プロテインの価格は今後どうなるのか — 原料相場・GLP-1需要・新設備から読む2026〜2027年の見通し
ホエイ原料(WPC80)は2023年の底値から3倍以上に高騰した。GLP-1薬によるタンパク質需要増、メーカー設備投資、為替動向から2026〜2027年のプロテイン価格見通しを分析。消費者への影響も整理する。
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ホエイプロテインの国際原料価格(WPC80欧州卸値)は2023年5月の€5,100/トンから2026年1月の€14,320/トンへ約2.8倍に上昇し、史上最高値を更新している。日本国内でもVALXやGronGなど主要メーカーが2026年に入り相次いで価格改定を実施した。本記事では、原料相場データ・需要構造の変化・新規生産設備の稼働スケジュールに基づき、2026〜2027年のプロテイン価格の見通しを整理する。
本記事の市場データは公的機関・業界データベースの公開情報に基づく(2026年3月時点)。価格予測は不確実性を伴うものであり、「〜の見方がある」「〜と予測されている」は業界分析・非査読レポートを出典とする。
なぜプロテインは値上がりしたのか — ホエイ原料価格の推移
プロテイン価格の高騰は、複数の構造的要因が重なった結果である。最大の背景はホエイ原料そのものの国際相場の急騰にある。
WPC80(ホエイプロテインコンセントレート(Whey Protein Concentrate)80%)の卸値推移
欧州WPC80の卸値は2023年5月に€5,100〜5,400/トンの安値をつけた後、一貫して上昇を続けている。2024年通年で€10,000〜11,000/トン、2025年12月に€13,000/トン、そして2026年1月には€14,320/トンに達した(業界価格データベースVesper Tool、2026年1月時点)。約2年半で約2.8倍という上昇率は過去に例がない。
| 時期 | 欧州WPC80卸値(/トン) | 2023年5月比 |
|---|---|---|
| 2023年5月(安値) | €5,100〜5,400 | — |
| 2024年通年 | €10,000〜11,000 | 約1.9〜2.0倍 |
| 2025年12月 | €13,000 | 約2.5倍 |
| 2026年1月 | €14,320 | 約2.8倍 |
出典: 業界価格データベースVesper Tool、Mintec Global(各年次)
米国WPC80は欧州を若干上回るレベルで推移しており(2025年12月時点: 約$15,983/トン)、WPI(ホエイプロテインアイソレート(Whey Protein Isolate))はさらに高い€20,500〜$24,250/トンに達している(Vesper Tool、2025年12月時点)。
なお、WPC34%(大量生産品グレード)はWPC80より割安であり、USDAの月次報告によると2025年1月時点で$1.5707/ポンドとなっている。本記事で示す「プロテインサプリメント向け」の相場はWPC80の数値を指し、WPC34%とは別グレードである。
構造的供給不足とニュージーランド酪農の制約
原料価格高騰の直接的な原因は供給不足にある。米国ではWPCおよびWPIが「事実上入手不可能」な状態が2025年末から続いており、サプライヤーの多くは2026年分まで販売済みと報告されている(FoodNavigator、2025年12月19日)。
世界有数の乳製品輸出国であるニュージーランド(NZ)でも増産余地は限定的である。NZの乳牛飼育頭数は2015年のピーク(約480万頭)から年率0.5〜1%で減少しており、2023/24シーズンは約470万頭と5年平均比2%減少した(DairyNZ、2024年)。気候変動対策としてのメタン排出規制や農地の園芸・林業への転換が背景にあり、1頭あたりの乳量向上で総生産量は横ばいを保っているが、大幅な増産は見込めない状況にある。
2026年のホエイ相場はどう動いているのか — 欧米先物・乳製品指標
2026年1月時点で欧州WPC80は€14,320/トンと史上最高値を記録している。業界メディアはこの局面を「価格の狂乱の年(year of crazy price increases)」と表現しており、原料サプライヤーは「在庫確保そのものが最大の課題」としている(eDairy News、2026年; FoodNavigator、2025年12月)。
世界のホエイプロテイン市場の成長予測については、調査機関によって対象スコープが異なるため数値に幅があるが、CAGR(年平均成長率)は5〜9%台で成長が見込まれている点では概ね一致している。
| 調査機関 | 予測対象 | CAGR |
|---|---|---|
| Mordor Intelligence | WPC市場(2026〜2031年) | 6.62% |
| Global Growth Insights | WPC80市場(2026〜2035年) | 5.48% |
| Fortune Business Insights | スポーツ栄養全体(2026〜2034年) | 7.62% |
| Expert Market Research | ホエイ市場全体(2026〜2035年) | 8.50% |
出典: 各調査機関レポート(2025〜2026年発表)。スコープ定義が異なるため市場規模の直接比較はできない。
需要成長が続く一方で供給制約が残存するため、2026年内の価格の大幅緩和は見込みにくい、という見方が業界コンセンサスとなっている。
GLP-1薬の普及はプロテイン需要にどう影響するのか
