメタ解析、クレアチン群177名・対照群263名)では、血清クレアチニンの上昇は微小(MD: 0.07 µmol/L、p=0.03)で1週間以下の短期試験でのみ顕著であり、1〜12週の試験では有意差がなかった。GFRについては群間で有意差が認められず、腎機能は保持されていると報告されている。

クレアチニン値のみでGFRを推算する式(CKD-EPI等)では、クレアチン補給によるクレアチニン上昇が腎機能を過小評価する可能性がある。Gualano et al.(2008, European Journal of Applied Physiology)は、クレアチン補給の影響を受けにくいGFRマーカーであるシスタチンC(cystatin C)を指標として用いたRCT(n=18、約10g/日×12週)を実施し、シスタチンCは両群ともに経時的に低下(GFR改善示唆)したが群間差はなく、血清クレアチニン・電解質にも群間差は認められなかったと報告している。この知見は、クレアチン補給下ではクレアチニン単独によるGFR評価が過大に腎機能低下を示す可能性を示唆している。

腎疾患がある場合のクレアチン摂取はどうなのか

健常者での安全性と、既存腎疾患を持つ集団での安全性は別に評価する必要がある。

腎機能リスクの高い集団を対象としたRCTとして、Gualano et al.(2011, European Journal of Applied Physiology)は2型糖尿病患者(腎疾患合併リスクが高い集団)を対象に12週間のクレアチン補給を実施し、eGFR・血清クレアチニン・血漿尿素・タンパク尿・アルブミン尿のいずれにも群間差を認めなかった。また、Longobardi et al.(2023)がナラティブレビューとして参照した23件以上のRCTには、ループス腎炎・パーキンソン病・心疾患など多様な患者集団が含まれており、腎機能の悪化は報告されていない。

ただし、重篤な既存腎疾患(慢性腎臓病ステージ3以上等)を持つ患者に対しては、複数の研究者がクレアチン補給を回避することを推奨している(Longobardi et al., 2023; Kabiri Naeini et al., 2025)。この推奨は「害が証明されているから」というより、「十分なエビデンスが存在しないから」という理由に基づく。重篤な腎疾患患者を対象とした長期大規模RCTは現時点では行われていない。重篤な腎疾患がある場合のクレアチン摂取の可否については、担当医への相談が必要である。

長期使用の安全性データは十分か

長期使用に関するデータは複数の研究から得られており、現時点では健常者における安全性を支持するエビデンスは一定量蓄積されている。

Poortmans & Francaux(1999, Medicine & Science in Sports & Exercise)は、10か月から5年のクレアチン長期使用者と対照群を比較し、血漿クレアチニン・尿素・アルブミン値、尿排泄率、GFR、尿細管再吸収、糸球体膜透過性のすべてが正常範囲内であることを確認した。Kreider et al.(2017, ISSN ポジションスタンド)は最大30g/日・最長5年間のデータを統合し、健常者および乳幼児から高齢者にわたる複数の患者集団で安全かつ耐容性良好と結論づけている。

一方で、Longobardi et al.(2023)がナラティブレビューとして整理したデータでも最長24か月であり、それ以上の超長期データは限られている。Antonio et al.(2021, JISSN)は「数十年分の市販後サーベイランスで有害腎臓影響の報告はない」と述べているが、これは市販後観察データであり介入試験ではない点に留意が必要である。

主要研究で腎機能マーカーはどう変化したのか

研究対象摂取量と期間クレアチニン変化GFR/eGFR変化結論
Poortmans & Francaux, 1999健常アスリート(長期使用者)最大5年群間差なし正常範囲腎機能障害なし
Kreider et al., 2017(ISSNポジションスタンド)健常者〜複数患者集団最大30g/日・最長5年上昇するが腎損傷示さず変化なし安全・耐容性良好
Longobardi et al., 2023(ナラティブレビュー)23件以上のRCT(健常〜患者)最長24か月上昇するが腎機能悪化なし変化なしRCT全体で腎機能悪化なし
Gualano et al., 20112型糖尿病患者標準量・12週群間差なし群間差なし腎機能リスク集団でも腎機能悪化なし
Gualano et al., 2008健常成人男性(n=18)約10g/日・12週群間差なしシスタチンCは両群で経時的に低下(群間差なし)腎機能障害なし
de Souza E Silva et al., 2019(メタ解析)6件のRCT様々SMD=0.48(有意・臨床的差小)有意差なし腎損傷引き起こさず
Kabiri Naeini et al., 2025(メタ解析)12研究(Cr群177名・対照263名)様々MD: 0.07 µmol/L(微増)群間差なし(非有意)代謝回転の反映・腎障害なし

