ダイエット中にクレアチンとプロテインは両方必要か — 減量期の筋量維持と体組成の科学

カロリー制限中の筋量維持にはタンパク質2.3〜3.1g/kg FFMが必要であり、クレアチンはトレーニング強度を維持する補助的な役割を果たす。減量期の体組成設計を論文データで整理する。

  • クレアチン
  • プロテイン
  • ダイエット
  • 減量
  • 筋量維持
  • 体組成
  • カロリー制限

減量期に筋量を維持するには、タンパク質摂取量を通常より引き上げ(2.3〜3.1g/kg FFM)、かつレジスタンストレーニングを継続することが最も重要な要素である。クレアチン(creatine)は筋細胞内のホスホクレアチン(phosphocreatine, PCr)貯蔵を高め、カロリー不足下でも高強度トレーニングを維持しやすくする補助的な役割を担う。プロテインとクレアチンは異なる機序で機能するため、目的と体組成の目標に応じて使い分けるか、両方を組み合わせる選択肢がある。

なぜ減量期に筋量が落ちるのか?

カロリー制限下では、エネルギー収支がマイナスになるため、身体はグルコース・脂肪だけでなくタンパク質(筋肉)もエネルギー源として動員しやすくなる。これが減量中の除脂肪体重(fat-free mass, FFM)損失の主因である。

Helms et al.(2014, International Journal of Sport Nutrition and Exercise Metabolism)は、カロリー制限下でレジスタンストレーニングを行う成人を対象とした6研究から得られた13研究群のデータを分析し、9研究群でFFMが0.3〜2.7kg減少したことを示した。最高タンパク質群(2.5〜2.6g/kg/日)のみがFFMを実質的に維持しており、通常の推奨量(0.8g/kg/日)ではFFM損失が大きい傾向があった。

カロリー制限の厳しさが増すほど、またボディコンポジションが既に低体脂肪であるほど、筋分解リスクは高まる。Longland et al.(2016, American Journal of Clinical Nutrition)は約40%カロリー制限下の4週間RCT(n=40)で、高タンパク群(2.4g/kg/日)が低タンパク群(1.2g/kg/日)に比べてLBM(除脂肪量)を+1.2kg対+0.1kgで有意に維持しながら脂肪を−4.8kg対−3.5kgと多く落としたことを報告した。タンパク質量の選択が体組成の結果を大きく左右する。

クレアチンは減量期にも続けるべきなのか?

クレアチンの主な作用はPCr(ホスホクレアチン)貯蔵量の増加であり、高強度の短時間運動(10〜30秒)における出力を維持しやすくする。減量期の文脈では「エネルギー源」としてではなく「トレーニング質の維持」という間接的な経路で筋量維持に貢献する可能性がある。

Pashayee-Khamene et al.(2024, Journal of the International Society of Sports Nutrition)による143のRCT・3,655名のメタアナリシスでは、クレアチン補給によりFFMが平均+0.82kg(95%CI: 0.57〜1.06)、体脂肪率が−0.28%(95%CI: −0.47〜−0.09)改善した。ただし、これはダイエット専用のデータではなく、通常〜減量期を含む幅広い試験の統合結果である。体脂肪量そのものへの有意な変化は示されなかった(+0.05kg; ns)。

Kreider et al.(2017, Journal of the International Society of Sports Nutrition)のISSNポジションスタンドは、クレアチン維持量3〜5g/日でPCr貯蔵量が15〜40%増加し、高強度運動の反復能力が5〜15%向上すると示している。カロリー制限によりトレーニング強度が落ちやすい減量期にこそ、この効果が筋量維持の補助線になると考えられる。

なお、クレアチン補給開始から数日間で体重が1〜2kg増加することがある。これは筋細胞内の水分貯留(細胞内液の増加)によるものであり、皮下浮腫や体脂肪の増加とは異なる(Kreider et al., 2017)。BIA(体組成計)やDEXAでは、この水分増加が「FFM増加」として計測されるため、実際の筋タンパク質増加と区別できない点に注意が必要である。

減量期のプロテイン摂取量はどう変えるのか?