2025年以降、ホエイプロテイン市場に新たな需要ドライバーが加わった。肥満治療に用いられるGLP-1受容体作動薬(GLP-1 receptor agonist)(セマグルチド、チルゼパチドなど)の急速な普及である。
Gallup調査(2025年10月)によると、米国成人の12.4%がGLP-1注射薬を使用しており、2024年2月の5.8%から約1.5年で2倍以上に増加した。GLP-1治療薬による体重減少では、減少分の約40%が除脂肪筋量(lean body mass)から失われることが報告されている(Haines et al., 2025, Endocrine Society ENDO Annual Meeting; ただし研究によって15〜45%と幅があり、薬剤の種類・用量・試験期間により異なる)、筋肉量維持のためにタンパク質摂取の強化が推奨されるケースが増えている。
この動きはホエイプロテインの需要を構造的に押し上げているとみられている。業界分析では、セマグルチドの特許が2026年前半に中国・インド・ブラジル・トルコなどで切れることにより、新たに2億5,000万人規模のGLP-1ユーザーが発生する可能性が指摘されている(eDairy News、2026年)。仮に肥満人口の25%がGLP-1を使用し推奨量のタンパク質を摂取した場合、2026年末までに追加で30億kgのホエイプロテインが必要になるとの試算がある(eDairy News、2026年)。
この試算は査読を経た学術論文ではなく業界メディアの分析に基づくものであり、実際の需要増加幅には不確実性が大きい。それでも、GLP-1治療薬の普及がホエイ需要に構造的な上方圧力を加えているという傾向は、複数の業界レポートで指摘されている。
メーカーの新設備投資は価格を下げるのか
現在の供給逼迫がいつ緩和されるかを見通すには、新規生産設備の稼働スケジュールが手がかりになる。2026〜2027年に稼働が予定されている主要設備を以下に整理した。
| 企業 | 拠点 | 内容 | 稼働予定 |
|---|---|---|---|
| Idaho Milk Products | 米国アイダホ州 | $200M粉末ブレンド施設 | 2026年5月 |
| Wisconsin Whey Protein | 米国ウィスコンシン州 | WPI 2,200万ポンド/年(新工場) | 2026年初 |
| Fonterra | ニュージーランド | Studholme工場拡張(WPC製造開始) | 2026年 |
| Glanbia | 米国ニューメキシコ州 | WPI 4,500トン/年増強 | 2027年 |
| Arla Foods Ingredients | デンマーク | 既存工場をホエイ製造に転換 | 2027年1月(テスト生産) |
| Tirlán | アイルランド | €126M投資、プレミアムホエイ製造 | 2027年中頃 |
出典: DairyReporter(2026年1月16日)
2026年内に稼働する設備はIdaho Milk Products、Wisconsin Whey Protein、Fonterraの3施設に限られる。Glanbia、Arla、Tirlánなどの大規模施設は2027年以降の稼働となるため、供給面の本格的な緩和は2027年後半以降になると考えられる。ただし、大規模設備の建設には建設遅延のリスクが常に伴い、稼働時期が後ろ倒しになる可能性もある。
GLP-1需要の増加ペース次第では、設備が稼働しても需要が供給を上回り続け、価格の高止まりが続く可能性もある。2026〜2027年の価格動向は「2027年の設備稼働が順調に進むか」「GLP-1普及による需要増がどこで落ち着くか」の二軸で決まると考えられる。
消費者はどう対策すればよいのか — コスパ最大化の選び方
日本市場では、国際原料高騰に加えて円安というもう一つのコスト増要因が重なっている。ホエイプロテインはほぼ全量を輸入に依存しており(主産地はNZ・EU・米国)、円安が原料調達コストに直接反映される。2024年の円ドル年平均レートは151.37円で、一時161円台まで円安が進行した。2026年も日米金利差が構造的に残る見通しであり、大幅な円高への転換は見込みにくいとの見方が多い。
国内メーカーの価格改定動向を以下に示す。
| ブランド | 改定時期 | 改定内容 |
|---|---|---|
| VALX | 2026年1月 | WPC 1kg: ¥4,480→¥4,980(+11%) |
| GronG | 2026年3月 | ホエイプロテイン一部改定 |
| X-PLOSION | 2025年7月以降 | 一部改定 |
業界調査(2026年2月、国内6社対象)では、6社中3社が「2026年中にさらなる値上げを予定」と回答し、残り3社も「状況に応じて値上げの可能性あり」としている(日本ネット経済新聞、2026年2月5日)。また6社中5社が販売数の増加を報告しており、値上げ後も需要は堅調に推移している。
主要WPC製品の1kgあたり価格・コスパ比較(2026年3月時点)
タンパク質含有率が確認できる製品については、タンパク質1gあたりの単価も算出した。比較表は1kgあたり価格の昇順で並べた。
| 製品 | 内容量 | 通常価格(税込) | 1kgあたり | タンパク質含有率 | タンパク質1gあたり |
|---|---|---|---|---|---|
| DNS プロテインホエイ100 | 1,050g | ¥5,799 | ¥5,523 | — | — |
| GronG ホエイプロテイン100スタンダード | 1,000g | ¥4,980 | ¥4,980 | 75%以上 | 約¥6.6 |
| VALX ホエイプロテイン WPC | 1,000g | ¥4,980 | ¥4,980 | — | — |
