CKD(慢性腎臓病)病期別のタンパク質摂取量 — KDIGO・日本腎臓学会ガイドラインの整理
CKDステージG1からG5および透析期までのタンパク質推奨摂取量をKDIGO 2024ガイドラインと日本腎臓学会の基準から整理する。各ステージでのプロテインサプリの位置づけと医療専門家への相談の必要性を示す
- CKD
- 慢性腎臓病
- タンパク質
- 腎臓
- ガイドライン
本記事は公開された学術論文および公的機関の情報に基づく事実の整理であり、特定の疾患の診断・治療・予防を目的としたものではない。個別の健康上の判断は医師・管理栄養士等の医療専門家に相談されたい。
CKD(慢性腎臓病)のステージが進むにつれて、タンパク質の代謝負荷は腎機能への影響を増す。KDIGO 2024ガイドラインはCKD G3〜G5の成人に対して0.8g/kg/日のタンパク質摂取を推奨し、1.3g/kg/日を超える高タンパク食の回避を求めている。一方、透析期(G5D)では逆に1.0〜1.2g/kg/日への増量が推奨される。
本記事ではKDIGOと日本腎臓学会(JSN)の2つのガイドラインを対照し、ステージ別の推奨値とプロテインサプリの位置づけを整理する。
CKDステージとタンパク質代謝はどのように関係するか
高タンパク食は輸入細動脈拡張と糸球体内圧上昇(glomerular hyperfiltration)をもたらす(Ko et al., 2020, JASN)。Ko et al.が引用するNurses’ Health Study(Knight et al., 2003, Annals of Internal Medicine)では、eGFR 55〜80の軽度腎機能低下女性(n=1,624)においてタンパク質10g/日の増加ごとにeGFR -1.69mL/min/1.73m²の低下が観察された。
腎臓はタンパク質の代謝産物(尿素窒素・尿酸・リン)を排泄する臓器である。腎機能が正常な場合、高タンパク食によるeGFR上昇は機能的変化であり、腎障害を意味しない。健常者では1.81g/kg/日の高タンパク食を摂取してもGFR変化量に有意差がないことが報告されている(Devries et al., 2018, The Journal of Nutrition)。
しかしCKDがある場合は状況が異なる。既に濾過能力が低下した腎臓に過剰なタンパク質負荷がかかると、残存ネフロンへの過負荷が進行を促進する可能性がある。Mafra et al.(2025, Journal of Internal Medicine)は、過剰タンパク摂取が心血管障害・酸化ストレス・高リン血症・代謝性アシドーシス・腸内細菌叢異常と関連すると報告している。
こうした背景から、CKDのステージ(eGFRの低下度)に応じたタンパク質管理が推奨される。
ステージ別の推奨タンパク質量はいくらか — KDIGO vs 日本腎臓学会
KDIGO 2024はCKD G3〜G5に対して0.8g/kg/日を推奨(グレード2C)し、進行リスクがある場合は1.3g/kg/日超を避けることを求めている。日本腎臓学会はG3b以降でより厳格な0.6〜0.8g/kg/日を設定しており、両ガイドラインの間に差がある。
| CKDステージ | eGFR (mL/min/1.73m²) | KDIGO 2024 | 日本腎臓学会 | サプリの位置づけ |
|---|---|---|---|---|
| G1 | 90以上 | 1.3g/kg/日超を避ける | 過剰摂取を避ける | 医師への確認が望ましい |
| G2 | 60〜89 | 1.3g/kg/日超を避ける | 過剰摂取を避ける | 医師への確認が望ましい |
| G3a | 45〜59 | 0.8g/kg/日 | 0.8〜1.0g/kg/日 | 医師の判断が必要 |
| G3b | 30〜44 | 0.8g/kg/日 | 0.6〜0.8g/kg/日 | 医師の管理が必要 |
| G4 | 15〜29 | 0.8g/kg/日(VLPD検討可) | 0.6〜0.8g/kg/日 | 医師の管理が必要 |
| G5(非透析) | 15未満 | 0.8g/kg/日(VLPD検討可) | 0.6〜0.8g/kg/日 | 医師の管理が必要 |
| G5D(透析) | 透析中 | 対象外(別GL参照) | 1.0〜1.2g/kg/日 | 医師の指導が必要 |
※VLPD = Very Low Protein Diet(超低タンパク食: 0.3〜0.4g/kg/日 + ケト酸サプリ)。密なモニタリング下でのみ実施される。KDIGO 2024は非透析CKD(G1〜G5)を対象としており、透析患者(G5D)は適用範囲外である。G5Dの推奨値はKDOQI 2020等の別ガイドラインに基づく。
KDIGOとJSNの差は主にG3b以降に現れる。KDIGOが一律0.8g/kg/日としているのに対し、JSNは0.6〜0.8g/kg/日と下限を設定している。どちらが正しいかではなく、個別の病態・栄養状態・サルコペニアの有無に応じて医療チームが判断する領域である。
KDIGO 2024は「高齢者でフレイルやサルコペニアがある場合は、より高いタンパク質・カロリー目標を検討する」とも記載しており、CKDとサルコペニアが併存する場合はタンパク質制限とサルコペニア対策の間で慎重なバランスが求められる。
体重60kgの場合の具体的な目安量は以下の通りである。G1-G2では78g/日未満(1.3×60)、G3a以降では48g/日(0.8×60)、JSN基準のG3bでは36〜48g/日(0.6〜0.8×60)。プロテイン1食で20gを摂取すると、G3b以降では1日の摂取枠の40〜55%を占めることになる。
