第三者検査とは — 自主検査との違いと検査結果の読み方

第三者検査とは、製造・販売する側と使用する側の双方から独立した機関が行う検査を指す。国際規格ISO/IEC 17000は第一者・第二者・第三者を実施者の独立性で区分し、検査結果は検体・項目・検出限界の範囲に限られる。試験成績書の読み方を整理する。

第三者検査とは、対象を提供する側と使用する側の双方から独立した機関が行う確認を指す。国際規格ISO/IEC 17000:2020は、こうした確認行為の全体を「適合性評価」と呼び、実施者の独立性によって第一者・第二者・第三者の3区分を定義している。なお規格上、適合性評価には試験・検査・妥当性確認・検証・認証・認定といった活動が含まれ、それぞれ別の規格で扱われる。本記事では商品パッケージ等で使われる語法に合わせ、「第三者検査」を第三者が行う適合性評価の総称として用いる。検査結果が示すのは、その検体・その試験項目・その検出限界の範囲内で何が確認できたかに限られ、検査していない項目やロットについては何も示さない。

第三者検査とは何を指すのか

対象を提供する人又は組織、及びその対象について使用者側の利害を持つ人又は組織の双方から独立した、人又は機関によって実施される適合性評価が第三者適合性評価である(製品評価技術基盤機構〈NITE〉公開資料による、ISO/IEC 17000:2020の定義文の孫引き)。ISO/IEC 17000:2020は「適合性評価」を規定要求事項が満たされていることの実証と定義しており、NITE(2023)はこれを「基準という物差しを当てて、合っているか合っていないかを継続的に確認・判断すること」と噛み砕いている。

独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)認定センターの報告書「これからの日本の適合性評価制度のあり方を考える調査・検討報告書(適合性評価ガイドブック2023)」は、なぜ第三者による確認が必要になるかを次のように説明する(以下、本記事ではこの資料をNITE(2023)と表記する。URLは参考文献に記載)。「当事者間での信頼関係がある場合は良いが、その結果が当事者間の手を離れて使われたり、その結果の適切性に懸念が生じたりするような場合には、更に客観的な信頼感、つまりは第三者による確認が必要となる」。NITE(2023)による。プロテインの検査で言えば、購入者はメーカーと直接の取引関係を持たないため、メーカー自身の説明だけでは検証しようがない場面が生じる。そこで独立した機関の確認が意味を持つ。

「第三者検査」という言葉には、しばしば「認証」と「認定」が混在して使われる。同じNITEの報告書は次の一点を核心として述べている。「国際規格ISO/IEC 17000:2020では、『規格に照らし合わせ、求める基準に合っているかどうかを確認する』という点では同じであるが、その実施者と対象物が異なるため、認証と認定は別の用語として定義されている」(NITE(2023)p.12)。

この違いは2階層で理解できる。第1階層は「認定機関」が「適合性評価機関」の能力を評価し、認定を与える段階。適合性評価機関は試験所・認証機関・検査機関などを含む広い概念で、検査機関だけを指すわけではない。第2階層は、認定を受けた適合性評価機関が製品やサービスといった対象に対して「認証」を行う段階である。つまり「検査機関そのものが認定されているか」と「その検査によって製品が認証されているか」は別の話であり、片方の情報だけでは全体像は分からない。

こうした区別がなじみの薄い概念であることは、実施主体側の調査でも裏づけられている。NITE内の認定機関IAJapanが2021年1〜3月に企業の品質管理担当者を対象に実施したアンケート調査(無作為抽出2,000社・回答452社)では、認定・認証や適合性評価の意味を「理解している」と「やや理解している」を合わせておよそ半分だった(NITE(2023)p.13)。これは企業の品質管理担当者に対する調査結果であり、一般消費者の理解度を示すものではない。それでもなお、実務者側でさえ半分という数字は、この区別を丁寧に扱う必要性を示している。

自主検査と何が違うのか

ISO/IEC 17000は適合性評価を実施者の独立性で3区分する。第一者適合性評価は対象を提供する人又は組織自身によって実施され、第二者適合性評価は対象について使用者側の利害を持つ人又は組織によって実施される。両者と異なり第三者適合性評価は、提供する側・使用する側のいずれからも独立した人又は機関によって実施される(NITE公開資料による孫引き)。

3区分をプロテインの文脈に置き換えると、次のようになる。

区分誰が実施するかプロテインの文脈での例
第一者対象を提供する側(製造者・販売者自身)メーカーが自らの製造ラインで行う検査
第二者対象について使用者側の利害を持つ側調達する側が取引の条件として行う検査
第三者提供側・使用者側の双方から独立した機関利害関係のない試験機関に依頼する検査

区分は誰が実施するかで決まるものであり、検査の精度そのものを表すものではない。第三者検査であっても検体・項目・検出限界の範囲は限られる点は変わらない。区分が示すのは「利害関係の有無」であって「検査の質」ではない。

