α-ラクトアルブミンとは — ホエイの15〜20%を占める画分とトリプトファン含有量

α-ラクトアルブミンはホエイタンパク質の15〜20%程度を占める画分で、分子量約14.2kDa、トリプトファン含有量がタンパク質1gあたり48mgと主要な食品タンパク質の中で高い。乳糖合成の補助因子としての働き、睡眠・気分に関する研究、乳アレルゲンとしての位置づけを整理する。

本記事は公開された学術論文および公的機関の情報に基づく事実の整理であり、特定の疾患の診断・治療・予防を目的としたものではない。個別の健康上の判断は医師・管理栄養士等の医療専門家に相談されたい。

α-ラクトアルブミン(α-La)はホエイタンパク質の中で2番目に大きい画分で、ホエイタンパク質全体の15〜20%程度を占める。123個のアミノ酸残基から成る球状タンパク質で、分子量は約14.2kDa。Layman et al.(2018, Nutrition Reviews)のレビューが整理した値では、トリプトファン含有量はタンパク質1gあたり48mgに達し、ホエイプロテインアイソレート(WPI、27mg/g)やカゼイン(12mg/g)より高い。牛乳アレルギーの主要アレルゲンBos d 4としても登録されている。

α-ラクトアルブミンとはどんなタンパク質か

α-ラクトアルブミンは123残基から成る球状タンパク質で、分子量は約14.2kDaである(UniProt P00711、WHO/IUIS Bos d 4)。乳腺内で乳糖合成酵素(lactose synthase)の調節サブユニットとして働き、酵素そのものではなく補因子として機能する。ガラクトシルトランスフェラーゼの基質特異性を変化させ、グルコースを乳糖合成の受容体基質にする役割を担う。

構造的にはジスルフィド結合を4本(システイン残基8個)持ち、これが球状の立体構造を安定させている(Layman et al., 2018, Nutrition Reviews)。ヒトの母乳にもヒト型のα-ラクトアルブミンが主要タンパク質として含まれており、この点は同じホエイの主要画分であるβ-ラクトグロブリンとは対照的だ。β-ラクトグロブリンはヒトの母乳には内因性には存在しない(β-ラクトグロブリンとはを参照)。

ホエイの中でどれくらいを占めるのか

ホエイタンパク質は複数の画分から成る混合物で、α-ラクトアルブミンはその中でβ-ラクトグロブリンに次ぐ2番目に大きい画分にあたる。Layman et al.(2018, Nutrition Reviews)はホエイタンパク質中の15〜20%程度としており、最大画分のβ-ラクトグロブリン(約半分)には及ばない。

割合は乳牛の品種・搾乳条件・分析手法によって幅がある。画分ごとの構成はβ-ラクトグロブリンの画分構成表にまとめている。母乳との対比で見ると、ヒト母乳にはヒト型のα-ラクトアルブミンが含まれる一方、β-ラクトグロブリンは含まれない。

トリプトファンはほかのタンパク質よりどれくらい多いのか

Layman et al.(2018, Nutrition Reviews)のレビュー(Table 1)が整理した値によれば、α-ラクトアルブミンのトリプトファン含有量はタンパク質1gあたり48mgで、比較対象の食品タンパク質の中で最も高い。ホエイプロテインアイソレート(WPI)は27mg/g、卵白は17mg/g、大豆(分離大豆たんぱく)は13mg/g、カゼインと牛肉はいずれも12mg/g、小麦は9mg/gだった。

この数値はLayman氏らのレビューが複数の一次分析値を整理した値であり、各値の原典は同レビューが引用する個別の分析研究にある。単位は「タンパク質1gあたり」で統一されており、食品可食部100gあたりの値(トリプトファンとはで扱う日本食品標準成分表のデータ)とは単位系が異なるため、両者を直接比較する場合は注意が必要だ。

トリプトファン含有量の比較

区分トリプトファン(mg/タンパク質100g)出典
α-ラクトアルブミン4,800(48mg/g)Layman et al., 2018, Nutrition Reviews, Table 1
ホエイプロテインアイソレート(WPI)2,700(27mg/g)同上
卵白1,700(17mg/g)同上
大豆(分離大豆たんぱく)1,300(13mg/g)同上
カゼイン1,200(12mg/g)同上
牛肉1,200(12mg/g)同上
小麦900(9mg/g)同上

表はトリプトファン含有量が多い順に並べた。WPI(27mg/g)と比べても、α-ラクトアルブミンは約1.8倍のトリプトファンを含む計算になる。

睡眠や気分の研究では何が分かっているのか

研究で測られているのは、タンパク質中のトリプトファン含有量ではなく、摂取後の血漿トリプトファンとほかの大型中性アミノ酸の比(Trp-LNAA比)である。Markus et al.(2000, American Journal of Clinical Nutrition)は、ストレス脆弱性の高い29名と低い29名を対象に、カゼイン食を対照とした二重盲検クロスオーバー試験を実施した。α-ラクトアルブミンを強化した食事を摂取後、血漿トリプトファン/大型中性アミノ酸(Trp-LNAA)比がカゼイン食に比べ48%高くなった(P=0.0001)。実験的なストレス負荷をかけた条件で、ストレス脆弱者群ではコルチゾール濃度の低下(P=0.036)と抑うつ気分の減少(P=0.007)が報告された。

