飲み込みにくい人はタンパク質をどう摂るのか — 形状ごとの物性とタンパク質量を整理する

高齢期はタンパク質の必要量が高く見積もられる一方、粉末を水に溶いた飲料はさらさらした物性に属する。増粘した液体は誤嚥所見と肺炎発生率とで報告が分かれている。形状ごとの物性とタンパク質量の目安、嚥下調整食分類の枠組み、推奨量が健常と疾患で分かれる区分の読み方を整理する。

本記事は公開された学術論文および公的機関の情報に基づく事実の整理であり、特定の疾患の診断・治療・予防を目的としたものではない。個別の健康上の判断は医師・管理栄養士等の医療専門家に相談されたい。

水のようにさらさらした液体は、嚥下機能が低下した場合に扱いが難しい物性として分類されている。粉末を水に溶いた一般的なプロテイン飲料は、この物性に近い位置にある。どの形状が適するかは個々の嚥下機能の評価によって決まり、一律の答えはない。

なぜ飲み物の「とろみ」が問題になるのか

さらさらした液体は咽頭を通過する速度が速く、嚥下機能が低下した状態では気道に入り込みやすい物性として位置づけられている。粉末を水に溶いた一般的なプロテイン飲料は、この「さらさら」側の物性に分類される。日本摂食嚥下リハビリテーション学会は「嚥下調整食分類2021」(2021年発行・同年9月17日差し替え版)で、とろみを「薄いとろみ」「中間のとろみ」「濃いとろみ」の3段階に整理している。各段階は観察所見の記述と、粘度・ラインスプレッドテスト(LST)値・シリンジ法残留量という物性測定値によって規定される。

国際的な枠組みとしては、IDDSI(International Dysphagia Diet Standardisation Initiative)が飲料をレベル0〜4、食品をレベル3〜7の連続体で示している。レベル0は最も薄い液体、レベル4は最も粘度の高い状態にあたる。Nakao-Kato ら(2025)は、飲料の粘度実測に基づいてIDDSIのレベルと日本の嚥下調整食分類2021の対応関係をNutrients誌で検証しているが、粘度の高い領域では強い対応が見られる一方、薄い液体に近い低粘度域では境界が不明瞭だったと報告している。

段階ごとの具体的な粘度数値・LST数値は、学会分類とIDDSIのいずれについても、公開されている資料間で表記の揺れがある。数値そのものを本記事では扱わず、枠組みの存在にとどめる。どの段階のとろみが適するかは、嚥下造影(VF)や内視鏡検査(VE)等による個々の嚥下機能評価に基づいて医療専門職が判断する事柄であり、本記事は特定の段階を推奨しない。

とろみをつければ安全になるのか

とろみをつけることと、誤嚥のリスクが下がることは、同じ意味ではない。Chu と Chao(2025)は嚥下障害のある成人を対象としたRCT16件(被験者計1,812名)のメタ分析で、増粘した液体は誤嚥の所見(造影・内視鏡による代替指標ベース)を有意に低下させたと報告している(オッズ比0.59)。テクスチャー修正食はエネルギー摂取量への効果が小〜中程度、タンパク質摂取量への効果は中程度だったとも、The Journal of Nutrition, Health and Aging誌で述べている。

一方でRobbins ら(2008)は、Annals of Internal Medicine誌で、認知症またはパーキンソン病を有する高齢者515名(追跡504名、年齢50〜95歳・中央値81歳)を対象に、嚥下造影で薄い液体の誤嚥が確認された患者に限定してRCTを行っている。全液体を顎引き姿勢で摂取する群と、ネクター状・ハチミツ状のとろみをつけて頭部中立位で摂取する2群を比較したところ、3ヶ月累積肺炎発生率は顎引き群9.8%に対しとろみ群11.6%で、統計的な有意差はなかった(ハザード比0.84, p=0.53)。有害事象はとろみ群で多い傾向にあり、脱水は顎引き群2%に対しとろみ群6%、尿路感染は顎引き群3%に対しとろみ群6%だったと報告されている。著者ら自身も、介入間の優越について確定的な結論は出せないと記している。

この2つの報告は対象も測定した指標も異なる。Chu & Chao 2025が扱ったのは誤嚥の所見という代替指標であり、Robbins 2008が扱ったのは肺炎の発生という臨床アウトカムである。代替指標の改善が確認された研究と、臨床アウトカムでの優越が確認されなかった研究の両方が存在するという状態が、現時点の研究の実像になる。増粘によって誤嚥性肺炎そのものを防げるかを大規模RCTで確認した報告は、調査した範囲では見当たらなかった。