プロテインサプリはどのステージまで使えるか
Kalantar-Zadeh & Fouque(2017, New England Journal of Medicine)は、CKD患者の栄養管理として低タンパク食(0.6〜0.8g/kg/日)が尿毒素・リン・代謝性アシドーシスの軽減に有効であると報告している。透析移行後は逆にタンパク質の需要が高まり、1.2g/kg/日の摂取が推奨される。
プロテインサプリの位置づけはステージによって大きく変わる。
G1〜G2(eGFR 60以上): 腎機能が比較的保たれた段階では、通常量のタンパク質摂取(0.8〜1.0g/kg/日)は腎機能を悪化させないとする報告が多い(Devries et al., 2018)。ガイドラインでは1日のタンパク質総量が1.3g/kg/日を超えないよう管理することが求められている。プロテインサプリを使用する場合は、食事由来のタンパク質と合算して総量を管理する必要があり、事前に医師に確認することが望ましい。
G3a(eGFR 45〜59): タンパク質制限が明確になるステージ。プロテインサプリを使用する場合は、食事由来のタンパク質を含めた1日の総量管理が必須になる。医師・管理栄養士と相談の上で、食事計画の一部として位置づけるかどうかを判断する段階である。
G3b〜G5(eGFR 44以下): ガイドラインが0.6〜0.8g/kg/日の制限を推奨するステージ。プロテインサプリの自己判断使用は推奨されない。1食あたり20gのプロテインは、0.6g/kg/日制限下の体重60kg(36g/日)で1日摂取枠の55%に相当し、食事との調整が困難になる。
G5D(透析期): 透析によるタンパク質喪失を補うため、逆にタンパク質の需要が高まる。医師の管理下でプロテインサプリが活用されるケースがある。
いずれのステージにおいても、プロテインサプリの使用可否は医療専門家の判断に委ねるべき領域である。本記事はガイドラインの整理であり、特定のステージでの使用を推奨または制止するものではない。
よくある質問
eGFR 60以上の場合のタンパク質摂取量の考え方は
eGFR 60以上(G1-G2)は腎機能が比較的保たれた状態である。健常者を対象とした研究では1.81g/kg/日の高タンパク食でもGFR変化に有意差がないと報告されている(Devries et al., 2018)。ただしCKDと診断されている場合は健常者のデータがそのまま適用できるわけではなく、KDIGO 2024も1.3g/kg/日超の回避を推奨している。かかりつけの医師に現在のeGFRとタンパク質摂取量を伝え、個別の判断を仰ぐことが望ましい。
透析中のタンパク質摂取はどう考えるか
透析中はタンパク質の需要が高まる。透析膜を通じてアミノ酸・アルブミンが喪失するため、JSNやKDOQI 2020は1.0〜1.2g/kg/日の摂取を推奨している。非透析CKDでのタンパク質制限とは正反対の方向であり、透析導入を境に栄養管理の方針が大きく転換する。この段階でのプロテインサプリ使用は医師の指導のもとで検討される。
関連記事
参考文献
- KDIGO (2024). Executive summary of the KDIGO 2024 Clinical Practice Guideline for the Evaluation and Management of Chronic Kidney Disease. Kidney International, 105(4), 545-574
- Kalantar-Zadeh K, Fouque D (2017). Nutritional Management of Chronic Kidney Disease. New England Journal of Medicine, 377(18), 1765-1776
- Ko GJ et al. (2020). The Effects of High-Protein Diets on Kidney Health and Longevity. Journal of the American Society of Nephrology, 31(8), 1667-1679
- Mafra D et al. (2025). Low-protein diet for chronic kidney disease: Evidence, controversies, and practical guidelines. Journal of Internal Medicine, 298(4), 319-335
- Devries MC et al. (2018). Changes in Kidney Function Do Not Differ between Healthy Adults Consuming Higher- Compared with Lower- or Normal-Protein Diets. The Journal of Nutrition, 148(11), 1760-1775
- Cheng Y et al. (2024). Association between dietary protein intake and risk of chronic kidney disease: a systematic review and meta-analysis. Frontiers in Nutrition, 11, 1408424
- 日本腎臓学会 (2014/2020). エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン