夜勤・交代勤務でもプロテインの効果はあるのか — シフトワーカーのタンパク質摂取タイミングと量

夜勤・交代勤務者のプロテイン摂取タイミングと量を研究データで整理。睡眠不足1晩でMPSが18%低下(Lamon 2021)、コルチゾール21%上昇という報告がある。体内時計とmTORシグナルの関係、夜勤中の消化機能低下、シフト別の実践的な摂取プランを解説する。

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日本の労働者の約21.8%(推計約1,200万人)が深夜業に従事している(厚生労働省, 2012年労働安全衛生特別調査)。看護師・消防士・製造業・運輸業など、夜勤や交代勤務を伴う職種では、食事のタイミングが不規則になりやすく、プロテイン摂取の最適化が難しい。Lamon et al.(2021, Physiological Reports)は、たった1晩の完全な睡眠不足で筋タンパク質合成(MPS: Muscle Protein Synthesis)が18%低下し、コルチゾール(cortisol / ストレスホルモン)が21%上昇、テストステロン(testosterone)が24%低下すると報告している。

夜勤・交代勤務者にとってプロテインの摂取は「いつ飲むか」が通常以上に重要である。本記事では、体内時計と筋タンパク質合成の関係、夜勤中の消化機能の変化、シフトパターン別の実践的な摂取プランを整理する。

なぜ夜勤は筋肉に不利なのか

夜勤が筋肉に不利に働く理由は、睡眠不足によるホルモンバランスの崩壊と、体内時計(サーカディアンリズム / circadian rhythm)によるタンパク質代謝の日内変動の2つに集約される。

Lamon et al.(2021, Physiological Reports)は、健康な若年成人13名(男性7名、女性6名)を対象に、1晩の完全な睡眠不足が筋タンパク質代謝に与える影響を測定した。結果、MPSは18%低下し、血漿コルチゾールは21%上昇、テストステロンは24%低下した。コルチゾールはユビキチン-プロテアソーム系(ubiquitin-proteasome system)とオートファジー-リソソーム系(autophagy-lysosome system)を活性化し、筋タンパク質の分解を促進する。つまり、1晩の睡眠不足だけで「同化抵抗性」(anabolic resistance)に類似した環境が誘導される。

体内時計もタンパク質代謝に直接関与している。Kelu & Hughes(2025, PNAS)は、骨格筋の末梢時計遺伝子(peripheral circadian clock)がRor/Rev-erbバランスを介して夜間のタンパク質分解を制御していることを示した。筋肉の末梢時計を生涯にわたって阻害したゼブラフィッシュでは、筋サイズの減少・成長速度の低下・遊泳速度の低下が観察され、早発性サルコペニア(premature sarcopenia)と表現された。

Cao(2018, Frontiers in Genetics)のレビューによると、mTORカスケード(筋タンパク質合成の中核シグナル経路)は主観的な昼間に活性が最大化し、主観的な夜間後半に最小化する。mTORC1とオートファジーのリズムは逆位相であり、活動期の筋成長速度は非活動期の約2倍とされている。夜勤者は、この「活動期」と「非活動期」が逆転するため、タンパク質摂取のタイミング設計が通常以上に重要になる。

夜勤中の消化機能はどう変わるのか

夜間は消化機能が低下するという報告があり、夜勤中のプロテイン摂取では消化負担への配慮が合理的と考えられる。

複数のレビュー(Hoogerwerf, 2020, Journal of Clinical Gastroenterology)によると、夕食後の胃排出速度(gastric emptying rate)は朝食後と比較して低下する。夜間は消化管の移動性運動複合体(migrating motor complex)の活動が減少し、胃酸分泌は増加するものの胃排出は遅延する。