Hector & Phillips(2018, International Journal of Sport Nutrition and Exercise Metabolism)は、エネルギー制限下のアスリートに対してタンパク質摂取量を1.6〜2.4g/kg/日まで引き上げることを推奨している。通常期の目安である1.6g/kg/日では、エネルギー制限下で筋タンパク質合成速度(MPS)が抑制されやすく、より高いタンパク質摂取が必要になるためである。

Helms et al.(2014)は除脂肪体重(FFM)あたりの推奨量として2.3〜3.1g/kg FFMを提示している。体重が同じでも体脂肪率が高い人(FFMが少ない人)は、体重基準より高い摂取量が必要になる計算になる。カロリー制限が厳しいほど、体脂肪率が低いほど、この上限に近い量を目指すことが合理的である。

ただし、Longland et al.(2016)の2.4g/kg/日という摂取量は、40%カロリー制限+週6日の高強度トレーニングという非常に厳しいプロトコルのデータである。一般的なダイエット(20〜25%カロリー制限、週3〜4回のトレーニング)への単純な外挿は慎重に行う必要がある。実践的には1.8〜2.4g/kg/日を目安として、トレーニング強度や体重変化に応じて調整するアプローチが現実的である。

クレアチンとプロテインの併用は減量期の体組成をどう変えるのか?

Burke et al.(2001, International Journal of Sport Nutrition and Exercise Metabolism)は6週間(n=36)の試験で、ホエイプロテイン+クレアチン群が除脂肪組織量の増加とベンチプレス1RMにおいてホエイ単体群・プラセボ群を有意に上回ったことを報告している。ただし、この試験はカロリー制限下ではなく通常カロリー下のデータであり、減量期への直接的な適用は推論にとどまる点に注意が必要である。

機序の観点から整理すると、プロテインは筋タンパク質合成(MPS)の基質として機能し、クレアチンはPCr再合成の促進を通じてトレーニングの反復能力を高める。両者は異なる経路で働くため、減量期における役割も補完的である。プロテインが「筋分解を防ぐ」、クレアチンが「トレーニング強度を維持しやすくする」という関係で、両方を組み合わせることで筋量維持に対する機序を複数確保できる。

Desai et al.(2025, Nutrients)のRCT(n=63、5g/日・13週間)では、クレアチン補給開始7日間でLBMが+0.51kg増加したが、12週間のレジスタンストレーニング期間中はクレアチン群と対照群でLBM増加に有意差がなかった(+2.24 vs +2.11kg;p=0.71)。クレアチン単独での筋量増加効果は限定的であり、あくまでトレーニングの質を維持するための補助と位置づけるのが適切である。

減量期のクレアチン+プロテイン製品はどう選ぶか?

減量期はカロリー全体の管理が重要なため、プロテインは1食あたりのカロリーが低く、タンパク質密度が高い製品が合理的である。下表は主要ホエイプロテイン製品を1食あたりのカロリー昇順で比較したものである(各製品の代表フレーバー・プレーン/ナチュラルでの比較)。

製品1食量カロリータンパク質甘味料Informed Choice価格(/kg)
Myprotein Impact WPC(ノンフレーバー)25g103kcal21gなし要確認¥3,225
SAVAS ホエイプロテイン100(リッチショコラ)28g108kcal19.5gアスパルテーム・スクラロース未確認未確認
be LEGEND WPC(ナチュラル)28g108kcal20.8gなし(ナチュラル)未確認未確認
BAZOOKA WPH(ソアレモン)30g111kcal20.1g羅漢果(天然)¥16,560
GronG スタンダードWPC(ナチュラル)30g119kcal22.9gなし(ナチュラル)未確認¥4,980
VALX WPC(プレーン)30g119kcal23.3gなし(プレーン)未確認¥4,980
DNS ホエイプロテイン10035g142kcal24.2gスクラロース未確認