Robbins 2008の対象は、嚥下造影で誤嚥が確認された認知症・パーキンソン病の重症患者群である。食が細くなった、むせやすくなったという段階の一般的な高齢者に、この結果をそのまま当てはめることはできない。とろみをつければ水分摂取量が落ちる方向の懸念も、Robbins 2008の脱水の発生率差からうかがえる。

形状ごとにタンパク質はどれくらい摂れるのか

タンパク質を含む飲食物は、粉末を水に溶いた飲料から、半固形のゼリータイプの製品まで、物性の連続体として整理できる。以下の表は形状カテゴリごとの物性の目安とタンパク質量の目安をまとめたもので、物性がさらさらな順(一般に嚥下の難易度が高いとされる順)に並べている。

形状物性の目安タンパク質量の目安(1回あたり)留意点
粉末+水さらさら(低粘度液体)製品により20〜30g程度が一般的薄い液体の摂取が難しいと評価された場合、物性面での相性が悪い可能性がある
粉末+牛乳さらさら〜ごくわずかにとろみ牛乳由来のタンパク質が加わり25〜35g程度になりうる乳製品はとろみ調整食品との反応が水と異なり、攪拌後に粘度が経時的に上昇する場合がある
とろみ調整食品を加えた飲料薄い〜濃いの3段階(学会分類2021・IDDSIで規定)増粘によりタンパク質量自体が大きく変わるとは考えにくいが、この点を直接検証した研究は確認できなかったどの段階が適するかは個別の嚥下機能評価による
ゼリータイプの経口栄養補助食品(ONS)半固形1個あたり5〜10g程度のものが一般的とされる咀嚼をほぼ必要としない設計のものが多いが、個々の嚥下・咀嚼機能評価が前提になる
液状ONS(濃厚流動食)さらさら〜中間(製品により幅がある)1本あたり数g〜10g台が一般的とされる標準濃度は1kcal/mlとされ、これを超える高濃度タイプもある。低粘度側に位置する製品があることに留意する
食品(通常の食事内でのタンパク質摂取)半固形〜固形(食品により大きく異なる)食品の種類による嚥下機能評価に加えて咀嚼機能の評価も必要になる場合がある

本記事の収載基準は「タンパク質を含む飲食物として一般に流通している形状カテゴリ」とする。特定ブランドの製品でなく、カテゴリとしての代表的な傾向を扱っており、値は個々の製品の実測値ではない。数値の出典は一般的な製品カテゴリの傾向であり、「〜程度」「一般的に」という留保付きで示している(2026年9月時点)。

液状ONSに関して、Mongkolsucharitkul ら(2025)は、BMC Geriatrics誌で、嚥下障害の所見がある高齢者群(平均72.9〜75.0歳)で、粘度51〜350センチポイズの高タンパク低炭水化物スムージー2種と、粘度1〜50センチポイズの市販液状製品(Ensure)を比較している。粘度の高いスムージー2種は、嚥下前に食物が咽頭へ漏れ出る所見(誤嚥の前兆とされる代替指標)が、低粘度の市販液状製品より有意に少なかったと報告されている(p<0.05)。この研究は被験者63〜65名の単施設研究であり、市販液状製品を代表するのは1銘柄のみである点には留意が必要になる。また比較された2つは粘度だけでなくタンパク質と炭水化物の比率も異なっており、所見の差が粘度によるものか栄養組成によるものかは、この研究からは切り分けられない。

とろみ調整食品を加えることでタンパク質量そのものが変化するかを直接検証した研究は、調査した範囲では見当たらなかった。とろみ調整食品の主成分は多糖類でタンパク質をほとんど含まないという一般的な知識はあるが、これは推測にとどまる。液量を増やして濃度を調整する設計の製品では、相対的なタンパク質濃度が下がる場合もありうる。

高齢期に必要なタンパク質量はどう示されているのか

高齢期のタンパク質推奨量に、一律の数値は存在しない。健常な高齢者と、急性・慢性疾患を有する高齢者、重度の疾患・低栄養状態にある高齢者とでは、国際的なガイドラインでも異なる区分が設けられている。

Bauer ら(2013)は、PROT-AGE Study Groupとして65歳以上を3区分に分けた推奨量をJournal of the American Medical Directors Association誌で示している。健康な高齢者は体重1kgあたり1.0〜1.2g/日、急性・慢性疾患を有する高齢者は1.2〜1.5g/kg/日、重度の疾患や低栄養状態にある高齢者は最大2.0g/kg/日という区分である。1食あたり25〜30g(ロイシン2.5〜2.8gを含む)が、筋タンパク質合成の閾値として言及されている。