この消化機能の低下は、プロテインの種類選択に影響する。通常のホエイプロテイン(WPC)は消化に2〜2.5時間を要するが、加水分解ホエイペプチド(WPH)は1〜1.5時間で消化される。WPHは製造段階で既にジペプチド・トリペプチドに分解されており、胃での消化プロセスをスキップしてPepT1トランスポーター経由で吸収される。夜間の胃排出速度低下を考慮すると、WPHの消化負担の少なさは、夜勤中の摂取において実用的なメリットになり得ると考えられる。

Koopman et al.(2009, American Journal of Clinical Nutrition)は、高齢男性10名(平均64歳)を対象に、加水分解カゼインとインタクトカゼインの吸収を比較し、加水分解物の外因性フェニルアラニン出現速度がインタクトより27%高かったと報告している。消化機能が低下する条件(夜間・高齢者)では、加水分解プロテインの吸収効率の高さがより明確に現れる可能性がある。

シフトパターン別のプロテイン摂取プラン

夜勤・交代勤務のパターンは業種によって異なるが、代表的なシフトパターンごとの実践的な摂取プランを以下に提案する。いずれもMamerow et al.(2014, Journal of Nutrition)が示した「タンパク質の均等配分でMPSが約25%向上する」という知見に基づき、1日の総量を3〜4回に均等配分する設計である。

2交代制(16時間夜勤)の場合

日本看護協会(2024年病院看護実態調査)によると、病棟の79.3%が2交代制を採用しており、2交代制病棟の84.8%が16時間以上の長時間夜勤である。

タイミング時刻の目安摂取内容理由
出勤前の食事15:00〜16:00食事+プロテイン20〜30g夜勤前の「アンカーミール」。活動期のmTOR活性が高い時間帯
夜勤前半の補食21:00〜22:00プロテイン20〜30g夜勤開始後の最初の補給。消化負担を考慮しシェイクで
夜勤後半の補食2:00〜3:00プロテイン20〜30g(WPH等)サーカディアンの最低点。消化機能の低下が報告されている時間帯
帰宅後・就寝前9:00〜10:00プロテイン20〜30g就寝前摂取(Trommelen & van Loon, 2016の知見に基づく)

3交代制(8時間夜勤)の場合

タイミング時刻の目安摂取内容理由
出勤前の食事21:00〜22:00食事+プロテイン20〜30g夜勤前のアンカーミール
夜勤中の補食2:00〜3:00プロテイン20〜30g(WPH等)深夜の消化機能低下が報告されている時間帯
帰宅後の食事7:00〜8:00軽食+プロテイン20〜30g就寝前摂取

共通の原則

Aoyama et al.(2021, Cell Reports)は、マウス実験で活動期の初期にタンパク質(BCAA)を摂取すると筋肥大が促進されることを示し、ヒトでも朝食でタンパク質を多く摂取する群のほうが筋機能が高かったと報告している。この知見を夜勤者に適用すると、「主観的な活動期の初期」すなわち「シフト開始直後の食事」が最も重要なタンパク質摂取タイミングとなる。

夜勤明けの就寝前にプロテインを摂取する意義は、Trommelen & van Loon(2016, Nutrients)が示した就寝前プロテインのMPS維持効果に基づく。夜勤明けの日中睡眠は通常の夜間睡眠より短く浅い傾向があるため、就寝前に十分なタンパク質を摂取しておくことで、限られた睡眠時間中のMPSを最大化できるという知見がある(Trommelen & van Loon, 2016, Nutrients)。ただし、この知見は夜間睡眠を対象とした研究に基づく推論であり、日中睡眠での効果は未検証である。

夜勤者に適したプロテインの条件は何か

夜勤中に摂取するプロテインは、以下の3条件を満たすものが適している。

条件理由該当する製品タイプ
消化負担が小さい夜間の消化機能低下に対応WPH(加水分解ホエイペプチド)
準備が簡単休憩時間が限られる環境シェイカーで溶かすパウダー
携帯性が高いロッカーや控室に保管可能個包装または小分け容器