自主検査と第三者検査の違いを、規格の能力認定という角度からも見ておく。ISO/IEC 17025は「試験所及び校正機関が特定の試験又は校正を実施する能力があるものとして認定を受けようとする場合の一般要求事項を規定」する国際規格である(NITE, IAJapan「ISO/IEC 17025の概要」)。同じ認定・認証の階層構造はNITE(2023)の報告書でも整理されている。ここで押さえておきたいのは、ISO/IEC 17025が認定するのは試験所の技術的能力であって、製品そのものの合否ではない点だ。IAJapanの解説はこの区別を「ISO 9000の認証を得ていても、これらの技術的能力がきちんと確認されているとは限らない」と明示している。ある試験所がISO/IEC 17025の認定を受けているかどうかと、ある製品が特定の基準に「合格」しているかどうかは、別々に確認する必要がある事柄である。規格上の役割としても、試験所が発行するのは試験成績書や校正証明書であって認証書ではない。製品への認証は、認証機関という別の適合性評価機関が担う活動にあたる。

試験成績書からは何が読み取れるのか

試験成績書の様式は発行機関や検査の種類によって異なり、食品分野に業界共通の統一書式があるわけではない。ただし読む側が確認したい情報はおおむね共通していて、検体名・試験項目・試験方法・試験結果の数値・検出限界または定量下限・試験実施日・発行機関名の7点が挙がることが多い。これは公的に定められた項目一覧ではなく、成績書を読む観点としての整理である。測定の不確かさが付記される成績書もある。

数値の読み方でとくに誤解が生じやすいのが「検出限界」と「定量下限」だ。検出限界(LOD)とは、その試験方法で検出できる最小量を指し、一般に信号対雑音比(S/N)が3倍になる濃度が目安とされる。定量下限(LOQ)は、正確な数値として定量できる最小量・最小濃度で、一般にS/N比10倍が目安とされ、検出限界より大きい値になる。これらの目安値は一次規格文書ではなく、分析化学の解説資料(ミヤマ株式会社(2020)「検出限界と定量下限」)からの孫引きであり、試験方法によって実際の数値は変動する。

ここから導かれる要点は一つ。「不検出」という記載は、その物質がゼロであることを意味しない。それは「その試験方法の検出限界を下回っていた」ことを意味するに過ぎない。検出限界の値自体が試験方法や機器の感度によって異なるため、同じ「不検出」でも試験ごとに保証している範囲は異なる。試験実施日や発行機関名は、いつ・誰が確認した数値かを特定するための情報にあたる。

検査結果では分からないことは何か

試験成績書が保証するのは、その検体・その試験項目・その検出限界の範囲内で得られた結果のみである。検査していないロット、検査していない項目、検出限界を下回る微量成分については、成績書からは何も分からない。「データがない」ことは「陰性である」ことを意味しない。

分からないことを4つに整理する。

第1に、検体の範囲。抜き取り検査はロットから一定数を無作為抽出して全体の合否を推定する方式であり、全数検査とは前提が異なる。任意の検査でどちらが採られたか、全ロット・全製造回で同一の検査が継続されているかは、成績書の記載からは読み取れない。発行日やロット番号の記載がなければ、それがいつのどの製造分を代表する結果なのかも特定できない。

第2に、項目の範囲。検査していない項目については、その物質の有無や量について何も言えない。特定の重金属について「不検出」だったという結果は、その他の物質についての情報を含まない。

第3に、感度の範囲。「不検出」は検出限界以下という意味であり、絶対的なゼロではない。検出限界が高い試験方法での「不検出」と、検出限界が低い試験方法での「不検出」は、保証する精度が異なる。

第4に、階層の混同。検査機関が国際規格の認定を受けていることと、個々の製品がその機関によって認証されていることは別の階層の話である(NITE(2023))。認定はあくまで機関の能力に対するものであり、それだけで特定製品の適合が保証されるわけではない。

これら4点は、第三者検査そのものを無意味にするものではない。むしろ、検査という行為が何を確認し何を確認していないかという範囲を正確に把握することが、成績書を読む上での出発点になる。

よくある質問

「第三者機関検査済み」と書いてあれば安全なのか 検査の範囲は検体・項目・検出限界に限られる。表示された検査結果は、検査した特定の検体・項目についての情報であり、検査していない項目や別のロットの安全性について何かを示すものではない。

「不検出」はゼロという意味なのか 違う。検出限界(その試験方法で検出できる最小量)を下回っていたという意味であり、対象物質が存在しないことを証明するものではない。検出限界の具体的な値は試験方法によって異なる。

認証と認定はどう違うのか 実施者と対象物が異なる。認定機関が適合性評価機関(検査機関)の能力を認定し、その適合性評価機関が製品やサービスといった対象に対して認証を行う、という2階層の関係にある(NITE公開資料の説明による)。

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参考文献