| BAZOOKA NUTRITION WPC | 900g | ¥4,800 | ¥5,333 | 70%以上 | 約¥7.6 |
| Alpron WPC ホエイプロテイン | 900g | ¥5,724 | ¥6,360 | — | — |
| 明治 SAVAS ホエイプロテイン100 | 980g | ¥7,436 | ¥7,587 | 71〜75% | 約¥10.3 |
| マイプロテイン Impact ホエイ | 1,000g | ¥7,975 | ¥7,975 | — | — |
出典: 各メーカー公式サイト(2026年3月時点)。SAVASは希望小売価格(税抜¥6,760)を税込換算した価格であり、実際の販売価格とは乖離がある場合がある。マイプロテインは定価を記載しており、頻繁なセール(50%以上OFF)が常態化しているため実質購入価格は定価の半額前後になることが多い。DNS・VALX・Alpronはタンパク質含有率が公式サイトで確認できなかったため「—」とした。
GronGとVALXが¥4,980/kgと最安値帯に位置する。タンパク質1gあたり単価ではGronGの約¥6.6が最も安く、BAZOOKA WPCの約¥7.6がそれに続く。SAVASはタンパク質1g約¥10.3と割高で、マイプロテインは定価では高いがセール時に購入すればコスパが改善する。
富士経済の推計では、2025年の国内タンパク補給食品市場は3,096億円(前年比+4.4%)、うちプロテイン単体は1,292億円(前年比+8.6%)と成長が続いている。市場拡大と価格上昇が同時に進む構図となっており、2026年以降も値上げ局面が続く見通しのもとで、消費者にとっては価格だけでなくタンパク質含有率・認証の有無・甘味料の種類など複数の軸での比較が重要になる。
よくある質問
プロテインの価格はいつ下がるのか
2026年内の大幅な価格低下は見込みにくい。GlanbiaやArla Foods Ingredientsなどの大規模新設備の多くは2027年以降に稼働予定であり、供給逼迫が続く公算が大きい。2027年後半以降は新規設備の稼働により供給制約が一部緩和される可能性があるが、GLP-1治療薬の普及による新規需要の増加ペース次第では、価格の高止まりが続くシナリオも排除できない。見通しの不確実性は高く、「いつ安くなるか」に関する業界コンセンサスはまだ形成されていない。
GLP-1薬を使っているとプロテインの摂取量を増やすべきか
GLP-1治療薬による体重減少では、減少分の25〜40%が除脂肪筋量から失われることが報告されている(Haines et al., 2025, Endocrine Society ENDO Annual Meeting)。筋肉量の維持のためにタンパク質摂取を強化する考え方は医療・栄養分野で議論されている。ただし、個人の体重・活動量・治療方針によって適切な摂取量は異なり、具体的な目標量は医師や管理栄養士に確認することが望ましい。
値上がり局面でコスパの良いプロテインはどれか
2026年3月時点ではGronG(¥4,980/kg・タンパク質1gあたり約¥6.6)が1gあたり単価で最安水準にある。VALX(¥4,980/kg)・BAZOOKA WPC(¥5,333/kg・約¥7.6/g)も近い価格帯である。ただし、VALX・DNS・Alpronはタンパク質含有率が公式サイトで確認できなかったため1gあたり単価を算出できていない。含有率はブランドごとに70〜75%の幅があり、1gあたり単価まで計算しないと実質コスパは比較できない。また、多くのブランドが定期購入割引やセール価格を設定しているため、通常価格だけでなく実質購入価格での比較も重要である。価格以外の要素(第三者認証・甘味料の種類・製法)も含めて総合的に判断することが望ましい。
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参考文献
- Vesper Tool, “Whey Protein Concentrate 80% European Spot Price”, 2023〜2026年各月次データ
- Mintec Global, “Global WPC80 Price Index”, 2023年6月
- USDA AMS, “Dairy Market News — Whey Products Prices (WPC34%)”, 2024〜2025年月次レポート
- Gallup, “Use of GLP-1 Medications Among U.S. Adults”, 2025年10月調査
- Haines et al., “Lean Mass Loss During GLP-1 Receptor Agonist Treatment”, Endocrine Society ENDO Annual Meeting, 2025年(プレスリリースベース、査読なし)
- eDairy News, “GLP-1 Drugs and Whey Protein Demand Outlook”, 2026年
- DairyReporter, “New Whey Processing Facilities — 2026-2027 Outlook”, 2026年1月16日
- DairyNZ, “New Zealand Dairy Statistics 2023/24”, 2024年
- FoodNavigator, “Whey Protein Supply Crisis Deepens”, 2025年12月19日
- 富士経済, “タンパク補給食品市場の将来展望 2024・2025”, 各年発表
- 日本ネット経済新聞, “プロテイン市場調査: 2026年の価格改定と需要動向”, 2026年2月5日