Deutz ら(2014)は、ESPEN Expert Groupとして、Clinical Nutrition誌で高齢者一般に向けて1.0〜1.2g/kg/日以上を推奨し、レジスタンス運動との併用を強く勧めている。厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書では、65歳以上のたんぱく質目標量の下限を総エネルギーの15%とし(1〜49歳は13%、50〜64歳は14%)、フレイル・サルコペニア発症予防について「推奨量より多め(1.2g/kg体重/日以上)に摂取するほうが予防できる可能性があると考えられる」と記載している。この報告書自身が、根拠となる研究の質・量ともに十分ではないという留保を付けている。

どの区分に自分や家族が該当するかは、健康状態や疾患の有無によって異なる。健常時の推奨量をそのまま疾患時に当てはめることも、疾患時の推奨量を健常な高齢者に当てはめることも、対象集団のずれを見落とすことになる。タンパク質の摂取量と摂取形状の両方について判断が必要な場合、医師・管理栄養士・言語聴覚士等の専門職に相談する選択肢がある。

サルコペニアと高齢期のタンパク質摂取の関係は、高齢者にプロテインは必要かで扱っている。加齢に伴う筋タンパク質合成の反応低下については同化抵抗性(Anabolic Resistance)とはを参照してほしい。

よくある質問

Q. とろみをつけるとタンパク質量は変わるのか

直接検証した研究は確認できていない。液量を増やして濃度を調整する設計の製品では、1杯あたりのタンパク質濃度が下がることはありうる。

Q. 牛乳で溶かすのは水と違うのか

牛乳は水よりわずかに粘度が高く、牛乳由来のタンパク質が加わる分、タンパク質量は増える傾向にある。ただし乳製品はとろみ調整食品との反応が水とは異なり、攪拌後に粘度が経時的に上昇する場合がある。とろみをつけるかどうか、どの程度にするかは、個々の嚥下機能評価に基づく判断になる。

Q. むせるようになったら誰に相談すればよいか

嚥下機能の評価には、医師・言語聴覚士・管理栄養士等の専門職が関わる選択肢がある。嚥下造影(VF)や内視鏡検査(VE)によって、その人に適した食形態やとろみの段階を評価する仕組みが医療・介護の現場にある。

関連記事

参考文献

  • Robbins J, Gensler G, Hind J, Logemann JA, Lindblad AS, Brandt D, Baum H, Lilienfeld D, Kosek S, Lundy D, Dikeman K, Kazandjian M, Gramigna GD, McGarvey-Toler S, Miller Gardner PJ (2008). Comparison of 2 Interventions for Liquid Aspiration on Pneumonia Incidence. Annals of Internal Medicine, 148(7), 509-518. (https://doi.org/10.7326/0003-4819-148-7-200804010-00007)
  • Chu YH, Chao JC (2025). Effectiveness of diet modification on dietary nutrient intake, aspiration, and fluid intake for adults with dysphagia: a meta-analysis of randomized controlled trials. The Journal of Nutrition, Health and Aging, 29(4), 100486. (https://doi.org/10.1016/j.jnha.2025.100486)
  • Nakao-Kato M, Takahashi A, Magara J (2025). Characterization of Beverage Viscosity Based on the International Dysphagia Diet Standardisation Initiative and Its Correspondence to the Japanese Dysphagia Diet 2021. Nutrients, 17(6), 1051. (https://doi.org/10.3390/nu17061051)
  • Mongkolsucharitkul P, Pinsawas B, Watcharachaisoponsiri T, Suta S, Pumeiam S, Ophakas S, Surawit A, Ongard S, Keskool P, Thitisakulchai P, Srichayet P, Mayurasakorn K (2025). Evaluating swallowing capacity in older adults with dysphagia: high protein, low carbohydrate smoothie formulas versus commercial formula. BMC Geriatrics, 25, 456. (https://doi.org/10.1186/s12877-025-06126-x)
  • Bauer J, Biolo G, Cederholm T, Cesari M, Cruz-Jentoft AJ, Morley JE, Phillips S, Sieber C, Stehle P, Teta D, Visvanathan R, Volpi E, Boirie Y (2013). Evidence-Based Recommendations for Optimal Dietary Protein Intake in Older People: A Position Paper From the PROT-AGE Study Group. Journal of the American Medical Directors Association, 14(8), 542-559. (https://doi.org/10.1016/j.jamda.2013.05.021)
  • Deutz NEP, Bauer JM, Barazzoni R, Biolo G, Boirie Y, Bosy-Westphal A, Cederholm T, Cruz-Jentoft A, Krznariç Z, Nair KS, Singer P, Teta D, Tipton K, Calder PC (2014). Protein intake and exercise for optimal muscle function with aging: Recommendations from the ESPEN Expert Group. Clinical Nutrition, 33(6), 929-936. (https://doi.org/10.1016/j.clnu.2014.04.007)
  • 日本摂食嚥下リハビリテーション学会「嚥下調整食分類2021」(2021年発行・2021年9月17日差し替え版)
  • 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書