製品スペックは各メーカー公式サイトの情報に基づく(2026年3月時点)。

クレアチンは多くのプロテイン製品には配合されていないため、減量期に組み合わせる場合は単体のクレアチンモノハイドレート(creatine monohydrate)製品を3〜5g/日で追加するのが標準的な方法である。クレアチンは無味無臭の粉末であり、プロテインシェイクに混ぜて摂取できる。GronGクレアチン(Informed Choice認証)やVALXクレアチンパウダーPRO(クレアピュア使用、ケルンリスト認証)など、第三者認証を取得した製品が主要な選択肢として挙げられる。

ローディング(loading)は必須ではなく、3〜5g/日の維持量摂取でも3〜4週間で筋クレアチン貯蔵が飽和に近づく(Kreider et al., 2017)。詳細はクレアチンのローディングは本当に必要かを参照のこと。

よくある質問

カロリー制限中にクレアチンを摂ると体重が増えるのは問題か?

クレアチン補給の初期(特に最初の7〜10日間)に体重が1〜2kg増加することがある。これは筋細胞内(細胞内液)の水分が増加するためであり、体脂肪の増加ではない。体重計の数値を重視するダイエットでは混乱しやすいが、体脂肪率や見た目の変化を優先的に評価することが推奨される。減量が目的であれば、水分貯留による体重増加を気にしてクレアチンを中断するよりも、トレーニング強度の維持と筋量保護を優先するという考え方もある。

減量期のプロテインは何g/日を目安にすればよいか?

現状のエビデンスに基づくと、カロリー制限下でのレジスタンストレーニングを行う場合、1.8〜2.4g/kg/日(体重基準)を目安とするのが適切である。除脂肪体重(FFM)基準では2.3〜3.1g/kg FFMとなる(Helms et al., 2014)。カロリー制限が厳しいほど、また体脂肪率が既に低いほど上限に近い値を目指すことが筋量維持に有効とされている。ただし個人差があり、トレーニング頻度・強度、回復状況に応じた調整が必要である。

ホエイペプチド(WPH)とWPCは減量期にどちらが適しているか?

タンパク質摂取量を確保するという観点では、WPH(ホエイタンパク加水分解物)とWPC(ホエイプロテインコンセントレート)のどちらも有効な選択肢である。WPHは分子量が小さく消化吸収速度が速いとされるが、減量期の筋量維持において吸収速度の差が大きな優劣を生むというエビデンスは現時点では限定的である。価格はWPHの方が1食あたり2〜3倍高い場合が多い。カロリーとコストのバランスを重視するなら、タンパク質密度が高い製品を選ぶことが優先される。

関連記事

参考文献

  • Helms ER, Zinn C, Rowlands DS, Brown SR et al., 2014, International Journal of Sport Nutrition and Exercise Metabolism, 24(2):127-38. DOI: 10.1123/ijsnem.2013-0054
  • Hector AJ, Phillips SM, 2018, International Journal of Sport Nutrition and Exercise Metabolism, 28(2):170-177. DOI: 10.1123/ijsnem.2017-0273
  • Longland TM, Oikawa SY, Mitchell CJ, Devries MC, Phillips SM, 2016, American Journal of Clinical Nutrition, 103(3):738-46. DOI: 10.3945/ajcn.115.119339
  • Pashayee-Khamene F, Heidari Z, Asbaghi O et al., 2024, Journal of the International Society of Sports Nutrition, 21(1). DOI: 10.1080/15502783.2024.2380058
  • Kreider RB, Kalman DS, Antonio J et al., 2017, Journal of the International Society of Sports Nutrition, 14(1):Article 18. DOI: 10.1186/s12970-017-0173-z
  • Desai I, Pandit A, Smith-Ryan AE et al., 2025, Nutrients, 17(6):1081. DOI: 10.3390/nu17061081
  • Burke DG, Chilibeck PD, Davidson KS, Candow DG, Farthing JP, Smith-Palmer T, 2001, International Journal of Sport Nutrition and Exercise Metabolism, 11(3):349-364.