WPH(加水分解ホエイペプチド)は分子量350〜500Daのジペプチド・トリペプチドが主体であり、消化工程をスキップして吸収される。夜間の消化機能低下を考慮すると、通常のWPC(分子量14,000〜20,000Da)より胃腸への負担が少ない。国内WPH製品ではBAZOOKA WPH(350Da)、GOLD’S GYM(424Da)、LIMITEST(400Da以下)等がある。

一方、夜勤前のアンカーミールや帰宅後の食事ではWPCでも十分である。消化機能が比較的高い時間帯であれば、WPCの消化速度(2〜2.5時間)は問題にならず、コスト面でもWPCが有利である。

よくある質問

Q: 夜勤明けの筋トレはプロテインの効果が落ちるのか

A: Lamon et al.(2021)のデータでは、1晩の睡眠不足でMPSが18%低下している。ただし、これは「MPSが起きなくなる」のではなく「閾値が上がる」という意味である。レジスタンス運動自体がMPSの強力な刺激であることは変わらないため、夜勤明けの筋トレが無意味になるわけではない。Mamerow et al.(2014)やAoyama et al.(2021)の知見を踏まえると、ロイシン含有量の高いプロテイン(1食あたり2.5g以上)を運動直後に摂取するタイミング設計が研究上示されている。

Q: 夜勤中に消化負担が少ないプロテインを選ぶ基準は何か

A: 夜間は消化機能が低下するため、分子量の小さいWPH製品(350〜500Da)はPepT1トランスポーター経由での吸収が報告されており(Koopman et al., 2009)、消化機能低下に左右されにくいとされている。選択基準としては、1食あたりロイシン2.5g以上(同化抵抗性の閾値)、甘味料の種類、第三者認証の有無が挙げられる。WPH製品としてはBAZOOKA WPH・GOLD’S GYM・LIMITEST等があり、スペック・価格・味の好みで選ぶことになる。

Q: 夜勤の日と日勤の日でプロテインの量を変えるべきか

A: 1日のタンパク質総摂取量は日勤・夜勤に関わらず体重1kgあたり1.6〜2.2g(ISSNガイドライン)が目安である。夜勤の日にタンパク質を減らす理由はなく、むしろ睡眠不足によるMPS低下とコルチゾール上昇を考慮すると、夜勤の日こそ均等配分を徹底してMPSの起動回数を確保する意義がある。

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参考文献

  • Lamon S, Morabito A, Arentson-Lantz E, et al. The effect of acute sleep deprivation on skeletal muscle protein synthesis and the hormonal environment. Physiological Reports, 2021; 9(1):e14660
  • Aisbett B, Condo D, Zacharewicz E, Lamon S. The impact of shiftwork on skeletal muscle health. Nutrients, 2017; 9(3):248
  • Kelu JJ, Hughes SM. Muscle peripheral circadian clock drives nocturnal protein degradation. PNAS, 2025; doi:10.1073/pnas.2422446122
  • Cao R. mTOR signaling, translational control, and the circadian clock. Frontiers in Genetics, 2018; 9:367
  • Mamerow MM, Mettler JA, English KL, et al. Dietary protein distribution positively influences 24-h muscle protein synthesis in healthy adults. Journal of Nutrition, 2014; 144(6):876-880
  • Aoyama S, Kim HK, Tanaka R, et al. Distribution of dietary protein intake in daily meals influences skeletal muscle hypertrophy via the muscle clock. Cell Reports, 2021; 36(1):109336
  • Trommelen J, van Loon LJC. Pre-sleep protein ingestion to improve the skeletal muscle adaptive response to exercise training. Nutrients, 2016; 8(12):763
  • Koopman R, Crombach N, Gijsen AP, et al. Ingestion of a protein hydrolysate is accompanied by an accelerated in vivo digestion and absorption rate when compared with its intact protein. American Journal of Clinical Nutrition, 2009; 90(1):106-115
  • 厚生労働省. 労働安全衛生特別調査(労働者健康状況調査). 2012
  • 日本看護協会. 2024年病院看護実態調査. 2024