よくある質問

Q. クレアチン補給中に血液検査でクレアチニンが高いと言われたが、腎臓が悪いのか?

クレアチン補給中は、筋肉内クレアチン貯蔵量の増加に伴い代謝産物であるクレアチニンの産生量が増えるため、血清クレアチニン値が上昇することがある。この上昇は自然分解(約2%/日)の増加による代謝回転の反映であり、GFRが正常であれば腎機能低下を意味するものではない。ただし、クレアチン補給を担当医に伝えたうえで解釈することが望ましい。

Q. クレアチンとクレアチニンは同じものか?

クレアチン(creatine)とクレアチニン(creatinine)は異なる物質である。クレアチンは筋肉内でエネルギー供給に使われる化合物であり、サプリメントとして補給されるものでもある。クレアチニンはクレアチンが非酵素的に環化・脱水されてできる代謝産物であり、腎臓で濾過されて尿中に排泄されるため腎機能マーカーとして使用される。両者を混同した記述が「腎臓に悪い」という誤解の一因となっている。

Q. クレアチン補給中はどの腎機能マーカーを参照すればよいのか?

クレアチニンを指標とするGFR推算式(CKD-EPI等)は、クレアチン補給によるクレアチニン上昇の影響を受けて腎機能を過小評価する可能性がある。クレアチン補給の影響を受けにくいマーカーとしてシスタチンC(cystatin C)がある。Gualano et al.(2008)では、クレアチン補給下でシスタチンCを指標としたGFR評価により腎機能障害がないことを確認している。血清クレアチニンのみで腎機能を判断する際は、クレアチン補給の有無を考慮する必要がある。

関連記事

参考文献

  • Kreider RB, Kalman DS, Antonio J, et al. International Society of Sports Nutrition position stand: safety and efficacy of creatine supplementation in exercise, sport, and medicine. Journal of the International Society of Sports Nutrition. 2017;14:18. DOI: 10.1186/s12970-017-0173-z
  • Poortmans JR, Francaux M. Long-term oral creatine supplementation does not impair renal function in healthy athletes. Medicine & Science in Sports & Exercise. 1999;31(8):1108-1110. DOI: 10.1097/00005768-199908000-00005
  • Poortmans JR, Francaux M. Adverse effects of creatine supplementation: fact or fiction? Sports Medicine. 2000;30(3):155-170. DOI: 10.2165/00007256-200030030-00002
  • Gualano B, Ugrinowitsch C, Novaes RB, et al. Effects of creatine supplementation on renal function: a randomized, double-blind, placebo-controlled clinical trial. European Journal of Applied Physiology. 2008;103(1):33-40. DOI: 10.1007/s00421-007-0669-3
  • Gualano B, de Salles Painelli V, Roschel H, et al. Creatine supplementation does not impair kidney function in type 2 diabetic patients. European Journal of Applied Physiology. 2011;111(4):749-756. DOI: 10.1007/s00421-010-1676-3
  • de Souza E Silva A, Pertille A, Reis Barbosa CG, et al. Effects of creatine supplementation on renal function: a systematic review and meta-analysis. Journal of Renal Nutrition. 2019;29(6):480-489. DOI: 10.1053/j.jrn.2019.05.004
  • Antonio J, Candow DG, Forbes SC, et al. Common questions and misconceptions about creatine supplementation. Journal of the International Society of Sports Nutrition. 2021;18:13. DOI: 10.1186/s12970-021-00412-w
  • Longobardi I, Gualano B, Seguro AC, et al. Is it time to reconsider the recommendations on creatine supplementation in patients with chronic kidney disease? A narrative review. Nutrients. 2023;15(6):1466. DOI: 10.3390/nu15061466
  • Kabiri Naeini E, Hajipour A, Rajabi H, et al. Effect of creatine supplementation on renal function biomarkers: a systematic review and meta-analysis. BMC Nephrology. 2025;26:622. DOI: 10.1186/s12882-025-04558-6