この結果は「食品全般でストレスが減る」ことを意味するものではない。対象はストレスに脆弱とされる被験者に限られ、しかも摂取したのはα-ラクトアルブミンを強化した特殊な食事であり、市販のホエイプロテインとは組成が異なる。同じ研究チームによるMarkus et al.(2002, American Journal of Clinical Nutrition)は、ストレス脆弱者23名・非脆弱者29名の計52名を対象にしたクロスオーバー試験で、α-ラクトアルブミン高含有ホエイの摂取後に血漿Trp-LNAA比が有意に上昇した(P=0.0001)ことに加え、記憶スキャン課題の成績改善(P=0.019)がストレス脆弱者群でのみ観察された。非脆弱者群では有意な効果は見られなかった。

Markus et al.(2005, American Journal of Clinical Nutrition)は、睡眠に問題を抱える14名と良好な睡眠者14名を対象に、トリプトファンの少ないタンパク質を対照として夜間(就寝前)のα-ラクトアルブミン摂取を比べた。翌朝の眠気の低下(P=0.013)と注意に関する脳の指標の改善(P=0.002)が報告されている。3本はいずれも同じ研究グループによる2000年代前半の研究で、対象は数十人規模にとどまる。市販のホエイプロテインを飲んだ場合に同じ結果が得られるかどうかは、これらの研究だけでは確かめられていない。

乳アレルギーではどう扱われるのか

WHO/IUISアレルゲン命名法サブ委員会のデータベースでは、α-ラクトアルブミンはウシ(Bos taurus)由来のアレルゲン「Bos d 4」として登録されている。分子量は14.2kDa、登録日は2003年2月5日、最終更新は2020年5月13日。アイソアレルゲンBos d 4.0101(UniProt: P00711)として管理される。

Giannetti et al.(2021, Nutrients)のレビューは、牛乳アレルギー患者の多くがカゼイン(Bos d 8)・β-ラクトグロブリン(Bos d 5)・α-ラクトアルブミン(Bos d 4)に感作されると整理する。乳アレルギーの摂取可否は自己判断できるものではなく、医師の診断に基づいて判断される事項にあたる。

よくある質問

α-ラクトアルブミンを強化した食品の研究結果は、市販のホエイプロテインにも当てはまりますか

研究で使われたのはα-ラクトアルブミンを強化した食事や高含有ホエイで、市販の一般的なホエイプロテインとは組成が異なる。ホエイにはトリプトファンと競合するほかの大型中性アミノ酸も多く含まれるため、含有量の差がそのまま血漿Trp-LNAA比の差になるとは限らない。市販品で同じ結果が得られるかは確かめられていない。プロテインと睡眠の関係全般はプロテインと睡眠の記事で整理している。

α-ラクトアルブミンで乳アレルギーは起きますか

ウシ由来のα-ラクトアルブミンは牛乳アレルギーの主要アレルゲンの一つ(Bos d 4)として登録されている。乳アレルギーがある場合の摂取可否は、自己判断ではなく医師の診断に基づいて判断する必要がある。

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参考文献

  • Markus, C. R., Olivier, B., Panhuysen, G. E. M., Van der Gugten, J., Alles, M. S., Tuiten, A., Westenberg, H. G. M., Fekkes, D., Koppeschaar, H. F., & de Haan, E. E. H. F. (2000). The bovine protein α-lactalbumin increases the plasma ratio of tryptophan to the other large neutral amino acids, and in vulnerable subjects raises brain serotonin activity, reduces cortisol concentration, and improves mood under stress. The American Journal of Clinical Nutrition, 71(6), 1536–1544. https://doi.org/10.1093/ajcn/71.6.1536
  • Markus, C. R., Olivier, B., & de Haan, E. H. F. (2002). Whey protein rich in α-lactalbumin increases the ratio of plasma tryptophan to the sum of the other large neutral amino acids and improves cognitive performance in stress-vulnerable subjects. The American Journal of Clinical Nutrition, 75(6), 1051–1056. https://doi.org/10.1093/ajcn/75.6.1051
  • Markus, C. R., Jonkman, L. M., Lammers, J. H. C. M., Deutz, N. E. P., Messer, M. H., & Rigtering, N. (2005). Evening intake of α-lactalbumin increases plasma tryptophan availability and improves morning alertness and brain measures of attention. The American Journal of Clinical Nutrition, 81(5), 1026–1033. https://doi.org/10.1093/ajcn/81.5.1026
  • Layman, D. K., Lönnerdal, B., & Fernstrom, J. D. (2018). Applications for α-lactalbumin in human nutrition. Nutrition Reviews, 76(6), 444–460. https://doi.org/10.1093/nutrit/nuy004
  • Giannetti, A., Toschi Vespasiani, G., Ricci, G., Miniaci, A., di Palmo, E., & Pession, A. (2021). Cow’s Milk Protein Allergy as a Model of Food Allergies. Nutrients, 13(5), 1525. https://doi.org/10.3390/nu13051525
  • WHO/IUIS Allergen Nomenclature Sub-committee. Bos d 4 Allergen Details. https://www.allergen.org/

本記事は公開された学術論文および公的機関の情報に基づく事実の整理であり、特定の疾患の診断・治療・予防を目的としたものではない。個別の健康上の判断は医師・管理栄養士等の医療専門家に相談されたい。